■ J2の第13節J2の第13節。4勝4敗4分けで勝ち点「16」。12位のジェフ千葉がホームのフクダ電子アリーナでロアッソ熊本と対戦した。熊本は4月14日(木)に起こった一連の熊本地震の影響でチームの活動自体が一時的に停止した。リーグ戦は4月9日(土)に行われた7節の山口戦(H)以来となる。ここまで4勝2敗1分け。消化試合数が少ない中、14位とまずまずの位置をキープ出来たほど序盤の戦いで貯金を作ることが出来た。
ホームの千葉は「4-2-3-1」。GK佐藤優。DF多々良、イ・ジュヨン、近藤直、阿部翔。MF山本真、長澤、船山貴、町田、井出。FWエウトン。MF船山貴が右SHに回ってMF町田が中央でプレーする。FWエウトンとの2トップとも言えるし、トップ下とも言える微妙なポジションに入った。MFアランダやMF富澤などボランチ陣に怪我人が続出していることもあって最近はドイツ帰りのMF長澤がボランチで起用されている。
対するアウェイの熊本は「4-2-2-2」。GK畑。DF藏川、園田、植田龍、片山奨。MF上村周、高柳、岡本賢、清武功。FW巻、平繁。約1年前に行われた大分戦で負傷して長期離脱していた左SBのDF片山奨がようやく戦線に復帰。久々のリーグ戦となることもあってGK畑、FW巻など序盤戦はほとんど or 全くスタメン起用されなかった選手がスタメンで起用された。元日本代表はFW巻は言うまでもなく古巣対決となる。
■ 2対0でホームの千葉が勝利試合の序盤はアウェイの熊本がペースを握る。前半4分にはMF清武功がカットインしてからシュート。相手選手に当たってコースが変わってゴールかと思われたが、間一髪でキーパーのGK佐藤優が好セーブ。千葉は絶体絶命のピンチを守護神に救われた。序盤の熊本は10番のMF清武功を中心にブランクの影響をあまり感じさせない戦いを見せたが徐々に千葉がペースを握るようになった。前半は0対0で折り返す。
均衡を破ったのはホームの千葉だった。後半11分にMF船山貴のシュートのこぼれ球をMF町田が右足で豪快に決めてホームの千葉が先制に成功する。ビハインドの熊本は攻撃意識を高める選手交代を行ったが、後半29分にGK畑のロングフィードに対して激しいプレッシャーをかけたMF町田が体に当ててボールを奪うと最後は無人のゴールに流し込んで貴重な2点目を挙げる。MF町田は2ゴールを挙げる大活躍だった。
結局、MF町田が2ゴールを挙げる活躍を見せた千葉が2対0で勝利。千葉は4月9日(土)に行われた7節の金沢戦(H)以来なので実に6試合ぶりの勝利となった。一方の熊本は再開初戦を飾ることが出来ず。1点差のままで終盤を迎えることが出来れば希望はつながったがGK畑のフィードミスから喫した2失点目が悔やまれる。6節の清水戦(H)、7節の山口戦(H)はともにホームで敗れているので熊本は3連敗となった。
■ ヒーローになったのはMF町田也真人この試合はNHKのBS1が生中継するなど全国的な注目を集めた。普段のJ2の試合では考えられないほど多くの報道陣が集まるなど異様な雰囲気だった。熊本の試合がここまで注目されるのはJ2に昇格してから初めて。いろいろな意味で特別な試合だったが立ち上がりは良かった。10番のMF清武功を中心にチャンスを作ったが前半4分の左足のシュートはGK佐藤優が間一髪でセーブ。このプレーが大きかった。
千葉はMF町田が2ゴールの活躍を見せた。2トップの一角なのか、トップ下なのか、かなり微妙な位置でプレーしたが注目の一戦で主役になった。MF町田は隙間でボールを受ける技術が高くてチャンスメーカーとしては高く評価されてきたが過去4シーズンは通算で60試合で1ゴールのみ。「得点力の低さ」が大きな課題であり、とにかく目に見える結果を出すことが必要だったので大きな自信になるだろう。
千葉はボランチに怪我人が続出していることがここに来て結果が出ていなかった1つの理由と言えたが、MF山本真が戻ってきたのはやはり大きい。MFアランダ、MF富澤、MF佐藤勇が離脱中。MF山本真もしばらくの間、試合に出場できなかったので厳しい状況が続いていたがボールを散らすことが出来るMF山本真がボランチに入るとMF井出、MF長澤、MF町田といったテクニシャン系の選手が生きてくる。
FWエウトンがようやく状態を上げてきたのもポジティブな要素と言える。公称は184センチ/87キロ。もともとやや太めの体形なのかもしれないが、3月・4月あたりはキレがなかった。運動量が少なくてチームに貢献できない試合が多かったが最近になって運動量が増えてきて前線で起点になる場面も多くなってきた。頼りになるストライカーは上位浮上のためには必須。依然としてFWエウトンにかかる期待は大きい。
■ 気持ちの入った戦いを見せた熊本イレブンだったが・・・。熊本は36日ぶりの公式戦だった。震災直後は車の中で生活していた選手もいたほど。プレーで被災者に勇気を与えることも期待されるが、自分たちも被災者になった。MF上村周やMF嶋田慎など被害が大きかった地域の出身者も多くて精神的なダメージは大きかったと思うが気持ちの入った試合を見せた。懸命に戦った選手たちの頑張りはフクダ電子アリーナに集まった多くのサポーターの心に刻まれただろう。
前半はある意味では「気持ちの部分」でカバーできたところもあったが、後半に入るとコンディションの差がはっきりと分かるような状態になった。さらには試合勘不足も露わになった。キーパーのGK畑のミスから喫した2失点目はもちろんのこと、1失点目も右SBのDF藏川のクリアがミスになった。体力的にきつくなると集中力も切れやすくなる。想像していた以上に熊本の選手はコンディションがあまり良くなかった。
5年前の東日本大震災のときはJリーグの全試合が中断したのでACL組を除くとほぼ同条件だった。Jリーガーのほとんどがブランクが原因となるコンディションや試合勘の部分で苦労したが今回は熊本のみ。この点は大きなハンディとなるが、さらにしばらくの間(=7月あたりまで)はホームのうまかな・よかなスタジアムでは公式戦は開催できない見込み。多くのサポーターの前で試合が出来ないのもハンディとなる。
さらに言うと延期になった5試合は7月・8月・9月あたりに組み込まれると予想されるので相当な過密日程になる。まだ街自体が復興途上であり、前途多難。そしてホームの熊本で試合が開催できないと「元に戻った。」とは言えない部分もある。いばらの道は続くが「地震のことを言い訳にはしたくない。」と多くの選手がコメントしており、「熊本県民に勇気を与えたい。」という気持ちは大きなモチベーションになる。
戦術がどうとか、コンディションがどうとか、試合勘がどうとか、もともとの実力差がどうとか、サッカーの試合ではそういう部分が勝敗に大きな影響を及ぼすのは間違いないが、「被災者のために勝ちたい。」、「誰かのために結果を残したい。」、「応援してくれる人たちに明るいニュースを届けたい。」という強い気持ちは時としてそういう差を無にしてしまうことがある。熊本の今後の戦いぶりは要注目である。
★ 現在の投票数 → 8票
→ 投票したい選手を選択してから左下の「投票」のボタンをクリックしてください。
→ 最大で8人まで投票することができます。
→ 「コメント」のところは何も書かなくてもOKです。(投票可能です。)
→ 記事内容に関係のないコメント(政治的な内容も含む。)はご遠慮ください。
関連エントリー
2008/10/20 【千葉×東京V】 巻誠一郎という男 (生観戦記 #14)
2008/11/20 もう一度行きたくなる日本のサッカースタジアム 10選
2008/11/21 もう一度行きたくなる日本のサッカースタジアム 番外編
2015/08/21 FW齊藤和樹(ロアッソ熊本)が残している驚きの数字とはいったい?
2015/08/28 【熊本×札幌】 初めてのうまかな・よかなスタジアム (生観戦記) (その1)
2015/08/28 【熊本×札幌】 初めてのうまかな・よかなスタジアム (生観戦記) (その2)
2015/09/02 【熊本×札幌】 初めてのうまかな・よかなスタジアム (生観戦記) (その3)
2015/09/06 【熊本×札幌】 初めてのうまかな・よかなスタジアム (生観戦記) (その4)
2015/09/10 うまかな・よかなスタジアム(旧名:KKウイング)でサッカー観戦したときに気になったこと (全部で10個)
2016/05/15 クラブ別エントリー (ジェフ千葉)
2016/05/15 クラブ別エントリー(ロアッソ熊本)
- 関連記事
-