サウジ向け武器商談: アメリカ、ペルシャ湾に波風をたてる
Rannie Amiri
Global Research
2010年9月16日
これは、アメリカ合州国史上、最大の海外向け武器輸出商談となるだろう。
議会の承認を待って、オバマ政権は、600億ドルの先進的な航空機や高度な兵器を、サウジアラビア王国に販売しようとしている。サウジアラビア海軍に、提案されていた強化案と、弾道ミサイル防衛システムに、300億ドルを追加し、結局は、巨大な雇用創出計画と、サウジ-イラン関係の一層の悪化と、ペルシャ湾における緊張の高まり、全て計算しつくされた項目だ。
この途方もなく大きな武器商談が、月曜日のウォール・ストリート・ジャーナルの記事掲載に間に合うように公表されたということは、イスラエルによる本気の反対なしの結果であることを示しており、サウジアラビアとイスラエルは、イランに対する両国の敵意によって結ばれた、益々深まる絆を維持しているのだという、以前からの見方に信憑性を与えるものだ。
合意は、リヤドが、84機のF-15戦闘機を新規購入し、更に70機を強化し、三種類の攻撃型ヘリコプター、70機のアパッチ、72機のブラック・ホークと、36機のリトル・バードを購入することを承認するものだ。もしアメリカ議会が大幅な変更をせず、サウジアラビアが完全なパッケージを選択すれば、王国が、イランの影響力に反撃するのを支援するためのものとされる、900億ドルの商談が実現する。
ボーイングはブラック・ホーク以外の全航空機の製造を引き受けることになる。商談は、44の州において、少なくとも、75,000の直接的、あるいは間接的な雇用を維持することになるだろうと推測している。反射的に親イスラエル派の議員たちによる提案に対する批判が控えられているのは、職を生み出すという可能性よりも、戦闘機には長距離ミサイルは装備されず、一層先進的な次世代主力戦闘機F-35さえもが、10年以上にわたる300億ドルの軍事援助の一環として、間もなく、イスラエルに販売される予定だと分かっていることが追い風になっているのだ。
レキシントン研究所の軍事コンサルタント、ローレン・トンプソンは“アメリカ国内の兵器需要は急減しており、大手武器メーカーは、その差を穴埋めする為、海外で、サウジアラビアのような顧客を探し求めていた。アメリカ政府が厳しい財政事情ある時期に、こうした国々は使える金を持っている”と語っている。
オバマ政権が着手しようとしている経済的刺激なるものが、ペルシャ湾のライバル、サウジアラビアとイランの対立を緩和するのではなく、悪化させることをだしにして実現するものだというのは嘆かわしいことだ。
戦略国際問題研究所(CSIS)の軍事アナリスト、アンソニー・コーズマンは、予想されている商談は“ …イランに、そのミサイルや空軍力は、サウジアラビアや、近隣諸国に対し使用できないと納得させるだけの能力を、サウジアラビアに与えるのに役立つだろう。”と、皮相的に結論づけている。
イランが軍事力を、アラブの隣国に対して使用することを考えるほど愚かだ、と誰かが本気で信じているのであれば、そういうことも言えるだろう。実際、サウジアラビアを警戒すべきなのは、まず間違いなくイランの方なのだ。
サンデー・タイムズが、2010年6月の“サウジアラビア、イランの原子力施設を攻撃するため、イスラエルの領空通過を承認”と題する記事で報じた通り、アメリカの国防筋は、サウジアラビアが、万一イスラエルがイランへの奇襲爆撃を実行すると決定した場合には、防空警備態勢を解き、イスラエルが細長い空域を利用するのを認めることに合意したと語っている。
“サウジは、イスラエルにサウジ領空通過を許可しており、サウジは見て見ぬふりをするでしょう … これは全てアメリカ国務省の承認を得て行われているのです”とある情報筋は語っている。
敵対者イランに対するサウジアラビアの姿勢の原因は多元的だ。ワッハーブ派の同国支配者集団による、シーア派イスラム教徒(そもそも、サウド家が統治をするにあたって、その宗教的認可が必要とされている同じワッハーブ派教徒だ)に対する不寛容のみならず、イランの1979年イスラム革命がもたらし、また今後も鼓舞し続けるであろうことについての理解も含まれている。つまり抑圧的で腐敗した、西欧に支援される王朝の打倒が。
同じ懸念は、同じ考えを持った他のペルシャ湾の君主国やエジプトやヨルダン等々、いずれもアメリカからの軍事的金品の受益者達が抱いている。実際、アメリカとイスラエルは、こうした恐怖を、かき立て、そこにつけこむ上で、最善の努力を払っている。
サウジアラビアとの大規模な兵器商談は、戦争への更なる一歩、ペルシャ湾における死に向かう更なる一歩に過ぎない。
Rannie Amiriは、独立した中東評論家。
Rannie AmiriによるGlobal Research記事
記事原文のurl:www.globalresearch.ca/index.php?context=va&aid=21073
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グローバルホーク最新鋭無人偵察機、グアムに配備されたと、8月20日のテレビ・ニュースで報道していた。
最近、講談社メチエ選書『湾岸産油国 レンティア国家のゆくえ』という本が刊行された。(読んではいない。)
石油収入が豊富で、所得税はなく、教育費は無料。
「経済発展が民主化を促進する」ことは全くないまま、「石油王が統治する金満国家」のことを書いた本のようだ。
昔クェートで仕事をした知人が語ってくれたクェートの様子、頭から離れない。
「クェート国籍の人は、国籍だけで十分に生きられるので、仕事をしない。真面目に働いているのは、インド、パキスタン、フィリピン等々から来た人々だけ。」
別の人から言われた話も、本当かどうかわからないが記憶に残っている。
「車を運転していて、万が一、人か木にぶつかりそうになったら、人にぶつかる方が良い。道路を歩いているのは裕福な現地の人ではなく、出稼ぎ外国人。補償は安く済む。一方、並木は膨大な水道代をかけて育てているので、倒したら賠償が大変。」
武器というもの、使わなければ、膨大な無駄だが、製造する国で雇用は実現する。
使えば膨大な人数の不幸を、余所の国に生み出す。
資本主義の企業が武器を製造している以上、膨大な被害者の不幸は、武器製造企業社員や、株主の幸福になる。それが、国家運営の基本として、制度に組み込まれている。
不幸な被害者が増えれば増えるほど、武器製造企業社員や株主は幸福になれる。
従って、世界最大の武器製造・輸出国家は、必然的に、世界最大の他国不幸製造国家になるだろう。最大不幸製造国家。
天木直人氏のブログに、この商談に触れた記事がある。
全く無駄な武器購入をさせらせている点で、日本、人後に落ちない。
無条件で、トップ・クラスだろう。
福祉や教育に掛ける金はないが、宗主国に貢ぐ金ならいくらでもある。
サウジとの大きな違いは、日本がぼろ屑ミサイルを購入させられる資金、石油がわいて生まれる資金ではないところだろうか?
サウジ国籍の人は「サウジ人に生まれた」だけで安楽な生活が保障されている。
サウジ人の安楽な生活を可能にしているのは、出稼ぎ外国人だ。
サウジはクェートでも、アブダビでも置き換え可能だが、さらに...
まさか「日本では一握りの特権階級の人は「特権階級に生まれた」だけで安楽な生活が保障され、特権階級の人々の安楽な生活を可能にしているのは、負け組日本人」という状況ではなかろう?(と思いたい。)
サウジと日本とで、全く違うことが一つ。サウジの富豪は石油を売って生きているが、その金で武器をかわされる。日本は、石油が出ないので、民生品を輸出し、その金で武器をかわされている。サウジの企業と違って、日本企業、民生でなく、付加価値がはるかに高い、要するに、もっと儲かる殺人ハイテク武器輸出で生きる国に急速に変貌する。もろちん、ハイテク武器は、宗主国にしか売れないが。いや、宗主国の許可を得れば、石油と引き換えに、ハイテク武器をサウジやクェートにも売れるだろう。武器・殺戮立国万歳!
大学生・高校生の求人が極めて少ないという。
尖閣での紛争が突如激化した。
そこに、
結局は、巨大な雇用創出計画と、日本-中国関係の一層の悪化と、尖閣近海における緊張の高まり、全て計算しつくされた項目だ、などとは言うまい。
とはいえ、「特捜検事が、犯罪を犯す」国家組織、どんな犯罪でも平然とデッチあげる可能性は高いと、素人には思えてしまう。妄想であって欲しいものだ。せめて、裁判員制度の廃止にいたらないだろうか。素人には証拠が本当か否かなど、判断不可能なのだから。
戦争は平和だ。属国は独立国だ。犯罪組織は検察だ。
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