■ ダービーマッチ2006年以来のJ1復帰を果たしたセレッソ大阪。対するはガンバ大阪。2006年以来の大阪ダービーに、37,860人という大観衆が集まった。
ホームのC大阪は<3-6-1>。GK松井。DF茂庭、羽田、上本。MFアマラウ、マルチネス、高橋、尾亦、乾、香川。FWアドリアーノ。GKキム・ジンヒョンは開幕から2試合の出場停止中でGK松井がスタメン出場。スタメンは開幕戦の大宮アルディージャ戦とまったく同じ11人。FW播戸、MF家長がベンチスタートで出番を待つ。
対するガンバ大阪は<4-2-2-2>。GK藤ヶ谷。DF加地、中澤、高木、下平。MF明神、遠藤、橋本、二川。FWチョ・ジェジン、ルーカス。FWペドロ・ジュニオールはベンチスタート。MF宇佐美もベンチスタートとなった。
■ 1対1のドロー試合の前半はG大阪ペースで進む。MF遠藤を中心としたポゼッション力でC大阪を上回り、C大阪のゴールに迫る。しかし、最後の局面での精度を欠いてゴールは奪えない。対するC大阪も、MFマルチネスにボールを集めるが、コンビネーション不足で決定機は作れず。前半は0対0で終了。
スコアレスで迎えた後半20分にG大阪はゴール左でフリーになったMF明神がミドルシュート。これが無回転でゴールマウスに飛んでいくと、正面のボールをGK松井がファンブルしゴールイン。G大阪が先制する。しかし、C大阪はその6分後に、MF香川のドリブルからチャンスを作ると、左サイドでボールを受けたFWアドリアーノがゴールに突進し、最後は左足でシュート。これが見事に決まって同点に追い付く。
その後、C大阪はFW播戸、MF家長を投入。逆転ゴールを狙うが、2点目のゴールは奪えず。結局、1対1のドローで終了。C大阪は勝ち点「1」を獲得し、G大阪は勝ち点「1」の獲得にとどまった。これでG大阪は今シーズンの公式戦は5試合目で未勝利。スタートでつまづく形となった。
■ 貴重な勝ち点「1」開幕戦で大宮に0対3の完敗。メンバーが大きく入れ替わっていて、コンビネーション不足を露呈したC大阪は、4年ぶりのダービーでドロー。相性がきわめて良くないG大阪に対してドローという結果は悪くない成果であると言える。
後半20分にGK松井のミスで失点。嫌な流れになりかけたが、FWアドリアーノが値千金の同点ゴール。それまでは、前線のトライアングルはコンビネーションが悪く、いい形でボールを奪ってもシュートに持ち込めないというストレスのたまる展開になっていたが、このゴールで状況は一変。その後は、MF乾、MF香川、FWアドリアーノのトリオが何度もいい形を作った。
新しく入ったFWアドリアーノという選手が、J1でもトップレベルに近いスピードとパワーを備えたストライカーであることは、ゴールに向かって走っている姿だけを見ても一目瞭然であるが、やはり周囲を納得させるには「結果」が必要だった。そして、後半26分に、その「結果」を残したことで、それまで攻撃面でかかえていた幾つかの問題が解決してしまったかのように、目に見えて攻撃がスムーズになった。
FWアドリアーノの持っている「個の力」はやはり魅力であり、「フォワードが1人でゴールを奪い取る」というシーンは、昨シーズンには無かったものである。2試合で勝ち点「1」。16位からのスタートとなったが、これからが本番といえる。
■ セレッソのベスト布陣は?①オフに大型補強を行ったC大阪。軸となるGKキム・ジンヒョン、MFマルチネス、MF乾、MF香川の4人は変わっていないが、その周りの選手は総入れ替えの状態であり、クルピ監督もどういうメンバーがベストなのか探りながらのスタートとなっている。「そういう作業はシーズン前にすべきである。」という意見はもっともであるが、実戦でしか解決できない問題や、表面化しない問題もあって、なかなか難しいものである。
クルピ監督は、メンバーを固定したがりの監督なので、大宮戦、G大阪戦と2試合連続で同じスタメンだったが、この11人がベストとはいえないだろう。もちろん、GKはキム・ジンヒョンが帰ってくればGKキム・ジンヒョンで不動だろうが、右サイドはMF酒本という選択肢もあるし、左サイドはMF石神やMF家長という選択肢もある。また、ボランチもMFアマラウではなくMF藤本やMF黒木という可能性もあるし、1トップもFWアドリアーノではなくFW播戸やFW小松という可能性もある。
システムも<3-6-1>でスタートしているが、昨シーズンは<4-3-2-1>のパターンも多く、4バックに変更することで有り余っている中盤のタレントを生かすことが可能となるし、FW播戸とFWアドリアーノの2トップに置く<4-2-2-2>も考えられる。
■ セレッソのベスト布陣は?②昨シーズンはJ2での戦いであり、ほぼ全ての試合でC大阪がボールを支配して攻め込むことが出来た。ただ、もともと前線にスピードのある選手が多いので、相手に引かれることの多いJ2よりは、カウンターで攻め込む機会の増えるJ1向きのチーム構成であるとは思うが、FWアドリアーノが前任のFWカイオほど運動量や守備面で貢献出来る選手ではないので、「高い位置でボールを奪ってカウンター」というシーンがそれほど多くない。
となると、中盤でボールを回して遅攻の状態から崩してチャンスを作らなければならないが、この点は、あまりうまくいってはいない。昨シーズンは3バックといえども、中央に入るリベロタイプのDFチアゴが自由に中盤に上がっていってボール回しに参加したり、前線に駆け上がってシュートを放ったり、奇抜な動きで攻撃に厚みを加えていたが、今シーズンの3バックのメンバー(DF茂庭、DF羽田、DF上本)にそこまで期待するのは難しい。よって、かなり古典的な3バックになっている。
ストッパータイプが多いこと、本職の右サイドバックがいないことを考えると、3バックが第一の選択肢になるのも理解できるが、中盤の支配力を上げて攻撃的に戦うには、4バックの方がベターであるような気はする。いずれにしてもクルピ監督の判断次第であり、しばらくは試行錯誤が続くことだろう。
■ 5試合未勝利勝ち点「1」でもOKだったC大阪に対して、2008年のアジアチャンピオンの貫禄を見せたかったG大阪だがドロー。これで、ACL、ゼロックス、リーグ戦と5試合未勝利となった。極端に試合内容が悪いわけではないが、もどかしい試合が続いている。DF山口の離脱、DF安田の不調も痛いが、やはりフォワード陣が期待通りの活躍が出来ていないのが痛い。この試合はFWチョ・ジェジンとFWルーカスの2トップで、FWペドロ・ジュニオールが途中から入ったが、どの選手も決め手に欠ける状態で、なかなか固定できない。
ここ数年、同じようなメンバーで戦っているかのように思えるG大阪だが、前線は毎年のように変わっている。中心がMF遠藤であることに違いはないが、今シーズンは、特にMF遠藤にかかっている負担が大きいように感じる。近年で、一番、バランスが良かったのはFWマグノ・アウべスとFW播戸が2トップで出場することが多かった2006年シーズンだったと思うが、前線にスピードのあるFWマグノ・アウべスがいたことで、MF遠藤の「緩」の部分がより一層、効果的に働いていたが、今のメンバーで「急」の部分を担える選手が見当たらないので、リズムが単調になりがちで、相手としては慣れてくれば対応できなくもない。
FWペドロ・ジュニオールはスピードもあるが、持ち過ぎる傾向もあって、チーム全体をスピードアップさせるという点では有効な駒とはいえず、左サイドで縦に勝負できるDF安田が調子を取り戻すことが出来ればいいのだが、DF安田の調子が上がらないようだと、MF佐々木の起用も面白い。
セレッソ大阪:採点 GK:松井謙弥 4.5
→ 無回転シュートとはいえ、正面のボールを決められるのは大きなマイナス。
DF:茂庭照幸 6.5
→ 序盤はファールが多かったが、その後は、ルーカスを上手く封じた。
DF:羽田憲司 5.5
→ 守備では体を張ったが、もう少しスムーズにビルドアップしたい。
DF:上本大海 5.5
→ ファールは減らしたいが、さすがにJ1経験は豊富。
MF:アマラウ 5.5
→ 個の強さはある。判断力にやや疑問。ミドルシュートはパワフル。
MF:マルチネス 6.0
→ 開幕戦と比べると落ち着いてボールを回すことが出来た。
MF:高橋大輔 5.5
→ 守備はまずまず。攻撃はもう少し貢献出来るはず。
MF:尾亦弘友希 5.0
→ 大宮戦よりは良かったが、縦への突破も期待したい。
MF:乾貴士 5.5
→ イージーミスもあったが、徐々によくなっていった。
MF:香川真司 5.5
→ あまりコンディションは良くないが、及第点のプレー。
FW:アドリアーノ 6.0
→ 値千金の同点ゴール。
途中出場:播戸竜二 なし
→ もう少し、早く使ってほしかった。
途中出場:家長昭博 なし
→ 同上。
ガンバ大阪:採点 GK:藤ヶ谷陽介 6.0
→ 落ち着いてプレーした。安定感が出てきた。
DF:加地亮 5.5
→ カバーリングで魅せたが、攻撃はもう一つだった。
DF:中澤聡太 5.5
→ コンディションは万全ではないが、まずまずのプレー。
DF:高木和道 5.5
→ 試合を重ねるごとに良くなってきている。
DF:下平匠 6.0
→ 左足のキックで相手ゴールを脅かした。
MF:明神智和 7.0
→ 負傷明けだったがハイパフォーマンス。無回転ミドルで先制ゴール。
MF:遠藤保仁 5.5
→ 悪くなかったが、決定的なパスは出せず。
MF:橋本英郎 5.5
→ 神出鬼没に動き回った。
MF:二川孝広 5.0
→ ここ最近の中では、イマイチのパフォーマンスだった。
FW:ルーカス 5.5
→ 正確なポストで起点になったが、後半は茂庭に封じられるようになった。
FW:チョ・ジェジン 5.0
→ チャンスはあったが、決められず。
途中出場:ペドロ ジュニオール 5.0
→ 思ったほどの効果は発揮せずに終わった。
途中出場:平井将生 なし
→ そろそろ結果が欲しい。
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