アメリカ帝国主義の本当の顔を見せた最近のトランプ中東策略
2019年10月30日
ジェームズ・オニール
New Eastern Outlook
2019年10月最後の週、トランプ大統領が発表したシリアからの米軍撤退を欧米新聞はたっぷり報じた。彼の主張は、彼自身の将官に支持されたのでなく、実際ひどく弱められ、現地における実際の出来事で否定されたことをメディアはほとんど注目しなかった。
トランプのエセ発表を巡るあらゆるメディア誇大宣伝の中には、下記に述べる理由から、発表され、即座に弱められたアメリカ計画を巡り完全に欠如している一つの不可欠な要素があった。その要素は、一連のアメリカやオーストラリア指導者が目につく例であると欧米政治家による宣言で、しばしば触れ、彼らが喜んで「ルールに基づく国際秩序」と呼ぶものの役割だ。
欧米指導者が引用を繰り返し(そして無視)しているにもかかわらず、ここで問題となっている主体は拍子抜けするほど単純だ。国際法は、他国に対する戦争を行う国家の権利に言及している。二つの状態しか国際法で認められていない。実際、あるいは差し迫った軍事攻撃の被害者であれば、国は自己防衛行動ができるのだ。
あるいは、そのような行動が国連安全保障理事会によって承認された場合。
アメリカとその様々な同盟国による軍事行動に関して、彼らはイラクあるいはシリアによる明白な実際あるいは差し迫った軍事攻撃の標的ではなかった。同様に明らかなのは、アメリカや同盟国のいずれの軍事行動も国際連合安全保障理事会決議は認可していなかったことだ。アメリカとイギリス(もう一つの、より目立たない犯罪者)いずれも彼らのそのような動きが中国とロシアの拒否権に会うのを避けられないのを知っていて、国際連合安全保障理事会承認を求めなかったのだ。
彼らがともあれ先に進んだことこそ、「ルールに基づく国際秩序」に対する欧米の本当の誓約に関するトラック1台分の欧米指導者演説より多くを物語る目ざましい事実だ。
イラクとシリアの欧米侵略は最近の現象ではない。イラクの場合、国境のイラク石油資源のクウェートによる窃盗とされるものに対し、隣国クウェートとの戦争をアメリカが支持してくれると信じるよう仕向けられたことが、今きちんと文書化されている。
クウェートに対するサダム・フセインの軍事行動はアメリカに率いられた大規模軍事反撃に出くわした。イラクは、その過程で衝撃的な軍事損失をこうむり、撤退してイラクに戻るよう強いられた後、彼らはそれから10年、経済的、政治的制裁を受けた。
ジョージ・W・ブッシュ下のアメリカが、10年後、2003年にイラク侵略を決めた時、イラク軍は10年の制裁によって大いに弱められていた。当面の目的にとって重要なことは、2003年侵略が基本的な嘘に基づいていたことだ。イラクが「大量虐殺兵器」を所有しているということだ。
オーストラリアのようなアメリカ同盟国の支持を得るため、この正当化が利用されたのを我々は知っている。それが嘘だったという事実は一度も真面目に議論されたことがなく、16年以上たった今、アメリカ部隊(と彼らの同盟国)が依然イラクを占領し、イラク政府の権利と願望をほとんど完全に無視して行動している。シリアの中を行ったり来たりする米軍の最近の動きは、こうしたこと単純な実証に過ぎない。
その特色が欧米による国際法の完全な無視だった2003年の大失敗から、欧米は何か学んでもよかろうと期待したくもなる。
それどころか同じ嘘が、今回は国際的に認められた合法的なシリア統治者に対し、アメリカとオーストラリアのような同盟国によって持ち出されたのだ。欧米メディアは、微妙とは言えない侮辱で「シリア政権」と呼んでいる。今回は、サダム・フセインの大量虐殺兵器とされたものは、「自国民を殺している」というシリアのアサド大統領について繰り返される虚偽の主張に置き換えられている。
イラクと同様、アメリカとその同盟国軍隊は、シリア領を侵略し、軍事基地を設置し、国際的に認められた合法シリア独立政府の暴力的征服を狙う作戦を行っているのだ。
2015年のロシア軍事介入とイランとヒズボラからの進行中の強い軍事支援がなければ成功した可能性が高い。彼らの介入は軍事情勢を根本的に変え、4年後の現在、シリア政府は今にも自身の領土の支配を取り戻そうとしている。
そこで、アメリカが「ISISを打ち破り」、兵隊を撤退させるというトランプによる前述の主張に立ち返ることになる。アメリカは「ISISを打ち破っていない」のが事実だ。アメリカは、彼らや複数の他のテロ集団を、シリア軍や彼らの同盟国と戦い、シリア石油資源の組織的窃盗に従事する同盟者として使うのを一度もやめたことがないのだ。
いわゆるアメリカ撤退の完全に欺瞞的本質は、その正当な所有者シリア政府を含め、全員からシリア油田を確保することをトランプが公然と語り、迅速に暴露された。
スプートニク・ニュース報道によれば、アメリカのマーク・エスパー国防長官はシリア油田は「現在の撤退段階にない」ことを認めた。実際撤退どころか、現在のアメリカ計画は、油田に近いシリアの基地にイラクから追加の戦車と関連する兵隊を配備することだ。おそらく付け加える必要はあるまいが、国際連合やシリア政府の同意は求められも、得られてもいない。
その正当な所有者シリア政府からを含め、シリア油田を確保することに関するトランプの発表は、この地域全体におけるアメリカ政策の主要目的の一つを典型的に無遠慮な形で明らかにした。シリア天然資源の生産、流通、利益の支配だ。アメリカにとって唯一の当惑は、トランプがシリア「民主政治をもたらす」やら、アメリカが当面の敵に歓迎されない意図を押しつける時に使う他のいかなる無意味な表現のお馴染みアメリカ詭弁で、露骨な資源簒奪を隠そうとしないことだ。
シリア資源の盗みと傀儡政権の樹立を別として、欧米メディアがほとんど注目しない、この地域におけるアメリカ政策のもう一つの局面がある。
きわめて貴重なペペ・エスコバールは地域におけるアメリカ政策の肝要な要素に対して、終始注意を喚起しているわずかな著者の一人だ。イランとイラクとシリアは、ずっと以前2012年に、三国全ての主要天然資源、すなわち石油とガスの輸出用ガスパイプライン共同開発覚書に署名している。
イラクとシリアで進行中の戦争と、イランに対するアメリカのハイブリッド戦争と不変の悪魔化が三国全てに明白な恩恵がある、このプロジェクト開発を妨害しているのだ。
これまでの数日の進展で極めて重要なのは、地域における破壊的で明白に虫のいいアメリカ駐留をシリアから排除するという、あいまいな余地を残さないシリアとロシアの強い決心だ。
エスコバールが指摘するように、最近の開発の大きい運命のいたずらの1つがトルコが、おそらく上記の2012年パイプライン計画の締約国となって、アメリカとの関係冷却を更に深めることだ。
そうした場合、トルコが、一帯一路構想と、インドが開発している北南経済回廊における役割を更に強化する意図を示すことになる。地域における急進的な変化が進行中だ。大きな疑問は、アメリカが、これらの変化を認識して、行動を修正するか、それとも、より可能性が高いが、利己的な軍事介入を続け、それら地域構想的を傷つける試みを続けるかどうかだ。筆者の考えでは、少なくとも短期的には、後者が遥かにありそうな選択だ。シリアでの最近の進展が明らかにしているのは、シリアでのアメリカの行動がロシアの我慢の限界に達したという、ロシアによる疑う余地のない警告を与えられたということだ。
ジェームズ・オニールは、オーストラリアを本拠とする法廷弁護士で地政学専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
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植草一秀の『知られざる真実』最新記事のような主張を大本営広報部はしているのだろうか?
スポーツには個人的にほとんど興味ないが、熱中症リスクは無関心ではいられない。
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