トランプのシリア‘撤退計画’はアメリカ汚れ仕事の外注化
Finian Cunningham
2018年4月23日
2016年10月24日、シリア、アレッポ県北部アル・ヘルベ村を軍用車両で進むアメリカ軍兵士 © Khalil Ashawi / Reuters
ドナルド・トランプ大統領は、シリアから軍隊を撤退させると語っている。しかし、計画は地域におけるアメリカの軍事的権益を少なくするというものではない。アメリカ帝国主義の汚れ仕事を下請けにだす計画だ。
中東におけるアメリカの戦争を減らすどころではなく - 撤退の動きとされるものは、紛争の減少ではなく、増加を意味する。
海外での介入を終了し、アメリカ軍を国に帰還させるという彼の選挙公約を、トランプがなんらかの形で実行しているという、ありがちな誤解が存在しているように見える。
月曜日のアメリカ公式訪問に先立ち、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、フォックス・ニューズのインタビューで、アメリカ軍のシリア駐留を維持するようトランプに強く促していると語った。マクロン大統領は、アメリカ軍部隊のいかなる撤退も、シリアとイランの“政権”に付け込まれるだろうと警告した。暗に、フランス大統領は、彼の言うならず者諸国に、ロシアを含めている。
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“戦後、我々は新たなシリアを構築しなければならない。それが、アメリカの役割が極めて重要な理由だ”とマクロン大統領は述べた。
だが、トランプは、シリア国内でのアメリカによる関与を止めると言っているわけではない。彼が計画しているのは、戦略的目標追求の上で、労働力と資本の新たな分担だ。
3月末、オハイオ州での支持者集会でいきりたった大統領はこう語った。“間もなく、我々はシリアから撤退する。他の人々に面倒を見てもらおう。”
更に、4月13日、シリアによる化学兵器攻撃とされるものを巡る、アメリカ率いる空爆を発表した際、トランプは再度最終的なアメリカ軍撤退を示唆した。彼はこう述べた。“パートナー諸国に、膨大な資金貢献を含め、自分たちの地域の安全保障に、より大きな責任を負うよう要求した。”
アメリカの政治・軍事支配体制内部や、フランスのマクロン大統領など同盟諸国の懸念は、見当外れだ。トランプはワシントン関与の規模を縮小しようとしているわけではない。彼は軍事的な汚れ仕事を外注しようとしているのだ。
政治的観点から、これはトランプに好都合だ。彼の支持基盤に対して“アメリカ・ファースト”政策を売り込んでいるかのように見える。これは、アメリカが、血なまぐさい紛争から足を洗う好機にもなる。
ところが現実には、ワシントンは、石油豊富な中東で、シリアでの政権転覆、イランとの対決、ロシア封じ込めという全く同じ覇権と不安定化の野望を追求しているのだ。
先週、サウジアラビアのアーデル・アル・ジュベイル外務大臣が、現在駐留しているアメリカ軍分遣隊と置き換わるために“国際的連合”の一環として、サウジアラビア軍をシリアに派兵することに関し、サウジアラビアがトランプ政権幹部と話し合ったことを確認した。サウジアラビア外交官が言っていたのは、湾岸アラブ諸国と、可能性としてエジプトが、シリア向け派遣軍を編成することだ。
民間傭兵企業ブラックウオーター・アメリカ創設者のエリック・プリンスが、湾岸アラブ諸国から、シリアに配備するために同様な部隊を募集するようロビー活動をうけたという報道もある。トランプと仲が良いことで知られているプリンスは、大統領の決断を待っていると語った。彼は以前、イエメンで、フーシ派反政府部隊と戦う傭兵大隊の提供でも、サウジアラビアや首長国に協力している。
サウジアラビア率いるシリアへのアラブ派遣軍という考えは新しいものではない。オバマ政権時代、サウジアラビア支配者が、そのような配備にむけ、ロビー活動をしたが、無駄だった。だが、トランプの場合、彼らにとって協力的な大統領なのかも知れない。
トランプは、主として、シリア北東地域に駐留する、2,000-4,000人の兵士によるアメリカ軍シリア駐留の財政負担にずっと業をにやしてきた。2014年9月以来、アメリカ戦闘機は、攻撃作戦出撃で、シリア上空を飛行している。
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トランプのシリア撤回計画: アラブ占領軍とアラブ人が費用負担する
トランプの計算の主要動機は、他人に支払わせる、経費削減策のように見える。自分が経験したビジネスモデルが、もっぱら、経費を削減するための外注と業務委託である不動産王出身大統領には、いかにもお似合いの動きだ。
シリアでの契約を売り込む上で、エリック・プリンスは、そのような手配では、アメリカ納税者に負担は全くかからないと主張した。これは、サウジアラビアと、首長国と、カタールの支配者が、シリアにおけるアメリカ軍作戦民営化の費用を負担しようと行列していることを示唆している。
恥知らずとは言え、表面的には良い考えのように見える。だが、より実際的には、失敗する運命にあるように見える。軍事的役割を他にまかせても、シリア国内のみならず、地域全体での不安定さと暴力の拡大にしかならないだろうと予想するのは困難ではない。
首長国とカタール部隊とともにシリアに派遣されるサウジアラビア軍は、シリア軍と、その同盟者イランとヒズボラと衝突することになる。湾岸アラブ諸国支配者のワッハーブ派思考では、シリアと、その同盟者シーア派は不倶戴天の敵と見なされている。シリア国内での、これら軍隊の近さは、爆発しやすく、最終的に、サウジアラビアとイランが、以前から予想されていた戦争で直接対決する結果になりかねない。戦争となれば、イスラエルがサウジアラビアに付いて参戦するのは確実だ。
いずれにせよ、サウジアラビアと連中の湾岸仲間にとって、継続中の悲惨なイエメンでの戦争を考えれば、連中がシリアに対して軍隊を動員するなど問題外に見える。
これで、エリック・プリンスと彼の傭兵が、アメリカの正規軍に置き換わるべく派遣され、湾岸アラブ諸国政権がこの作戦の費用を持つのではという疑問が生じる。
そのようなあらゆる派遣の目的は、シリア主権の完全な侵害だ。“治安”と“ISISの復活を防ぐ”という喧伝されている目標とは大違いで、本当の狙いは、アメリカ占領するユーフラテス川周辺地域と、シリア東部諸州の油田を手放さないことだ。
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シリア国内のこの新アメリカ代用軍の正確な構成が何であるにせよ、ウオール・ストリート・ジャーナルは、ブルッキングス研究所シンクタンクの専門家発言を引用している。“軍隊は、アサドやイランのどちらかが、おそらく、ロシアの支援を得て、領土を取り戻そうとした場合、彼らに立ち向かえるほど強力でなければならない。”
これはつまり、シリア内にアメリカ軍部隊を維持しなければならないことを意味している。地上軍は、もはやアメリカ正規軍ではなくなるかも知れないが、アメリカは依然、シリア領土を占領する上で、代理人を効果的にしておくため、戦闘機や軍事顧問で支援しなければならない。
もしワシントンの計画者が、シリア国内の足掛かりを保持し、地域におけるロシアとイランの影響力を封じ込めたいと願っているなら、その目的は、遅かれ早かれ、軍事的対立という結果になる。外国が支援する過激派に対する戦争に勝利しつつあるシリア政府が、アメリカと、その代理人による自国領土の戦後占領を容認するだろうとは考えがたい。
アメリカ人政治評論家ランディー・マーティンは軍隊撤退とされるもののトランプの最新計画は戦術転換にすぎないと見ている。“アラブ諸国軍動員や、民間傭兵は、請負業者の変更、それだけのことです”と本コラムのためのインタビューでマーティンは述べた。
“シリアとロシアとイランによるアルカイダ旅団の敗北を目撃しました。シリアでの政権転覆と、イランとの対立のための長い戦争で、今アメリカは、新たな請負業者に頼ろうとしているのです”と彼は語った。
だから、うわさされているトランプによるシリア内のアメリカ軍分遣隊減少は、平和に向けた動きではない。更なる戦争に向けてギアをいれたのだ。
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本コラムの主張、見解や意見は、もっぱら筆者のものであり、必ずしもRTのそれを代表するものではない。
Finian Cunningham(1963年生まれ)は、国際問題について多く書いており、彼の記事は複数言語で刊行されている。北アイルランド、ベルファスト生まれの農芸化学修士で、新聞ジャーナリズムに進むまで、イギリス、ケンブリッジの英国王立化学協会の科学編集者として勤務した。ミラーや、アイリッシュ・タイムズや、インデペンデント等の大手マスコミ企業で、彼は20年以上、編集者、著者として働いた。現在は、東アフリカを本拠とするフリーランス・ジャーナリストで、RT、スプートニク、Strategic Culture Foundationや、Press TVにコラム記事を書いている。
記事原文のurl:https://www.rt.com/op-ed/424898-us-syria-withdrawal-troops/
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自衛隊の民営化または傭兵化(私企業化)について
日本の自衛隊は軍隊である。中・高校で習った集合の考えでいえば,隊長がいて「命令系統」があり戦車をもてばそれは他衛軍であろうと自衛軍であろう「軍隊」であることに変わりはないからである。すなわち自衛隊は違憲の存在だと思っている。
問題は戦争をしない自衛隊が違憲であるかどうかということである。日本国憲法は戦力の保持を禁止している。しかし故加藤周一は「政府は細い糸をつないで自衛隊を合憲にしている」という主旨のことを発言したことがある。すなわち自衛隊は違憲の存在だと考えていなかったのではないのかと,加藤の研究者を自認する小生は今でも考えている。
ところで現在,ミサイルの時代であるから,陸上自衛隊ごとき戦力は不要だと思っている。役に立たない。とはいえ最近,軍隊が日本国内に存在しても政府の行為によって「国権の発動たる」戦争をしなければ,存在してもいいのかと,傭兵会社の存在を知ってフト思い立ったことがあった。
その思いを強くしたのが昨年訪日した時に或る財界関係者の方から話を伺ったときである。質問がある方はどうぞというので馬鹿にされることを覚悟で,そのお話に関連して自衛隊を「傭兵」にしてみてはと小生は質問(提案)したが,その方は愚見に対して反対されなかったのである。おそらく財界の一部では自衛隊の民営化,私企業化が論じられているのかと妄想をたくましくした。
思えば郵政民営化(私企業化)から始まって市町村の役場窓口事務民営化を通って国際空港の手荷物検査係まで民営化された。大学入試も私企業作成の問題(英語課)を利用することになる。規制を撤廃し,岩盤規制に風穴を開ける民営化政策は加計学園獣医学部今治キャンパス認可から公営水道事業にまで及ぶ。
ならば自衛隊も民営化されても不思議ではない。イラク・シリアで有名になったブラック・ウォーターという傭兵会社もある。日本政府が傭兵会社Aに金を払って傭兵を派遣してもらう。あるいは自国を守ってもらう。
ここで注意を要するのは,民営自衛隊を海外のどこに派兵し,戦闘をするのかどうかは会社の経営判断に拠ることである。日本政府は戦闘行為について判断しないから「国権の発動」をしなくても済む。敵が攻めて来たら日本を守るためにこの傭兵会社の傭兵が迎撃ミサイルを撃ったり,戦車で弾を撃ったりする。
現在,米軍に日本政府はゴルフ場や駐留地維持のために毎年約7、000億円を支払っている。この金を傭兵会社Aに回すことも可能である。武器購入もまた日本政府の仕事ではなく,傭兵会社Aの仕事である。すなわち米軍事産業に払う後年度負担5兆円や,防衛省毎年度防衛予算5兆円を傭兵会社に回すことができる(その結果,次第に防衛省は廃省になる。日報隠しもなくなる)。
随意契約入札で傭兵会社はA~Zまで現れるに違いないが,自衛隊民営化または私企業化の利点は,すでに述べたように,第1に,日本政府による「国権の発動たる」戦争をしなくて済むことである。第2に,傭兵会社は私企業として最大利潤を求めるから,オスプレイのようなガラクタ未亡人製造兵器は買わない。また部品の供給が止められて近いうちに使えなくなるような米製兵器をやたらに買わないだろう。
自衛隊を民営化することの弱点はいくつかある。傭兵会社と日本政府の関係である。栗栖元統合参謀本部長が本に書いているように,自衛隊は日本国民を守らない(経済評論家佐高信氏のご指摘)。Jアラートはムダ。と同様に傭兵会社が日本国民を守らない場合,日本政府は無駄な出費をしたことになる。そこでどの程度の被害(死傷者の数)がでれば政府は傭兵会社に損害賠償を請求できるかということである。
分かり易く申し上げれば,空港での手荷物検査係は公務員ではなくて派遣会社の社員である。一民間人に小生の手荷物を検査され,あるいはトランクの中を開けさせられるのは,苦痛以外の何物でもない。それはそれとして,もし搭乗した飛行機が爆弾等で破壊され墜落した場合,誰が責任を取るのかということである。派遣会社Zに責任がありとされた場合は,保険金支払いの責任が出てくるだろう。しかし200人ないし300人の死亡保険を払う能力は派遣会社にはないだろう。日本政府が補填するのかどうか。
民間傭兵会社と私企業による手荷物検査体制を比較することには難しい面があるが,なんでも民営化,私企業化の時代,日本人全員が考えておく必要がある問題だろう。傭兵会社Zに全て責任ありとされた場合でも日本政府の責任は免れないだろう。そういった議論を詰めなければならないことがもっとあるに違いないが,長文になるのでここら辺で失礼したい。
追記: 「知らぬ存ぜぬ」の,文書改竄の財務省,防衛省,データ捏造の厚生労働省,文科省,外務省そして経産省など省庁も民営化が望ましいだろう。
アメリカ合州国では刑務所も民営化されているので刑務所も民営化されてもいいのかもしれない。特に大阪地検特捜などたくさんの証拠がありながら逮捕しない捜査機関は不要。または私企業化が相応しいと小生は考える。
投稿: 箒川 兵庫助 | 2018年4月25日 (水) 18時39分