世界環境の変化ゆえに、イランとの交渉を強いられたアメリカ
Mahdi Darius NAZEMROAYA
2015年7月19日 | 00:00
Strategic Culture Foundation
アメリカのセレブ億万長者で、大統領候補者のドナルド・トランプは、シャーロッツビルでの演説で、ウィーンで、イランとの最終的核協議を起草したバラク・オバマ大統領が“自暴自棄で合意した”と嘆いた。トランプ発言は、一部は正しいが、一部は間違っている。トランプが酷評した様に、オバマ政権が自暴自棄になった為ではない。世界最大の大国としてのアメリカ合州国の衰退が、アメリカ政府に、イラン政府との交渉の席につくことを強いたのだ。
地政学的、経済的と戦術的条件が、アメリカに、イランとの交渉の席につくことを強いたのだ。ワシントンは、地政学的状況から、イランとの合意を得るよう強いられたのだ。キューバとの場合と同じだ。アメリカ合州国の衰退と、中南米における孤立化の深化が、オバマ政権に、ハバナとの交渉開始と、何十年も続いた敵対的なアメリカの対キューバ政策の破棄を強いたのだ。
対イラン経済制裁体制の病理
イランに対する経済制裁体制は、オバマ政権の誤解を招くような主張の様に、テヘランを交渉の席に引き出すように設計されたものではない。これは、アメリカが仕組んだ国際経済制裁体制の病理を隠す為に作りあげられたアメリカ政府の修正主義であり、 政治的神話なのだ。国際経済制裁体制は、テヘランに、降伏して、ワシントンの命令に従うよう強いるべく設計されたものだ。
イランを交渉の席に引き出すのに、経済制裁は決して必要はなかった。イランとEU-3間の交渉の枠組みで、イランは、経済制裁体制が確立されるずっと前から、イギリス、フランス、ドイツと交渉していた。テヘランと、EU-3間の以前の核協議は、“‘新たな中東’の産みの苦しみ”をもたらす為、イランとの戦争や、テヘランにおける政権転覆に、より関心を持っていたジョージ・W・ブッシュ伜の妨害的な政権のおかげで2005年に、失敗していた[1]
2013年、ワシントンと欧州連合のパートナーが、経済制裁では、イランを屈伏させることはできないことに気がついた際、彼等は選択肢が尽きたことを理解した。経済制裁は、それ以上やりようがなく、限界に達したのだ。一方、世界的な環境と状況は、益々イランにとって有利な方向に変化し始めた。
経済制裁体制があろうと、あるまいと、ロシアと中国は、貿易を拡大する準備ができている。モスクワと北京は既に、アメリカとEUの一方的な経済制裁は違法だと見なしている。並行して、ウクライナで、ユーロマイダンの後に出現し、高まりつつある対ロシア経済制裁/経済戦争埋め合わせる為に、欧州連合には、イランとの経済関係復活が必要だった。経済制裁も、崩壊しはじめようし、他の国々も、ロシアと中国に加わり、経済的に復活したイランと、最終的には、貿易を正常化するだろう。
戦争のコスト
アメリカには、信頼に足る選択肢が残されていなかった。タカ派の“あらゆる選択肢を保持している”という言辞にもかかわらず、米国政府中心部では、イランとの戦争は、余りにコストがかかり過ぎ、余りにリスクが高過ぎることが理解されていた。もし、アメリカが、イランを軍事的に攻撃することが可能だったのであれば、2001年に、アフガニスタンで、2003年に、イラクでしたように、攻撃していたはずなのだ。これは、ブッシュ II政権にとって、テヘランがアメリカの主要標的であることを知っていたと語るイランの軍司令官達によって公言されている。[2] それゆえ、ブッシュ IIのスローガンはこうだった。“誰でもバグダッドには行けるが、本当の男はテヘランに行く!”
イランに対するいかなる攻撃も、ワシントンに対して、壊滅的な政治的、社会的、経済的、安全保障上、戦略的、外交的結果をもたらす、中東における極めて不人気な地域戦争となるだろう。テヘランとの戦争は、何らかの形で、中東でのアメリカの活動を損ない、大国としてのアメリカを格下げするだろう。イラン侵略をシミュレーションするアメリカの作戦演習でさえ、ワシントンの大きな損害を評価していた。[3]
2015年6月、戦略予算評価センターが発表した報告は、ペンタゴンは、長距離攻撃をしかけることはできないので、アメリカには、通常戦争で、イランを攻撃する為の適切な軍備はない述べて、これを確認さえしている。[4] 報告によれば、ペンタゴンは、短距離直接攻撃に備えているが、一方、イランは、中国やロシア同様、アメリカが、攻撃するのに十分な程、接近するのを防ぐ長距離防衛システムを持っている。[5]
イランとの、いかなるありうる戦争も、中東や中央アジア国境から溢れ出さないという保証も、そのような紛争が、より広範な国際戦争に転化しないという保証はなかったし、ない。この文脈で、アメリカの攻撃に対して、イランを救うために、ロシアと中国が介入しない保障は、ワシントンにはなかった。しかも、アメリカとEUが、益々ロシアの対決を進め、アメリカが中国との対決を進めるにつれ、ワシントンとEU同盟諸国は、少なくとも一時的に、一つの戦線で、対立を和らげるイランとの関係改善が必要になったのだ。
テヘラン、ワシントンと、ユーラシアの世紀
もし北京とモスクワが、経済制裁体制に対する部分的な約束を完全に破棄した場合、アメリカは、EUやアジア-太平洋の大企業や政府が、アメリカが率いる経済制裁体制を継続するかどうか確信がなかったのだ。この点、ローザンヌ合意後のアメリカ同盟諸国の反応が多くを物語っている。
ローザンヌ合意後、大きなイラン市場の再開を期待して、アジア、ヨーロッパや、他の地域から財界首脳や貿易幹部達が、イラン詣でを始めた。英国-オランダ系巨大エネルギー企業ロイヤル・ダッチ・シェルと、イタリアの巨大エネルギー企業エニの幹部達まで、テヘランに出張した。[6] 貿易の正常化に備えて、ヨーロッパやアジアの大企業がイランに殺到する中、駐アメリカ・フランスの大使、ジェラール・アローが、イランとの核協議に反対するシンクタンク、大西洋協議会のタカ派に、ヨーロッパ企業がイランとの貿易再開に殺到していることについて、落ち着くようにと言った。[7] “実際、アメリカではなく、我々が大損をしたのだ”と、彼は大西洋協議会に再認識させた。[8]
アメリカ・ドルと、ブレトン・ウッズ体制に対し、 BRICSの新開発銀行(NDB)と、中国のアジア・インフラ投資銀行(AIIB)という対抗するグローバル金融組織を設立したロシアと中国の挑戦に直面して、アメリカがしかけた財政・金融経済制裁が蝕まれてゆくのも明らかだ。世界的な状況が変化し、ユーラシア統合が加速しているので、ウィーンで、イラン以上に、交渉をまとめたがっていたのは、アメリカだったのだ。
注
[1] Mahdi Darius Nazemroaya, “Plans for Redrawing the Middle East: The Project for a ‘New Middle East,’” Global Research, November 18, 2006.
[2] “Commander: US Intention of Invasion Deterred by Iran’s Home-Grown Military Power,” Fars News Agency, June 21, 2015.
[3] Mahdi Darius Nazemroaya, “The Geo-Politics of the Strait of Hormuz: Could the U.S. Navy be defeated by Iran in the Persian Gulf?” Global Research, January 8, 2012.
[4] Bryan Clark and Mark Gunzinger, “Sustaining Americas Precision Strike Advantage,” Center for Strategic and Budgetary Assessment, 2015.
[5] 同上。
[6] Christopher Adams and Anjli Raval, “European oil majors hold Tehran talks,” Financial Times, June 24, 2015.
[7] David R. Sand, “U.S. allies not waiting for Iran’s sanctions to come down,” Washington Times, May 27, 2015.
[8] 同上。
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戦争法案、宗主国・属国の軍需産業の為の施策。宣伝工作として、防衛白書が、中国や、ISの脅威をあおりたてる。戦争をおこすことを願う自己充足的予言。
宗主国の火事を消しにゆく例え? 放火犯に協力して、石油を撒きに行く話。
BS日テレにも、急遽特別出演、わけのわからないことを繰り返している。
ホンジュラス大統領が来日する。傀儡トップ会談、さぞ話があうだろう。
「アメリカ軍基地の民間空港化」を構想していたセラヤ大統領が早朝パジャマ姿?で、国軍により突如国外拉致、追放された事件で、鳩山政権の多難さを予想していた。
結論は...。
宗主国が強力に支援したと思われるホンジュラス・クーデター、奇妙なほど大本営広報部による報道は少ない。記憶にない。やむなくいくつか記事を翻訳した。
『マンガでわかる永続敗戦論』早速拝読。知人にさしあげた『永続敗戦論』は大好評。
『マンガでわかる永続敗戦論』98ページに鳩山首相退陣について触れた文章がある。
退陣劇を通して露呈したのは、この国では、選挙による国民の支持を大部分取り付けている首相でも、「日本国民の要望」と「米国の要望」とのどちらかをとり、どちらかを捨てなければいけない、という二者択一を迫られた場合、後者をとらざるをえない、という構造だ。
辺野古基地も、TPPも、戦争法案も、、全てこの選択肢で、「米国の要望」のみを実施するもの。従って、その真実をかたることができない。したがって、説明しない(TPP・辺野古基地)、あるいは、支離滅裂の例えにもならないホラ話で時間稼ぎするしかない(戦争法案)。
属国、70年間の永続敗戦により、イランのような政治力・意思、完全にそぎおとされている。
世界環境の変化ゆえに、宗主国による全面的搾取を強化される属国
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