■ 稀勢の里フィーバー「日本の国技」と言われている大相撲は新横綱の稀勢の里フィーバーが起こっている。綱取りがかかった2017年1月場所では14勝1敗の好成績。自身の悲願だった初優勝を果たして全会一致で横綱昇進が決定。日本出身の力士としては1998年5月場所の後に横綱に昇進した若乃花以来なので実に19年ぶりに横綱昇進で、2003年1月場所で引退した貴乃花以来14年間途絶えていた日本出身の横綱となった。
さらには新横綱として挑んだ2017年3月場所では初日から12連勝。破竹の勢いで勝ち進んだが13日目の日馬富士戦で左肩を負傷。休場もささやかれる中で土俵に上がり続けると12勝2敗で迎えた千秋楽の本割で優勝争いの単独トップに立つ照ノ富士に勝利して優勝決定戦に持ち込むと、優勝決定戦でも照ノ富士に勝利。奇跡的な大逆転劇で2場所連続優勝を達成した。新横綱の優勝は22年ぶり史上9人目となる。
ずっとモンゴル勢を中心とした外国人力士が相撲界を席巻してきた中、ようやく登場した日本人の名力士なので稀勢の里にかかる期待は大きいが、加えて朴訥なキャラクターである点も人気の理由と言える。スポーツとは言っても伝統芸能的なところがあるので「単純に強ければ人気が出る。」というわけではない。「物静かで力持ちで普段は穏やかであるがやる時にはやる。」というのが稀勢の里という力士である。
■ 「モンゴルに帰れ!!!」という野次日本人の力士が活躍して大相撲を盛り上げるのはいい話であるが、フィーバーの裏で観客のマナーの悪さも話題になっている。本場所に観戦に訪れる相撲ファンのマナーの悪さについては定期的にクローズアップされているが、今回は14日目の照ノ富士と琴奨菊の取り組みで照ノ富士が変化をして勝利した一番の後、観客席からモンゴル出身の照ノ富士に対して「モンゴルに帰れ!!!」という野次が飛んだと言われている。
「○○に帰れ!!!」という罵声はありがちなフレーズである。アメリカや韓国などといった国名のみならず、「北海道へ帰れ!!!」、「青森へ帰れ!!!」などなど力士や選手の出身の都道府県を入れて叫ぶケースも多いが、当然のことながら、「単に里帰りをしろ。」という話ではない。このケースでは「大相撲を引退してモンゴルに帰れ!!!」という意味なので表現としてはかなり悪質で、差別的な表現と言われても仕方がない。
補足すると14日目に照ノ富士と対戦したのは関脇の琴奨菊だったが、大関から関脇に陥落した琴奨菊は今場所で10勝以上することができると無事に大関に復帰することができた。この時点で8勝5敗。後がない状態だった。残り2日で連勝することが絶対条件だったので「立ち合いの変化」というあまり好ましく思われない戦法で琴奨菊に勝利したことが館内の異様な雰囲気ならびに先のような発言を生み出した。
「立ち合いの変化の是非」についてここで語っても仕方がないので触れないが、(稀勢の里ほどは重症ではないと考えられるが)照ノ富士も怪我を抱えていて万全の状態とは程遠かった。『作戦としてはアリだ。』と意見する人もいるが、結果的には琴奨菊の陥落を決定づける勝利になってしまったので印象的には良くない。(言うまでもなく、琴奨菊も日本出身の力士であり、稀勢の里に次ぐくらいの人気力士である。)