今、鉄道に夢中なインドネシアと支援の用意ができている中国BRI
2019年5月9日
Andre Vltchek
New Eastern Outlook
つい最近まで、インドネシア鉄道は全くの大惨事だった。鉄道網はオランダ植民地時代と比較して、1950年には劇的に6,811キロから5,910キロまで、そして最近では、悲惨な3,000kmにまで縮小していた。
わずか数年前は乗客が錆びて老朽化した客車の屋根によじ登り、落下したり、感電したりしてよく亡くなったものだ。列車は実に酷く老朽化していたので、しばしば屋根が壊れ、人々がその過程で床も壊し、最終的に地上のレール間に落下して終わることがあったのだ。
スハルト親欧米独裁時代も、その後も、鉄道網は、汚く、資金不足で、原始的な酷い運命のまま放置されていた。国と堕落した当局者は、主に日本の自動車とスクーターを組み立て、売り、何百万ガロンものガソリンを燃やすことに全力を注いでいた。ある時点で、状況は耐えられなくなった。一部の説では、インドネシアには世界で最も「使われている」道路網がある。その意味は、つまり、特に都市での交通は非常に恐ろしいので、それが「完全な永久交通渋滞」に似始めているのだ。
腐敗した当局者さえ、包括的な鉄道網なしでは、インドネシアは生き延びることができないという事実を認識しなければならなくなった。
ジョコ・ウィドド大統領は、インドネシア鉄道網全てを改善し、実際には、大修正することを誓っている、自国や外国の顧問に耳を傾け始めた。だが彼の政権の前にさえ、インドネシア鉄道の本物の「英雄」が登場していた。現在インドネシアのエネルギー鉱物資源大臣(1963年6月21日、シンガポール生まれ)イグナシウス・ジョナンだ。前インドネシア運輸大臣として、彼は2009年から2014年まで、国有鉄道、PT Kereta Api Indonesia (PT. KAI)を率いたのだ。
彼の統治の間に、乗客数は50%増加し、駅と列車のトイレはきれいになり、都市間の列車が、おおよそ時間通りに走り始めた。
ジャカルタ市は、中古ながら素晴らしい日本の都市周辺の車両を何百輌も購入して、極端に人口過剰な首都を、タンゲランやブカシやデポックのような郊外と、隣接するボゴール市と結び付け、路線と頻度を劇的に増やした。
不潔で崩壊した危険な駅が全面改修され、今エスカレーター、エレベーターと比較的きれいなプラットホーム設備が整っている。
伝説によれば、休むため家に帰る時間がなく、ジョナン大臣は列車の中で眠ることが良くあったと言う。彼は多くを達成したが、遥かに多くがなされなければならない。
ジョナン大臣が別の省に移動した後も、インドネシア鉄道サービス改良の仕事は止まらなかった。
新しい都市間列車が追加され、ビジネスクラス飛行機のフラットベッドに似た車両を含め若干の革新的なぜいたくなサービスが導入された。だが「エコノミークラス」でさえ快適で、空調が効いている。
BEKRAF(インドネシア創造経済庁)の幹部ハリ・スンカリ氏が説明してくれた。
「今日PT KAI(インドネシア鉄道)は前よりずっとサービスが良くなっています。最近私は、自分にとって、とても重要な快適さと時間厳守に対してお金を出しています。」
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線路が最大の問題だ。線路の大部分が旧式の、機関車一輌で牽引する、非電化の狭軌、要するに、1,067ミリ・ゲージだ。
一部は、ひどく古く、しばしば深い峡谷上をぐるりと回る陸橋を使い、一世紀前に作られている。インドネシアには、ほとんど鉄道トンネルがなく、都市間の急行列車さえ、急カーブで山を通過する際には、ほぼ時速10キロの速度を越えずに、常習的に、這うように進まなければならない。それはジャカルタと、インドネシアで3番目に大きい都市バンドン間の最も頻繁な旅客輸送でさえそうなのだ。
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ほぼ2億人の住民とジャカルタ、スラバヤ、バンドンやジョクジャカルタのような大きく人口も数百万と多い都市があるジャワは、やはり人口過剰で、同様に長く、中央が山がちで比較的狭い(東京、大阪、名古屋、京都や他の大都市がある場所)日本の島、本州とどこか形が似ている。日本では新幹線が既にほぼ全ての輸送問題の解決に成功した。
遥かに貧しいインドネシアは新幹線網導入を夢でさえ見ることができなかった。今までは。
都市と都市間での交通渋滞による損失は実にすさまじいものとなり、年間何百億ドルに及ぶと推計され、インドネシア政府は「大きなこと」を考え始めなければならなかった。港、空港、道路、とりわけ鉄道への莫大な投資が、是が非でも必要だった。
研究は準備されていた。日本と中国の企業が都市間高速列車回廊の第一段階建設のために競争し始めた。
日本のシステムも中国のシステムも両方優秀で、弱点より多くの強みを持っている。
日本の新幹線は最も古く、最も安全で(今までに列車が脱線したことがない)、多分世界で、今までで最も快適なものだ。
中国はこれまでのところ、世界で最長、最高速の高速鉄道網を構築することに成功したが、その長さを考えれば、驚異的に、安全で、時間通りだ。
インドネシアとの関係で、日本にはある深刻な問題がある。何年も何十年もの間、自動車とスクーターを生産する日本企業が、石油を大量消費する、極めて旧式の必要最低限の装備モデルの自動車を与えて、インドネシアを組み立てラインとして利用したのだ。実際、日本の自動車企業は、公共輸送機関網を都市に構築せぬよう、インドネシア人官僚に金を渡していたと多くの人が、言っている。
最近、私はインドネシア政府高官で、元国家開発企画庁の国家財政・金融分析部長シドキ・LP・スイトノ氏から話を伺った。
「インドネシアとの関係で言うと、日本はスハルト独裁時代からずっと利益を享受してきました。インドネシアで自動車産業は日本の自動車の売り手寡占のようなものです。我々は何を得られるでしょう? 我々はまだ国産自動車や自身の国産オートバイ製品のような国産自動車産業がありません。我々は非常に大きな「売り手を選択する余地がない専属市場」なのです。2018年、110万台の自動車と650万台のオートバイがインドネシアで売られました。」
彼や他の多くのインドネシア人は実際今まで中国の入札を支援していた。
最終的に中国の入札が落札した。一部は中国プロジェクトが日本より安いからだが、中国が新鉄道を建設する速度に世界の誰もかなわないためだ。
崩壊したインドネシアのインフラは極めて速い全面改修が必要だ。中国企業は、高速鉄道網も、より控え目な(だが同様に重要な)急行や貨物や地方鉄道も提供できるのだ。
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インドネシアの過激な資本主義「経済」モデルの悲劇は、政府がインフラのために大きな予算を持っていないことだ。ジャカルタ地下鉄(いまだに、わずか一路線)や都市間の路線が、列島中至る所で、同時にではなく、一歩一歩着実に建設されているが、長期的にはずっと経済的だろう。
最も論理的な最初の新幹線プロジェクトは、ジャワで2つの最大の都市、お互い約1,000キロに位置するジャカルタとスラバヤを結ぶもののはずだ。東京・大阪間の新幹線がそうしているように、この路線は毎日何百万人も輸送ができる。このような輸送手段は、過度に負担をかけられ、環境上、破壊的な道路網の負担を大いに軽減するだろう。
だが無数の「研究」と討論の後、インドネシア政府は、最初はジャカルタとバンドン間、お互いわずか道路で138キロ(あるいは一世紀前、オランダが建設した遅い既存の鉄道で180キロ)の二都市の間にの短いストレッチを建設することに決めた。現在、列車の旅は3時間30分かかり、単一機関車牽引では、より多く都市間ダイヤを導入するのは不可能だ。道路は交通渋滞のため(全部で6-7時間)運転は、徐行か平均時速20kmに落ちる。
既に中国はそうした新幹線路線を建設し始めた、開業予定は西暦2021年末だ。
バンドン近くの工事現場訪問時、中国人管理者に「全て予定通りです」と言われた。
もし全てうまく行けば、約2年でジャカルタ・バンドン間の旅が40分に短縮されるはずだ。
問題は両都市が交通渋滞によって妨げられていることで、特にバンドンの場合、全く不十分な公共輸送機関しかない。超高速列車は、一方の都市の交通渋滞の悪夢から、もう一つの悪夢へと乗客を輸送することになろう。
もちろん、都市間と、都市レベル両方で、一体どのように問題を解決すべきか中国は完全に知っている。BRIはそのためのものだ。中国の都市は、効率的な生態学的な都市計画の生き証人だ。
だがインドネシア政府はまだ「どこまでも」やる「意欲」はない。インドネシアはまだ、その場しのぎに固執している。遅い進歩で、フィリピンやベトナムのような国にさえ、後れをとっている。
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ジョコウィ政権の功績を言えば、鉄道、港、空港とハイウェーなしで、インドネシアに進歩があり得ないのを知っていることだ。彼の計画は本当に「ナポレオン一世だ」。鉄道の話になると、彼は2030年末までに、群島中いたる所で、12,000キロの線路建設を望んでいる。ジャワ、マドラとバリだけで、6,900キロだ。パプアでさえ500km。カリマンタン(ボルネオ)では、1,400キロ、スマトラとバタムで2,900km、スラウェシで500キロだ。
新路線は重連牽引の予定で、電化で、広軌だ。全てではなく、少なくとも一部は。
だがここには落とし穴がある。中国が深く関与して、鉄道を建設するか、実に多くのインドネシアの砂の城が既に前に消失したように、夢全体が崩壊するかだ。
インドネシアはノウハウを持っていない、スタミナも同じだ。中国は持っている。
1965年にアメリカが計画したクーデター後のインドネシアは、少数の金持ちの、不正な個人の懐を満たし、事実上何も作らず、アジアで最も低開発の国の一つに後戻りし、今までその天然資源を共食いしてきた。
今BRIはこの全てを変えるかもしれない。共産主義で、大いに熱狂的で、よく働く国際主義の中国は、ひざまずいていたアフリカ全体を立ち上がらせている。もしジャカルタの支配者が、中国がそうするのを許せば、インドネシアでも同じことができるだろう。もし欧米の宣伝と、欧米から金をもらうNGOが、国家インフラ改造を丸ごと脱線させるのに成功しなければ。
Andre Vltchekは哲学者、小説家、映画製作者で調査ジャーナリスト。彼は Vltchek’s World in Word and Imagesの創作者で、China and Ecological Civilizationを含め、多くの本を書ている作家。オンライン誌 「New Eastern Outlook」独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2019/05/09/now-indonesia-in-love-with-trains-china-s-bri-ready-to-help/
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東南アジアの首都に行くたびに、タクシーでゆく空港と首都間の所要時間が読めないことと、街頭に立った時の排気ガスのすごさ、スクーター、オートバイの多さに驚いたものだ。バンコク、クアラルンプール、ジャカルタ。運転ができないので、宗主国に行くたびに、車社会の不便さを痛感した。たまに鉄道にのっても、遅かった。そもそも駅にゆくのに、タクシーを待つのが大変だった。
共産主義で、大いに熱狂的で、よく働く国際主義の中国は、ひざまずいていたアフリカ全体を立ち上がらせている。
と筆者はおっしゃる。
翻って、日本。週刊金曜日5月17日号、特集は「公安警察の闇」。共産党が標的にされていることが伺える。党名を変えないから得票が伸びないという主張で「党名を変えれば、捜査対象から、はずされる」証明を読んだことがないのだが。
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