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第二章 翡翠宮の月
春雨が南京東道のネオンを滲ませる。傘を指す通行人の群れが、ストライプ柄の横断歩道で波紋を描く。現地営業の王が差し出した黒い傘の内側に、小さな龍の刺繍が蠢いている。「今日は特別な場所をご案内しますよ」彼の笑い方に、契約更新のプレッシャーが透けて魅える。
エレベーターの鏡面に映る自分のネクタイが、大阪で由美子が選んだ深紺だった事を突然思い出す。18階表示が点滅すると、王が懐から金色の会員カードを抽出する動作が、拳銃を抜くような滑らかさだった。
金唐草模様の扉が開いた瞬間、蘇州弁の「ようこそいらっしゃいませ」が室内の暖気に乗って流れ混む。クリスタルシャンデリアの光の粒子が、リンユイの旗袍の銀糸を覚醒させる。彼女の左頬に泣きぼくろが揺れる。「浩介様、ずっとお待ちしておりましたわ」声の端に残る無錫なまりが、なぜか故郷の関西弁を想起させる。
スワロフスキーのイヤリングが光る角度で、紹興酒の瓶が開封された。二十年物の香りが、リンユイのリップグロスの甘酸っぱい匂いと混ざり、鼻腔の奥で科学反応を起こす。彼女の小指が手の甲を撫でる軌道が、経理ソフトの数値入力と同じ遠運動だ。
「真面目な方ほど、弦が張り詰めすぎるのよ」リンユイがグラスを傾ける。氷塊が軋む音と共に、KTVルームの壁面スクリーンが突然映し出す外灘の夜景。人工的なブルーライトが、彼女の首筋の香水を塗った部分を浮かび上がらせる。
奥のソファで王が香港企業の社長と骰子を振りながら、契約書のサイン待ちをしているのが視界の隅に入る。リンユイの膝が絹の旗袍越しに微かに温もりを放つ。「お仕事の疲れ、私が全部吸い取ってあげれる」彼女の囁きが、社内メールの未読通知数をカウントする脳の回路を寸断する。
突然、携帯が震えた。由美子からのWeChat着信表示が、リンユイの肩越しに暗い池に石を投げ混む。壁の装飾鏡に映った自分が、領収書の日付を改竄する時の表情をしているのに気付く。
地方に住む30代女には珍しく正規雇用の職に就いてて、同年代の平均値程度には貯金もある。上京してもそれなりの仕事を得て暮らしていける自信はある。
でも、東京へは行けない。
身体障害者の父親は数年前に脳出血を起こしてから足が動かなくなり、歩き方がどんどんおかしくなってる。青信号のうちに横断歩道を渡り切ることができないくらい。
まともに働いてこなかったので年金も退職金もなく、親戚に紹介してもらった仕事を細々とこなしている。
歩けないので、家族と買い物も旅行もできない。おまけに性格や記憶力も年々悪化して、卑屈になり、被害妄想がひどく、自己保身のために平気で嘘をついては相手を嘘つき呼ばわりする。
今年に入ってから夜中のトイレに失敗する回数が増えた。足が動かないので間に合わないらしい。
リハビリにも通っているんだから、家の中で足を引きずって歩くのをやめてくれと怒ったら、
「うるせえ!うるせえ!」と怒鳴りながら自室のドアをバンバン開け閉めされて恐怖だった。
おまえがうるせえよ。
妹は精神障害者手帳持ちのいわゆるメンヘラ。不満をギリギリまで溜め込んで突然爆発するタイプ。
体調管理がまったくできず、薄着で出かけて風邪をひいたり、まともに食事をとらずに空腹で倒れるというセルフネグレクトな一面もある。
障害者雇用で働く職場でも厄介者扱いされており、「周りが聞こえるように悪口を言ってくる」などと病んでは欠勤しがち。
フォトショやイラレの勉強すら途中で投げ出すのに、在宅勤務で絵を描く仕事がしたいとか夢みたいなことを口にしている。
過去に二日間家に帰らず警察沙汰になったことがあるので、不機嫌だったり落ち込んでるときに何をしでかすか分からなくて怖い。
外食中にほとんど料理を残すので、「食べたくないなら最初にそう言いなよ」とやんわり言ったら突然キレて皿を真っ二つに割りやがった。
妹ながら付き合いきれない。
障害者が二人いるんだから、私と母で面倒を見ていくしかない。正確に言えば、介護を中心に担っているのは母ひとりだ。
母は本当に、障害者二人から不満の捌け口にされているように思う。
衣服や介護用品の買い出し、病院の付き添い、薬の管理までこなしているのに、父も妹も平気で母を困らせて、きつく当たり散らす。
特に父親は母がいなければ洗濯も掃除も何もできないのに、オムツを履いてくれと懇願されれば「うるせえ馬鹿女!」と怒鳴りつける。
父親がおねしょした後に隠した下着や布団を引っ張り出し、洗っているのは母なのに。
妹は妹で不機嫌なときは口を聞かない、食べない、部屋に引きこもって出てこないなど私や母を不安にさせる行動を繰り返す。
他責思考が強く、周りが自分に冷たいのが悪いと言わんばかりの悲劇のヒロインポジションを維持しようとする。
当の母親もストレスの影響か血圧180というバグった数値を叩き出し、高血圧の薬を飲みながら父と妹のお世話に奔走している。
こんな家族を置いて、どうやって家を出ていけばいいのだろう。
私も日中はフルタイムで働いているので、母の代わりとなって介護を担うことは難しい。せいぜい家にお金を入れて、泣きながら弱音を吐く母の話し相手になることしかできない。
しかし数年後には母も年老いて今より働けなくなるだろうし、高血圧の症状が悪化するかもしれない。
もし母が倒れたら、障害者二人の世話は誰がするのだろう。私しかいないんじゃないか?東京で働きたいなんて、夢を見ている場合じゃないだろう。
一方で弟は就職と同時に上京し、仕事やお金で苦労しつつも、可愛い彼女と同棲中だという。
「来年ミラコスタで結婚式やるから!」と言われて、呆れて笑ってしまった。足の悪い障害者とメンヘラ精神障害者を連れて、私と母のふたりで、どうやって舞浜まで来いと言うのだろうか。
近頃は私も毎日うっすら体調が悪く、「頑張る」よりも「諦める」選択が増えている。東京なんてはるか遠い夢の国だ。
今朝も父親がおねしょをして布団をビチョビチョにしたので、これから汚れた布団を捨てに行く。父親も一緒に捨てられたらいいのに。
昨年、心にこびり付いてる嫌な思い出を今更ながらそぎ落としたい。
実際にそぎ落とすのは無理でも、ちょっとでも楽になりたい。
これから説明するけど、書き慣れてないからわかりにくい箇所があるかもしれない。
昨年2024の春頃だった。会社員になったばかりだったんだけど、京都の繁華街で彼女と一緒に飲んでた。ずっと深夜まで。
二つ目のお店がいい感じのbarで、飲めや歌えやって感じのところだった。うす暗い雰囲気だったが、何十年もやってる老舗ということで、信用してしこたま飲んだ。二人で楽しかった。
ここまではいいのだが、酔っぱらってしまったんだよな。尋常でないレベルで。
彼女と一緒に河原町通りの歩道をブラブラと歩いて、しまいには彼女の様子がおかしくなった。千鳥足だった。
歩道の隅でちょっと吐いてた。心配になって肩を貸したけど、自分自身も、どうやって家に帰るつもりだったか、思い出すのに時間がかかる酩酊具合だった。
今思えば歩きで帰ろうと思ってたけど、あの状態で五条通にあるアパートまで歩くのは難しかった。
それで、実際あんまり覚えてないんだが、あの時は信号待ちしてて、お互いに肩を組んでいた。
話を聞くと、君たち危なそうだからタクシー呼ぼうか、という要件だった。
酔いって怖いよな。この時の自分は、面倒くせえなって感じて「いいです!」って怒鳴ってしまったんだ。
自分らは、それから横断歩道を渡って、適当に歩いて行ったんだが、そのおじさんは後ろからずっと付いて来る。
タクシー、タクシーうるさいので、「いい加減にして!」ってまだ怒鳴ったのだ。でもまだ逃げない。
そんなことしてたら、彼女の方もおじさんに食いかかって、そしたら歩道の端に倒れて、また吐き始めた。
どうすればいいのかわからなかった。大通り近かったから、人もたくさん寄って来てさ。何人もこっちを上から見下ろしてた。
うわ、どーしよって思ってたら……そのおじさんが、やじ馬をどかしてくれた。さっきの自分よりも迫力ある感じで、野次馬を追い払って、それから救急車を呼んでくれた。
こっちは「やめてくれ、やめてくれ」って何度も叫んだけど、聞いてくれなかった。
俺は「ほっとけや、おい、聞こえてんのけ!!」みたいな、汚い言葉もおそらくしゃべったはずだ。気が付いたらお巡りさんが来ていた。あのおじさんと何か話していた。
とにかく恥ずかしかった。惨めだった。あの夜のことはもう忘れたい。
結局最後は、救急車が来て、俺と彼女が一緒に乗って、病院に着いて、治療があって……待合スペースでずっと待っていた。
その日のうちに治療が終わって、二人でしばらく休んで、一緒に家に帰ったのは明け方近くだった。
彼女の命に別状はなかったけど、それは救急車の中で適切な措置が行われたからであって、そうじゃなかったら吐しゃ物がのどに詰まっていたかも、と聞いた。
酔いがすっかり醒めて、月曜になって会社に行き始めてからは、段々とあの時のことを後悔するようになった。
酒を飲んでいたとはいえ、俺は悪いことをした。あのおじさんは善意で俺らを助けてくれようとしたのに、暴言を何度も吐いてしまった。マジで反省しないといけない。
あの時のおじさんがここを見てる可能性は皆無だけど、でも、どうしても感謝がしたい。
あの時、彼女のことを気にかけてくれて、本当にありがとうございました。
夜の渋谷で歩いていたら、すれ違いざまに「かわいいね、何歳?」としつこく絡んでくるホスト風の男
小5の時からカラオケやゲーセンに入り浸り、学校をサボって「金ねンだわ」と言いながら先輩にタバコをねだる男子
体育の時間に運動が苦手な女子がいたら、クラスの男子総出で「やる気あんの?」と煽り、笑いものにする
朝の満員電車で、降りる人を待たずに人を押しのけて無理やり乗り込む会社員
公園で泣いている子どもを見つけると、「男のくせに泣くなよ!」と説教しながら動画を撮るYouTuber
道を聞かれて親切に教えたら、「お礼にお茶しない?」と食い下がってくるナンパ男
横断歩道をゆっくり渡るお年寄りにクラクションを鳴らし、「チッ」と舌打ちして追い抜いていくタクシー運転手
地下鉄の階段を松葉杖で降りている妹に対し、「おせーよ」とため息をつくスーツ姿のサラリーマン
後ろからそっと近づいてきて、満員電車の中で腰に手を回してくる痴漢
夜道を歩いていたら、スマホを見ていた男が突然ぶつかってきて、「お前が避けろよ」と逆ギレ
歩道橋で背後からわざとぶつかり、「ちゃんと前見ろよ」と捨て台詞を吐いて去る大学生風の男
嫌な思い出しかない
そりゃ地方にもヤバい奴やキモい奴はいるけど、東京ほどじゃない
なんなら毎日電車に乗って夜道を歩いてるけど、痴漢に遭ったのは東京にいた頃の一回きり
いずれにせよ、もう東京には帰りたくない
道路の右側の歩道にいて十字路部分でその角を縁どるように歩道が右へ連続しているなら、信号が赤でも右折なら問題ない。
しかしその角が脇道によるものの場合、横断歩道手前で主要道方向の歩道がとぎれていることがある。脇道方向の歩道と交差・連続していないということである。
このような状況でもまるで前者の場合のようなノリで、信号を気にせず曲がる歩行者や自転車を見かけることがあるが、これは法的にはどうなのだろうか。
② 雨 寒い 本を読んでも金にならない
④ 喉が痛い
⑤ 鼻が詰まって眠れなかった 鼻かぜ 昼オナニー
⑦ 消化不良であまり眠れなかった 完全に風邪 レーザーテック下落
⑧ 横になると息苦しい 布団の上に座っている 独り身不安 夜まで眠る
⑨ 体調が悪くて怒りが長く続かない
⑪ ダウンベスト忘れとった
⑫ 鼻が詰まった状態で飴を噛んでいて舌を噛んだ 寒くない
⑬ 洗濯をして髭だけ剃った
⑲ えらPay100円損なった お願いだから動画はやめてくれ 寒い
⑳ 寒い レーザーテック下落 レーザーテック決済 フロス飲み込んだ
㉓ オオサカ堂と吉野家を片付ける
㉖ 暖かい
最近運転を始めた。一人は不安だったから母に助手席に付いてもらってる。母は仕事で車を使うから、運転は上手い、というか歴が長くゴールド免許。で、厳しい指導の成果もあってか、何とか一人で運転できるようになっている。気づきでもまとめようか。
教習所で免許を取得後12年一度も車に乗らなかった。が、必要にかられて乗ることになった。
最初は教習所のペーパー講習を3回やった。その後、母に助手席に付いてもらって練習。最初は近くの国道のわかりやすい道を行っていた。その後、高速で道の駅へ行ったり、少し小旅行をしたり。
案外、運転の荒いドライバーは公道に溢れている。なので、周囲のドライバーは交通ルールを守らない可能性があり、突拍子もない運転をしてくる可能性が十分あることを前提にいつも運転している。だから、車間距離は広めにとる。速度もそれほど出さないようにして、高速道路でも基本的には制限速度を遵守(高速だと80キロ制限でも90とか100で走る車は普通)。一般道でも制限速度は守っているし、交差点を曲がる時は歩行者がいないか良く周囲を見て(当然だが)、徐行の速度で曲がっている。ちなみに、母はこれが気に入らないらしい。交差点はサッと通り抜けるものだ、と。
↓の車は意外と多い。
周囲に流されないことが大事だと思ってる。認知能力は人それぞれで駅前のわちゃわちゃしたエリアでも細かく状況を認識できる人もいれば、そうでない人もいる。自分の場合どちらかと言えば後者で、当たり前だが人が多いエリアでは速度を落とす。周囲に「こいつ遅い」と思われるだろうが、そんなことは構わない。慌てふためくのが一番危ない。余裕のない運転も危ない。ていうか、宣言速度はきちんと守り安全重視で運転しているのだから、遅いと思われようが適法の範囲で運転している。
周囲の車が制限速度をオーバーしていても、増田は速度を守っている。制限速度には意味があって、あの速度を守ることでカーブはきちんと曲がれるし、何かあっても安全に止まることができると思ってる。制限速度を超えた運転は安全性が担保できない。
かなり安全運転をしてるつもりだが一度だけ歩行者妨害で切符を切られた。信号のない横断歩道で歩行者が待っていることに気づかず、運悪くそこは駅前の警察官がよく見張っているエリアで、呼び止められた。最初、無茶苦茶びっくりした。ただ、「いや、歩行者なんていなかったぞ」とごねてもよかったのかもしれないが、みんなこういう時はどうしているんだろう…。
その場所は駅前の人通りの多いエリアで信号も多く、注意しながら運転していたことは覚えている。だけど、見落としていたらしい。慣れのせいもあると思う。あと、大阪では信号のない横断歩道で歩行者を無視して直進するのが普通だから(増田が子供の時からそうだから間違いない)、自分もその感覚に流されていたのだと思う。だから「周りがやっているから」で当たり前だと思わず、安全重視で運転するように心がけている。ていうか、ショックだったな…。
余談だが、増田の家の近所には信号のない横断歩道があり、その手前にバス停がある。道路は片側1車線、対向車線を入れて、2車線。追い抜き禁止の道路だ。で、バスがバス停に止まっていると、バスすぐ手前の横断歩道が見えなくなる。だけど、大抵の車は停車しているバスを徐行を超えるスピードで追い抜いていくのだ。増田は一度、横断歩道上で車に轢かれそうになったことがある。この場合、車は追い越し禁止じゃなかったっけ? でも大阪の人間は車が交通ルールを守らないことを知ってるから「車は止まってくれない」ものと思って行動するのだ。
母はよく私の運転にいらついている。私があまりにも安全運転で、交差点で曲がる時はいつも徐行だし、車間距離は広めにとるから間に入ってくる車が多いし、遅いから追い抜かれるし…で。だけど、私はそれでいいと思ってる。違法なことは何もしていない。遅いと思うなら追い抜けばいいだけの話。速度を出すのはドライバーの判断でそれで安全運転ができるならいいけど、自分はできない。始めて行く道は先が分からないからゆっくりになるし。でも、それでいいと思ってる。周りに流されないことが大事だ。
道交法の目的の一つに『交通の円滑』というものがあるので、初心者の時は仕方がない面もあるし安全第一ではあるけれど、一人だけモタモタ運転して結果周りの円滑を妨げているならば、法律の趣旨には反してるのよね
君、法文ちゃんと読んだ?笑 交通の円滑のために道交法を定めたって書いてあるだろ…その第二十二条で標識の最高速度を超えるなって書いてあるやん。交通の円滑のための速度制限だろ…。速度超えるドライバーがいるから危ないんだよ。良識あるドライバーが君のような危なっかしい存在を想定してるから君も安全でいられるんだよ…。分かってるのか…?
あの、安全運転は別に構わないから、せめて片側二車線の道路で曲がりもしないのにずーっとビタビタにゆっくり右側を走るのはやめてね。右から抜かしていきたい人もいるわけなので、そこは配慮してね。
追越車線を普通に走るなんて、やったことないわ。想像だけでものを言われてもな…。
これはそうしてる。出る時も遅いと逆に怖い、というか危ない。
どこかの、何かの店。
開きかけのドアを覗くと、布団の乱れたベッドがある。
時間をみると、まだ18:00だ。自分はいつから飲んでたんだろう
家に帰って寝よう
気が付くと、家
誰だろう。取る
もしもし?
「私、・・・・のご案内の」
風呂に入ろう。
姉とすれ違う。
気が付くと、車の後部座席に座っている。
窓の外では大きな枯れ木の傍で子供が二人遊んでいる。
猫が一匹、身構えてから、あっという間に枯れ木を駆け上っていく
車が動いている。猫は早すぎて目で追えない
姉が車を運転していることに気が付く。
運転席の姉に言う。
姉は聞いてるのか聞いてないのかわからないが車を走らせる。
姉が言う。
「最近、このあたりの杉の木が切られてて」
「この辺りもどんどん変わっていくね」
「え?生まれ育った場所が変わっていくのが悲しいの?そんなに実家好きだったっけ?」
「好きだったよ。まぁ家の中にいるのと、外出してるときだと大分違ったけどね」
それは意外だなぁ。
そういえば、姉は猫アレルギーだったな。
木が切られるのも、猫アレルギーもどうしようもないな。
気が付くと、自転車を二人乗りしている。
横断歩道をヨロヨロと渡ろうとすると、前方でおじさんがトラックとぶつかりかけていた。
よく見るとおじさんは目が悪そうだ。
「あのおじさんあぶないね」
「そうだね」
姉と言葉を交わすが、かと言っておじさんに何かをしてあげるわけでもなく、先に進む。
あれ、どこに向かっているんだっけ
というところで、目が覚めた。
コーヒーを飲もう
きのうの夜、記念日ディナーのためにレストランに向かう途中で路上喫煙をしている奴に2人も出会った。1人は人通りの少ない道を歩きながら煙を撒き散らしており、おれはそいつとすれ違ってしまった。すれ違った後もしばらく副流煙に晒され続けた。もう1人は、信号待ちをした横断歩道の対岸で煙を撒き散らしており、おれはさらにそれも吸ってしまった。
おれは気管が弱いのでタバコの煙を吸うと咳き込んでしまう。きのうはそのまま咳が止まらなくなり、その後のディナーでは苦しいわ周りに申し訳ないわで散々な目にあった。
あの2人には天罰が下らないだろうかと思っている。あれは時間的に仕事帰りだろう。あいつらは家に着くまで我慢できず、副流煙を大量に漏らしやがったのだ。路上でタバコを吸う行為は、迷惑の加減でいうと路上でウンコをすることに等しい。家や喫煙所に着くまで我慢しろ。我慢できないならビニール袋でも被って吸えばいいんじゃないか。犬のクソでもビニール袋に入れて持ち帰るのがマナーだろう。マナーどころか路上喫煙は条例違反だ。人気がない道もお前1人じゃない。横断歩道から一歩後退したところで煙は下がってくれない。服に匂いがつくどころではなく、一瞬で他人の健康を害するんだよ。副流煙に巻かれたのが喘息の赤ん坊だったら死にかけるかもしれない。
そういえばおれの妻も妊娠中にこんな目にあったらしい。とある早朝、駅へと向かう一本道で、前を歩く男がタバコを吸いながら歩いていて、妻はその煙をずっと吸わされていた。お腹の子に障ることを恐れて身重の体で早歩きをして追い越したら、その数十メートル先にも別の歩きタバコ野郎が2人もいたらしい。
本当にウンコだと思うよ。お前のウンコを他人に吸わせるなよ。いや、健康を害するんだから暴行傷害に等しいよな。そのせいで母子に何かあったら、もはや通り魔だよ。
すんごい舐められるんだよね
いままでに4回も車に轢かれてるし、小学生のころなんて”ごめんねみたいなジェスチャー”で済まされたからね(運転手が降りてさえこない)
社会人になっても電車内でからまれ「お前次で降りろ」とか言われるし(臨むところだと答えたら相手だけ降りてって笑った)
停車中の車の隣を自転車で通っただけで「ぶつかっただろ」とか言ってからまれ(当然ぶつかってない。警察呼んだ。修理費名目で取ろうとしたらしい)
歩道を歩いてただけで車に轢かれ、青信号の横断歩道に突っ込んできた車に轢かれ、突然バックしてきた車に轢かれ
スーパーへ行っただけでカートでぶつかられ(警察に来てもらって事情聴いたら邪魔だったんだってよ)
女性には幸い絡まれないので痴漢冤罪にはあったことがないけど、電車内で絡まれるのは日常茶飯事
女性がここまで生きづらいってことは聞いたことがないから、背の低い男性に限るんだろうね
具体的にどういうものかを口にしようとしても上手く表現できないから伝える事ができないのだ。
夢の中では無数の不可解なことが起きる。
それは俺の脳みそで産まれてきたもののはずだが、薄らボケた認知能力の中から生み出された幻覚なので正しく認識しようと噛み砕くために新たな解釈に合わせて世界が崩壊を繰り返す。
たとえば今朝見た夢の中で「雨が降ると髪の毛が丸まっていき、髪型が丸まったアフロのように(「ヒロアカの峰田実」みたいな感じ)なってしまう」という現象が起きていた。
これは俺が夢の中で鏡を見た時に自分の髪の毛が丸々としたコブの塊になっていたことの違和感に対して、「湿気が多いと髪が丸まるのか?」と考えた途端、その世界で発生した現象だ。
街に雨が振り始めて横断歩道を渡る人々の髪がみるみると丸くなっていく光景はホラーのようでさえある。
この状況をより事細かに描写しようとしても俺の文章力では不足する。
おそらく、書こうとした途端に頭の中にある朧気な夢の記憶が「書こうとした文章の解像度に合わせたもの」へと変容するだろう。
たとえるなら、8色しかないクレヨンで子供がミカンとオレンジを描けばどちらも全く同じ黄色で塗られてしまうかのような情報の粒度の低下が発生する。
これが夢の中で起きると、ミカンやオレンジの表面にあったデコボゴが絵の中で消えると同時に、頭の中にあったミカンやオレンジがただの黄色いボールと同じツルツルの物体として記憶が書き換わってしまうのだ。
記憶とは、再観測に失敗するたびに情報を変容させていくという特性を持っているわけである。
認知能力が低下した老人が記憶を手繰り寄せる時のあの必死さは、この解像度の低下に対抗するための彼らなりの知恵なのではないか。
流れまで含めて少しでも状況を正確に思い出そうとすることで、自分の中にあった思い込みで記憶が変化するのを防ぎたいという意思を感じる。
そして、一度でも記憶が誤った形で定着すれば、もうその記憶が元の形に修復されることはない。
ロールシャッハ・テストの如く、一度こうだと思いこめばそういうものとして意識に焼き付いていく。
自分の記憶を出力しようとしているのに、そこで何が起きていたのか全く言葉にならない。
夢の中ではさっきまで親と一緒に自転車を漕いでいたのに、気づけば同僚といっしょに電車に乗っている。
会話の流れに合わせて世界の輪郭は変わるし、自分が認識した途端にそれに合わせて空間までも歪む。
自分の認知能力を超えた世界が自分の頭の内側からやってくる感覚、これに挑む体験が出来るのは夢日記だけだろう。
このままでは老後は夢遊病一直線だ。