■ J1の第5節J1の第5節。3勝1敗で勝ち点「9」の横浜Fマリノスと、同じく3勝1敗で勝ち点「9」の鹿島アントラーズが日産スタジアムで対戦した。両チームとも開幕から3試合連続で完封勝利と好スタートを切ったが、4節は横浜FMはアウェーで甲府に0対1で敗れて、鹿島はホームでC大阪に0対2で敗れて連勝が「3」でストップした。J1は横浜FMとC大阪と鹿島と名古屋の4チームが3勝1敗で並んでおり、首位攻防戦となった。
ホームの横浜FMは「4-2-3-1」。GK榎本哲。DF小林祐、栗原、中澤、下平。MF中町、富澤、藤本淳、中村俊、兵藤。FW伊藤翔。日本代表のMF齋藤学が怪我でベンチ外となって、MF兵藤が2試合連続スタメンとなった。昨シーズンは33試合で7ゴールを挙げているが、今シーズンは新加入のMF藤本淳にポジションを奪われている。清水から加入のFW伊藤翔はここまで2ゴールとまずまずの活躍を見せている。
対するアウェーの鹿島は「4-2-3-1」。GK曽ヶ端。DF伊東幸、青木剛、昌子、山本脩。MF小笠原、柴崎、遠藤康、土居、中村充。FWダヴィ。U-21日本代表に選出されたMF豊川は怪我で欠場で、加入2年目のMF中村充が左サイドハーフでスタメンとなった。京都時代の2012年はJ2で41試合で14ゴールを挙げたが、鹿島では本来の力を出せずにいる。MF遠藤康はここまで3ゴールを挙げている。
■ 3対1で鹿島が逆転勝利試合の序盤はやや横浜FMペースとなる。ゴールに近づいたのはセットプレーの場面で、前半の終盤は立て続けにセットプレーを獲得して相手ゴールを脅かす。すると前半42分に右サイドのCKを獲得。MF中村俊が左足で蹴ったボールをDF栗原が豪快にヘディングで決めてホームの横浜FMが先制に成功する。DF栗原は今シーズン初ゴールとなった。前半は1対0と横浜FMがリードして折り返す。
後半は一転してアウェーの鹿島ペースとなる。まず後半9分に右SBのDF伊東幸の縦パスを受けたトップ下のMF土居がスピードに乗ったドリブルで中央を突破すると、最後は倒れ込みながらシュートを決めて1対1の同点に追い付く。高卒4年目のMF土居は今シーズン2ゴール目となった。さらに後半35分にはボランチのMF柴崎岳の縦パスを途中出場のMF野沢が鮮やかなダイレクトボレーを決めて2対1と逆転に成功する。
勢いの止まらない鹿島は後半42分にも途中出場で高卒ルーキーのMFカイオの華麗なドリブルから最後はMFカイオの絶妙のスルーパスを受けたMF柴崎岳が決めて3対1として試合を決めてしまう。日本代表入りが期待されるMF柴崎岳は1ゴール1アシストと結果を残した。結局、注目の上位対決は3対1でアウェーの鹿島が勝利して4勝1敗となった。一方の横浜FMはACLを含めて公式戦は3連敗となった。
■ 天才を証明した野沢拓也前半はどちらかというとホームの横浜FMペースだった。前半42分という「最高の時間帯」に横浜FMの先制ゴールが生まれたが、後半は完全に鹿島ペースとなった。鹿島は開幕3連勝の後、4節でC大阪(H)に0対2で敗れており、5節の横浜FM戦(A)は正念場の試合だったので、鹿島にとっては大きな勝ち点「3」となった。今シーズンの最初の山場と言えたが、山を乗り越えることができたと言える。
1点目・2点目・3点目とも鮮やかなゴールだったが、MF土居の同点ゴールが大きかった。1トップのFWダヴィとの距離感が良くて、(DF伊東幸の縦パスはFWダヴィの方を狙っていた可能性もあるが、)うまくボールをさらって、高速ドリブルを開始した。日本を代表するCBのDF栗原とDF中澤を間に入って2人をぶっちぎってのゴールというインパクト大である。能力の高さを証明するファインゴールだった。
今シーズンの鹿島は若手を積極的に起用しているが、MF土居は昨シーズンの終盤からトップ下で起用されるようになった。昨シーズンの終盤はFWダヴィからポジションを奪った形となったが、彼がトップ下に入っているとボール回しがスムーズになるので、いい循環を生み出している。もちろん、それだけにとどまるとトップ下としての価値は低くなるが、ゴールに絡む回数が増えており、今が伸び盛りと言える。
2点目のMF野沢のゴールもスーパーだった。ボランチのMF柴崎岳がいい感じでセカンドボールを拾ったが、真っ先に動き出したMF野沢のところに最高の浮き球のパスが来た。ただ、ほぼ真後ろから来たボールなので、ダイレクトで合わせてもゴール方向に飛ばすのは難しいシチュエーションだったが、あのボールをゴールマウスに飛ばせるというのは「天才と称されるMF野沢ならでは」である。
■ 大人の対応を見せた鹿島この試合は家本さんが主審を務めたが、少々の接触ではファールを取らなかった。また、アウトボールになったとき、マイボールなのか、相手ボールなのかという点で何度かミスがあったので、その点でもストレスを溜めていた選手がいた。基本的には鹿島の選手は冷静だったが、横浜FMの選手はあまり冷静ではなかった。前半終了直後に家本主審のところに詰め寄っていた選手がいたことが象徴的である。
鹿島も4節のC大阪戦(H)では判定に不満を抱えている選手が何人かいて、それによってリズムを崩してしまったが、鹿島は同じ失敗を繰り返さなかった。必ず1試合の中で何度かミスジャッジは起こるので、ミスが起こるということは割り切った上で冷静に戦うことが重要になってくるが、この試合に関しては、鹿島の選手の方が大人だった。同じ失敗を繰り返さなかったところには伝統の力を感じる。
ただ、横浜FM側の言い分も分かる。中盤での激しいチャージを許容する流れになると、有利になるのは鹿島の方である。横浜FMはセットプレーが得意なので、頻繁にファールを吹いてもらえた方が有難くて、中盤でボールを回しているときに潰されてカウンターを食らうことは一番避けたい。前半終了直後の抗議は駆け引きの意味合いもあったと思うが、横浜FMにとって都合のいいジャッジ基準ではなかった。
■ 昨年から持ち越しの課題これで横浜FMは3勝2敗となった。リーグ戦に関しては、まだ29試合も残っており、5試合で勝ち点「9」というのはまずまずと言えるが、ACLやゼロックスを含めて、同格以上のチームと対戦したときの成績が良くない点は気になるところである。2節の清水戦(A)の出来は良かったが、それ以外は調子が上がる前の大宮(H)と徳島(H)にホームで勝利しただけなので、清水戦(A)以外は称賛できる試合ではない。
対戦相手にも恵まれて開幕3連勝スタートを切ったが、昨シーズンの終盤から続いている良くない流れは完全には断ち切っていないように感じられる。相手にしっかりと守備を固められたときは、横浜FMの場合、MF中村俊がボランチの位置まで下がってくることが多いが、そうなると「1トップが孤立してさらに攻撃が行き詰まる。」という悪循環にハマるパターンが昨シーズンの終盤から続いている。
昨シーズンと大きく違うのは交代カードが充実している点で、新加入のFW矢島やMF三門がいて、成長途中のMF佐藤優もいる。FW藤田祥を投入するか、パワープレー要因でDFファビオを投入するくらいしか策が無かった昨シーズンとは雲泥の差であるが、ビハインドの状況をどう打開するのか?という持ち越しの課題は残ったままである。今、一番、頑張らないといけないのは樋口監督と言えるのではないか。
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