CIAの無人機戦争に反撃
Muhammad Idrees Ahmad
2011年7月31日
"The Nation"
無人機攻撃が成功した現場に残る、血の染み、骨、内臓を、彼等は“虫潰しの跡”と呼ぶ。ネバダで操作卓に配置されている連中にとっては、それは“制圧された”ばかりの“過激派容疑者”を意味する。現場にいる人々にとって、それは、大半の場合、壊滅させられた家族や、破壊された家だ。
CIAが、パキスタンにおいて、裁判なしの殺害策を開始した2004年6月18日以来、パキスタン領土に、大半が民間人である2,500人以上の人々の遺骸によって塗られた、約250のそうした染みが残された。つい最近では、世界の別の地域を、装飾する運びとなっている。
パキスタン政府と、謎につつまれた諜報機関が、殺戮に加担しているので、CIAも大手を振って、こうしたこと全てを、やりおおせている。オバマ政権のとりこになっている主要人権擁護団体も、言い分を受け入れている。アメリカの致命的なオモチャの精度に関する公式発表を無批判に受け入れているマスコミもそうだ。最近の二つの展開が、これをすっかり変えてしまう可能性がある。
非合法戦闘員
2011年7月18日、パキスタン部族民三人、カリーム・カーン、サダウッラーと、マエゾル・カーンが、イスラマバードの警察署に、CIAの元法務顧問代理、ジョン・A・リッツォに対する公式の訴状を提出した。2009年6月25日に退職するまで、リッツォは、無人機プログラムの法務顧問をつとめており、彼の犠牲者には、カリーム・カーンの息子と弟、マエゾル・カーンの七歳の息子、サダウッラー(彼も攻撃で、両足と片目を失った)の家族のうち三人が含まれている。
ニューズウイークのタラ・マッケルヴィーのインタビューで、リッツォは、“致命的な作戦”の“殺害予定者リスト”を承認したのは自分だと自慢した。“事務的な”作戦で、標的は“粉々に吹き飛ばされた”と彼は語っている。“殺人”に連座していると、彼は自ら認めている。実際、彼はこうも自慢している。“一体何人の法律学の教授が、死刑執行令状を承認したでしょう?”しかも、これはリッツォの大胆な行為の全容ではない。アフガニスタンや他の国にある秘密軍事施設での、ブッシュ拷問プログラムでも“忙殺されている”と彼は主張している。
弁護士ミルザ・シャフザド・アクバルが、部族民の代理で作成した詳細な、第一次情報報告書(First Information Report 被害届)が、リッツォの主要共謀者で、パキスタンから逃亡しているCIA支局長のジョナサン・バンクスの住居を管轄地域に含む、イスラマバードの警察事務局に提出された。パキスタンで、殺人を犯す陰謀に加担している、リッツォは、パキスタン刑法を免れないとアクバルは信じている。
グアンタナモを巡り、ジョージ・W・ブッシュでは、歯が立たない敵として知られている著名な人権弁護士、クライブ・スタッフォード・スミスが、リッツォの国際逮捕状を手に入れるキャンペーンを率いている。裁判管轄について尋ねると、スミス弁護士は“裁判管轄の問題などありません。 これは、パキスタン領土で、パキスタン国民に対しておこなわれた、殺人を含む一連の犯罪です”と答えた。彼によれば、CIAは、“パキスタンに戦争をしかけているのだ。”“[リッツォ]は、彼が行っている犯罪に責任があることは明白です。問題は、彼が行いの報いを受けるか、当局がかくまい続けるかのどちらかです”とスミス氏は主張する。
貧困者救済組織「猶予」を主宰するスミス氏は、実務家であり、単なる形ばかりのしぐさなどに関心はない。以前、彼はグアンタナモの囚人に会う権利について、ブッシュ政権に対する訴訟に勝ち、これまで、そのうち65名の釈放を勝ち取った。イスラマバード警察が令状を発行しさえすれば、国際刑事警察機構も、事件を追及せざるを得なくなると、彼は確信している。更に、この試訴がうまくゆけば、無人機操縦者も含めるよう拡張するつもりだと、彼は語っている。
これまでのところ、アメリカの立場は、交戦中の正当防衛だと主張するか、あるいは、犠牲者が実際よりも少ないふりをして、作戦をより好ましいものにするかのいずれかだ。どちらの主張も、維持することは不可能だ。
戦時国際法は、意図的で、不均衡、あるいは、無差別でない限りは、民間人殺害を禁じていない。ところが、アクバルとスミスは、こうした法律は、CIAの無人機戦争には適用されないという。“アメリカは、戦時国際法に従わねばなりません,”と、最近スミスは、ガーディアンに語っている。しかし“問題は、これは戦争では無いということなのです”アメリカとパキスタンの間で、対立状態が宣言されているわけではない。
更に、ジョージタウン大学の戦時国際法の専門家ゲーリー・ソリスは、“無人飛行機を操縦しているCIA要員は敵対行為に直接従事する民間人であり、この行為で、彼等は‘非合法戦闘員’となり、おそらく起訴対象になるでしょう。”とニューズウイークに語っている。
数で見る殺害
アメリカ政府は、特に有効な兵器の驚くべき精度について、大胆な主張をしている。今年早々の記者会見で、アメリカ大統領バラク・オバマの首席テロ対策担当顧問、ジョン・ブレナンは、CIAの無人機戦争では“ほぼ過去一年間、巻き添えによる死者は一人もない”と主張した。
もし、明らかな間違えでないにしても、これは実に注目に値する。ロンドンに本拠を置く「調査報道ビューロー(TBIJ)」による大規模な調査が、昨年8月以降、わずか十回のCIA無人機攻撃で、少なくとも45人の民間人と確認された人々が殺害されていることを明らかにした。こうした人々には、とりわけ、女性、子供、警官、学生や救援者が含まれている。TBIJは、更に15回の攻撃で、65人の民間人が殺害されている可能性も明らかにした。
無人機攻撃による死傷者について、最も良く引用されてはいるが、信憑性の低い、二つの情報源である、ニュー・アメリカン財団や、ネオコンの、ロング・ワー・ジャーナルとは違って、TBIJ調査は、公式声明や、もっぱらそれに依存しているマスコミ報道に頼っていない。TBIJ調査を率いるジャーナリスト、クリス・ウッズは、今月始め、攻撃に関する何千ものマスコミ報道だけでなく、最初の出来事から、数日後、数週間後、あるいは、数ヶ月後に書かれたものを含めて検討していると語ってくれた。ビューローはジャーナリスト、調査員や、攻撃で殺害された民間人の代理人をしている弁護士とも協力している。ビューローは集めた証拠を裏付けるため、ワジリスタンで自前の調査員も雇用している。
ただし、ビューローは、その民間人死傷者の数値は“内輪の見積もり”だとしている。リストには、身分が民間人であることが、複数の情報源で確認できる人々しか掲載していない。実際の数値はずっと大きい可能性が高い。地域への旅行が禁じられていることからして、戦争の犠牲者のより包括的な評価は、不可能な状態のままだ。
尊敬されているパキスタン人ジャーナリスト、ラヒムッラー・ユスフザイによれば、外部のジャーナリストが部族地域に旅行するのはもはや不可能なので、その結果、大半の報道は、ミランシャーとミル・アリに駐在している、わずかな数の通信員によるものだ。
地域の二大都市の中に閉じ込められていては、FATAを本拠とするジャーナリストでさえ、彼等の境界外でおきている全ての攻撃についての情報を得るには、軍の報道局に電話しなければならない。2008年11月29日から、2011年6月15日までの間に起きた、北および南ワジリスタンでの、27件の無人機攻撃の結果を撮影した、39歳のヌール・ベフラムは素晴らしい勇気を発揮した。写真は、ロンドンのビーコンズフィールド・ギャラリーで現在展示中だ。当然ながら、出現した写真は、CIAの主張とは、うまく一致しない。“10人から15人殺害された中で、一人は過激派かも知れません”と彼はガーディアンに語っている。
CIAは、無人機攻撃で殺害された約2,500人のパキスタン人のうち、35人は“重要な標的”、つまり実際に殺害する予定だった人々と主張している。それ以外は大半が“過激派容疑者”だと主張している。シンクタンク世界というのは、言語上、非常に難点があるようだ。ニュー・アメリカン財団のデータベースには、“民間人”用の分類はない。“過激派”と“その他”しかない。アメリカとパキスタンの諜報組織の経歴を考えれば、疑念を抱く理由は十分あるが、ビューローの調査を踏まえると、我々は、そうでないと証明されない限り、今後無人機戦争による全ての犠牲者は民間人だとみなす方が賢明だろう。
しかし、たとえ犠牲者が過激派であることが立証されても、アメリカとパキスタンの間で敵対状態は宣言されておらず、殺人は、依然、裁判なしの殺害にあたる。2001年7月、イスラエルによる、パレスチナ人“標的殺害”後、当時の駐イスラエル米大使マーチン・インディクがこう宣言してから、事態は大きく進展したのだ。“アメリカ合州国政府は、標的暗殺に反対であることを、きっぱり公言している... それは裁判なしの殺害であり、我々は、それを支持していない。”
オバマの下で、裁判なしの殺害は、拘留に対する、さほど複雑でない代案として、採用された。今年始め、ニューズウイーク誌は、オバマの法務催眠術師の一人で、オバマ政権のホワイト・ハウス高官に広く読まれている主題のエッセイを書いた、アメリカン大学のケネス・アンダーソンがこう言ったと引用している。“アメリカの政治、法状況下では、強引な尋問は、いずれにせよ問題のある活動なので、殺害ではなく、捕獲をしようという理由はあまりない。”
“もしも、殺害するつもりならば、降伏という面倒な問題が生じないように、離れた場所から、そうしようということになる。”
繰り延べされた報復
これまで、無人機作戦は、紛れもない惨事でありつづけてきた。殺害された、一握りのタリバンとアルカイダ幹部は、一層残酷な指導部にとって代わられ、彼等は、作戦区域を、パキスタン本土内へと、次第に拡げている。“過激派”が殺害されても、大抵は歩兵であり、彼等が死亡しても、反体制側に対する、目に見える影響は皆無だ。実際、殺害は、憤りを強め、過激派の支持基盤を拡げるのを促進しているに過ぎない。葬式や救助者を爆撃するというCIAの行動は、そうでなければ、タリバンのことを軽蔑していたはずの人々をさえ、比類なく残酷な敵による共通の犠牲者として、タリバンと自分を同一視するようにしてしまう。アメリカ人に反撃することは出来ないので、タリバンは、同様な残虐な攻撃でパキスタン人兵士や民間人に報復する。
二年前、ペシャワルに対する最も猛烈なテロ攻撃のさなか、ユスフザイに話しかけた際、彼はずっと楽観的で、アメリカがアフガニスタンから撤退しさえすれば、交戦状態は沈静化すると言っていた。過去二年間の出来事が、彼の楽観主義を和らげた。先週、再び彼に話しかけると、状況がひどく悪化したので、パキスタンは、アメリカ撤退後も、長期間、アメリカの無謀な戦争の結果を抱えて暮らすしかないだろうと彼は言った。
無人機攻撃は、混乱を悪化させているにすぎない。
イギリスとパキスタンで活動している人々は、オバマの秘密主義の戦争を透明化し、その犠牲者達に正義をもたらすことを固く決意している。
アクバル弁護士は、電子メールで、彼の調査員チームとともに、“無人機攻撃で殺害された人物の正体を調べるため、ニュース報道以上に、情報を探し出すよう作業している”と書いてきた。彼は現在、CIA無人機によって家族を失った、益々多くの人々の代理人をしており、さらに多くの依頼人が現れる予定だ。
“これは、この種の‘ビデオゲームによる殺害’を止めるための、非常に長く、平和な戦いの始まりにすぎません”とスミス氏は言う。“我々に一番必要なのは、進んで我々とともに働き、パキスタン国境地域の現場で、実際、一体何が起きているのかについての本当の情報提供に協力してくれる仲間です。”アルジャジーラ
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日経に興味あるニュースが載っていた。真偽はわからない。
小沢・鳩山・旧社会党系の3派連携浮上 民主代表選 海江田万里氏を擁立か
経産省の走狗、原発を推進する傀儡を、豪腕政治家、擁立するのだろうか?たしかに、みこしは軽くてパーがいい、だろう。
2007年10月、豪腕政治家は、アフガニスタンで違法な侵略・駐留・殺戮を推進するISAF(国際治安支援部隊)参加の意向を明らかにしている。以来、その方針を変えたという話、きいていない。
あの北大西洋条約機構(NATO)軍が、国際治安支援部隊の指揮権を持っている。
NATO軍が、コソボやアフガニスタンを含め、随所で、いかに素晴らしい活躍をしているかは皆様ご存じだろう。
- 政権交替しても意味がない二大派閥しか選べない小選挙区制度導入の主役
- 原発推進派
- (アフガニスタン)国際治安支援部隊参加論者
である政治家に、庶民のためになる施策で、何か期待できるもの、あるのだろうか?
原子力・完全不安院、安全委員会が、環境省に統合されるという。
「統合されるまで、経産省下で、真っ赤な嘘を平然と言っていた人々が、彼等をとりまく環境、政府官僚、企業、学者、労組、マスコミがそのままの状態で、環境省下になると、突然まともな発言をしはじめる」という夢のような可能性、一体あるのだろうか?
所属を変えるだけで、犯罪者の更生が可能なのであれば、多くの経済犯罪、とうの昔に激減していたはずだろう。
人間ではなく、ロボットの鉄人28号ならば、悪人が操縦をすれば、悪いことをし、正太郎が操縦すれば、良いことをした、ような記憶はぼんやりとあるけれど。
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