■ グループリーグが終了ポーランドとウクライナで開催されているユーロ2012は、グループリーグが終了した。ユーロ2012では、3位決定戦は開催されないので、全部で31試合が予定されているが、そのうちの24試合が終了して、残りは7試合となった。約3/4が終了したことになるが、連日、ユーロ2012を観ていると、日本サッカーとの違いを感じることができる。
「違い」という言葉を使う場合、日本では、『欧州に比べて、ここが劣っている。』という風な表現で、自分たちを卑下することが多いが、実際には、日本が劣っていると感じるところもあるし、逆に、優れていると感じるところもある。
サッカーの場合、10数年前までは、いろいろな面で、欧州に遅れを取っていたので、とりあえずとして、「欧州の真似をしておけば、大丈夫。」という時期もあったが、今後は、いいところは取り入れて、悪いところは、決して真似しないという選択が重要になってくる。「欧州ではこうだから・・・。」、「ブラジルではこうだから・・・。」といったフレーズは、免罪符にはならない。
■ 人種差別の問題真似をする必要がないことの筆頭に挙げられるのは、相変わらず、人種差別がはびこっている点で、いくつかのチームのサポーターが騒動を起こしている。こういう騒動を起こす人たちを、サポーターと呼んでいいのか、という疑問もあるが、スタジアム内で問題が起これば、サポーターと言われても、仕方がない。
今のところ、日本では、人種差別的なことで、大きな騒動は起こっていないが、今後、こういう問題が起こる可能性は、十分にあるだろう。「ヤジ」というのは、どのスタジアムでも、なくならないものであるが、アルコールが入っていると、「ヤジ」がエスカレートして、「人種差別」につながっていく恐れもある。
今回の件は、UEFAが罰金等の処分を発表しているが、生ぬるい対応のように思える。数名のサポーターが起こした不祥事を、その他大勢のサポーターや選手やクラブに責任を負わせることが適切なのか、という話にもなってくるが、一度は、「厳しすぎる。」と思うような処分が下されない限り、差別はなくならないだろう。
■ テクニカルなセンターバックプレーの面では、スペインのDFピケ、ドイツのDFバットステューバーやDFフメルスといったテクニカルな大型センターバックが目につく。もちろん、彼らは、すでにクラブレベルでは、十分な実績と名声を得ているが、こういったパス出しのできるセンターバックがいるチームは、攻撃でも、守備でも、大きなアドバンテージとなる。
「大型センターバックを育てていくこと。」は、日本でも、長い間、課題として挙げられている。幸いにして、若年層の日本代表には、大津高校のDF植田や、ヴィッセル神戸ユースのDF岩波のような選手が出てきており、彼らの力がフルに発揮されて、2011年に開催されたU-17W杯では、ベスト8に進出したが、フル代表レベルになると、VVVのDF吉田くらいで、可能性を感じさせる選手も少ない。
したがって、南アフリカW杯でも活躍したDF闘莉王を代表から外してまで、DF吉田に国際経験を積ませる道を選択した当時のザッケローニ監督の判断は、的確だったと思うが、DF吉田のような選手が、何人か出てこないと、2014年のブラジルW杯で勝ち上がるのは、難しくなる。
もともと、日本には、190センチ近い長身のサッカー選手が少ないが、Jリーグには、小回りの利く選手が多いので、高さがあって、かつ、彼らのクイックネスにも対抗できるだけのアジリティーを備えていないと、Jリーグで出場機会を得るのは難しいので、大型センターバックには、難しい環境である。
最近は、「レベルアップするために、早く欧州に挑戦すべき。」という風潮があるが、アタッカーのポジションなどは、急いで、欧州に旅立つメリットは少ない。むしろ、マイナス面が多いと思うが、唯一、大型センターバックだけは、早いうちに欧州に渡った方が、プレーヤーとして、成長・飛躍できる可能性が高いようにも感じる。
■ スタジアムの雰囲気最後にスタンドの雰囲気にも触れておきたい。今大会は、ポーランドとウクライナで共同開催されているが、どちらかというと、静かな印象である。クロアチアの試合だけは、サポーターが発煙筒を焚いて、不穏な雰囲気を作っているが、たいていの試合は、暴力的なムードもない。
スタジアムも近代的で、キレイで、いい雰囲気の中で試合が行われているが、気になるのは、特に、開催国のポーランドやウクライナの試合は、押し込んでいるときは、サポーターが選手を声援で後押ししているが、劣勢になると、スタジアムのテンションも下がってしまう点である。
日本でも、3点ビハインドであったり、4点ビハインドになれば、サポーターも、意気消沈して静かになるが、僅差のビハインドであれば、むしろ、「もっと選手たちを励まそう。」と声援が大きくなるのが普通だが、今大会は、ラストの15分であったり、ラスト20分であったり、大事なところで、スタジアム全体が萎んだムードになっていることが、目立つ。
サッカーライターの金子達仁さんは、2007年のクラブW杯で浦和レッズがACミランと対戦して0対1で敗れたとき、
「自分の愛するクラブが目の前に木っ端微塵に打ち砕かれていているのに、僕なら歌えない。言葉を失ってしまう。でも、テレビゲームのようにバーチャルに感じているから、負けても痛くもかゆくもないんですよ。」と語っている。今回は、木っ端微塵というわけではないが、それだけ、開催国のサポーターは、試合に入り込んでいる証とも言える。ただ、追い上げなければならない段階では、あまり効果的なことではないと感じる。
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