紅海で形勢を一変させるフーシ派の極超音速ミサイル
マイク・ホイットニー
2024年7月2日
The Unz Review
2024年6月26日にイエメンのフーシ派が公開した映像のスクリーンショットにはイエメンの非公開の砂漠地帯から極超音速ミサイルが発射される様子が写っている。新華社
これはイランの復讐だろうか?
3月下旬、ダマスカスの領事館をイスラエルが爆撃したことに対するイランの報復は、極超音速ミサイルをフーシ派に提供して「大悪魔」と戦わせることなのだろうか?
6月26日、イエメンのフーシ派反政府勢力は長距離固体燃料極超音速弾道ミサイルを使用してアラビア海の商船を攻撃した。軍事作戦で、この集団が最新鋭ミサイルを使用したのはこれが初めてだ。この進展の重要性はいくら強調してもし過ぎることはない。極超音速ミサイルは、まだ欧米諸国では入手できない技術進歩を特徴としており、以前のモデルより精度が高く、撃墜が困難で、飛行距離が長い。この独自最新兵器は、将来、紅海やそれ以遠への攻撃でフーシ派に決定的優位を与える戦力増強装置だ。これにより、フーシ派は商業交通に対する支配力を強めることができると同時に、アメリカ軍艦をより大きな危険にさらすことになる。またアメリカや連合諸国との戦争で、フーシ派が勝利する可能性も大幅に高まるだろう。以下はMaritime Executive記事からの引用だ。
アデン湾沖のMSCコンテナ船を標的とした極超音速ミサイルを初めて発射したとフーシ派は主張している。
フーシ派のヤヒヤ・サリー報道官の投稿により、アラビア海でMSC社のSarah Vを狙ったミサイルの正体が初めて明らかになった。「これは高度な技術を備え、命中精度が高く、長距離まで到達する現地製極超音速ミサイルだ。」
3月のメディア報道によると、フーシ派はマッハ8に達する極超音速ミサイルの製造を開始した。報道によると、このミサイルはインド洋更に深奥部の船舶の脅威となると言う。動画:フーシ派、MSCの船を標的に極超音速ミサイル初発射を主張、Maritime Executive
第一に、フーシ派は高度なミサイル製造施設を持っていないので、現在軍事作戦で彼らが使用しているハイブリッド弾道ミサイルが何であれ、自ら製造したわけではない。
第二に、今週初めのアラビア海での事件で発射されたミサイルは、おそらくイラン製ファッタフ1の派生型で、マッハ3、つまり音速の3倍の速度で飛行できると専門家らは示唆している。ファッタフ1はフーシ派が使用してきたミサイルが大幅に改良されたものだが、最先端の極超音速弾道ミサイルほど商業船舶に深刻な脅威を与えるものではない。最先端の固体燃料極超音速ミサイルは別格だ。マッハ5を超える速度で飛行し、機動性が高く、飛行中に進路を変更できるものもある。多少の背景情報は下記のとおり。
極めて機動性の高い兵器を極超音速で発射する能力は、どの国にとっても大きな利点となる。なぜなら、そのような兵器は現在使用されているほぼ全ての防衛システムをかわすことができるためだ。
2020年1月ワシントンで「脅威が何かは問題ではない。脅威が見えなければ防御はできない」と元米統合参謀本部副議長ジョン・ハイテン将軍が聴衆に語った。
2018年にアメリカ戦略軍司令官を務めたハイテンは「我々に対する、そのような兵器の配備を阻止できる防衛手段はない。…我々の防衛手段は抑止力だ」と述べた。極超音速兵器とは一体何で、誰が保有しているのか? VOA
結論:もし、これら「先進的」兵器をフーシ派が自由に使えるなら、紅海は海底に向かう燻る米軍艦で埋め尽くされるはずだ。しかし、そうではないので、フーシ派にミサイルを供給しているのが誰であれ、まだ最新鋭の極超音速ミサイルを彼らに提供する準備はできていないと仮定しなければならない。Business Insider記事から更に引用する。
ミサイルや宇宙技術を研究するミュンヘンのコンサルティング会社STアナリティクスの責任者マルクス・シラーは、このミサイルはイランで設計された可能性が高いとBusiness Insiderに語った。
「これは間違いなくイランのファッタフ・ミサイル・ファミリーの一種だ。このミサイルは1990年代に開発され、以来継続的に改良されている」とシラーは述べた。最近テヘランは、ファッタフ・ミサイル最新版を極超音速ミサイルとして宣伝している。フーシ派反政府勢力は、新しい「自家製極超音速ミサイル」を発射したと述べ、民間船に向けて発射する映像を投稿した。 Business Insider
実際フーシ派が最良の弾道ミサイルを持っていない可能性が高い。結局、彼らの封鎖の狙いは、アメリカ軍艦を破壊して何千人もの人を殺すことではなく、イスラエル経済に圧力をかけて、ガザへの人道支援をイスラエルに認めさせることだ。実際、フーシ派の戦略が成功したのは、それがほとんど平和的だった事実に大きく起因しており、だからこそ彼らの大義は世界中の人々から支持を集めてきたのだ。もし彼らがやり方を変えて、片っ端から船を沈没させ始めたら、人々の支持は一夜にして消えるだろう。下記はForeign Policy記事からの引用だ。
…… 8か月たって船舶の混乱は突然更に悪化している。 6月下旬フーシ派攻撃で船が沈没(攻撃開始以来2隻目)し、別の船にも損傷が生じた。今年に入ってから攻撃未遂と攻撃成功のリストは延々続く。米艦艇がドローンやミサイルや無人水上艦艇を撃退した報告を米中央軍公式発言はほぼ毎日繰り返している。対艦ミサイルを効果的に使用してきたフーシ派は現在いわゆるフーシ派特攻船「Blowfishフグ」を含む水上ドローンに益々依存するようになっている。
こうした展開と頻繁な迎撃は、アメリカ海軍の弾薬庫を食いつぶしている。議会関係者によると、紅海でフーシ派ドローンやミサイルを撃墜するのに米護衛艦が使用する標準的防空ミサイルをアメリカはほとんど生産していないという。「あそこでの消耗率がこれまでと同じ急な高水準を維持する限り、我々はより危うい立場に立たされる」と匿名を条件にアメリカの弾薬不足について率直に語ったある関係者は語った。米海軍と同盟諸国はなぜフーシ派を阻止できないのだろう? Foreign Policy
著者の分析には苛立ちが感じられ、理由も理解できる。アメリカにとって国家安全保障上の脅威とはならない反乱集団と紅海で戦って泥沼にはまり込むのをワシントンは望んでいない。いやなのだ。ロシアのウクライナ作戦を押し返したり、中国を封じ込めたりする、より広範なアメリカの地政学的野望を前進させることにはならない取り組みに、バイデンも更なる資源や地上部隊を投入したくないのだ。要するに、紅海での騒動は、「消えてなくなる」のをアメリカ外交政策責任者が望んでいる厄介な問題だと一般に認識されている。しかし問題は消えるどころか悪化しており、バイデンは望まない選択を迫られている。以下はgCaptain記事からの引用だ。
イランが支援するフーシ派反政府勢力による攻撃が激化しているため、紅海の船舶を護衛するため欧州連合(EU)が派遣した海軍部隊は規模を二倍以上に拡大する必要があると作戦責任者が述べた。
水曜日のインタビューで、二月以来、EU艦艇4隻がイエメン沖海域を巡回している。その間、164隻の船舶に「近接防御」を提供し、無人航空機を12機以上撃墜し、対艦弾道ミサイル4発を破壊したとヴァシリオス・グリパリス少将が語った。
イエメンを拠点とするフーシ派は世界海運を混乱させ、1月に始まったEUの作戦とアメリカとイギリスの爆撃にもかかわらず、多くの船舶が南アフリカを何千マイルも迂回して航行するのを余儀なくされた…。
「毎日40~50隻の船が海峡を行き来しているので、近接防御を行うには相当数の船が必要だ」と彼は語った。「近接防御ができない場合もあるが量に対処するよう努めている。」
アメリカとイギリスの爆撃作戦は攻撃を阻止できず、むしろ両国関連の船舶が頻繁に攻撃されるようになっている。地中海の船舶を攻撃する可能性がある作戦拡大をフーシ派は警告している。
「フーシ派を攻撃して問題が解決するとは我々は考えていない」と彼は語った。「数年前同様の行動をとった国もあったし今もそうしている国もあるが、それが問題解決につながっていないのは明らかだ」。フーシ派を撃退するには艦隊を倍増させる必要があるとEU軍は主張、gCaptain
著者が何を言っているかお考え願いたい。現在の方法は機能していないので同じ戦略を更に強化すべきだと著者は主張しているのだ。これは「狂気」の定義ではなかろうか。
明らかなのは、アメリカ外交政策手段は軍事力しかないことだ。そして、その手段が効果がないことが判明すると、軍事力が更に強化される。これがアメリカ政府が紅海で無駄骨を折っている現在の紛争の結末にどんな影響を与えるのか理解する必要がある。イスラエルに圧力をかけて、ガザ封鎖を解除させたほうが良いのではなかろうか。
政策立案者が自ら問うべき疑問は、かなり明白だ。「この問題に対する軍事的解決策はあるのだろうか?」
答えは「ノー」だ。明確に定義された戦略目標や撤退戦略もない。これらは戦争への突入と、外交政策の官僚たちがお気に入りの作戦理論「先に撃って後で質問する」を実行する決意の中で無視された。その結果、アメリカは従来の手段では勝てない、またしても無意味な大戦に巻き込まれている。下記はBusiness Insiderからの引用だ。
ここ数週間、フーシ派は商業船への攻撃を連続して成功させており、そのうち一隻を沈没させたほか、ドローン船で標的を効果的に攻撃する能力を実証し、攻撃がより巧妙になっていることを示している。
いくつかの事件では、危険な新戦術も明らかになった。最も注目すべきは、6月12日、フーシ派が爆発物を積んだドローンボートで紅海の商船を攻撃したことだ。これは、フーシ派が昨年11月に商船への攻撃を開始して以来初めだ。
商用ばら積み貨物船MV Tutorに対する最初のドローン・ボート攻撃により、浸水とエンジン・ルームの損傷が発生した。数時間後、フーシ派ミサイルが船に命中した。二回連続攻撃により乗組員は船を放棄せざるを得なくなり、船は最終的に沈没した...
同週、フーシ派はアデン湾で対艦ミサイル2発を発射して、MV Verbena号を攻撃した。それから24時間も経たないうちに、このばら積み貨物船は別のミサイルで攻撃され、この週で2度目の二回連続攻撃攻撃となった。攻撃による損傷のため、乗組員は最終的に船を放棄した。
Tutor号とVerbena号攻撃は数日前に行われた他の船舶2隻への攻撃成功に加え、フーシ派作戦の「有効性の大幅向上」を示しているとイギリス警備企業アンブリーは述べた。
「攻撃のたびに、何が効果的で何が効果的でないかを、おそらくフーシ派は学んでいるのだろう」とカーターは語った。「軍事組織の運営方法を考えれば、使用している様々な攻撃方法から彼らは確実に教訓を得ている」。
反政府勢力が「ローテクで低コスト」の攻撃手段を入手するのを阻止するだけでなく、攻撃を思いとどまらせるのも困難だとランド研究所で中東安全保障を担当する政策研究員アレックス・スタークがBIに語った。
これら攻撃は「明白で有用な解決策がないまま進行中の問題」だと彼女は付け加えた。フーシ派は紅海での攻撃を巧妙化しており、この海域を航行する船舶は代償を払っている。Business Insider
スタークは間違っている。「明らかな解決策は目の前にある」。ガザの人々への食糧や水や医療援助封鎖をイスラエルが解除するまで、全てのイスラエルへの武器供給をバイデン政権は停止する必要がある。それが紅海の危機を終わらせる唯一の政策だ。更に重要なのは、それが正しい行動だということだ。
記事原文のurl:https://www.unz.com/mwhitney/the-houthis-hypersonic-missile-is-a-game-changer-in-red-sea/
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Judging Freedom ラリー・ジョンソン 溺れるNATOは藁をも掴む
Larry Johnson : NATO Grasping at Straws 29:35
UIチャンネル
ウクライナ情勢を徹底解説(24年7月現在)下斗米伸夫 (神奈川大学教授、法政大学名誉教授) × 鳩山友紀夫 1:20:32
さすが植草氏。今回の奇怪な結果を的確に説明しておられる。大本営広報部機関、つまりテレビも新聞も、今回の大資本洗脳プロパガンダ一味なので、たとえ真実を知っていても、植草氏のように真実はいわない。
植草一秀の『知られざる真実』
「仏国民議会選挙の結果、左派連合の新人民戦線が182議席で最大勢力に! マクロン大統領の中道連合は168議席、右派国民連合は143議席!」
■はじめに~フランス国民議会選挙の結果、左派連合の新人民戦線が182議席で、最大勢力に! 続いてマクロン大統領の中道連合が168議席、国民連合は143議席で第3位に! しかし、3つの勢力とも過半数を確保できず、フランス政局は、少なくとも2025年夏まで不安定なままになる!?
■IWJの第14期も最後の1ヶ月です! 7月は4日までの4日間で、ご寄付・カンパが10万8000円と、目標額の3%にとどまっています! 今期第14期は、8ヶ月連続で目標金額に届かず、累積の赤字額は約1260万円になっています。他方で、「IWJしか報じていない情報」が、日々、増えてきています! そのIWJを支えるのは、皆さまからいただく会費とご寄付・カンパだけです。有料会員登録と、ご寄付・カンパで、どうか財政難のIWJが、独立メディアとして報道・言論活動を継続できるよう、皆さまのご支援をよろしくお願い申し上げます!
■<新記事・動画紹介>「情報戦」の時代をどう生き抜くか? 巨大組織メディア報道の罠を検証!【第2部】新型コロナウイルス危機とmRNAワクチン危機(第9回)~岩上安身によるインタビュー第1164回ゲスト 在野研究者・嶋崎史崇氏
■『ウィキリークス』がXで、昨年10月7日のハマスらパレスチナ抵抗勢力による奇襲攻撃直後に、イスラエル情報省が治安部門に配布した、ガザ地区住民のシナイ半島への強制永久移住に関するリーク文書を報じた、イスラエルの市民メディアの昨年10月の記事を紹介! ガザ住民永久追放のためには、偽のアッラーのメッセージを作成! 米国にはアラブ諸国への圧力をかけさせる! 他方でイスラエルが非難されないため、「人道的措置」だと主張する、詳細な手口のほとんどが実現されている!!
■<IWJ取材報告>国民の健康と生命を守るべき厚労行政の長が、この秋に迫るレプリコンワクチンの接種開始を前に懸念される「シェディング(ワクチン接種により産生されたmRNAやスパイクタンパク質が、接種者の吐息などから非接種者に拡散される現象)」のリスクを完全無視!! mRNAワクチン政策は本当に大丈夫なのか!?~7.5 武見敬三厚生労働大臣定例会見
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