■ J1の第29節J1の第29節。17勝6敗5分けで勝ち点「56」の浦和レッズ(1位)と、6勝11敗11分けで勝ち点「29」のヴァンフォーレ甲府(15位)が埼玉スタジアムで対戦した。2006年以来となるリーグ制覇を目指す浦和は27節を終えた段階では2位のG大阪と3位の鹿島に「7」差を付けていたが、28節の試合で浦和がアウェーで仙台に敗れて、G大阪がホームで川崎Fに勝利したため、その差は「4」に縮まった。
ホームの浦和は「3-4-2-1」。GK西川。DF森脇、那須、槙野。MF鈴木啓、阿部勇、平川、梅崎、柏木、李忠成。FW興梠。28節の仙台戦(A)で退場処分を受けたMF宇賀神は出場停止で、MF梅崎が左WBでスタメンとなった。FW興梠は28試合で12ゴール、FW李忠成は28試合で5ゴールを挙げている。助っ人のMFマルシオ・リシャルデスや五輪代表のMF矢島慎などがベンチスタートとなった。
対する甲府は「3-4-1-2」。GK荻。DF畑尾、山本英、佐々木翔。MF新井涼、マルキーニョス・パラナ、ジウシーニョ、阿部翔、石原克。FWキリノ、阿部拓。これまでは1トップシステムを採用することがほとんどだったが、浦和対策もあって2トップを採用してFWキリノとFW阿部拓の2トップとなった。FW阿部拓は東京V時代の2011年にJ2で16ゴール、翌2012年もJ2で18ゴールを記録した。
■ 結果はスコアレスドロー試合は大方の予想通りに浦和がボールを保持して攻め込む展開になる。序盤はセットプレーで惜しいシーンを作るなど試合を優位に進めたが、徐々に甲府の守備がハマり始めて浦和が攻めあぐねる展開となる。甲府は前半36分にFWキリノが負傷して交代となるアクシデントが発生するが、交代出場のFW盛田もすんなりと試合に入って、浦和サイドのイライラが募った状態でハーフタイムに突入する。
後半も同様の展開となる。攻撃する時間は浦和の方がはるかに長かったが、攻め切ることはできずに完全に甲府の術中にはまって0対0のままで時間だけが過ぎていく。優勝のためには勝ち点「3」が欲しい浦和は後半27分にMF梅崎に代えてMF関口を投入すると少し流れが良くなるが、DF山本英を中心とした甲府の堅い守備を打ち破ってゴールを奪うことはできない。
試合の終盤にはワンチャンスを狙い続けていた甲府の途中出場のFWクリスティアーノに大チャンスが訪れる。スピードで相手CBを抜き去ってキーパーと1対1の形になったが、FWクリスティアーノのシュートは枠をとらえることができない。結局、試合はスコアレスドローで終了した。甲府は勝ち点「1」を積み上げたが、16位の清水がホームで新潟に勝利したため、降格圏となる16位に転落した。
■ 下位相手に取りこぼしが目立つ浦和レッズ浦和は22節から4連勝を飾って独走態勢に入ったが、26節はC大阪、28節は仙台と残留争いをしているチームに敗れて、さらには今節も残留争いをしている甲府と引き分けた。C大阪(A)→徳島(H)→仙台(A)→甲府(H)と続く下位チームとの4連戦を乗り切ることができると優勝が近づいてきたが、4試合で1勝2敗1分けにとどまった。浦和がやや失速したことで優勝争いの行方は分からなくなってきた。
この日は人数をかけて守る甲府を相手に攻めきれなかった。浦和らしいコンビネーションを駆使して決定機を作るシーンはほとんどなくて、FW興梠も、MF柏木も、仕事はできなかった。もちろん、何度かは決まってもおかしくないチャンスはあったが、全体としては甲府にうまく守られてしまった。後ろから追ってきているG大阪の調子がいいことを考えると手痛いドローと言える。
気になるのはやはりMF李忠成のところである。MF原口がドイツに移籍した後、最近の試合はMF李忠成がシャドーの一角で起用されているが、6試合ゴールなし。それ以外の部分でチームに大きく貢献するタイプではないので、コンビネーション等で支障が出ることは承知した上で「ゴールを奪ってくるだろう。」と期待してペトロヴィッチ監督は起用していると思うが、期待に応えることはできていない。
J1は残り5試合となったが、浦和の残りの対戦相手はかなり厳しい。鹿島(A)→横浜FM(A)→G大阪(H)→鳥栖(A)→名古屋(H)となっているので、鹿島やG大阪や鳥栖との直接対決も残している。ここまで来ると楽な相手というのは1つもなくて、残留争いをしているチームとの対戦も簡単ではないが、やはり厳しい試合になる可能性が高いのは上位を相手にしたときである。雲行きが怪しくなってきた。
■ ヴァンフォーレ甲府の強力な守備ブロック一方の甲府はライバルの1つである清水が勝利したため、降格圏となる16位に転落したが、アウェーの埼玉スタジアムで勝ち点「3」を獲得するのはかなり難しい。この試合に関しては『最低でも勝ち点「1」を上積みする。』というミッションは達成できたと言える。「残り5試合で降格圏に転落する。」という状況はプレッシャーがかかって来るが、無暗に攻めに出て勝ち点「0」に終わるよりははるかにマシである。
甲府は最近の4試合の成績は0勝1敗3分け。4試合とも無得点に終わっており、引き分けた3試合はいずれもスコアレスドローだった。引き分けた3試合(=26節の横浜FM戦(A)、28節の新潟戦(A)、29節の浦和戦(A))というのはいずれもアウェーゲームだったが、「0対0で終わっても良し。」という戦いを見せて、その通りの結果に終わった。とにかく、しぶとい戦いを見せて残留争いに食らいついている。
当然、3試合ともチャンスは作っている。この日も後半終了間際にFWクリスティアーノがキーパーと1対1になるシーンがあった。「少ないチャンスをゴールに結び付けて1対0で勝利する。」という展開を狙っているのは間違いないが、3バックの中央のDF山本英を中心とした守備陣はとにかく強固である。この日も浦和が攻めあぐねたが、甲府を相手にしたときはブロックを崩せずに終わるチームがほとんどである。
■ なかなか面白い甲府の試合26節で対戦した横浜FMも、28節で対戦した新潟も甲府の強固なブロックを崩すことができなかったが、これほどまでに選手全員がハードワークをして、全体の意識が統一されているチームは珍しい。相手の良さを消してしまうサッカーなので、打ち合いを好む傾向にあるライトなサッカーファンが甲府の試合を観た場合、『甲府の試合は面白い。』とは決して言わないと思うが、通好みのサッカーを見せている。
多くの人が「面白いサッカー」と感じるサッカーは、テンポよくパスが回ってチャンスシーンが多く訪れるサッカーだと思うが、甲府のサッカーはその対極にある。「面白いサッカー」とは程遠いと言えるが、ここまで整備されていて、統一感があると、『対戦相手はどうやって甲府の守備ブロックを崩すのか?』という興味が湧いてくる。甲府のサッカーが面白いわけではないが、甲府の試合はなかなか面白い。
たいていのチームは「攻撃的なチーム」を作ろうとする。そういうサッカーを多くのサポーターが望んでいるという理由もあるし、そういうサッカーの方が新規サポーターを呼び込みやすいという理由もある。その考え方は正しいと思うが、同じようなサッカーをするチームばかりになるとJリーグは面白くなくなる。「攻撃的なチーム」とは言えないが、今の甲府というのはJ1においては貴重な存在である。
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