沈黙の暴力によるガザの苦難を大統領候補者も議会も無視
2008年3月8-9日
ラルフ・ネーダー
世界最大の監獄、つまり150万人の囚人が収容されているガザ監獄は、彼らの多くは飢え、病気で、無一文なのだが、アメリカのマスコミが報道する以上に広範な範囲のイスラエル国民による同情と、抗議を受けている。
これとは対照的に、国際救援組織からの食料、医薬品、燃料や他の必需品が、この狭い飛び地に流れ込むのを妨害する、イスラエル政府による封鎖で引き起こされている人道的危機に対し、ジョン・マケイン、ヒラリー・クリントンやバラク・オバマを含めた議員たちは、予想通りの沈黙あるいは冷淡さという対応をした。この対比は、より多くの関心と論議に値する。
イスラエルはガザを40年間軍事占領してきた。イスラエルは、2005年に植民地から撤退はしたものの、領空と領海を含め、あらゆる交通手段を支配し、この地域を掌握し続けている。イスラエルのF-16と武装ヘリコプターが、定期的にますます多くの地域、公共施設や、住宅地ををずたずたにしているが、これはジュネーブ第四条約の第五十五条〔食糧、医薬品〕に違反し、一般市民に集団的処罰を課するものだ。国際赤十字が、国際人道法を確立する条約を引用して宣言するとおり「一般市民は全体および個人として、攻撃されてはならない。」
ネーション誌によると、素晴らしいイスラエルの人権団体B'Tselemは、ガザからの原始的なロケット弾は、過去4年間に、13人のイスラエル人の命を奪ったが、イスラエル軍は、過去二年間だけでも、占領地域で、1,000人以上のパレスチナ人を殺害していると報告している。そのうち、200人ほどの子供を含むが、ほぼ半数は一般市民だ。
イスラエル政府は、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のような組織の国際的な救援に依存しているほぼ百万人のパレスチナ人に、食料をもたらそうとしている大半のトラックが、ガザに入ることを妨害している。崩壊しつつある医療施設、悲惨な電力遮断、全体的な栄養失調や、破壊した水道による汚染された飲料水のために命が失われることが無視されている。この苦難という沈黙の暴力によって、息を引き取る、子供たちと大人の一般市民である家族たちがいるのに、議員の98パーセントは、アメリカ納税者の金を何百万ドルも毎年イスラエルに供与する一方で、これに触れることを避けている。UNRWAは言う。「子供たちの成長阻害の証拠が現れている。子供たちの成長は遅れている。」癌患者は 化学療法受けられなくされ、腎臓病患者は透析療養を止めさせられ、未熟児は血液凝固用の医薬を受けられずにいる。
窮状、死亡率、罹患率は日々悪化している。UNRWAの事務局長は以下の様に要約している。「国際社会が、それを知りながら、黙認し、人によっては、奨励しているとさえ表現する場合もあろうが、そうした中、ガザは意図的に絶望的な極貧状態におとしめられる、まさに初めての地域となろうとしている。」
双方側の強硬論者と、民主党と共和党の強硬論者の渦の中で、イスラエルで高い評価を受けている新聞ハーレツによる最近の世論調査(2008年2月27日)を見てみよう。「64パーセントのイスラエル人が、政府は、停戦と、捕虜にされている兵士ジラド・シャリトの解放に向けて、ガザのハマース政府と直接対話をすべきだと言っている。三分の一以下(28パーセント)は、依然そのような対話に反対している。益々多くの著名人や、幹部を含めたイスラエル国防軍予備兵が、ハマースとの対話に対し同様の立場を表明している。」
パレスチナ解放機構(PLO)に対抗すべく、ずっと昔イスラエルとアメリカ政府の支援によって作り出されたハマースは再三停戦提案をしてきた。中東専門家、スティーヴ・ニヴァ教授によると、イスラエル首相は、「イスラエルに停戦を受け入れるよう求める政治家や治安担当幹部の人数が増えつつある」にもかかわらず、それを拒否しているという。
強硬論者のブッシュ政権と、議会で、相対的に強硬論者の民主党や、(それ自身往々にして、パレスチナ人に対するイスラエルの行動に対してタカ派的な)米国ユダヤ委員会によるアメリカ・ユダヤ民族の最近の調査の間には、よく似た対比がある。
もし民主党と共和党が、中東の和平に対して本気なのであれば、彼らは、イスラエル人とパレスチナ人が提携する広範な平和運動を大きく紹介しているはずだ。こうした努力の中に、紛争のおかげで家族の一員を失い、両親たちのサークル、「遺族フォーラム」を作るために結集した、500以上の勇気あるイスラエル人とパレスチナ人の家族がある。この家族は一丸となって、紛争に、平和的な解決をもたらそうという非暴力的な運動を推進している。家族のいくつかが既にアメリカ合州国を訪れているにもかかわらず、彼らの努力は、この混乱している地域に注目しているアメリカの評論家達にさえほとんど知られていない。
エンカウンター・ポイントという題名の新作DVDドキュメンタリー(www.encounterpoint.com参照)は、マハトマ・ガンジーとネルソン・マンデラの平和哲学がしみ込んだこのパレスチナ人とイスラエル人家族の活動や情熱を詳しく物語っている。
議員たちが彼らに対して公聴会、会合を設けると皆さんはお考えだろうか? あなた方の選挙区の議員たちに、そうするようにと言う価値はあるだろう。
ラルフ・ネーダーは、無所属で大統領候補に出馬している。
本記事の原文urlアドレス:www.counterpunch.org/nader03082008.html
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