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【日本×豪州】流れを変えて加速させたアギーレ監督の3つの作戦 | | |　

■　年内最後のテストマッチ

キリンチャレンジカップの日本とオーストラリアの試合がヤンマースタジアム長居で開催された。オーストラリアとはこれまで22回対戦しているが、7勝7敗8分けと全くのイーブンである。最近では昨年の7月の東アジアカップのときに対戦しているが、このときはFW大迫が2ゴールを挙げて日本が3対2で勝利している。オーストラリアは来年1月に行われるアジアカップ2015のホスト国となる。

日本は「4-1-2-3」。GK川島。DF酒井高、吉田、森重、太田宏。MF長谷部、香川、遠藤。FW本田圭、岡崎慎、武藤嘉。コンディションが万全ではないDF内田篤がベンチスタートで、DF酒井高が左SBから右SBに回って、FC東京のDF太田宏が左SBに入った。それ以外のポジションは6対0で勝利したホンジュラス戦と全く同じで、ホンジュラス戦でゴールを挙げたFW乾とFW豊田の2人はベンチスタートとなった。

対するオーストラリアは「4-1-2-3」。GKライアン。DFフラニッチ、ウィルキンソン、セインズブリー、ベヒッチ。MFイェディナク、ルオンゴ、マッカイ。FWクルーズ、レッキー、トロイージ。過去の日本戦は7試合で4ゴールを挙げており、「日本代表の天敵」と言われている34歳のベテランのFWケーヒルはベンチスタートとなった。長らくプレミアリーグのエヴァートンで活躍して現在はNYレッドブルズでプレーしている。

■　2対1で日本が勝利する

年内の最終戦でアジアカップ前の最後の試合となるので、気持ちよく締めくくりたかった日本だったが、前半は劣勢となる。同じ「4-1-2-3」を採用したオーストラリアのパス回しに翻弄されるシーンが多くて、なかなかチャンスシーンを作れない。苦しい展開となった日本は前半35分あたりにシステム変更を断行。「4-1-2-3」から「4-2-3-1」に変更してノーマルなWボランチに切り替えると流れがガラッと変わる。

後半の頭からMF遠藤を下げてMF今野を投入。さらに後半12分にFW武藤嘉に代えてFW乾を投入すると勢いは加速して、後半16分にMF乾の仕掛けから得たCKをファーサイドでフリーになっていた途中出場のMF今野が頭で押し込んで先制に成功すると、後半23分にもCKの流れからCBのDF森重のグラウンダーのクロスをFW岡崎慎が合わせて2点目を奪う。FW岡崎慎は代表通算40ゴール目となった。

その後もチャンスを作った日本だったが、MF乾やFW豊田のシュートは決まらず。すると、後半47分に警戒していたはずの途中出場のFWケーヒルにヘディングシュートを決められて1点差となるが、そのまま2対1で逃げ切った。これでアギーレ監督になってからは3勝2敗1分けとなった。来年の1月に行われるアジアカップのGLは初戦がパレスチナ、2戦目がイラク、3戦目がヨルダンと対戦する。

■　システム変更によって流れが変わる。

試合は立ち上がりからオーストラリアにペースを握られた。オーストラリアはブラジルW杯のときは「4-2-3-1」が基本だったが、3戦目のスペイン戦は「4-3-3」あるいは「4-1-2-3」と呼ばれるような並びだったので、日本代表よりも「スリー・センター」のやり方に慣れている。そのこともあって、日本の中盤の守備が全くハマらなくて、アンカーのMF長谷部の横のスペースを自由に使われるシーンが目立った。

「アンカーの横のスペース」というのは「4-1-2-3」の大きな弱点である。自分たちが主導権を握っているときは大きな問題にはならないが、劣勢になると脇のスペースを使われてしまうケースが目立つ。「4-1-2-3」のシステムに慣れているチームでも陥りがちなことなので、ほとんどの選手が不慣れな今の日本代表のレベルになると十分にケアするのは難しい。前半から押し込まれたのは必然と言える。

非常に良くない流れだったが、前半35分あたりで「4-2-3-1」に変更すると完全に日本ペースとなった。ザッケローニ監督は「4-2-3-1」と「3-4-3」の2つのシステムを用いたが、「3-4-3」はほとんど機能しなかった。システム変更によって流れが悪くなったことは多々あったが、良くなったケースというのはほぼ無かったので、「監督が手を加えて試合の流れを変えた。」というのは日本代表では久々だった。

「システム変更の是非」については様々な意見があると思う。それは別の機会で触れることにするが、とにかく、システム変更がターニングポイントになった。「4-1-2-3」のときはほとんど出てこなかったMF香川が攻撃に絡むようになって、今度はオーストラリアの守備がハマらなくなった。0対0の前半の途中にシステムを変更してここまで流れが変わるケースと言うのはかなり珍しいと言えるだろう。

■　効果抜群だった後半の2つの選手交代

前半の終盤は日本がペースを握ってハーフタイムに突入したが、後半の開始からMF今野を投入した。ホンジュラス戦で攻守で効いていたMF遠藤を下げるというのは一種のギャンブルだったが、MF今野が持ち味である力強いボール奪取とルーズボールへの反応を見せてさらに流れを日本に引き寄せることに成功。その上、後半16分にはセットプレーから先制ゴールをマークするなどMOM級の働きを見せた。

MF遠藤のゲームメイク力は一級品であるが、守備の部分では不安が残る。当然、MF香川も攻撃的な選手なので、インサイドハーフをこの2人のコンビにすると相手に押し込まれたときに諸さが出てくる。これはあらかじめ予想できたことではあるが、やはり、オーストラリア相手ではうまくいかなかった。フィジカルに特徴がある同格以上のチームを相手にしたときは違う組み合わせの方がベターである。

先制ゴールが生まれるちょっと前のMF乾の投入も効果的だった。先のとおりで、システム変更によって大きく流れが変わって、MF今野の投入とMF乾の投入の2つは良くなった流れをさらに加速させる選手交代で、その人選も、交代のタイミングも絶妙だった。「システム変更」、「MF今野の投入」、「MF乾の投入」という3つが試合の流れを変えて、かつ、日本側に流れを引き寄せる見事な采配だったと言える。

「親善試合で悪い流れのときに監督が手を加えて改善することがいいことなのか？」については様々な意見があると思う。「親善試合なので悪い部分をさらけ出してしまった方が良かったのではないか？」という意見は一理あると思うが、相手はライバルのオーストラリアで、アジアカップ前の最後の試合である。アギーレ監督がそういった能力を持っている指導者であることが分かったというのも収穫と言える。

■　右SBで存在感を発揮した酒井高徳

途中出場のMF今野とMF乾の2人以外では右SBのDF酒井高、FW岡崎慎あたりの出来が良かった。DF酒井高はこの日は右SBに回ったが、何度かいいクロスを上げてチャンスを作った。守備のところでも持ち味である球際の強さを発揮して、左右両サイドで計算できる選手であることをアギーレ監督にアピールすることができた、現状では右SBとしても、左SBとしても、日本代表の2番手と言えるだろう。

2点目のゴールを決めたFW岡崎慎はアギーレジャパンになってからはゴールがなかったので初ゴールとなった。3戦目のジャマイカ戦(H)から3トップの中央で起用されているが、ボールが集まって来るポジションなので、ゴールが期待される。当然、左右のウイングの位置でもプレーできるが、やはり、本人はCFでのプレーを希望していると思うので、１つ決めることができてホッとしているのではないか。

この2連戦(ホンジュラス戦とオーストラリア戦)は「アジアカップに向けた選考会」という意味合いもあったが、復帰組のMF遠藤、MF長谷部、MF今野、DF内田篤は合格点で、同じく復帰組のFW豊田とMF乾の2人もゴールという結果を出した。もちろん、「若手の台頭の少なさ」を考えると諸手を挙げて喜ぶことはできないが、経験豊富な選手たちがアジアカップのメンバーに順当に選ばれることになりそうだ。