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2017年5月 4日 (木)

死に体同然のアメリカ民主主義

2017年5月2日
Paul Craig Roberts

オバマの8年間の“裏切り”に続いて起きているトランプの“裏切り”と呼ばれるものは教訓的だ。民主党大統領が彼を選出した国民を裏切り、更に共和党大統領が同じことをしたというわけだ。これは、大半の人々が気がつかずにいる非常に興味深い問題だ。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はそうではない。ヴァルダイ会議で、プーチン大統領は、欧米民主主義をこう要約した。

欧米では、誰が選ばれようと、その人物を支配層が支配してしまうので、有権者は選挙によって政策を変えることができない。選挙は民主主義の見せかけだけで、投票では、戦争と支配層のための政策を変えられない。だから、国民の意思は無力だ。

国民は、まさにこれを味わっており、彼らも彼らの投票も、国政への影響力は全くない。おかげで、国民は恐れ、欲求不満になり、怒るという、支配層エリートにとって危険な感情を抱くようになり、これに対し、支配層は、プロパガンダで、国民に更なる戦争を支持するよう駆り立ててながら、国民に不利な方向に、国家権力を動かしている。

オバマは、アフガニスタン、あるいはイラク、あるいはおそらく両方の戦争をやめると公約した。ジョージ・W・ブッシュ政権が作り出した警察国家を元に戻すと彼は公約した。アメリカの資源を医療などの国内問題に集中すると彼は公約した。

だが、彼は何をしただろう? 彼は戦争を拡大し、新たな戦争を始め、リビアを破壊し、シリアも破壊しようとしたが、イギリスの不参加と、ロシアの反対によって阻止された。オバマは、ホンジュラスとウクライナで、民主的政府を打倒した。彼は警察国家を深化させた。彼はロシアとプーチンの悪者扱いをはじめた。オバマケアとして知られる彼の医療計画を、民間保険業界が立案するのを許して、彼はまたしてもアメリカ人を裏切った。私的権益集団は、公的資金を、医療から、自分たちの利益へと向ける計画を書き上げた。

支配層エリートと、支配層にのみ仕える売女マスコミがトランプの悪者化に注力して、こうしたこと全てが忘れ去られた。突如、アメリカ合州国次期大統領が、アメリカとアメリカ国民とって、主な危険となった。トランプはロシアの手先だった。彼はプーチンと共謀し、アメリカ選挙で汚いやり方をして、ヒラリー・クリントンに勝ち、ホワイト・ハウスを、プーチンのソ連帝国再建とされるもののパートナーにしてしまったのだ。

たわごとは、極めて猛烈で効果的だった。トランプは圧力に屈し、トランプのロシアとの関係正常化公約を支持していた国家安全保障顧問を犠牲にした。トランプは、彼を、どうやら欧米世界の都市いたるところで上空にきのこ雲が立ち上るのが待ちきれないロシア嫌いの阿呆に置き換えた。

立て続けに、二人の大統領が、彼らを選んだ国民を一体なぜ裏切ったのだろう?

物事を決定している既得権益集団ほど、大統領は強力ではないというのが答えだ。

トランプは、シリアから出てゆくつもりだったので、トマホーク・ミサイルで、シリアにいわれのない攻撃をして、明白な戦争犯罪をしでかした。

トランプは、ロシアとの関係を正常化するつもりだったので、ロシアが、黒海クリミア海軍基地をウクライナに引き渡すまでアメリカ経済制裁は続くと国務長官が発表した。

正常化の相手方にとっての代償が国家的自殺であっては、関係正常化は不可能だ。

トランプが、時の権力に完全屈伏したにもかかわらず、今日(5月2日) NPRで、我々全員目にしているのは、私が聞いていた番組も含め、トランプに対する途方もない偏見ばかりなのに、トランプが、マスコミに対して偏見を持っているという“有識者の意見”を装ったむき出しのプロパガンダを聞かされた。

例えば、NPRは、通話を盗聴しているといって彼を非難して、トランプは、オバマを名誉毀損したという“有識者”をかき集めた。トランプがプーチンと共謀し、選挙で汚い手を使って、ヒラリー・クリントンに勝ったというオバマ政権による非難に、NPRは全く触れていない。

名誉毀損と言えるものがあるとすれば、これこそそうなのに、話題はもっぱら、オバマがいかにして、トランプを訴えられるかだった。

だが、もちろん二人は公的人物で、どちらの側も相手を訴えることはできない。

NPRの“有識者”連中は、この問題に一体なぜ手が回らないのか私は不思議に思う。

巨大な政治力を有するひと握りの支配者連中は、一体なぜ、連中の売女マスコミを、既に彼らに屈伏した大統領への反対運動に、いまだに利用しているのだろう?

選出公職に出馬する連中が、大衆に受ける主張を、二度と再び有権者にしないよう、本当の権力者連中が、トランプを見せしめに懲らしめようとしているというのが答えだろう。

Paul Craig  Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニュー ズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。

ご寄付はここで。https://www.paulcraigroberts.org/pages/donate/

記事原文のurl:http://www.paulcraigroberts.org/2017/05/02/american-democracy-dead-man-walking/
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憲法破壊の手段として、高等教育の無償化も定めるというマキ餌めくらまし。
植草一秀の『知られざる真実』には、早速『安倍自民改憲案は国家転覆の企てに相当』が掲載されている。

共謀罪成立を狙っている傀儡与党連中自体が、本来、国家反逆罪、テロリスト集団。

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コメント

今更言うのもなんですが、オバマ政権末期、支持率は低迷の一途を辿り、最も好意的かつ控え目な論評が「オバマはアメリカに停滞をもたらした」であって、外交政策はブッシュ政権からの継続で、オバマケアはまともに機能せず、誰もオバマを愛していないのが明らかだったのが、トランプが大統領になると一転、「アメリカ最後の良心」に様変わりし、その言葉一つ一つが神格化され、あらゆるメディアが彼を讃え出し、一般大衆は去りゆく大統領を涙ながらに見送るためにホワイトハウスに殺到するという始末。挙句の果てには休暇を家族と楽しむ写真が出回ったり、激務から解放された我らが大統領が在任中と退任後でどれだけ変わったかを比較したりとまるでアイドル扱い。この落差は本当に不気味でついていけず、オーウェルの『1984年』の世界にやって来てしまったかと頭を抱えました。

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