■ J1の第9節J1の第9節。1勝4敗3分けで勝ち点「6」の川崎フロンターレと、3勝2敗3分けで勝ち点「12」の名古屋グランパスが等々力競技場で対戦した。川崎Fは7節で仙台に勝利して今シーズンの初勝利を飾ったが、まだ1勝と苦しんでいる。対する名古屋は3節は甲府、4節は湘南、6節は新潟に勝利したが、7節はFC東京に敗れて、8節は広島と引き分けた。
ホームの川崎Fは「4-2-2-1」。GK西部。DF田中裕、實藤、ジェシ、伊藤。MF山本真、中村憲、小林悠、大島。FW大久保、矢島。大黒柱のMF中村憲は6節以来のスタメンとなった。攻撃の核のFWレナトは怪我のため「全治1カ月」と診断されたが、予想以上に早い回復を見せてベンチ入りを果たした。神戸から加入のFW大久保は7試合で4ゴールを挙げている。
対するアウェーの名古屋は「4-2-3-1」。GK楢崎。DF田中隼、闘莉王、増川、阿部。MF田口、ダニルソン、小川、ヤキモフスキー、田中輝。FWケネディ。日本代表経験のあるFW玉田、FW矢野、MF藤本淳はベンチスタートで、MF小川佳、MFヤキモフスキー、MF田中輝の2列目トリオとなった。2010年と2011年のJリーグの得点王のFWケネディは3試合連続スタメンとなった。
■ 川崎Fが今シーズン2勝目試合の前半はアウェーの川崎Fのペースとなる。中盤の守備が機能して、高い位置でボールを奪ってカウンターを仕掛けるシーンが目立つ。スコアレスで前半を終えようとしていた前半47分に川崎FのDF田中裕が右サイドからクロスを上げると、中央でMF小林悠がうまくヘディングで合わせて川崎Fが先制する。MF小林悠は3節の鳥栖戦以来のゴールとなった。前半は1対0で終了する。
後半開始から名古屋はMF田中輝に代えてMF藤本淳を投入。すると、彼のところにボールが集まってきて、得意のサイド攻撃でチャンスを作っていく。同点ゴールが決まったのは後半38分で、FWケネディの落としたボールをMF藤本淳が得意ではない右足でテクニカルなミドルシュートを決めて名古屋が同点に追い付く。怪我で戦列を離れていたMF藤本淳は久々の出場で結果を残した。
直後に川崎FはFWレナトを投入。すると、後半42分にFWレナトが左サイドで粘って中央に戻したボールをボランチのMF山本真が得意のミドルシュートを突き刺して川崎Fが2対1と勝ち越しに成功する。札幌から移籍のMF山本真は移籍後初ゴールとなった。結局、試合は2対1でホームの川崎Fが勝利して、今シーズン2勝目を飾った。一方の名古屋は3試合勝利なしとなった。
■ 山本真希が決勝ゴール終了間際に劇的なゴールが決まってホームの川崎Fが2対1で競り勝った。試合前は「川崎Fがボールを支配する展開になるのではないか?」と思われたが、始まってみると、名古屋のポゼッション率が高くなって、川崎Fはカウンターが主体となったが、復帰してきたMF中村憲を中心とした鋭いカウンターが効果的で、縦に早いサッカーで試合の主導権を握ることに成功した。
守備に関しては、FWケネディやMFヤキモフスキーの高さに戸惑うシーンもあったが、復帰してきたDFジェシの存在は大きかった。184センチなのでFWケネディとは10センチほどの差があるが、高さの勝負ではほぼ互角で、簡単にやられることはなかった。彼も出遅れていて、リーグ戦は2試合目のスタメンだったが、個人能力の高い選手なので、いる・いないで大きな差が生じる。
決勝ゴールを挙げたのは、札幌から加入のMF山本真だったが、チームにとっても、本人にとっても大きなゴールとなった。開幕当初はベンチスタートが続いていたが、4節がリーグ戦の初スタメンだったが、それ以降、リーグ戦ではずっとスタメン出場が続いている。MF森谷、MF稲本、MF風間宏希などがライバルとなるが、攻守両面で貢献できる選手で、もっとも安定感がある。
彼も10代の頃は大きな注目を集めた選手で、「北京五輪代表チームの主軸になるのでは?」と期待された時期もあったが、怪我もあって、清水では大きな活躍はできなかった。2012年は札幌でプレーして、2013年から川崎Fでプレーすることになったが、右足のミドルシュートが大きな武器になっていて、ミドルシュートの精度や破壊力はJ1の中でも上位レベルと言える。
■ 田中輝希は前半のみで交代・・・一方の名古屋は、前半終了間際の失点が痛かった。前半は危険なエリアでボールを失うシーンが何度かあって、たびたびカウンターでピンチを迎えたが、GK楢崎やDF闘莉王などの懸命の守りで失点を許さず、0対0で前半を終えようとしていた。ベンチには、FW玉田やMF藤本淳などが控えており、0対0で折り返していれば、「悪くない前半」と言えたが、プランが崩れてしまった。
ストイコビッチ監督になって6年目のシーズンでチームの高齢化が進んでいるが、その一方で、20歳前後で年代別代表クラスの選手が何人もいる。そのため「若返り」というのが、今シーズンの大きなテーマとなる。2012年はMF田口が大ブレークして中盤の核の1人となったが、今シーズンは、大卒ルーキーのDF本多やMF田中輝の2人が積極的に起用されて、存在感を発揮している。
MF田中輝については、J1の5節と6節でゴールを決めるなど6試合で2ゴールと結果を残しているが、この日は、いいプレーができず、前半のみで交代となった。左サイドでボールを受けて仕掛けるシーンはあったが、単独突破になってしまって、簡単にボールを失って、相手にカウンターのチャンスを与えてしまった。6節以来のスタメンだったが、前半だけで交代となったのも、仕方がないプレーぶりだった。
■ 有望な若手をどう育てていくのか?昨年あたりから、ストイコビッチ監督も若手選手にチャンスを与える機会が多くなっていて、変化の兆しを感じるが、実績のある中堅からベテランの選手が多いチームなので、よほどのタレントでない限り、彼らからポジションを奪うことは困難である。「育成力」に疑問符が付けられることもあるが、非ビッグクラブとは事情が全く異なるので、非ビッグクラブと同列に扱うことはできない。
鹿島・G大阪・横浜FMなども同様であるが、こういったチームには、国際経験が豊富で、日本代表でも中核となって活躍したレジェンドクラスの選手がいるので、有望な若手が加入してきても、レギュラーを奪うのも一苦労で、さらに、レギュラーを勝ち取ったとしても、彼らを差し置いて、期待とプレッシャーを一心に背負ってプレーするような立場に登りつめるのも難しい。
若手選手が伸びるためには、適切なタイミングで出場機会が与えられることが必要で、さらに、日本代表や海外リーグで活躍するような選手になるためには、若い頃からチーム内で責任のある立場を与えられて、プレッシャーと戦いながら試合経験を積むことが大事になってくるが、DF闘莉王、MF小笠原、MF遠藤、MF中村俊、DF中澤のような選手がチーム内にいると、その経験を積むのは難しくなる。
若手選手の海外志向が高まって、日本国内でビッグクラブと呼ばれるようなチームであっても、「他クラブに所属している日本代表クラスの有望な若手を獲得するのは無理」と言える状況になってきているので、国内のビッグクラブにとって、困難な状況が生まれつつある。「自前でビッグな選手に育てる」というノウハウを持っていない or 忘れてしまったビッグクラブが増えているので、名古屋がたくさんいる年代別代表クラスの有望な若手をどう育てていくのか、注目したいところである。
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