■ 第10節J1の第10節。2勝2分けで3位の横浜Fマリノスが、4連敗スタートで18位のアビスパ福岡と対戦。福岡は、第7節の清水戦は後半35分に、第8節の鹿島戦は後半26分に、第9節の仙台戦は後半33分に決勝ゴールを許していて、3試合連続で競り負けている。内容は悪くないだけに、ここまで1得点のみの攻撃陣に期待がかかる。
横浜FMは<4-2-3-1>。GK飯倉。DF小林祐、栗原、中澤、波戸。MF小椋、谷口、兵藤、中村俊。FW渡邉千、大黒。18歳のFW小野がスタメン落ちで、第9節の浦和戦で初ゴールを決めたFW大黒が開幕戦以来のスタメンとなった。
対する福岡は<4-2-3-1>。GK神山。DF山形辰、丹羽、山口、キム・ミンジェ。MF鈴木惇、末吉、田中佑、岡本、松浦。FW城後。前節で負傷したMF中町は怪我のため欠場。MF鈴木惇が初スタメン。磐田から移籍のMF成岡がベンチ入り。
■ マリノスが逆転勝利雨が降りしきる中で行われた試合の前半は福岡ペースで進む。FW城後を中心に相手ゴールに迫ると、前半31分に福岡はカウンターから数的優位を作ると、FW田中佑のパスを受けた城後がゴール前でフリーになってシュート。これが決まって先制する。さらに前半42分にも左サイドを崩して、DFキム・ミンジェの左足のアーリークロスをMF城後がうまく合わせて2点目を挙げる。そのまま、前半はアウェーの福岡がリードして折り返す。
2点リードで、2006年以来のJ1での勝利が見えてきた福岡だったが、後半立ち上がりに横浜FMが1点を返す。右サイドからFW大黒がクロスを入れると、飛び込んできたFW渡邉千がうまく頭で合わせて1点差に迫る。同点ならびに逆転を狙う横浜FMは、後半11分にFW大黒に代えてFW小野、後半22分にFW渡邉千に代えてFWキム・クナンを投入。すると、後半32分にMF谷口がペナルティエリア内でキープしてFW小野に落とすと、FW小野が右足で鮮やかに決めて2対2の同点に追いつく。
攻勢をかける横浜FMは、その4分後にも、MF兵藤のシュートのこぼれ球を、再び、FW小野が決めて逆転に成功する。FW小野は2ゴールの活躍。結局、0対2から試合をひっくり返した横浜FMが3対2で逆転勝利。今シーズン3勝目を挙げた。一方の福岡は2点リードを守りきれずに開幕から5連敗となった。
■ 新10番・FW小野裕二が2ゴール清水戦、浦和戦とスタメンで出場したものの精彩を欠いて、スタメンを外されたFW小野が奮起して同点ゴールと逆転ゴールをマーク。2ゴールの活躍でチームを勝利に導いた。ゴールシーン以外でも、多くのチャンスを作っており、背番号「10」に恥じない大活躍だった。
昨シーズンは、17試合で3ゴール。高校3年生だったことを考えると、十分なパフォーマンスだったが、チャンスの割には決めきれないシーンが多く、ゴール数だけは物足りなかっただけに、早い時期に2つのゴールが生まれて、今シーズンはゴール量産も期待される。
現時点では、味方を使うプレーの方に秀でたものを感じさせるが、自分でも点が取れるようになると、一段上の存在になれる。目標のゴール数は、背番号と同じ「10ゴール」ということであるが、そのくらいは決めてほしいところである。
■ 激しいポジション争い横浜FMは、GKの飯倉、最終ラインの4人、中盤の4人の計9人は不動のような感じになってきており、ユニットとしても熟成してきている。むしろ、固まりすぎてきて、代わりに入った選手がスムーズにプレーできるかどうかが気になるところであるが、唯一、フォワードだけは激しいポジション争いが繰り広げられている。
この日は、スタメンから外れたFW小野が2ゴール、先発に入ったFW渡邉千が1ゴール、FW大黒も1アシストと、3人が結果を残したが、途中出場のFWキム・クナンも充実したプレーを見せており、この日もFW小野の逆転ゴールに絡んだので、途中出場ながら、4試合連続でゴールに絡んだことになる。
もともとCBであるが、ターゲットマンとして目覚ましい活躍を見せており、足元のプレーも安定してきている。韓国代表にも召集された経験があって、身体能力も高いので、逆にセンターバックとして、全く試合に出られないことが不思議であるが、ターゲットマンに必要とされる能力も身に付けてきており、攻撃のジョーカー的な存在となっている。スタメンで起用される可能性があるかというと分からないが、FWキム・クナンも含めた4人のポジション争いは熾烈であり、ハイレベルである。
■ 好セーブを連発したGK飯倉横浜FMは後半開始早々に1点を返した後、前掛かりになったので何度もピンチを迎えたが、GK飯倉が1対1を、たびたび、防いで流れを呼び込んだ。福岡も鋭いカウンターを見せており、決定機は少なくなかったが、後半に3点目を許さなかったGK飯倉の活躍が逆転勝利を呼び込んだといえる。
横浜FMはこれで5試合で3勝2分け。他クラブの動向によっては、今節で、2006年4月以来となる首位に立つ可能性もあるが、5試合で4失点。うち2つはPKなので、伝統の守備の強さが光っている。特に、最後尾で落ち着いたプレーを見せるGK飯倉の貢献度は非常に高く、欠かせない存在になっている。ビッグセーブも多いが、ポカミスが少ないのも光る。
■ カウンター対策に課題ただ、この試合では、課題も明らかになった。基本はダブルボランチであるが、MF谷口が積極的に上がっていくので、MF小椋の1ボランチのようになったり、MF小椋とMF中村俊のダブルボランチになったり、かなり流動的である。
このように、MF谷口の攻め上がりが「厚みのある攻撃」を生み出しているが、一方で、守備のときはバランスを取りきれないこともあって、この日は、福岡のカウンターの脅威にさらされた。1失点目は下がり目にポジションを取っていたMF中村俊がカウンターのケアをしていたが、簡単に振り切られてしまったので、大ピンチを招いて、FW城後にゴールを許した。ポジションチェンジが多いので仕方がないところもあるが、不用意な形で奪われると苦しくなってしまう。
■ 2点を守りきれず・・・対する福岡は、前半は申し分ない出来で2点リードを奪ったが、後半に3失点。これで開幕5連敗となったが、5試合で前半45分の失点は「ゼロ」であるのに対して、後半45分では5試合で10失点。前半と後半の数字に、極端に差が出ている。どの試合も前半は攻め込んでおり主導権も握っているが、後半にペースが落ちたところを攻められて失点を喫している。
5試合ともに同じような展開であるが、だからといって、前半を抑え気味に入ってしまうと、前半で試合を決められてしまう可能性も高い。したがって、「前半にリードを奪って、後半は耐える。」というプランの戦い方で間違いはないが、微修正は必要である。
運動量が落ちていないときに見せるサッカーは、アルビレックス新潟が相手でも、鹿島アントラーズが相手でも、横浜Fマリノスが相手でも、十分に通用しており、いいサッカーを見せているだけに、もったいない試合が続いてしまっている。篠田監督の腕の見せ所といえる。
■ FW城後寿が2ゴール開幕から1トップで起用されているFW城後が2ゴール。もしハットトリックを決めていれば、チームでは、J1に限定すると、2000年シーズンのMFビスコンティ以来で、史上二人目ということで、快挙となっていたが、チャンスはありながらも、3点目は決められなかった。ただ、2つのゴールともに、ポテンシャルの高さを感じさせるゴールであり、見事な活躍だった。
本来であれば、フォワードには本格派のストライカーを置いて、MF城後はトップ下でプレーした方がポテンシャルをフルに発揮できると思うが、適任者がいないので、ずっと1トップでプレーしている。始めの頃は、少し違和感もあったが、攻守にわたって活躍を見せており、1トップも似合ってきている。FW城後の活躍なくして、初勝利は生まれないので、このゴールを自信にして、好プレーを続けてほしいところである。
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