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2014年10月15日 (水)

不安定化工作-エネルギー戦争における、アメリカの武器

Mahdi Darius Nazemroaya

公開日時: 2014年10月8日 14:42
"RT"

自由貿易協定で優位に立ち、そしてまた、ヨーロッパ諸国をアメリカの比較的より高価な天然ガスを買わせる様仕向けるため、アメリカは、EUをロシアと疎遠にさせるべく最善を尽くしている。

TTIPとウクライナ

環大西洋貿易投資協定 (TTIP)は、アメリカとEUとの間で継続中交渉の主題、ユーロ-大西洋自由貿易協定だ。TTIP自由貿易協定をまとめる締め切りは、2015年だ。その目標は、環大西洋自由貿易圏(TAFTA)と呼ばれるものを作り出し、欧州連合をアメリカ合州国と、一つの超国家的な貿易圏へと結合させることだ。

極めて秘密裏に、密室で行われているので、こうした貿易交渉は、ほとんど国民は気がつかないままだ。2001年、米州自由貿易地域 (FTAA)交渉の場合に起きたと同様、交渉反対の激しい大衆運動が勃発しかねないと連中が恐れているので、TTIPという名称自体、正体を隠すようにつけられており、政策・通商官僚が選んだものだ。9月26日、オタワでカナダとEUの間で署名された包括的経済貿易協定(CETA)と同様、言葉遣いの巧みな連中が、それが自由貿易協定である事実を隠そうと、抜け目なくTTIPという名前を選んだのだ。

TTIP交渉を有利にするため、EUパートナーとロシア連邦間の貿易上のつながりを粉砕すべく、ワシントンは最善を尽くしている。アメリカの戦略は、対ロシア経済制裁により、モスクワとのつながりを切断させ、ヨーロッパのパートナーを経済的に弱体化させ、ヨーロッパ諸国経済も直接損なうのだ。これによりワシントンは、弱体化したEUに、TTIP交渉で、アメリカに対し、最大の経済的譲歩をするよう強いる計算だ。

地政学的に、これは、ユーロ-大西洋(つまり、ユーロ-アメリカ)統合、対ユーラシア(つまり、ユーロ-アジア)統合という話だ。ヨーロッパで、ロシアを隅に追いやって、EUにおけるロシアの影響力と、ロシアとEU間の貿易の絆が強化するあらゆるリスクの低減を狙っているのだ。TTIP交渉が激化したのは、ドイツの様な国が、ソ連後の地域のロシアと独立国家共同体(CIS)で構成されている、ユーラシアという代替案を考え始めかねないと懸念したがゆえに、アメリカが、EUを北アメリカと併合したがっている為なのだ。

ウクライナの危機は、まさにEUとロシア双方を弱体化させるという、アメリカの二つの目的に役立っている。NATOを拡大し、ロシア包囲をするのみならず、EUとロシアの結びつきを損なうことも狙っているのだ。モスクワとEUの間に溝を作りだし、ロシアを、恐ろしい怪物で、ヨーロッパの安全保障に対する脅威として描き出すために、ウクライナは、文字通り、アメリカによって食い物にされ、利用されている。

石油政治学:アメリカLNG 対 ガスプロム

アメリカは、エネルギー資源、エネルギーが輸送されるパイプラインと戦略回廊の支配をかけた、エネルギー戦争も戦っているのだ。バルカン半島、カフカス、中央アジア、イラク、レヴァント、ペルシャ湾や、ウクライナへのアメリカの関与、肩入れ、関心は、全てこのエネルギー戦争の一環なのだ。

シェール・ガスとガス水圧破砕も、この等式の一環だ。水圧破砕は、世界で四番目に巨大なシェール・ガス埋蔵量を持つアメリカを、天然ガス輸出国へと変えつつある。ワシントンは、2015年と2016年に、北アメリカからガス輸出を開始する計画だ。

同時に、アメリカは、北アメリカ統合を活用して、カナダのエネルギー資源に対する影響力を強化しようとしている。カナダは最大の天然ガス生産者の一つで、証明済みの最大石油貯蔵量の所有者で、最大の原油生産者で、最大のシェール・ガス埋蔵量所有者で、そして、全体として、世界最大のエネルギー生産国の一つなのだ。

アメリカのエネルギー輸出という文脈で、ワシントンは、天然ガス市場で、ロシアと競合し、更にはロシアを脇に追いやろうとしている。それが理由で、EUとトルコに、ロシアの巨大エネルギー企業ガスプロムからのガス購入を辞め、代わりに、アメリカからの輸入を始めるよう、アメリカはロビー活動をしている。エネルギー市場からロシアを追い出すという目標は、2003年、アメリカがイラクに侵略する前から、ワシントン界隈で大いに論じられていたアメリカ長期的戦略の一環だ。

ところが、アメリカ・ガスは、水圧破砕して採取し、液化し、ずっと高い経費で輸送しなければならないので、ロシア・ガスより遥かに高価だ。アメリカの液化天然ガス(LNG)は、公平な状況で、本当の自由市場では、ロシア・ガスのヨーロッパ輸出と競合できる可能性はないのだ。

ところが、いわゆる自由市場は、それほど自由ではない。政権が仕えている大企業やコングロマリットを有利にさせる政治操作が常に行われているのだ。

EUエネルギー市場で公正に競争するかわりに、ブリュッセルに、ガスプロムや、ロシア・エネルギー部門とのエネルギーの繋がりを断ち切らせることで、競争相手としてのロシアを抹殺しようと、アメリカは熱心に取り組んできた。これこそまさに、一体なぜ、アメリカが、EU加盟諸国に、対ロシア経済制裁を課するように強い、こうして、ロシア・ガス購入に対し、法的制限と障壁を設けたか、という理由なのだ。

エネルギー戦争とウクライナ:‘水圧破砕’帝国とシェール・ガス

エネルギー戦争の文脈の中で、バルト海の港シフィノウイシチェに、2015年6月末までに北アメリカから最初の天然ガスを受け取る計画で、ポーランドLNGターミナルが建設された。

ガス貿易支配という狙いの上で、ポーランドもウクライナも、アメリカにとって重要な手札と見なされている。二ヶ国とも二番目と四番目のシェール・ガス埋蔵量を持っており、ロシアを除けば、それぞれの埋蔵量は、ヨーロッパで一番目と二番目に大きいものだ。アメリカは、両国にある未開発な膨大なシェール・ガス埋蔵量の支配を狙っているのだ。

大手アメリカ石油会社シェブロン、コノコ・フィリップス、エクソンモービルと、イラクのクルディスタンで事業を行い、カダフィ後のリビア・ワハ石油会社の株主であるマラソン・オイルが全てポーランドのシェール・ガス探査開発に膨大な投資をしているのだ。

2013年1月、ウクライナのヴィクトル・ヤヌコーヴィチ大統領政権は、イギリス-オランダのエネルギー巨大企業ロイヤル・オランダ・シェルと、東ウクライナの天然ガスを無税で探査し、掘削する協定に署名していた。2013年11月、もう一つの契約が、ヤヌコーヴィチ政権とシェブロンの間で、西ウクライナのエネルギー埋蔵を探査し、開発する契約も締結された。わずか一年前、2012年、キエフは、クリミア沖のガス契約を、エクソンモービルとロイヤル・オランダ・シェルが率いるコンソーシアム、スキフスカ・ガス田開発に与えていた。

スキフスカ・ガス田は、アメリカ石油・ガス会社が興味を持っている、クリミア沿岸沖で唯一のガス田というわけではない。スキフスカのすぐ隣には、フォロスカ、プリケルチェンスカと、タヴリヤ・ガス田がある。プリケルチェンスカ・ガス田は、アメリカのオフショア会社、ヴァンコ・プリケルチェンスカ社が獲得したが、フォロスカは、チョルノモルナフトガスが管理しており、フォロスカとタヴリヤ・ガス田は、いずれも交渉継続の対象となっている。

東ウクライナの反政府派に対するアメリカの敵意は、ある程度、アメリカのエネルギー企業がキエフから得た、シェール・ガス採掘権の擁護とつながっている。自称ドネツク人民共和国の第一副首相、アンドレイ・プルギンは、計算づくの民間インフラ破壊も含む、イラクで使われたのと同じアメリカ戦術が、東ウクライナでも行われているとさえ述べている。こうしたアメリカの作戦は、代理の“金目当てに働く兵士”、つまり傭兵や“プロの殺し屋”によって行われている。ドイツのビルド・アム・ゾンタグ紙の2014年5月の報道によれば、イラクでのひどい実績のせいで、ブラックウオーターと、Xeサービシズから名前を変えた悪名高いアメリカ民間警備会社アカデミが、ドネツクとルガンスクで解き放されたのだ。

エネルギー戦争とシリア: 地中海からの締め出し?

ISILと戦うという呪文の下で、アメリカが、エネルギー・インフラを意図的に破壊しているシリア国内の状況も、同じ石油政治学というプリズムを通して見るとわかる。天然ガスシリア、レバノン、イスラエルと、ガザにひろがる、膨大な天然ガス埋蔵量があるレヴァント沿岸沖。ここでもアメリカはロシアを追い出し、東地中海のガス埋蔵地を支配しようと動いている。

2000年以来、ロシアの建設土木会社ストロイトランスガスは、シリア国内で積極的に活動し、ホムス地域に、二カ所のガス精製所を建設し レバノンとシリアを、ヨルダンとエジプトを結ぶアラブ・ガス・パイプラインのシリア部分を建設する契約を得た。別のロシア・エネルギー企業、ソユーズネフトガスは、2004年、ダマスカス政権から、イラクとの東部国境で事業を行う落札をしている。2007年、シリア・ガス会社(SGC)とストロイトランスガスは、ホムスのガス田で発見された天然ガス資源開発を共同で行うことに合意した。2013年12月25日、シリア危機の最中、ソユーズネフトガスは、ダマスカス政権と、重要な沖合での探査契約を締結した。

しかも、シリア、イラクとイランの間で、世界最大の天然ガス田から、シリア沿岸までのガス・パイプラインを建設する交渉の最中に、たまたまシリア危機が勃発したというわけだ。2011年6月25日に、ダマスカスは、イラクとイランとの契約を締結していた。契約が、2009年にキャンセルされるまで、ストロイトランスガスが、石油の豊富な都市キルクークと、シリアの港バニヤースの間をパイプラインで結ぶものと想定されていた。

カタールとトルコは、天然ガス輸出者とエネルギー回廊としての両国の出番を無くすので、イラン-イラク-シリア・ガス・パイプライン協定に敵対的だった。イラン-イラク-シリア・パイプラインは、アメリカLNGに対する低価格なライバルとして、ガスをEUに輸出するのにも利用できる可能性があることも、ワシントンから否定的に見られることになった理由だ。

シリアとイラクでの戦闘の結果、このプロジェクトを中断させ、政権を転覆すればそれは無効になる。

アメリカの交渉戦術としての不安定化?

アメリカは、ブリュッセルとのTTIP交渉を有利に進めるべく、ヨーロッパで緊張をかき立てているが、ペンタゴンは中東に軍隊を再配置している。ペンタゴンが率いる地域での軍事力増強は、ISILと戦うこととはほど遠い。部分的には、アメリカのイランとの核交渉ともつながっている可能性がある。他の狙いに加え、アメリカが率いる軍事力増強は、対テヘラン核交渉で、ワシントンが更に有利になることを狙ったものである可能性がある。

不安定を生み出すことは、パッケージ化された手法の一環であるように見える。いずれにせよ、不安の創造は、アメリカの交渉や取引を支援する為に利用されているように思える。ウクライナでの緊張の場合、これは実に明瞭で、ワシントンは、この危機を、TTIP交渉を有利にする為に利用しており、LNGをEUに売り歩くべく、ロシア・ガスを締め出す為に、経済制裁を利用しているのだ。

マフディ・ダリウス・ナゼムロアヤは、社会学者で、賞を獲得している著者で、地政学専門家である。

記事原文のurl:http://103.5.149.34/op-edge/192204-usa-ttip-syria-ukraine-gas/

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大本営広報部ではないまっとうな雑誌「アジア記者クラブ通信 266号 2014年10月10日」500円。月刊。年間5000円。

今月の内容 下記の通り。太字の記事、この記事の筆者だ。

【定例会リポート】カジノ賭博場は地域活性の手段たりうるか(鳥畑与一・吉田哲也
【香港】「民主主義と自由」の陰で衰く米国の政治工作(ナイル・ボウイ)
【香港】米国は中国分断に本腰を入れたのか香港情勢の分析・その2(コリブコ)
【対自制裁】結束固める中震とその同盟国(ラケッシュ・クリシュナン)
【スコットランド】「独立阻止」は米英の至上命令だった(グスマン)
【イラク】330万の死は統計数字なのか(シャーウッド・ロス)
【イラク】「ISISとの戦い」に潜む欺瞞とペテン(ガンナー)
【イラク・シリア】「イスラム国との戦い」は新冷戦の一環だ(ナゼムロアヤ)
【映評】綿井健陽監督『イラクチグリスに浮かぶ平和』(瑞浪利彦)
【北朝鮮】伊藤孝司の平壌日記
【脱原発】山崎久隆の原発切抜帖
【この一冊】半田滋著『Q&Aまるわかり集団的自衛権』(編集部)

特集 イラク・シリア・イスラム国家(ISIS)と米国の戦争

当然、大本営広報部の報道とは全く違う記事満載。翻訳しようかと思って悩んでいる記事が、翻訳されていることが良くある。

    • アジア記者クラブ
    • 〒101-0061 東京都千代田区三崎町2-2-13-502

素晴らしいジャーナリストの皆様。

かと思えば、目を剥くような文章を書く「ジャーナリスト」という人もいる。典型的な、日本のジャーナリストなのだろうか?

アメリカの軍拡政策に目くじらを立てる日本人はいない。仲間・友人意識からだ。

この方の判断では、小生は日本人ではない。小生、宗主国支配者を、仲間・友人と意識したことは一度もない。本音としては「仲間・友人であればよかった。自分も、甘い汁を吸える1%であれば良かった」と常に思っている。

ウクライナ・ゲート ネオコンの情報操作と野望』塩原俊彦著 社会評論社 本体2400円+税

読めば読むほど、感心。著者の方、大学の先生をしておられるが、元々、新聞記者。ロシア駐在をしておられたようだ。そういう実績ある方が、大本営広報部、売女マスコミをめった切り。日本にも、素晴らしいジャーナリストがおられる。というより、素晴らしい学者がおられる、ということだ。

原発震災を主張しておられる石橋克彦神戸大学名誉教授を連想した。川内原発再稼働についても、厳しい批判をしておられる。

大本営広報部で、以前、ウクライナ問題の番組を見たことがあるが、提灯持ちの「学者」がデタラメ放題を言っていた。実に恥ずかしいことながら、過去に彼の本、何冊か読んでいる。今は、本の山に消えているが、見つけたらすぐ捨てようと固く決断した。

ウクライナ・ゲート ネオコンの情報操作と野望』の塩原俊彦氏の本、ほかにも数冊拝読している。あれだけ正論で、大本営広報を批判すれば、大本営広報から、お呼びはかからないだろうことが残念だ。塩原俊彦氏、もちろん欧米マスコミも厳しく批判しておられる。

当ブログの記事を、眉唾やら、陰謀論やら、トンデモ右翼学者と同一視するコメントをtwitterで見かける。批判はご自由だが、根拠・証拠を全くお書きになっておられない。
英語記事を翻訳しているのだから、英語で的確な批判をいただければ、原著者にお知らせするのはやぶさかではない。

実は毎日多数の英語コメントが書き込まれている。全て無内容な、通販に誘導するゴミ・コメント。似たようなアドレスから書き込まれている。

代理の“金目当てに働く作業員”、つまり“プロの作業員”が、ソフトを使って作業しているのではないかと推測している。自動的にスパム・コメント扱いされており、一ヶ月で消去されるので、皆様の目に触れることはない。どこかの妨害工作だろう。

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