米軍司令官、アフガニスタンにおける米軍の長期駐留を予告
wsws.org
Peter Symonds
2009年2月21日
アフガニスタン駐留米軍最高司令官、デービッド・マキャナン大将は、水曜日、今週発表した、アメリカ兵員数の大幅増は、何年も継続しなければならないものだと警告した。彼の発言は、オバマ政権が、必然的にこの地域全体、特に中央アジアでの緊張を高めることになる、アフガニスタンと隣国パキスタンでの戦争の劇的なエスカレーション準備をしている事実を強調するものだ。
アメリカが先導するアフガニスタン占領を強化すべく、オバマ大統領は、火曜日追加のアメリカ兵17,000人を派兵すると発表した。マキャナン大将は報道陣に対し、兵員増強は、「一時的な兵力増強ではなく」、「しばらくの間、維持する必要がある」だろうと語り、期間として「今後、三、四年ないし五年間」を考えていると補足した。約30,000人のNATO指揮下で作戦を展開しているアメリカ以外の諸国の兵士に加え、アメリカはアフガニスタンに既に36,000人の兵士を展開している。
最近の増派は、最後の増派ではない。マキャナン大将は、既に発表済のものに加え、更に10,000人をアフガニスタンに派兵して欲しいという以前からの要求を繰り返した。アメリカ国防長官ロバート・ゲーツは、アフガニスタンに更にアメリカ兵士を増派する可能性は否定しなかったが、オバマ政権が現在の戦略レビューを完了してしまうまでは、これ以上の追加兵員は派兵しないと述べた。
ポーランドで開催されたNATO国防相会議で、ゲーツ長官は、NATO同盟諸国に、アフガニスタン戦争を更に支援するようしつこく要求した。ヤープ・デ・ホープ・スヘッフェルNATO事務総長は、NATOは「アフガニスタンで失敗する」わけにはゆかないと警告し、「チームの全メンバーは... 更に身を寄せ合い、2009年には、もっと頑張らねばならない」と力説した。だが約束された負担は形ばかりのもので、NATO内部における、アメリカとドイツやフランスなどのヨーロッパの大国との間で続いている深い緊張関係を際立たせている。
イギリスのジョン・ハットン国防相は、イギリスとしては既に十分な負担をしているとぼやき、「NATOに加盟しているヨーロッパ諸国は一層努力するべきだ」と語った。イタリアは、兵士500人を送る約束をした。ドイツは追加兵士600人を派兵する可能性を示唆したが、その大半は、アフガニスタンの平和な北部で、8月に行われる予定の選挙を支援するものだ。フランスは追加兵員の約束をしていない。追加兵力の欠如に対する失望を表明しながら、ゲーツ長官は、NATO加盟諸国に、経済支援、およびアフガニスタン治安部隊訓練での貢献を強く求めた。
NATOサミットでは、中央アジアにおける拮抗関係が深化しているアフガニスタン戦争の一部に脚光があたった。このサミット会議の一日前に、キルギスタン国会は、内陸国アフガニスタンに駐留するアメリカとNATOの軍への補給に不可欠な、主要米空軍基地閉鎖の閉鎖を可決した。隣国パキスタン経由の補給線が、反米武装勢力による猛攻を受けている中、ペンタゴンは中央アジア経由の代替輸送路を模索している。
しかしながら、ロシアは、この地域を経由するあらゆるアメリカ補給物資の輸送は、ロシアの協力次第であり、アメリカの譲歩、特にアメリカ対弾道ミサイルの東欧NATO同盟諸国への配備が不可欠であることを明らかにした。マナス空軍基地閉鎖の決定前に、モスクワは、キルギスタンへの大型援助計画を発表した。同時に、ロシアは、一定の非軍事的なアメリカの補給品がラトビア、ロシア、カザフスタンとウズベキスタンを経由することを承認し、最初の列車貨物が木曜日に出発した。
この問題はNATO内部で溝を生み出している。アメリカに本拠を置くシンクタンク、ストラトフォーは、こうコメントした。「アフガニスタン増派に熱意が欠けていることは、ヨーロッパ諸国内において、包括的な戦略と補給路両面での軍事計画そのものをめぐる疑念の増大に対応している。しかも、ヨーロッパはアメリカが、いかに、また、どれだけ、ロシアを関与させるつもりなのかをなんとか知りたがっている."フランスとドイツはロシアとの和解を支持しているが、東欧諸国は、モスクワに対するアメリカの保護を弱めるようないかなる合意にも反対している。
アメリカは、アフガニスタンおける軍事状況の悪化に直面している。アメリカ兵員の増加について触れ、マキャナン大将はこう語った。「これで我々が可能になるのは、治安状況の力学の変化だ。特に、よく言っても膠着状態にある南部アフガニスタンにおいて。」と彼はつけ加えた。「2009年は厳しい年になると言わざるを得ない。」
他のアメリカ人専門家達の警告は、それほど慎重ではない。センター・フォー・ニュー・アメリカン・セキュりティーのジョン・ナグルは、イギリスのオブザーバー紙に、アフガニスタン駐留アメリカ兵の人数は100,000人にまで増える可能性があると語った。「緊急の課題は出血を止めることだ。30,000人の兵士は止血帯だ... [しかし]我々にはそれしか兵員がない。もしもオバマが二期大統領をつとめれば、任期が終わる頃には、イラクでは大使館に海兵隊員の警備兵がいるだけになっている可能性もある。しかし、アフガニスタンでは、何万人も兵士が駐留しているだろう。」
先週のアメリカ議会の委員会における詳細説明で、CSIS(国際戦略問題研究所)のアンソニー・コーデスマンは、「アフガニスタンとパキスタンでの戦争で、アメリカは敗北しつつあり、状況を決定的に反転させるには、最大あと2年しか時間がない」と、ずばり警告した。彼は、武装反抗勢力との軍事衝突が33パーセント増加し、道路脇の手製爆弾が27パーセント、地対空砲火が、67パーセント増えていることを示している2008年の軍事統計を引用した。
しかしながら、コーデスマンは、こうした詳細も、タリバンや他の反占領に反対する民兵の影響力が増大しているアフガニスタンにとっては二次的なことだと強調した。アフガニスタンにおいて、占領と、傀儡大統領ハミド・カルザイの支持が低下していることを示す、今月発表されたABC世論調査結果の一部を引用した。わずか18パーセントが、アメリカとNATO軍兵士の何らかの増強を支持し、44パーセントが削減を望んでいる。
タリバンに対する支持は、パシュトゥーン族が七年以上にわたって捜索、恣意的な拘留、軍事攻撃や爆撃にさられてきたアフガニスタン南部と東部で最も強い。全体として、25パーセントのアフガニスタン人が、占領軍に対する武力攻撃は正当化できると感じている。紛争の多さがトップの五州では、この数値は38パーセントにも増えた。
この調査は、生活水準が悪化している証拠も提供している。自分たちの経済的な機会が「非常に悪い」と評価するアフガニスタン人の比率は、2006年の17パーセントから、倍増し、33パーセントだ。半数以上が収入が一カ月100ドル以下で、93パーセントが300ドル以下だと報じている。燃料価格、電力、医療、道路や他のインフラストラクチャーの欠如に関する苦情が多い。回答者のほぼ四分の三が、世界的な経済危機の衝撃を懸念していた。
こうした課題に対処するどころではなく、アフガニスタンでのアメリカ兵増派は、反占領武装反抗勢力の新兵採用に、切れ目のない人材供給をもたらしている、怒りと恨みを悪化させるばかりだろう。さらに、新兵の大半は、アメリカ軍とカルザイ政府の支配が脆弱な同国南部と、タリバン戦士がパキスタン国内の基地から浸透することへの阻止活動として、パキスタン国境に配属される。
アメリカのアフガニスタン戦争は、既にパキスタン国境を越えて広がっており、イスラマバード政府を不安定にしている。オバマ政権は、パキスタン内国境沿いの部族地域の標的への無人飛行機からのアメリカのミサイル攻撃を継続しており、多数の一般人を殺害し、現地の怒りに油を注いでいる。少なくともアメリカの無人飛行機のうち何機かは、パキスタン国内の基地から発進しているという証拠は、これまで、一切預かり知らず、関与もしていないと主張してきた政府が直面する政治的困難をこじらせるだろ。ロンドンに本拠を持つタイムズとパキスタン・ニューズは、いずれも南部パキスタンのシャムシ空軍基地に駐機している無人飛行機三機のグーグル・アース画像を公表した。
ワシントンからの圧力のもと、パキスタン軍は、連邦直轄部族地域 (FATA)で、反米戦士を鎮圧すべく、戦争を遂行してきた。戦闘には120,000人程の兵士が参加し、戦闘で1,500人以上が殺害された。軍は、およそ100億ドルのアメリカ援助を得ているが、町や村を荒廃させ、何十万人もの一般人が逃げ出す羽目になっている。武装反抗勢力は、FATAを越え、スワット渓谷を含む北西辺境州の地域にまで広がっており、パキスタンでもっとも人口の多いパンジャブ州にすら及んでいる。
パキスタンは今週、スワット渓谷の武装反抗勢力と、停戦協定の一環として、地域にイスラム法を適用するという、不安定な合意に至ったと発表した。アメリカのアフガニスタン・パキスタン特使、リチャード・ホルブルックは、マスコミに対し、オバマ政権は、「休戦が、降伏に変わることはない」ことを懸念していると語った。パキスタン大統領アースィフ・アリー・ザルダーリーと話をしたが、大統領は、それは「事実と違う」と請け負い、合意は「暫定的な対応」だと説明したとのことだ。
アメリカのゲーツ国防長官は、若干異なる方針をとっており、金曜日、もしもそれが、和解と武装反抗勢力の武装解除につながるのであれば、合意は受け入れられると語った。アメリカが、現地の部族指導者を抱き込み、彼らを強硬派武装反抗勢力に敵対させるという、イラクで使われている戦術を応用して、アフガニスタン反占領各派に、同様の対策を、採用する予定であることを明らかにした。「究極的にはある種の政治的和解は、アフガニスタンにおける長期的解決策の一部でなければならないと、我々は終始言い続けてきた」とゲーツは語っている。
しかしながら、ワシントンの新植民地主義的アフガニスタン占領は、広く行き渡った敵意と、増大する武装抵抗とに直面している。19世紀のイギリス軍や1980年代のソ連軍が敗北した場所で、アメリカが勝利する能力について尋ねられて、マッキナン大将は単に、それは「非常に不適切な比較」と述べたにすぎない。この比較は、完璧に適切だ。イギリスのインド統治や、ソ連のスターリン主義官僚制度と同様、ワシントンはアフガニスタン征服と、中央アジアにおける、アメリカの経済的、戦略的野望追求の為の犯罪的な戦争を続行している。今や、更に数千人のアメリカ兵が、終わる兆しも皆無の泥沼に派遣されようとしている。
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