ニューデリーに「言い寄り」続けるワシントン
2022年4月28日
ウラジーミル・テレホフ
New Eastern Outlook
「大世界ゲーム」の主役という限られた役割へのインド参加は、今日この国の重要な話題の一つだ。同時に、世界的「賭博台」におけるニューデリーの立場は、二大主役たるアメリカと中国にとって決定的な重要性を持っている。
上記の問題解決は、インド次第で、インドは、何が良く、何が良くないかについて、自身の理解に頼っているのも実に明らかなように見える。
だが、この永遠の二分法で、何が「最良の」解決かをニューデリーに「推薦」しても良いではないか? 実際、ワシントンは過去20年間、このために一生懸命働いてきたのだ。つまり中国が、21世紀の間、アメリカの主要な地政学競合相手になる可能性が、厳しい現実に変わり始めた瞬間以来。この地政学的変化への対応は、むしろ従来型だ。アメリカはこの問題の原因の周囲に、敵対的連合を作りあげようとしているのだ。この連合で、なぜインドが、ほぼ主役を割り当てられているのかは明白に見える。
まさに中国共産党が内戦で勝利した同時期、1940年代後期に、インドが独立した直後、二国間の緊張が出現したので、二つのアジア大国間関係の複雑な性質も同時に考慮に入れられている。
過去20年間、全てのアメリカ政権は、例外なく、インドに「言い寄る」過程に関与した。それは2001年にニューデリーへの「歴史的」訪問をしたビル・クリントン大統領時代に始まった。この訪問は冷戦期間後半を支配していた両国関係の(慎重に言って)警戒心の期間を終わらせた。
クリントン訪問以来発展したアメリカ・インド関係の肯定的な傾向は、現在のアメリカ政権にも積極的に支持されている。最近の証拠は、4月11日に、ワシントンで二国間交渉が、すなわち両国の外務大臣と防衛大臣が参加する、いわゆる「2+2」形式で開催された事実だ。ちなみに、これは二国間関係で非常に重要な、この形式で行われた四度目の交渉だった。
この最近の交渉直前、アメリカのジョー・バイデン大統領とインドのナレンドラ・モディ首相はビデオ会議をした。それはウクライナ危機に関連して、ワシントンが行った反ロシア行動への参加をインドが拒否した後に行われた。アメリカは特に、インドが反ロシア政治言説への参加だけでなく、ロシア連邦との関係で「自ら課す損害」と呼ばれるものに参加するのをいやがることに苛立っていた。上記手法の、いずれも、アメリカに対して、他の「自由世界」の国々が自虐的に実行している。そして彼らは完全に頭がおかしくなったように見える。
これは特に深刻な世界的紛争で、独立以来、インドは(ある程度まで、比較的)この国にとって典型的な中立の位置に固執し続けていることを意味する。それでも、何度もNEOで論じた多くの理由から、近年、インドの外交政策はアメリカに傾斜していた。
この傾向は、アメリカとインド間2+2会談の後、採択された共同声明の内容(非常に包括的)によって実に明示的に例証されている。これら文書では、それぞれの言葉が重要で、どんな「要約」も、必然的にインド・アメリカ間関係の状態についても、インド・太平洋地域全体で起きている過程に関しても、解説者の(主観的)意見の影響を受けるだろう。この共同声明内容に興味を持っておられる方々は、この書類についてご自身の考えを形成されるのが良いだろう。この目的で、著者は、声明を読まれるようお勧めする。
ここでは、書類にないものにだけ注目したい。特に目立つのは、今日ワシントンにとって極めて重要な「ロシアのウクライナ侵略」に関する、いかなる直接言及もないことだ。だが、もし(特に)ご希望なら、多少のヒントが、前置きに見られ、そこで両国が共有する国際的価値観として「主権と領土保全の尊重」の要素が言及されている。だが、これら価値観が特にウクライナに関連するものか否かは明確ではない。
この関係で、ロシアも明らかに現在構築されている反中国連合の潜在的参加者と見なされていることに留意願いたい。「上記連合の設計者」が、これまで八年間、何を望んでいるかを確実に「より良く理解」するには、ロシアにとって「決定的問題」であるウクライナ領域の問題を、彼らが、とりわけ熱心に推進していた事実がある。同時に、どうやら、キエフ傀儡は、グローバル政治における自身の重要性を、特に、実際自分たちが本当にこの不幸な国を支配していると信じていた。
ここで論じた両方の出来事が、インドに「言い寄る」一環としてワシントンが着手していた一連の最近の行動を終わらせた。最も注目に値する、これら行動の一つは、四月初旬、インド生まれのダリープ・シン国家安全保障担当副補佐官によるインド訪問だ。ちなみに、現アメリカ政権では、これまでのどの時期より多く、インド系人物が様々な地位で代理を務めていることは指摘すべきだ。政権で二番目に重要な地位にいるカマラ・ハリスがインド人のハーフであることに言及すれば十分だろう。
シン首相は、記者団に、ロシア石油の購入量を劇的に増やすインド計画を述べ、訪問国に対する恫喝さえためらわなかった。特に、インドに対して中国攻撃が起きた場合、(「アメリカと違い」)ロシアはインドを助けないだろうと述べた。この理由は、先に述べた通り、北京とモスクワ間の、ほぼ連合関係だ。これはニューデリーが、一体誰と友人である「べきか」の「微妙なヒント」だ言われている。
イギリスは、積極的にインドに「言い寄る」過程に関与しているが、これは「スエズ海峡からの東」の地域における存在感に似たロンドンの全体的戦略の重要な要素になっている。この戦略の概念は2021年3月に発表された「競争時代のグローバル英国」という題名の政府書類に基づいている。
この書類で概説された外交政策戦略の有機的要素は、ある程度、旧大英帝国の元「優れもの」における立場を復活させたいイギリスの意志だ。この点、重要な段階が2021年1月に計画されたボリス・ジョンソン首相のインド訪問であり得たはずだ。しかしながら、この訪問は延期され、同年五月に、両国首脳のテレビ会議が行われた。
とは言え、国家首脳のオフライン交流も重要と見なされており、ジョンソンのインド訪問は依然今年4月20日に予定されていた。彼の到着直前、元宗主国の首相は、ウクライナ危機を、インドのナレンドラ・モディとの来る交渉の中心におくと予想されていた。
ニューデリーに「言い寄る」過程が「余り行き過ぎない」ことに主に関心を持っている中国指導部が、これが起きるのを阻止しようとしていることは指摘すべきだ。最近、彼らはインドとの関係で、問題の深刻さを減らすよう努力していた。この点、最近の中国王毅外務大臣のニューデリー訪問は注目に値する出来事だった。
上記の全てが、政治問題がエスカレートする現代世界で、インドの立場は(少なくとも、ある程度)中立のままでいる、もう一つの証明だ。しかも、これは、この立場から、この極めて重要な国をはずそうとする努力の増大にもかかわらずだ。
ウラジーミル・テレホフは、アジア太平洋地域問題専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2022/04/28/washington-keeps-courting-new-delhi/
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共和党議員が巨大ハイテク企業分割案。聴衆はBrake them up!と唱和。
The Jimmy Dore Show
バイデン発言からすると、世界平和の為には宗主国崩壊が必要ということか?
「バイデン氏が『ジャベリン』工場を視察! 戦争は『民主主義と中国など専制主義との戦線の一つにすぎない』とバイデン氏が指摘とAFPが報じる」
<インタビュー告知>本日夜6時半より、岩上安身によるシグマキャピタル株式会社・チーフエコノミスト田代秀敏氏インタビュー「米国の代理戦争が引き起こす食糧・エネルギー不足により『狂乱物価』の大波が日本を襲う!」を冒頭オープンでお送りします!
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