カザフスタンの混乱:誰にとっての好機?
2022年1月14日
Brian Berletic
New Eastern Outlook
カザフスタンは燃料価格の懸念から起きたとされるもので、激しい全国的暴力を経験した。だが、それは実は、政権転覆のため、正当な大衆の懸念を隠れ蓑として利用して、外国が支援した不安定化だったことが間もなく明らかになった。
ロシアに率いられた集団安全保障条約機構(CSTO)軍の派遣が、この中央アジアの国を安定化するのを助け、国際社会が暴力を分析し、金と動機両方を追う時間を与えた。
中央アジアでロシアを「手を広げ過ぎさせ、不安定化させる」アメリカの関心
カザフスタンは地理的に非常に戦略的な場所にある。西はウクライナやトルコにまで広がり、南部ロシアと非常に長い境界を共有し、東は中国新彊との国境がある。ロシアと中国両国を包囲し封じ込める進行中の努力を「結びつける」ためアメリカにとって完ぺきな場所だ。
カザフスタンは、アメリカの政策当局が公然と、ロシアに「手を広げ過ぎさせ、不安定化させる」試みに対する関心を宣言している地域、中央アジアにある。
「ロシアに手を広げ過ぎさせ、不安定化させる:コストを課す選択肢の影響評価」という題の2019年のランド社論文は、ヨーロッパにアメリカの、より高価な炭化水素を買うことを強いて、ロシアのエネルギー輸出を攻撃することから、ロシアの熟練労働者の引き抜き、シリアのテロリスト同様、ウクライナを武装させること、隣接するベラルーシを弱体化させ、「中央アジアでのロシアの影響力を減らす」ことまでに及ぶ、いくつかの選択肢を列挙している。
この報告書は、ロシアと中国がカザフスタンを含め中央アジア諸国に提供する恩恵と競合して勝つことの困難さを指摘している。申し出ることに加えて、輸送回廊の建設や貿易協定や技術支援は、全て、ロシアと中国が容易にアメリカをしのげる分野だ。
だから、カザフスタンや他のいかなる中央アジア国家でも「ロシアに手を広げ過ぎさせ、不安定化させる」ため唯一残る選択は政治的破壊活動とテロになる。アメリカが中東で、シリアをワシントンとその同盟諸国が支援する武装過激派戦士から守るためロシア軍に大いに投資を強いたのと同様、中央アジアでの似たような政治的破壊活動と武装暴力作戦が、ロシアと他のCSTO諸国にカザフスタンへの軍隊派遣を促したのだ。
ロシア当局者によれば派兵は一時的だが、これは特にアメリカが資金供与する政治的扇動に携わるネットワークを含め騒乱と暴力の根源が即座に対処されるかどうか次第だ。
カザフスタンにおけるアメリカの干渉
カザフスタンにおけるアメリカ干渉の証拠は、アメリカ政府の全米民主主義基金(NED)自身の公式ホームページを見て、2020年のプログラム・リストと、カザフスタンで資金供給している組織をチェックするだけで簡単に発見できる。
それにはアメリカが資金供給する放送局「Vlast」「北カザフスタン・リーガル・メディアセンター」「Uralskaya Nedelya」「カザフスタン青年情報サービス」やKazakhstan International Bureau of Human Rightsのように「人権擁護」団体になりすますフロント組織がある。
同様に、Ar/Rukh/Khakや「Oyan Qazaqstan」(つまり「目を覚ませ、カザフスタン)を含め抗議行動を計画するアメリカ政府に資金供給されたフロント組織がある。後者は一部、“Democracies and Parties”の経歴によれば、いわゆる「Legal Policy Research Center法政策研究センター」(LPRC)を設立したディマシ・アルジャーノフに率いられている。LPRCのアーカイブ・ウェブサイトは「パートナー」としてアメリカ国務省、NED、イギリス政府、解放社会と欧州連合を列記している。
これら組織は、あらゆる欧米メディアが「独立」メディア、人権組織や活動家集団として描写するが、実際は全てワシントンDCに資金供給され、指揮されている。彼らの共同抵抗運動が、最近の事件となった抗議行動を含め、カザフスタンじゅうで抗議行動を繰り広げているのに、彼らへのアメリカ政府資金は何年もの間、故意に、終始メディア報道から削除されてきた。
彼らの「要求」は終始、アメリカの対外政策目標と連携している。ヒューマンライツ・ウォッチ(HRW)が2019年、彼らのウェブサイトに掲載した「大規模逮捕が、カザフスタンでの権利改革に疑いを投じた」という題名の記事が、非合法化された「カザフスタンの民主的選択」が率いた抗議の反中国的性質を指摘している。HRWはEurasianetの「カザフスタン:反中国感情が新たな集会を引き起こす」という題名の記事にリンクしている。
9月2日に撮影されたジャナオゼン大集会映像は、中国工場の建設に反対する激烈な演説をするデモ参加者を映しているがしている。
「仕事はいらない。工場はいらない。彼らに入らせるな」と抵抗運動がインターネットにアップロードした映像で、一人の抗議行動参加者が言った。
もう一人の話者は何十万人ものイスラム教徒が駆り集められ、再教育キャンプでイデオロギー再教育を強制される中国新彊地域でのカザフ人とウイグル族の冷遇に言及した。
カザフスタンと1,783キロの国境を共有し、北京の圧倒的な経済的影響力と人口の多さなどに由来する、多くの源から生じる中国に対する不安がある。新彊からくる恐怖物語がこのような疑いを増大させるばかりだ。
HRWやEurasianetは、決してカザフスタンとその国民の役には立たず、単に中国を包囲し、隔離し、封じ込めるワシントンの外国政策の最終目標を満たすだけの外国人嫌いの暴徒連中の非合理的な要求を記述し(そして擁護しようと試み)ている。
Eurasianetが、オープン・ソサエティーのような類似組織同様、NEDを通してアメリカ政府からも資金供給されていることは指摘すべきだ。中央アジアで進展している出来事に関する世界認識を、ワシントンがどれほど深く直接支配しているかの例示だ。
ワシントン好みの傀儡政権
アメリカが支援する全ての政権転覆活動と同様、ワシントン、ウォール街、ロンドンとブリュッセルが好む、しばしば海外在住の傀儡を、権力の座につけるのを待っている、お好みの傀儡政権が、抗議行動参加者を励ましながら、通常待機している。
カザフスタンの場合、お好みの傀儡政権は、現在その指導者、ムフタール・アブリャゾフがフランスのパリに亡命している「カザフスタンの民主的選択」党だ。
「「革命」でカザフスタン体制、終焉に近付くと反体制指導者」という記事でAFPはこう主張している。
ソ連崩壊以来、カザフスタンを支配した政権は、民衆が初めて彼らの怒りを表現するため統一した大衆革命で、終わりに近付いているとフランスを本拠とする野党指導者が木曜日に語った。
元エネルギー大臣で銀行会長のムフタール・アブリャゾフは故国では広範な罪状で手配中だが、AFPとのインタビューで、ロシアに率いられた軍事介入を「占領」と描写し、カザフ人に外国勢力に立ち向かうよう促した。
AFPは、こうも書いている。
AFPに、エマニュエル・マクロン大統領と会いたいと言ったアブリャゾフは、カザフスタンが殺人と横領のため不在のまま裁き、判決を下した大いに論争の的の人物だ。
彼はロシアでも手配中で、2016年フランスの最高当局が、その要請は政治的目的が同期だと裁定し、ロシアへの彼の身柄引き渡しを阻止する前、フランス刑務所で過ごしていた。フランスで難民認定を受けて、彼は今パリに住んでいる。
欧米に亡命して保護されて暮らしている犯罪者と逃亡者は、世界中の標的に定められた国々で、権力を掌握しようと試みるアメリカが資金援助する傀儡政権にとって、珍しい選択ではない。彼らが権力を掌握する前後、彼らの疑わしい法律上の地位と、ワシントンの支持に対する深い依存は、権力の座についた後の、彼らの服従を保証する。
タイのタクシン・シナワトラ、カンボジアのケム・ソカー、サム・ランシー、ミャンマーのアウン・サン・スー・チーは全員、彼らの故国で刑事訴訟と有罪判決に直面し、様々な時点で、アメリカやヨーロッパ同盟諸国に匿われた亡命政府を作ろうと試みた。
機会の窓、だが誰にとって?
カザフスタンへのCSTO軍派遣に対するワシントン非難や、紛争の比較的迅速な終結は、同様なアメリカが支援する破壊活動の標的に定められた他の国で、制御ができなくなり、時には、数カ月、何年にもわたる危機になっていたはずのものを遮るCSTOの成功を意味するかもしれない。
疑問は残っている。これはCSTO、とりわけカザフスタンにとって長期的成功になるのだろうか?あるいはウクライナやシリアを不安定化し続けながら、ロシアの東の同盟国、中国を傷つけ、地域中で、ロシア軍と彼らの同盟諸国に過度の負担をかけることを強いて、アメリカは他で火をつけるのだろうか?
もし、これがCSTOにとって成功なら、おそらく、それはアメリカが支援する破壊活動に対し、世界の他の地域が似たような団結政策を採用する先例になる。カザフスタンでNEDに資金供給されたと想定される「非政府組織」(NGO)とされるものを通したアメリカの関与は、これらネットワークの脅威と、彼らが存在するどこからも、彼らを立ち退かせる必要に対する世界的認識を高めるかもしれない。
これら質問に答えることができるのは時間だけで、その間、カザフスタン自身だけでなく、アメリカが2011年に組織した「アラブの春」中央アジア版や、最近では、2019年に始まった「ミルクお茶連合」で東南アジアで生じている進行中の対立や、次に標的に定めようとするかもしれない他の地域に警戒しなければならない。
Brian Berleticは、バンコクを本拠とする地政学研究者、著者。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2022/01/14/kazakhstan-chaos-an-opportunity-but-for-who/
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意味不明。
「ステイホームなんて必要ない」 人流抑制より人数制限
日刊ゲンダイ
そもそもの発端から間違っていて、今も支離滅裂な方針しか出せない忖度御用分科会。方針説明がでたらめなのだから、解説も、しどろもどろ。惨敗した日本軍の繰り返し。
最近、下斗米伸夫教授の著書を三冊拝読。
『宗教・地政学から読むロシア 「第三のローマ」をめざすプーチン』
『新危機の20年―プーチン政治史』
『ソ連を崩壊させた男、エリツィン』
<本日のタイムリー再配信>本日午後8時から、2015年収録「『国家として、メルトダウンしかかっている』混乱が続くウクライナ、プーチン大統領の次なる戦略とは~岩上安身によるインタビュー 第536回 ゲスト 法政大学教授(※現在は名誉教授)・下斗米伸夫氏」を公共性に鑑み、全編フルオープンで再配信します!
視聴URL: https://www.youtube.com/user/IWJMovie/featured2015年5月に収録した、岩上安身による下斗米伸夫氏インタビューを再配信します。これまでIWJが報じてきたウクライナ関連の記事は以下のURLから御覧いただけます。
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/ukraine
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