■ 残留争い30節と31節に連勝を飾ったことで勝ち点を「38」に伸ばした大宮アルディージャ。対するは、同じ勝ち点で並ぶアルビレックス新潟。新潟はここ5試合で2分け3敗。しかも、全てノーゴールと得点力不足は深刻である。得失点差で不利の新潟としては、当面のライバルをホームで叩いて混戦から抜け出したい。
新潟は<4-4-2>。GK北野。DF内田、千代反田、永田、松尾。MF本間、千葉、マルシオ・リシャルデス、松下。FWアレッサンドロ、矢野。
大宮は<4-5-1>。GK江角。DF塚本、レオナルド、冨田、波戸。MF金澤、片岡、内田、小林大、藤本。FWラフリッチ。MF小林慶はベンチスタート。
■ 痛み分けのドロー立ち上がりペースをつかんだのは大宮。相手のパスミスを効果的なカウンターに結びつけた。しかし、得点が奪えないまま、前半35分にFW矢野へのファールでPKを許し、FWアレッサンドロに決められて先制を許す。
ビハインドを背負った大宮は、後半8分に縦パスに抜け出たMF小林大がPKを誘うと、そのPKをMF小林慶がチップキックで決めて同点に追い付く。
1対1で迎えた後半11分。新潟がフリーキックのチャンスをつかむと、FWアレッサンドロがヘディングで決めて2対1とリードを奪う。しかし、この得点シーンの流れでFWアレッサンドロが非紳士的プレーで2枚目のイエローカードを受けて退場となる。
その後、数的不利の中で懸命に守った新潟だったが、後半43分にオーバーラップしたDFレアンドロに決められて2対2に追い付かれる。両チームが痛み分けのドローとなった。
■ 追いついた大宮立ち上がりの大宮は非常に良かった。ただ、決定的なチャンスになりそうな場面で精度を欠きゴールを奪えなかった。前半のいい流れの時間帯に先制ゴールを奪えていれば大きかったが、結果的に先制ゴールを奪えなかったことが、勝ち点「2」を失う要因の1つとなった。
制正を許した後はムードは良くなく、FWアレッサンドロに先制ゴールを奪われた以後は、守る意識の芽生えた新潟のディフェンスの前に苦しみ、試合が進むにつれて単調な攻撃が目立つようになったが、最後の時間帯でDFレアンドロが会心のゴール。勝ち点「3」を奪えなかった悔しさと、最後にもぎ取った勝ち点「1」の喜びが同居する微妙な感情が残る試合となった。
■ ラフリッチの使い方大宮の中盤にはMF藤本、MF小林大、MF小林慶、MF内田、MF金澤とテクニックと運動量のある好プレーヤーが多い。樋口監督も彼らを生かすべく中盤を重視したサッカーを目指しているが、圧倒的な武器があるわけでは無いので、劣勢になると、攻撃が息詰まってしまうケースが多い。
そうなると、前線に待ち構えるFWラフリッチが頼りとなるが、そのFWラフリッチは190cmで空中戦に強いことは強いが、それほど可動範囲が広いわけでは無いので、なかなかサイドからのクロスに合わせることが出来ない。どちらかというと、懐の広さを生かした「足元のプレー」の方が相手に怖さを与えているかもしれない。
そろそろFWデ二ス・マルケスが復帰しそうという情報もあり、FWラフリッチをどう使うのか、ポイントになるかもしれない。
■ チップキックのゴールこの試合の最大の見所と言えるのが、大宮のMF小林慶のPKのシーン。スタジアム中が緊張感に包まれる中で、チップキックでネットを揺らして見せた。
チップキックでのPKというと、EURO2000でのイタリア代表のFWトッティや、2003年の磐田戦で見せたジェフ市原のFWチェ・ヨンスのゴールが思い出されるが、観ている全ての人の予想を裏切るプレーであり、ベンチに座っている監督からしたら、心臓に悪いキックだろう。
ただ、残留がかかる大一番で、このキックを選択出来るMF小林慶行はさすがに百戦錬磨であると感じるし、また、厳しい状況であっても、遊び心のあるプレーは絶対に必要である。緊張でガチガチになりがちな状況にもかからわず、こういうプレーを選択できる選手がチーム内にいるということは、大宮というチームが闘いを続けていく上で、精神的な面で大きいのかもしれない。
■ 守れなかったリード一方の新潟はPKとセットプレーで2ゴールを奪ったが、もう少しのところで勝ち点「2」を失った。FWアレッサンドロの退場が痛かったのは事実で、2対1とリードを奪った後は防戦一方の展開となった。もっと、前線のFW矢野が体を張ってボールを保持する努力を行うべきであったが、簡単に相手のチャージに負けて、ボールを失い続けた。
それほど交代選手にバリエーションが無いというチーム事情であるため、なかなか策を施しにくいシチュエーションではあるが、ほとんど試合に参加できていなかったMFマルシオ・リシャルデスを下げて、不格好でも1点のリードを守るという意気を見せても良かった。
■ 深刻な攻撃力不足新潟は32節を終えて29ゴールとリーグワースト。この試合の2ゴールもPKとセットプレーであり、流れの中で崩すシーンはほとんどなかった。カウンターの形で、FWアレッサンドロもしくはFW矢野がフリーーの状態で前を向けた時はチャンスにつながりそうな雰囲気はあるが、それ以外は得点につながりそうな感じはしなかった。
大黒柱で昨シーズンは大車輪の活躍を見せたMFマルシオ・リシャルデスの不振は目を覆うばかりであり、ダブルボランチのMF本間とMF千葉もイージーなミスが目立った。サイドバックも効果的な攻撃参加は出来ず、局面を打開することは出来なかった。
次節のFC東京戦はエースのFWアレッサンドロが出場停止であり、34節はホームとはいえ、ガンバ大阪戦が控える。厳しい状況は続く。
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