アメリカ政府のために自ら墓穴を掘ったイギリス
Finian Cunningham
2020年7月15日
スプートニク
方針を劇的に逆転させ、イギリス政府はインターネット・インフラの近代化で、中国の巨大通信企業ファーウェイとの提携をやめた。トランプ・ホワイトハウスは歓喜でどよめいている。
マイク・ポンペオ国務長官は、ロンドンの決定は「自由世界の価値観を守る」と歓迎した。一体どういう価値観だろう? いじめ、恫喝、従属、帝国構築?
5G無線網開発で、ファーウェイと提携するという以前の計画を放棄させるため、トランプ政権は、イギリスに対する圧力を強化していた。アメリカの制裁と、中国の技術を国家安全保障に対する脅迫として悪しざまに非難するマスコミ・キャンペーンが勝利を収めたようだ。
ボリス・ジョンソン政府は、ファーウェイと提携するという一月の決定をくつがえしたのだ。今や、イギリスの通信事業各社は、ファーウェイ技術を使うのをやめ、七年内に、既存の5G装置を取り払うよう命じられたのだ。
イギリス政府は、この逆転が、経済開発のために不可欠と見なされている通信サービス近代化を遅らせることを認めており、最終的な置き換えのため最高20億ポンド(25億ドル)の莫大な経費も増える。納税者と消費者が費用を負担させられるのは確実だ。
大いに喧伝されてきたイギリス・アメリカの「特別な関係」は、もはやこれまでだ。それは確かに特別だ。アメリカ政府は采配を振るい、イギリスは自ら墓穴を掘るのだ。
この大混乱丸ごと「国家安全保障上の懸念」とされるものとは全く無関係で、もっぱら、商売と戦略上の優位のための、ワシントンによる無理強いなのは明白だ。
世界最大の通信機器メーカー、ファーウェイは、世界中でアメリカの技術に取って代わっている。ワシントンは、アメリカ企業に競合上の優位を与えるため、この企業を要注意企業リストに載せようと努力している。トランプ政権は、証拠も無しに、「中国共産党」に世界監視用の裏口を提供していると言ってファーウェイを非難している。
内部告発者エドワード・スノーデンが明らかにしたように、アメリカ巨大ハイテク企業がアメリカに本拠を置く国家安全保障局NSAの実際のグローバル・スパイ行為を可能にしたのを考えれば、アメリカがそういう言いぐさをするには途方もない図々しさが必要だ。
技術と貿易を巡る戦いは、ワシントンが、グローバルパワーとされるものを維持するために極めて重要と見なす、より大きな戦略上の争いの一部に過ぎない。アメリカ資本主義と権力は、世界をゼロサム競争と見なしているのだ。アメリカ権力が全ての中で最有力組織として最終勝者となれるよう、競争相手と見なされた全員、打ち負かすか、支配しなければならないのだ。
そのため、ワシントンは必ずや「我々 対 やつら」、あるいは、いわゆる「同盟諸国 対 敵」という両極に分かれる冷戦用語で世界を描かなくてはならない。
中国とロシアの外交官が繰り返し指摘しているように、ワシントンは「封じ込め」と「大国のライバル関係」という冷戦イデオロギーを捨てることができないように思える。アメリカ資本主義にとって、互恵関係や協力という考えは、ひたすら受け入れ難いものに過ぎない。
通信産業を巡る中国との戦いは、北京に対する、アメリカの、より広範な多くの戦略的対立戦線の一つに過ぎない。
ワシントンは、プロパガンダや制裁やごり押しなどの過酷な介入で、競合相手を壊滅させる必要があるのだ。なぜなら、より大きな構図は、ワシントンの政治的、経済的、軍事的絶対的命令を受け入れるよう、他の国々を従属させることだから。
中国とロシアは、ワシントンが切望し、指定した従属的役割に従順ではない。それ故の冷戦復活、実際、冷戦強化なのだ。究極的に、可能性として、戦争はその終端だ。
典型的ゼロサム・モードで、ワシントンは、ヨーロッパ同盟国とされる国々に、中国通信機器と中国との貿易を避けるよう要求している。ノルトストリーム2ガスパイプラインに対するアメリカのいじめが実証している通り、ロシアとの貿易にも適用される。
イギリスが、ファーウェイに対する「決定」(すなわちワシントンの決定)を発表する予定の時に、トランプの国家安全保障問題担当補佐官ロバート・オブライエンが、他のヨーロッパ諸国政府にも、5G開発のために中国企業と組む計画を放棄するよう圧力をかけていたのは偶然の一致ではない。
他のEUメンバーの中で、ドイツ、フランス、スペインとスウェーデンは、ファーウェイパートナーシップ計画を続けているように思われる。彼らは、これまでのところ、ワシントンの国家安全保障に対する不安とされるものを拒絶している。
イギリスと、アメリカ率いる他のファイブ・アイズ諸国、オーストラリアとニュージーランドとカナダはそうではない。彼らは、予想通り、「国家安全保障」プロパガンダと反中国偏見を、嬉々として飲み込んだように思われる。
イギリスは、ワシントンに実に従属的で、ロンドン政府は、アメリカ政府のご機嫌をとるため、自身の経済や国民の幸福を損なうのをいとわないように思われる。
「自由世界」? そう、臣下になる自由だ。
Finian Cunninghamは、国際問題について多く書いており、記事は複数言語で刊行されている。彼は農芸化学修士で、ジャーナリズムに進むまで、イギリス、ケンブリッジの英国王立化学協会の科学編集者として勤務した。彼は音楽家で作詞作曲家でもある。20年近く、ミラーやアイリッシュ・タイムズやインデペンデント等の大手マスコミ企業で、編集者、著者として働いた。ジャーナリズムにおける妥協しない誠実さに対するセレナ・シム賞受賞者(2019)。
記事で表現される見解や意見は、必ずしもSputnikのものを反映しない。
記事原文のurl:https://sputniknews.com/columnists/202007151079891859-uk-shoots-foot-for-uncle-sam/
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