西欧に未来はあるのだろうか?
Paul Craig Roberts
2012年5月10日
道徳的な良心、正義感、あるいはほんの僅かの知性がある人間にとって、アメリカで暮らすことは非常に困難になりつつある。考えて頂きたい。
最初のでっちあげより遥かに素晴らしい二度目のいかさま下着爆弾策謀が起きた。二人目の下着爆弾犯は、最近アメリカ当局が、敗北し、混乱状態で、もはや大きな影響力はないと発表した組織アルカイダにリクルートされたとされるCIA工作員か情報提供者だった。
何の科学も技術研究所も持たない、この敗北した、とるにたらない組織が、ポルノ-スキャナーでは検出されない“見えない爆弾”を発明したのだ。ある“警察幹部”はニューヨーク・タイムズに“恐ろしいのは”“もし連中が一つ製造したのなら、連中は多分もっと製造しているだろうということだ”と語っている。
ヒラリー・クリントン国務長官は宣言した。“策謀そのものがテロリストが、無辜の人々を殺害するため、一層邪悪で恐ろしいやり方を考え出そうと試み続けていることを示している。”アフガニスタン、パキスタン、イエメンや、アフリカで、ハイテク無人機によって、アメリカが女性や子供達の殺害を続けていることを、新聞見出しが明白に示しているさなか、ヒラリーはそう言ったのだ。阻止されたいかさま策謀を、“わが国民とインドや他の国々のような友好国とその国民を守るべく、国内でも国外でも、我々は引き続き警戒しなければならないことを気づかせるもの”として役に立つと、ヒラリーは断言した。
ロバート・マラーFBI長官は、いかさま策謀が、いかさま策謀をだろうか?探知するためには、令状無しの監視が必要であることを証明したと議会に語っている。下院では、共和党のピーター・キング議員と民主党のチャールズ・ルパースバーガー議員は、真実は戦争遂行のための取り組みや兵士達の生命を脅かすと主張して、マスコミがこの策謀がCIAの作戦だったことを暴露したことを非難した。
代替ニュース・メディアですら、当初このいかさま策謀を信じ込んでしまった。徹底的に解体され、無力で、逃走中で、尊敬する指導者オサマ・ビン・ラディンをパキスタンの村で、ひとりぼっちで無防備なまま放置し、アメリカ海軍シールズに殺害されてしまったアルカイダが、一体どうやって、装置についてアメリカ諜報機関の職員から説明を受けた上院情報問題特別調査委員会のダイアン・ファインスタイン委員長が使った表現によれば、“探知不可能な”爆弾でCIAの不意をつくことが出来たのだろうかと、どうやら誰一人として立ち止まって疑おうとはしないもののようだ。
テロリストから“インドや他の国々を保護するため”、破綻したアメリカと、そのほころびた社会的セーフティー・ネットのすべてを捧げると国務長官が約束したことに留意願いたい。だがこの最新のでっちあげで本当に重要なのは、おびえるアメリカ国民に、検出できない下着爆弾という考えを吹き込むという点だ。
これで一体何を思いつくだろう? 私の世代、あるいはSFファンの方であれば、どなたでも、ロバート・ハインラインの『人形つかい』を直ちに思い出されることだろう。
1951年に書かれたが、舞台は現代で、人体にとりついて、その人物をのっとってしまう小さな生物によって地球が侵略される話だ。人はこのご主人の操り人形になってしまうのだ。ワシントンの能無しが、侵略が現実のものであり、陰謀論ではないことを理解するまでの間に、アメリカの広範な地域が侵略者に屈してしまう。
人が服を着ていると、その生物を探知できないので、服を着た人々は全員容疑者だという布告が出される。誰もが裸で歩き回らねばならない。女性が手にしたハンドバッグの中に、その生物が潜みかねない為、女性は手にハンドバッグを持つことさえ認められなくなる。
もし敗北したアルカイダが“探知できない”爆弾を考え出したとするニュース情報源のCIAと、ダイアン・ファインスタインに説明した連中が正しいのであれば、当然、我々は、空港警備の検査を、裸で受けねばならなくなる。
そうなると、一体どのようにそれが可能になるのだろうか? もし航空会社の乗客全員が、部屋の中で服を脱ぎ、身体検査を受けなければならなくなったら“空港警備”を通り抜けるのに一体何時間かかるだろう? 北米または南米で、アメリカより、旅行者が空港警備で時間がかかるような場所などなくなるだろう。あるいは、おそらく、これがアメリカにおける絶望的水準の失業に対する答えだ。何百万人ものアメリカ人失業者達が、飛行機搭乗前に裸になる人々を検査するために雇われるのだ。
列車や、バスや、車での道路走行等、いたる所で、国土安全保障省の運輸保安局の侵入がまかり通ってきたことからすれば、我々は衣料産業の完全崩壊に直面しているのだろうか? 引き続き注目願いたい。
何年か前に、有名な哲学者が、アメリカ人は人工現実、仮想現実の中で暮しているのだと示唆する記事を書いた。違う有名な哲学者が、その哲学者が正しい可能性は25%あると思うと述べていた。私は彼は正しいと確信している。アメリカ人は、『マトリックス』の中で暮しているのだ。彼等が自分たちが知っていると考えていることの何一つとして正しくはないのだ。
たとえば、我が国の決して真実を語らない“指導者達”は“イスラエルは中東における唯一の民主主義だ。”と絶えず宣言し続けている。この神話は、イスラエル政府に、パレスチナ人を殺害し、彼らの国を盗む手段を提供すべく、減りつつある収入から、アメリカの納税者達が税金を課税されるのを正当化するために、ひねり出された多くの理由の一つだ。
イスラエル民主主義など神話だ、とおっしゃるだろうか? そう神話なのだ。集めた報道記事と、Antiwar.com が報ずるところによれば(5月8日)、“野党党首のシャウル・モファズが政権に加わるので”9月4日のイスラエル総選挙は中止になった。
モファズは個人的権力のために党を売ったのだ。典型的な政治家の振る舞いだ。
モファズの裏切りは、支持者による抗議行動を引き起こしたが、ニュース記事によれば、“イスラエル警察は、抗議行動を‘違法’と称して、早速厳重に取締り、多数のジャーナリストを逮捕した。”
ああ!“イスラエルは中東唯一の民主主義。”
実際は、イスラエルは建国以来、国際法とキリスト教道徳にずっと違反しつづけているファシスト国家だ。ところが、アメリカ国内ではイスラエルは神聖な偶像だ。ブッシュ、チェイニーやオバマ同様、何百万ものアメリカ人“キリスト教徒”がイスラエルをあがめ、イスラエルのために死ぬことは、アメリカ人にとって“神のお召し”だと信じている。
自分に反対する人々とは議論するのではなく、殺害することを、無力な人々から財産を取り上げることを、嘘に基づく虚構の世界を生み出し、大企業マスコミが嘘と虚構の世界を維持するのに金を払うことを、信じておられるならば、読者は、アメリカ以外の国々が、“西欧”と感じているものの一部だ。
西欧に余りに厳しすぎるのを控えさせていただこう。フランスとギリシャの国民は、最近の選挙で、彼等は『マトリックス』からプラグを外し、99%である彼等が、同じ国のエリートによって、何十億ドルやユーロ、何隻ものヨット、魅惑的な自動車のコレクションや、プレイボーイやペントハウス誌の折り込み写真の魅惑的な女性を個人的に所有しているかを、お互いに競っている1%の超大金持ちの過ちに対する、いけにえの小羊の立場におかれていることを理解していることを示したのだ。
西欧の中央銀行--アメリカ連邦準備金制度理事会、欧州中央銀行とイングランド銀行--は全身全霊を超金持ちの繁栄に捧げている。他の連中などどうでも良いのだ。マルクスとレーニンには、決して、現在存在している様な標的などなかった。それなのに、左翼は今日、実に弱体で、洗脳されていて、ささやかな対抗力としての存在でさえない。アメリカの左翼は、9/11やパキスタンでのネイビー・シールズによるオサマ・ビン・ラディン殺害についての馬鹿げた公式説明さえ容認している。ここまで精神力とが欠けた運動は無用だ。存在していないも同じことだ。
しっかりした情報を持たない国民は無力だ。そして、それこそが西欧諸国民の状態だ。新たな専制政治が、ロシアや中国ではなく、西欧において勃興しつつある。人類に対する危機は、大統領執務室にある核兵器ボタンの入った書類鞄にあり、この世で最も徹底的に偽情報を吹き込まれた無知な国民、洗脳された好戦的ファシスト的アメリカ国民にある。
Paul Craig Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
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記事原文のurl:www.paulcraigroberts.org/2012/05/10/does-the-west-have-a-future/
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アルカイナ爆弾、更に進化、体内爆弾となりますます探知困難という記事もある。
空港警備で乗客が皆裸で検査を受けるようになれば検査員は足りなくなるだろう。小生老骨に鞭打ってボランティア参加したいと思う。妙齢女性担当志望で。
映画『ゼイリブ』では、主人公がたまたま手に入れたメガネをかけると、侵略者にとりつかれた連中の顔は骸骨に、そうでない庶民の顔は普通に見えた。
『人形つかい』も映画になっている。邦題『ブレイン・スナッチャー』英語題名は原題そのまま。残念ながら廃盤状態。字幕入り映画を見るのは容易ではなさそうだ。youtubeで片鱗は見られるようだが。
『人形つかい』、人間にとりつく侵略者による「背中の膨らみ」なるものの記述、隣国の先々代指導者の背中を思い出した。描かれた時期ゆえだ。
荒唐無稽な反共SFかも知れないが、共産主義なき後、宗主国支配下の日本そのまま。
『人形つかい』のストーリー、果敢に戦う主人公達のかいあってめでたしで終わるが、我々が暮らす国、『人形つかい』の通り、政府幹部やマスコミ幹部やらが皆、侵略者にとりつかれた状態で、そうした人形たちが全国制覇した状態が、66年続いている。
古村治彦著『アメリカ政治の秘密』という新刊書を読んだ。『人形つかい』の侵略者達が、この国で誰にとりついているか詳しく解説されている。
『アメリカ政治の秘密』著者のブログ:古村治彦の酔生夢死日記
しっかりした情報を持たない国民は無力だ。そして、それこそがこの属国国民の状態だ。新たな専制政治が、ロシアや中国ではなく、宗主国・属国において勃興しつつある。人類に対する危機は、大統領執務室にある核兵器ボタンの入った書類鞄にあり、この世で最も徹底的に偽情報を吹き込まれた無知な国民、洗脳された好戦的ファシスト的宗主国と、その宗主国に経済的貢献を捧げつづけ、世界侵略の為の基地を進んで提供しつづける属国にある。
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よくよく考えてみると今の某国のやっていることは国家としては自爆戦略ですよね。
自国民を劣化させるように誘導したり、同盟国を食いつぶすように動いたり。
その間に中国や東南アジア、インドが発展。一体何をやっているのでしょうね。
投稿: キョウ | 2012年5月24日 (木) 19時19分