マスコミはどのように階級戦争を隠蔽しているか
ノーマン・ソロモン、AlterNet 2007年11月26日掲載の記事
マスコミは組織労働者だけを軽くあしらっているわけではない。未組織労働者も無視している。
数十年前、1/3以上のアメリカの労働者が組合に加入していた。現在この数値は10パーセント程度にまで落ちている。そしてマスコミはこの大幅下落の中で重要な位置を占めている。
組合が萎縮するにつれ、体制派マスコミは、組合に対して記事も放送時間も減らす口実を見つけ出す。マスコミ報道が減るにつれ、労働組合が自分たちの労働生活に関係があると思うアメリカ人の数も減ってゆく。
だが労働に関わるメディアの問題は、記事、テレビ、ラジオから組合の話が消えるだけでは終わらない。メディアは組織労働者だけを軽くあしらっているわけではない。未組織労働者のことも、忌避しているのだ。
したがって、職場と生計に関わる話題がニュースに乗る時は、雇用者側の立場から取り上げられる。競争せねばならない企業の視点や危機が強調されがちだ。
そう、確かに企業は競争せざるを得ない。そして労働者は自分と家族が、食事をし、服を着、家に住まねばならない。そして労働者は十分な医療が欲しいと期待するものだ。
健康保険の問題は、昨今多くの候補者にとって政治上の話の種だ。その一方、組織労働者たちは、何であれ自分たちの得ている医療保障を維持しようとすると、自分の立場が弱くなっていることに気がつく。そして未組織労働者には、医療保障などほとんどあるいは、全くない。
全てのマスコミが企業収益の困難さばかり言い立てる中、人的要素は、どさくさに紛れて抜かされるのがお決まりだ。日々の企業ニュースや一般的報道の中で、ぎりぎりの貧困状態にある人々の生活は、抽象的な概念として描かれがちとなる。あるいは、ただ触れずに済まされるだけのことだ。
イラクにおける戦争の話題がマスコミではお盛んだ。その報道の質について多くは語れないが、マスコミは少なくとも軍事的な戦争が海外では起きていることだけは報道し続けている。しかしアメリカ国内で起きている経済戦争についてはどうだろう?
「階級戦争」といった言葉はアメリカのマスコミでは疑わしいものにさせられている。余りに無遠慮で、余りに戦闘的で、余りに雄弁的だという汚名を着せられている。だがそれを何と呼ぼうと、経済的な利害の衝突は我々につきものなのだ。
トップダウンで遂行される階級戦争は、輝かしい活動であり、企業お抱えのマスコミによって、ある種不愉快な現実を具合よく描き出したり、忌避したりするのも、成功の秘訣の一部だ。数十億ドル規模の企業が、数十億ドル規模の企業の権力に対向しようとするようなマスコミ企業を所有しようとしたり、そうしたマスコミ企業を使って宣伝をしたいなどと考えるはずがないことは、ロケット科学者あるいは社会科学者でなくともわかることだ。
支配的であるにもかかわらず、ほとんど触れられることがない、過去数十年間にわたるマスコミの変貌の一つは、経済ニュースを一般ニュースとして扱う傾向が急激に高まったことだ。その結果、何千万人もの低収入の人々が、金回りのいい投資家にとっての難題やらチャンスに関するニュースを常時聞かされる。
その逆は、もちろんありえない。極めて豊かな我々の社会では、新聞を取り上げたり、あるいは夜のニュースにチャンネルを合わせたりした時に、アメリカの貧しい人々のひどい苦境について、あるいはそういう人々の一人になるのがどういうことかという一連の話やら解説に出会うようなことは滅多にない。しかも、多数の人々が益々貧しくなる直接の結果として、わずかな人々が不愉快なほど金持ちになる様を報道するのを見るのは、更にまれなことだ。
「階級戦争」? アメリカで最も有力な編集者たちは、この言葉にはうんざりだろう。しかし、日々、何百万人ものアメリカ人は痛いほど感じている。どんな表現で呼ぼうと、階級戦争は続いており、自分たちは敗北しつつあることを。
記事原文のurl:http://www.alternet.org/workplace/68903/
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そこで、マスコミになど期待せず、下記のようなミニコミを読むしかないわけだ。
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