■ J2の第3節J2の第3節。2連勝で勝ち点「6」と好スタートを切った湘南ベルマーレと、1勝1分けで勝ち点「4」のコンサドーレ札幌がShonan BMWスタジアム平塚で対戦した。開幕戦はホームで山形に1対0で勝利した湘南は、2節はアウェーで長崎に3対0で勝利して連勝スタートとなった。一方の札幌は開幕戦で優勝候補筆頭の磐田にアウェーで1対0で勝利して、2節はホームで山形と対戦して1対1の引き分けだった。
ホームの湘南は「3-4-2-1」。GK秋元。DF遠藤航、丸山、三竿。MF菊地俊、永木、宇佐美、菊池大、大槻、武富。FWウェリントン。大卒ルーキーのDF三竿とMF菊地俊がスタメンに名を連ねた。左ストッパーのDF三竿は早稲田大学出身で、ボランチのMF菊地俊は日本体育大学出身となる。1月にオマーンで開催されたU-22アジアカップに出場した五輪代表のMF亀川はベンチスタートとなった。
対するアウェーの札幌は「4-2-3-1」。GK金山。DF日高、櫛引、奈良、上原慎。MF河合、宮澤、荒野、前田俊、砂川。FW内村。五輪代表のDF奈良とMF荒野はスタメン出場で、五輪代表入りを狙うDF櫛引もスタメン出場となった。昨シーズンまで神戸でプレーした187センチの大型ストライカーのFW都倉がベンチ入りを果たした。GK李昊乗、DFパウロン、MFヘナンという外国籍選手3人はベンチスタートとなった。
■ 2対0で湘南が快勝試合は攻守の切り替えの早い目まぐるしい展開となるが、好調の湘南が主導権を握る。立ち上がりから1トップのFWウェリントンを起点に攻め込むと、前半39分に右サイドを駆け上がったストッパーのDF遠藤航の高精度のクロスを186センチのFWウェリントンが豪快にヘディングシュートを決めて湘南が先制に成功する。FWウェリントンは開幕節の山形戦に続く今シーズン2ゴール目となった。
1対0で迎えた後半もホームの湘南が優勢で進んでいく。追加点の欲しい湘南は後半19分に右サイドをオーバーラップしたDF遠藤航の鋭いクロスがバーに当たって跳ね返ったボールをFWウェリントンがゴール前に落とすと、フリーになっていたMF大槻が押し込んで湘南が2点目を挙げる。大卒3年目のMF大槻は今シーズン初ゴールとなった。FWウェリントンはこの試合も1ゴール1アシストと結果を残した。
札幌はいくつか決定機を作ったが、ゴールを割ることはできない。結局、試合は2対0でホームの湘南が勝利して勝ち点「3」を獲得。開幕から3試合連続で完封勝利となった。1トップのFWウェリントンが3試合で2ゴール2アシストと攻撃陣をリードしている。一方の札幌はビハインドとなった後半に新加入のFW都倉を投入したが、あまり見せ場を作ることはできなかった。札幌は今シーズン初黒星となった。
■ 1年でのJ1復帰を狙う湘南湘南の2点目のMF大槻のゴールはオフサイドのように見えた。MF大槻のポジションは(ほぼ間違いなく)最終ラインよりも前にいたが、FWウェリントンからの折り返しのパスが前方へのパスではなくて、マイナス方向へのパスと判断したため、オフサイドが適用されなかったのだろうか?「誤審だった。」とは言い切れないが、オフサイドでゴールが取り消しになってもおかしくないシーンだった。
2点目のゴールが決まって試合の行方はほぼ決まったが、湘南の出来が良かった。開幕の山形戦は雨の中での試合で、しかも、前半終了間際にMF梶川が退場になったこともあって、あまりいいサッカーはできなかった。しかしながら、2節の長崎戦(A)、3節の札幌(H)は、内容も、結果も、文句なしと言える。試合後の曺貴裁監督はやや不満げだったが、「湘南強し」を感じる上位候補対決となった。
湘南はMFハン・グギョンとMF高山が抜けたが、今のところ、その穴は感じられない。ボランチはMF菊地俊やMF岩尾、左WBはMF菊池大が起用されているが、ウイングバックにコンバートされたMF菊池大の充実ぶりが目に付く。2列目からウイングバックにコンバートされたので新しいポジションに慣れるまでは大変だと思うが、穴になるどころか、ストロングポイントになっている。
1トップのFWウェリントンの活躍も目立っている。湘南はCFのポジションがなかなか定まらないチームである。湘南になってから、絶対的なCFを擁していた時期を探すのが難しいほどCFで苦労して来た歴史があるが、FWウェリントンは高さがあって、足元も柔軟で、しかも身体能力も高い。J2であれば相当な活躍が期待できるので、怪我さえなければ、目標に挙げている15ゴールは楽にクリアするだろう。
■ キーマンと言える大卒ルーキー湘南は1年でJ2に降格したが、曺貴裁監督は続投となった。監督になって3年目となるが、基本的なスタイルはこれまでと変わらない。EL(=欧州リーグ)に出場しているオーストリアリーグのザルツブルクをお手本にしているというが、複数人が連動したプレスと、何人もの選手がゴール前に入ってくる攻撃は迫力がある。J1では力負けすることが多かったが、J2では圧倒的な走力が大きな武器となる。
曺貴裁監督の下、若手選手が何人も台頭しているが、1点目のFWウェリントンのゴールをアシストしたDF遠藤航のその1人である。攻撃力を生かすために昨シーズンの終盤から3バックの中央ではなくて、右ストッパーでプレーするようになったが、この試合は2ゴールともDF遠藤航のところが起点となった。3バックを採用しているので、ストッパーの選手が積極的に攻撃に参加してくると厚みが出てくる。
左ストッパーで起用されている大卒ルーキーのDF三竿もいい味を出している。早稲田大学出身で本職は左SBというが、左足のキックの精度が高くて、判断も正確で、イージーなミスはほとんど無い。DF三竿のところからいいパスがどんどん出てくるので、対戦相手はパスの出どころとなるDF三竿のところを封じないと苦しくなるが、左ストッパーのところを的確にケアするのは非常に難しい。
湘南はテンポの早いサッカーを志向しているので、ボールを奪った後の最初のパスが大事になってくる。ここでミスをするようだと逆カウンターを食らう可能性が出てくるし、横パスや後ろに下げてしまったら、プレスをかけて高い位置でボールを奪う意味が薄れてしまう。なので、他所のチーム以上に「最初のパス」が大事になってくるが、DF三竿が気の利いたパスを何度も出している。
この試合の湘南はほとんどの選手の出来が良かったが、2点目のゴールを決めたMF大槻がMOMと言えるだろう。序盤はそこまでボールに絡めなかったが、前半30分あたりからMF大槻のところで確実にボールがおさまるようになった。MF大槻は得点感覚に優れた選手であるが、それ以外のところでの貢献度があまり高くなかったのでこの点が課題だったが、この試合はそれ以外のところでの貢献度が高かった。
■ いい補強と言えるFW都倉一方の札幌は完全に力負けだった。札幌の出来が極端に悪かったとは思わないが、テンポアップしたときのプレーの精度には大きな差があった。札幌も技術レベルの高い選手が揃っているが、相手に囲まれたときや、素早く展開しなければならないときなど、あまり余裕が与えられていないときのプレーの精度に大きな差があった。0対2というスコアは試合内容を如実に示した妥当な結果と言えるだろう。
札幌は今オフに積極的な補強を行ったが、先日、大型ストライカーのFW都倉の獲得も決まった。さっそくデビューを飾って、後半15分でピッチに送り出されたが、先のとおり、あまり見せ場は無かった。シュートはゼロで、FW都倉の187センチの高さが生きるようなボールはなかなか入って来なかった。劣勢ムードを跳ね返すことが期待されたが、見せ場の乏しいデビュー戦となった。
ただ、札幌の攻撃的なポジションはスピードあるいはテクニックで勝負する選手が多いので、高さと強さがあって身体能力の高いFW都倉はチームに不足していたタイプである。草津時代の2009年にJ2で43試合で23ゴールを挙げた実績があるが、チームの弱点を強化するいい補強だと思う。チームをワンランク上のレベルに押し上げることができる選手なので、早くチームにフィットさせたいところである。
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