(‘宥められた’レバノン経由の)イスラエルによる残虐な対シリア攻撃
2018年5月1日
Andre Vltchek
ホムスのシリアT-4空軍基地に対するイスラエル空軍によるきわめて残忍な攻撃で:少なくとも14人が死亡した。
4月9日、イスラエルのF-15戦闘機が、これまで何度もしてきたと同様、国際法を完全に無視してレバノン領空を飛行した。
イスラエルとレバノンは法的には戦争状態にあり、最近の行為は、すぐさま、もう一つの破廉恥な挑発と見なすことが可能だ。どうやら、サウジアラビアやイスラエルなどの欧米の同盟国が、どの様な恐怖を地域中で広めると決めようとも、連中の行動は常に罰されることがないようだ。
踏んだり蹴ったりで、欧米マスコミは、イスラエルを非難するどころか、案の定なさけない奴隷根性で、ダマスカス政府に向かってわめき始め、‘特派員’の中には、アサド大統領を“けもの”呼ばわりするものもいる(The Sun、2018年4月9日)。
過去何度か残虐なイスラエル侵略で苦しめられ、イスラエルが通常‘パレスチナ’と呼んでいるレバノンは、今回の領空侵犯に対し、余り大げさに抗議しないと決めた。シリア攻撃に反対するレバノン外務省声明と並んで、レバノンは国連安全保障理事会に訴えると主張する個別のレバノン政治家による声明がいくつかある。とは言え大半の声明はアラビア語のものしかない。人が期待するような断固とした対応は全くない。
レバノンのベイルートを本拠とする、イラク人教育者で、テレビ司会者のゼイナブ・アル-サッファル女史は、この件について、こう語ってくれた。
“こういうことは今回が初めてではありません。イスラエル軍はレバノンの領空や領土や領海を侵害してきました。[イスラエルによる]レバノン領侵害は、何か‘いつものこと’になっています。彼らはシリア領を攻撃するために、レバノン領空を利用していたのですから、今回起きたことは目に余る侵入であり、おとがめなしで済まされるべきではありません。国連は、報告を書いて、数値を記入すること以上の何かをするべき時だと思います。これは極めて深刻な状況です。第三国を攻撃するために、隣国領空利用は、あからさまな犯罪です。”
*
レバノンの抗議は一体なぜ、もっと大きな反響がないのだろうか?
理由はいくつかある。その一: レバノンは最近、‘パリ会議’で、大半が、欧米から110億ドル以上にのぼる融資で構成される大規模契約を‘手に入れた’のだ。
その二: レバノン‘エリート’のうち、かなりの部分が欧米の指図を受けるのに慣れている。欧米に彼らの別荘があり、親類が暮らし、永住権証明書が発行されている。
遥かに大規模な戦争が近づいているのかも知れない。アメリカもヨーロッパも、シリアを直接攻撃する準備ができている可能性が極めて高い。この重要な時期に、レバノン支配者は日和見的に、誰に忠誠を尽くすかを示している。荒廃した中東の人々にではなく、パリ、ロンドンやワシントンに。
だが最初の点、金に戻ろう。ロイターはこう報じている。
融資パッケージは、102億ドルの融資と、8億6000万ドルの助成金で構成されており、フランスの駐レバノン大使、ブルノ・フーシェは、ツイッターにこう書いた…
融資側は、引き換えに、レバノンには、長いこと停滞していた改革を約束して貰いたい。こうした要求を考慮して、サード・ハリーリー首相は、今後五年間で、GDPの率で、5パーセント予算の赤字を削減すると誓った。
記者会見で、マクロン大統領はハリーリー首相に、支援は、レバノンに新規まき直しの機会を与えることを狙ったものだと語り、これは、レバノン当局にレバノンで、改革を実行し、平和を維持するという“未曾有の責任”を負わせるものだとも述べた。
“今後、改革を継続することが重要だ”とマクロンは述べ、“我々は貴国の味方だ”と言った。
フランスのジャン=イヴ・ル・ドリアン外務大臣は会議で述べた。“… レバノンは、構造的そして分野的な、大規模経済改革が必要だ。”
‘構造改革’が重要な単語だ。レバノンの手を更に縛るだろう、この破廉恥な融資は、レバノンの現状満足を確実にするだろう。欧米が、地域で軍事的猛攻撃の新たな波を始める用意が出来ているまさにその時期の、経済的、政治的服従だ。
レバノンには、ほとんど透明性は無いので、融資が、苦しんでいる国民の生活水準を改善するために使用される保証はほとんどない。レバノンにおける腐敗は蔓延しており - 制度化されていて - もはや‘腐敗’とさえ呼ばれないことが多いくらいだ。
社会事業はほとんど存在していない。ここでの対照は実にすさまじい。フェラーリ やランボルギーニや、法外に高価なヨットが、全くの窮乏と、少なくとも定期的ごみ収集のような社会事業の欠如と並んで共存しているのだ。
多くの欧米諸国のいわゆるテロリスト・リストに載っている組織、ヒズボラは、レバノンで唯一、頼れる社会事業の供給源であることが多い。
今や欧米は、益々多くのネオリベラル‘改革’を要求するだろう。社会目的のものは、ほぼ何も建設されるまい。資金は恥知らずのレバノン人‘エリート’や‘指導者連中’の懐に消えるだろう。レバノンの金持ち連中はほとんど税金を支払わないので、融資の利子を支払うよう期待されているのは、貧しい人々だ。
連中の戦利品と引き替えに、多くのレバノン人政治家は、ワシントンやフランス(レバノンの元宗主国)のシリアや地域の他の国々に対するネオリベラルで、益々新植民地主義的な政策を含め、地域に対する欧米の方針に更に従うことを余儀なくさせられる。
*
そして国境の向こうでは、戦争は依然猛威を振るっている。現在、ワシントンとロンドンは‘懲罰行動'を約束している。この小さいながら、強く誇り高い国への侵略、不安定化、そして最後には破壊を正当化するためだけに、明らかに、ねつ造された/でっちあげられたものに対して‘シリアを叱責するため’。
ベイルートとダマスカスの両方で暮らしている、あるシリア知識人が、この記事のために、彼の分析を聞かせてくれた。ただし、レバノンと欧米双方からの跳ね返りが恐ろしいので、匿名にしておくよう要求された。
攻撃は、シリア軍がダマスカス郊外でテロ集団に対する戦闘で勝利している時に、行われており、攻撃は、こうした勝利に対する、遠回しの答えだとも解釈可能だ。T4空軍基地は、シリア国内のISIS残党に対する戦闘に深く関与しているので、これは危険な動きでもある。この攻撃は主権国家に対する容認しがたい侵略で、国際法違反だ。これは、イスラエルが、シリア領で活動している様々なテロリスト集団を直接、間接に支援していることも示している。
*
ところが、欧米の主要マスコミが広めている注釈は、益々、あらゆる論理を無視している。連中は次第に、人種差別主義者、白人至上主義者になりつつあるのだ。そう、実際、今や連中は、過去何世紀ものヨーロッパによる、次に北アメリカによる植民地主義の間、常にそうであったものになっている。
ガーディアン記事をお読み願いたい - “シリアで、イスラエルは無数の攻撃を行った。目新しいのは、ロシアの対応だ”:
“主に、ゴラン高原でのイランが支援するヒズボラ軍や兵器の増強から国境を守るため、イスラエルは、シリア国内への多数の攻撃を行った。イスラエルは、原則として、シリア国内のアルカイダや「イスラム国」陣地は攻撃していない。
これまでの全ての攻撃で、2015年に、バッシャール・アル・アサド政権を守るため軍隊を派兵して以来、シリア領空を支配しているロシアは見て見ぬ振りをしている。シリア内のイスラエル権益は、主として、シリア南西部でのイランが支援する軍隊の駐留を制限することで、ロシアによって守られるという合意があるのだ。イスラエルの心配は、ゴラン高原のシリア側へのアクセスで、ヒズボラが、イスラエル国内を攻撃するのが可能になることだ。”
少なくとも、ガーディアンは、アサド大統領が自国民を毒ガス攻撃しているという欧米のでっち上げを信じている振りはしていない。
だが、記事は明らかに、独立国家に対する、イスラエルによるテロ攻撃を正当化し、論理を見いだそうとしている。
‘可哀想なイスラエル - ‘ゴラン高原のヒズボラ部隊と兵器’を心配しているのだ。
しかし、ゴラン高原は、国際法上、シリアの不可分の一部だ。繰り返そう。あらゆる国際規範上! 国連安全保障理事会国連決議497を含め。1981年の、いわゆる‘六日戦争’中、ゴラン高原は、イスラエルに攻撃され、占領され、無理矢理(しかも無期限のように見える)併合された。
私はゴラン高原を訪れた。5日ほど前、数日間、密かに、そこで仕事をした。私がそこで見たものは、本物の恐怖だ。古代からの村々は完全に破壊され、元々の住民の大半は自分の土地から追放され、イスラエルが雇ったスパイや工作員が、訪問者に手当たり次第近寄り詮索する。至る所、鉄条網と高いコンクリートの壁で守られた裕福なイスラエル農業企業が散在していた。南アフリカ・アパルトヘイト時代のアンゴラかナンビアで仕事をしているような感じだったが、あるいは、おそらく、それより酷い。分断されたコミュニティー、奪われた土地、電線と、遍在する恐怖と抑圧。
ところが現在‘心配し’‘治安’という名目のもと人々を殺害する権利を持っているのはイスラエルなのだ。欧米の主要定期刊行物が明らかに示唆しているのは、まさにこの調子なのだ。
1981年に、イスラエルは、1000キロ平方以上のシリア領を盗み取り、今や犠牲者を情け容赦なく爆撃しているのだ。レバノン領から、自分の‘安全と治安’を確保するため。イスラエル軍によって何度か侵略された国レバノン領から、イスラエルはこれを行っているのだ。
そして、欧米は喝采している。
*
もちろんイスラエルは、同盟国のアメリカ合州国、イギリスとマクロンのフランスから、支援も激励も享受しているので、全くとがめられることなく行動している。
レバノンはバニックになっている。レバノンの‘エリート連中’は、生き延び、欧米を怒らせないようにしている。
シリアは、鉄の神経を持っているように見えることが良くある。
彼らは懸念しているが、彼らの土地を一インチたりとも侵略者に与えまいと固く決意している。
この記事を投稿するわずか数時間前に、ダマスカスの私の友人がこう書いてきた。
“人々は心配し、絶えずニュースを確認しています。兄が皆で一ヶ月、より安全なサフィタに行こうと言います。我々がそうするかどうかわかりませんが、我々は状況をしっかりモニターしています。”
シリア現地の同僚や同志たちは怒っている。大いに怒っている。彼らは欧米が広めているウソを容易に見破れる。
ベテラン記者のヴァネッサ・ビーリーが、シリア政府が自国民に対して化学兵器を使用しているという非難を、はっきり否定している。私は彼女とその分析を完全に信じている。
イスラエルは勇敢なシリアを爆撃しようとしている。アメリカとヨーロッパも、間もなく、本当に間もなく、この記事が印刷に回る前にさえ、攻撃すると決めるかも知れない。
だが今は2018年で、何のおとがめも無しに、欧米が殺害し、強姦することができた、あの暗黒時代ではない。もし今、攻撃が行われれば、反撃があるだろう。完全に正当化され、断固とした強力なものだ。
そうなれば、ちっぽけなレバノンでさえ、立場を決めなければならなくなるだろう。
アンドレ・ヴルチェクは哲学者、作家、映画制作者、調査ジャーナリスト。彼は、Vltchek’s World in Word and Imagesを制作しており、革命的小説『Aurora』や他の本を書いている。オンライン誌“New Eastern Outlook”への独占寄稿。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2018/05/01/israels-murderous-strike-on-syria-via-pacified-lebanon/
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彼の記事、どなたか一流の翻訳者によるものを、マスコミで拝読したいと思いながら、ひどい翻訳をお目にかけている。
マレーシアの選挙結果にはびっくり。多少期待はしていたが。
またしても茶番の参考人招致。ウソのオンパレード。
額面通り受け取る人がいれば、正気とは言えまい。
解放された米国人を載せた飛行機は属国の基地で給油。
そして殺人事件。
対照的に、自衛隊幹部が国会議員を罵倒した話題を大きく扱う大本営広報部はない。扱わないのがお仕事だろう。
加藤周一『羊の歌』余聞 ちくま文庫をふと再読し、「それでもお前は日本人か」の内容が相似していることに驚いている。
「それでもお前は日本人か」同書135ページから、139ページ。一部引用させて頂こう。
昔一九三〇年代の末から四五年まで、日本国では人を罵るのに、「それでもお前は日本人か」と言うことが流行っていた。「それでも」の「それ」は、相手の言葉や行動で、罵る側では「それ」を「日本人」の規格に合わないとみなしたのである。その規格は軍国日本の政府が作ったもので、戦争を行うのに好都合にできていた。
中略
当時東大法学部の学生であった橋川文三とその同級生の一人が、白井─当時海軍軍令部に勤めていた─に食ってかかり、「きみ、それでも日本人か」と言いだした。そのきっかけはわからないが、白井は落ち着いて、「いや、まず人間だよ」と答えたという。そこで自分たちが、「まず日本人だ」という主張と「まず人間だ」という主張が対立して、問答がおよそ次のように続いた。
「まず人間とは何だい。ぼくたち、まず日本人じゃあないか」
「違うねえ、どこの国民でも、まず人間だよ」
「何て非国民!1まず日本人だぞ」
「馬鹿なことをいうなよ。何よりもさきに、人間なんだよ」
というところで、橋川とその友人の二人が殺気だち、「そんな非国民、たたききってやる」と叫ぶ。同席した友人たちが間に入って暴力の行使には到らなかったが、「これはいつまでも記憶に残って消えませんでした」と宗左近氏は書いている。中略
今あらためて宗左近氏の本を読み、初めて知ったこの問答は、四五年以前の日本国において、実に典型的であった。「それでも日本人か」は修辞的質問にすぎず、実は「それならば日本人ではない」というのと同義である。すなわち「非国民」。相手を「非国民」と称ぶのはほとんど常に、「まず日本人」主義者であり、「まず人間」主義者ではなかった。また論争から暴力による威嚇または暴力の行使へ飛躍することが早いのも、前者の特徴で、後者の特徴ではなかった。
中略
「まず日本人」主義者と「まず人間」主義者との多数・少数関係は、四五年八月を境として逆転した─ように見える。しかしほんとうに逆転したのだろうか。もしそのとき日本人が変ったのだとすれば、「それでもお前は日本人か」という科白をこの国で再び聞くことはないだろう。もしその変身が単なる見せかけにすぎなかったとすれば、あの懐しい昔の歌が再び聞こえてくるのも時間の問題だろう。あの懐しい歌!「それでもお前は日本人か」をくり返しながら、軍国日本は多数の外国人を殺し、多数の日本人を犠牲にし、国中を焼土として、崩壊した。その反省から成立したのが日本国憲法である。その憲法は人権を尊重する。人権は「まず人間」に備るので、「まず日本人」に備るのではない。国民の多数が「それでも日本人か」と言う代りに「それでも人間か」と言い出すであろうときに、はじめて、憲法は活かされ、人権は尊重され、この国は平和と民主主義への確かな道を見出すだろう。
スネ夫は、いつでも、ジャイアン様がたより。
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