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2011年12月22日 (木)

イラク戦争の現実

2011年12月21日

wsws.org

火曜日朝、バラク・オバマ米大統領は、メリーランドのアンドリューズ空軍基地で、イラク戦争の終結に区切りをつけ、イラクにおける米軍の最高司令官、ロイド・オースティン大将の帰還を祝う式典を主催した。大統領が同意を表してうなずく中、オースティン大将はこう宣言した。"わが軍が、ほぼ9年間にわたって、イラクで達成したことは、実に素晴らしい。我々の同盟諸国と、献身的な民間人団体と共に、彼らは残忍な独裁者を排除し、イラク国民に自由を与えた。"

ゲーリング元帥も、ポーランド“解放”について、これ以上うまくは語れなかったろう。

イラクからの最後の"戦闘”部隊撤退、決してアメリカの対イラク介入が終わる区切りになるわけではない。とはいえ、それは現代における最大の犯罪の一つを見極める機会にはなるだろう。"成功"と“自由"という胸の悪くなるような偽善的まじない文句など、どうであれ、戦争と占領は、イラク国民にとっての大惨事であり、アメリカ合州国の国民にとっての悲劇なのだ。

統計によって、アメリカ軍が押しつけた破壊の規模を、多少は推し量れるだろう。

・ 2007年に行われた科学的推計によれば、侵略と占領の結果、100万人以上のイラク人が殺害された。2008年に、国連は、470万人、つまり国民の約16パーセントが、難民と化したと推計している。

・ 電力システムを含むイラクのインフラは徹底的に破壊された。国連のState of the World's Cities(=世界の都市状況)、2010-2011年報告によれば、公衆衛生や水道等の生活にとって基本的なものが使えないものとして定義される、スラムで暮らすイラク人の都市人口比率は、2003年の20パーセント以下から、2010年の53パーセントへと増加した。

? 実際の失業は、50パーセント台にあり、インフレは50パーセントを越える。医師や他の専門職が大量出国しており(戦前のイラクにいた人々の40パーセントと推計されている)、教育制度は荒廃している。

・ イラクでは幼児や子供の死亡率が驚くほど増加している。2007年報告は、子供達の28パーセントが慢性的栄養失調に苦しんでいると推測している。2007年、あるイラク政府機関は、イラクの子供の35パーセント(約500万人の子供)が孤児だと報告している。一つの世代丸ごと、両親が殺害されたか、不明になっているのだ。

・ 戦争と占領の中で、4,500人以上のアメリカ兵が死亡し、30,000人以上が負傷した。これには、深刻な精神的な傷を抱えたままイラクを去った何万人もの人々は含まれていない。

・ 資源という点では、イラク、アフガニスタンとパキスタンでの戦争は、直接経費と、医療や経済成長に対する長期的な影響を含め、およそ4兆ドルかかったと推計されている、。数千億ドルが、国防関連契約業者や悪徳業者に注ぎ込まれ、少なくとも160億ドルは、単純に、失われたか、盗まれてしまったのだ。

イラクでの戦争は、この言葉の本当の意味で、犯罪的企てだ。この戦争は、"大量破壊兵器"を巡り、国際社会に対し、厚かましく語られた嘘を基に売り込まれたのだ。なんら挑発行為もなかったのに、またアメリカ合州国や、世界中での大衆の反対に逆らって、始められた侵略戦争だったのだ。この戦争は、国際的な山賊行為の、アメリカ石油会社の利益のために、世界で最も石油資源の豊富な諸国の一つを支配し、中東におけるアメリカ合州国の立場を強化し、競争相手の大国に対する影響力を増すことを狙った行為だった。

イラク戦争で記憶されるべき、あらゆる残虐行為は、戦争の帝国主義的な性格に帰するものだ。アブグレイブや他の監獄におけるイラク人の大量投獄と拷問。ファルージャ壊滅。ディーサにおける、一般市民24人の虐殺。マハムディヤにおける、14歳の少女強姦、殺害と、彼女の家族の虐殺。検問所での、夜襲での、そして、ジェット機や攻撃型ヘリコプターからの爆弾やミサイルによる、ありふれた殺人行為。

アメリカ帝国主義とイラクとの恐ろしい出会いは、終わったどころではない。世界最大、イラクのアメリカ大使館は、15,000人を擁している。占領において主要な役割を演じた、CIA職員と民間企業の傭兵は、イラクに残るのだ。何万人もの兵士は、依然として近隣地域に留まり、必要であれば即座に配備される。

最初の侵略からほぼ9年間、イラクは、不安定で、益々独裁的な政権によって支配され、あからさまな内戦を引き起こしかねない宗派抗争があふれている。

戦争は、アメリカ社会にも大きな影響を与えた。何万人もが死亡し、負傷したのみならず、何兆ドルもが浪費されたのだ。アメリカ国内の政治生活を巡る軍隊の権力強化や、アメリカ人の民主的な権利に対し、生死の危機をもたらしている軍-警察機構の発展の上で、戦争が果たした役割は決して小さくない。

戦争は、ブッシュ政権によって始められ、遂行されたのだが、反対勢力を挫折させ、方向をそらせる上での主要な役割は、民主党と、その"左派"支持者によって演じられた。侵略直前に、アメリカで、ベトナム戦争以来、最大の反戦抗議行動がおこなわれ、何十万人ものアメリカ人に、世界中の何百万人が加わって、差し迫る残虐行為に反対した。

戦争を終わらせようというアメリカ人の再三の試みは民主党に阻止され、2008年のオバマ選出に終わった。オバマの勝利のかなりの部分は、皮肉なことに、候補者のオバマが訴えかけた大衆の反戦感情によるものなのだ。

公式 "反戦"組織は、2004年と2006年の民主党選挙運動へと向かわせ、反戦の組織的運動を弱体化させ、オバマの勝利につけこんで、抗議行動を終わらせた。ところがブッシュの政策から離脱するどころではなく、オバマ政権は、その本質的な部分を全て継続したのだ。オバマは、イラクとアフガニスタンの占領を継続したのみならず、アフガニスタン戦争をパキスタンにまで拡大し、もう一つの石油が豊富な国リビアで新たな戦争を始めた。

イラク戦争への反対を主張した同じ諸組織が、リビア侵略を支持したのだ。これらの中産階級組織や、ネーション誌等のマスコミは、オバマ選出に乗じ、帝国主義と和睦した。

イラクからの戦闘部隊撤退は、新たな、更に残酷な戦争の前奏曲だ。資本主義の危機は、新たな段階に入りつつあり、それとともに、主要大国間の緊張が高まりつつある。アメリカ合州国の支配階級の一部には、占領を、イランのような地域大国や、中国のような勃興中の世界的大国という、より重要な脅威から、資源と注意をそらしてしまった軽率な冒険と見なすむきもある。

アメリカ支配階級は、アメリカ国内の労働者の職や、社会福祉削減を攻撃する際には、国際的に、自らの権益を主張する際に行っているのと同様の無慈悲さで行動するだろう。

アメリカ合州国における、あふれるばかりの反戦感情が、資本主義制度に反対する労働者階級の社会的・政治的運動の一環として、再び表出されるべきだ。

Joseph Kishore

著者は下記記事も推奨している。

アメリカのイラク戦争と占領、一つの社会の殺害(英語原文へのリンク)

[2007年5月19日]

記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2011/dec2011/pers-d21.shtml

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宗主国も、属国も、トップによる「ほら吹き大会」だらけ。ほらがうまいほど出世する。

次期戦闘機、予想通り、机上のモデル、F35ステルス戦闘機に決定したという。

おもいやり予算であり、傭兵化推進の一環。

敵の防空レーダーに気づかれることなく敵地に侵入し、攻撃を加えるために、ステルス=見えにくい機能を重視するのだろう。

防衛ではなく、攻撃のためにこそ、ステルス機能は必要なはずだ。

そして、「相互運用性の点でも好ましい」のだという。

相互運用性とは、ご主人様のご指示の通りに動かされる機能が高いことを意味するだろう。犬は尻尾を振るのが当たり前で、尻尾が犬を振るわけなどありえない。尻尾は、ひたすら、消費税を上げ、人殺しの装置に膨大な金をかける余裕を生み出すのだ。

IBMメイン・フレームの全盛期には、「IBM製品を買ったことが理由でクビになった者は1人もいない」と言われていた。

属国では、「米製兵器を買ったことが理由でクビになった者は1人もいない」。

属国は宗主国に貢献することが使命であることが、ステルス=見えにくいどころか、見え見えの機種決定ではある。

飛ばし行為のオリンパスに、家宅捜査が入ったという。一千億円以上の損失で、顧客、社員、株主には、甚大な損害を与えているとは言え、結局は「自己責任」の世界だろう。

一方、気の遠くなるような損害・被害をもたらし、いつになったら収束するか全く見当がつかない世界最大の事故をおこした東京電力、原子力保安院、通産省、資源エネルギー庁、原子力関連の学者諸氏、そして、原子力村のやりたい放題を赦してきた司法にも、マスコミにも、家宅捜査は決して入らない。国策の原発を推進し、大事故が起きると、収束できずに、値上げすればよい。

属国では「原発を推進したことが理由でクビになった者は1人もいない」。

そして、八ッ場ダム推進。建設中止は、民主党政権の唯一の成果になるだろうと思っていた、小生、甘かった。「ゼネコンと政治家の為のダム」という構造、二大政党という名前の一党独裁体制下で、かわるはずもないのだ。

属国では「ダムを推進したことが理由でクビになった者は1人もいない」。

「民主、自民、公明党に投票したことが理由でクビになった者は1人もいない」

現実にあわせて、自ら変化を進める力が皆無で、衰退する宗主国に、資産を吸い上げられながら、ひたすら永久属国化方針や、侵略戦争についてゆくのが専門という国。

戦争中、やがて「神風」が吹いて、救われる、という信仰があったのだろうか?いわゆる、デウス・エクス・マキナ。

今も、豪腕政治家が、権力を握れば、救われるという信仰があるように見える。豪腕神風、本当に吹くのだろうか?

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コメント

金沢大学1年生です。コメントします!
中東シリーズは日本のマスコミが興味のない(←異常)内容が盛りだくさんなので非常に貴重な情報源になっています。

イラク戦争が宗主国アメリカの侵略戦争だったということは裏日本の大学生でも知っています。ブッシュが掲げた大量破壊兵器はイラク国内には存在せず、彼はフセインの毒ガス兵器使用などに戦争の理由を転換しましたが、結局はアメリカ自身が抱える軍産複合体を養いたいがためだったことは明白ですね。アイゼンワーの警告をブッシュは知らなかったのでしょうか?環毒ガス兵器に関してもイランイラク戦争でフセインが使用した時はアメリカはその行為を非難しませんでした。矛盾ばかりが目につきます。
我らが属国日本では北朝鮮の核保有に怯えた小泉政権がインド洋での給油やサマワでの復興支援という「侵略支援」をお土産に属国におもねりました。ですが宗主国は北の核保有を認めてしまいました。この国は外交戦略という言葉を知っているのでしょうか。宗主国は日本を守る気などありません。この記事を政治家も読んでほしいものです。

追伸 個人情報の保護の件ありがとうございます。世間知らずですいません。

初めてレスいたします。
日本人が真に読むべき海外の硬派な記事を、和訳して紹介してくださる志には頭の下がる思いです。
日本のマスコミなんて今だと「橋下東京に行く」ばかり…。
石原慎太郎との「放射性ファシスト同盟」締結はゆゆしきことですが、もちろん批判なぞしません。
福島原発の報道もぐっと減って、政府の「収束宣言」を助長している有様。
日本のマスコミは死んじまったのでしょうね(笑)。
愚痴になってしまいましたが、今後もレスすると思いますのでどうぞよろしくお願いします。

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