急速に変化する地域における役割を定義すべく模索するインド
2021年9月29日
ジェームズ・オニール
New Eastern Outlook
いわゆるクアッド諸国、アメリカ、オーストラリア、インドと日本は、アメリカで会議を開催したばかりだ。会議後どちらかと言うと穏やかな声明が、四か国により発表された。そこには驚くことはなかった。驚きで、謎のままなのは、考案者アメリカの意図が反中国連合建設であることが依然変わりないクアッドにおけるインドの存在だ。だが、クアッドのこの要素は、新た組織、アメリカ、イギリスとオーストラリアの新トリオ諸国の発表で、どちらかと言えば影が薄まったことに気が付かなければならない。
彼らの意図は明白に反中国で、それは誰にも驚きではない。そのタイミングと、フランス潜水艦12隻の900億ドルのオーストラリア商談を8隻のアメリカ製潜水艦に置き換えるという焦点が、フランスの騒ぎと憤慨を引き起こした。彼らはアメリカとオーストラリア両国から大使を召還したが、後者は近いうちに置き換えられることはありそうにない。
このクアッドへのインド参加は謎だ。インドは長い間ロシアと友好関係を享受しており、同じ供給源からの既存機種を増すため、まさに更に多くのロシア戦闘機を購入する新契約を完了したばかりだ。
インド(パキスタンとともに)は上海協力機構のメンバーでもある。彼らは、まさに、この集団創立20周年記念日を祝うためタジキスタンのドゥシャンベで主要会議を開催したところだ。その同じグループは最近、アメリカとの厳しい対立状態にあるイラン・イスラム共和国を正式メンバーとして歓迎した。アメリカのジョー・バイデン大統領は、2015年の核合意からのドナルド・トランプの撤退を批判しているにもかかわらず、このグループへの再加入については、何もしておらず、イランに制裁を課すトランプ政策を継続している。またしても、これはイランと外交関係を維持したインドが異なる点だ。二国はヨーロッパとの鉄道接続も調整している。インドのモディ首相は、イランに対するアメリカ制裁に引き込まれるのを拒否した。
インドが中国とは長年続く国境紛争があるのは事実だが、それはインドがSCOに加入するのを阻止しなかった。中国-インド関係が温かいと表現するのは正しくなかろうが、両国は国境紛争を安定化させるのに成功し、数年前、双方に犠牲者をもたらした撃ち合いは過去の話だ。
インドはSCO加盟国の拡大に対しても積極的態度を示している。SCOは、中央アジアの4つの「スタン」、アフガニスタンとベラルーシとモンゴルという3つのオブザーバー国と最も人口ちゅう密な国がトルコである6つの「対話パートナー」を含め、現在加盟国は8カ国だ。正規加盟諸国の総人口は世界人口のほぼ40%を占める。
エジプトやサウジアラビアを含め更に加盟国を拡大する話がある。インドは全てのオブザーバー国、対話パートナーや他のメンバー候補諸国と良い関係を享受している。それが明白に反中国方針で、他の加盟国やメンバー候補のいずれとも良い関係を享受していないクアッドに加わっているのは、そのため、なおさら当惑させられる。
最近SCO会議がタジキスタンのドゥシャンベで開催された。会議に出席した指導者たちは、包括的声明を採用したが、その中でアフガニスタンにも対処していた。彼らは「テロや戦争や麻薬のない、独立した、中立の、団結した、民主的な、平和的国家」としてのアフガニスタンの登場に対する支持を再確認した。
SCO会議は、世界で最も人口ちゅう密な国の二国が参加している益々重要な国際機関ながら、欧米メディアでは、ほとんど報じられない。混沌とした状態でアフガニスタンから撤退することに対し、パキスタン、中国、イランとロシアはアメリカの説明責任を求めた。占領中、アメリカは、合計20億ドル以上費やしたが、消費の成果は極めて僅かしかない。アメリカ撤退後、経済は壊滅状態なままで、深刻な人道的危機に直面している。
会議の全参加国が、テロ、分離主義と過激主義の「3つの勢力」と戦う誓約を表明した。SCOは会議後、加盟国の相互運用性を増すため合同軍事演習を実施した。安全保障問題に関して、インドは北西境界での交戦状態に対する懸念を高めた。アフガニスタンがテロリストの避難所にならないというのが、全SCOメンバーの共通関心事だ。
当然、アフガニスタンはドゥシャンベの会議で主要な関心の話題だった。アメリカ撤退後、この地域を全くの混乱が襲う重大な危険がある。救出に来る用意を、中国が、どれほど整えているか見るのは興味深い。
インドは、アフガニスタンのあり得る未来の進展についての懸念を明確にした。インドは公然と新政府の「排他的」性質を問題として取り上げ、SCO全加盟国に「アフガニスタンの新政治体制の正当性判断は、慎重に、集合的に考える」よう公式に促した。
インドは、アフガニスタンにおけるパキスタンの強い影響力に十分気付いている。アフガニスタンにおけるパキスタンの正確な将来の役割は、まだ分からない。この地域の経済を促進する上で、パキスタンの役割は、中国やインド、ロシアやイランを含め、他の利害関係者とともに、非常に重要だ。
インドの近隣諸国や、インドが重要な役割を演じているSCOのような組織の進展を見ると、クアッド参加の根拠を理解するのはなおさら困難だ。
中国唯一の領土問題は南シナ海にあり、インドからは物理的に遠い。インドは、この特定の論争に関与するのを渋ってきた。台湾に関しては、インドはそれを中国の一部と見なしており、台湾問題に関するアメリカの姿勢には、わずか、あるいは全く関心がない。
インドは自身の国際水路を、中国に脅かされておらず、インド洋の「支配」を主張するアメリカが率いる、いかなる海軍演習に参加するのは、その見地から無意味な訓練だ。インドの最大利益は、明らかに世界最大の経済的枠組みSCOの一部であることで、クアッドに入るのは無意味で、究極的には、自滅的な動きのように私には思われる。
ジェームズ・オニールは、オーストラリアを本拠とする元法廷弁護士で地政学専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
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とんでもない自画自賛。事実は全く逆。「子供や若者、国民が安心と希望を持てる未来のために、道筋を示すことができた」
デモクラシータイムスの今回の田岡氏解説、この記事と絶妙なタイミング?
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