■ クウェート戦U-19アジア選手権のGLの2試合目。初戦はイランに0対2で敗れた吉田ジャパンは、第2戦でクウェートと対戦した。このグループは、イランが勝ち点「3」で首位、UAEとクウェートが勝ち点「1」で2位タイ、日本が勝ち点「0」で最下位のスタートとなった。
日本は「4-2-2-2」。GK櫛引。DF川口、岩波、遠藤、山中。MF松本、熊谷アンドリュー、小野瀬、大島。FW久保、矢島。大分のDF松原、札幌のDF奈良、広島ユースのMF野津田、北九州のFW渡がスタメンから外れて、新潟ユースのDF川口、神戸ユースのDF岩波、横浜FCのMF小野瀬、浦和のMF矢島がスタメンで起用された。
その他でベンチに入っているのは、京都のGK杉本、神奈川大学のGK池村、名古屋のDF佐藤、大津高校のDF植田、名古屋のMF田鍋、FC東京のMF橋本、札幌のMF榊、川崎FのFW風間宏矢で、合計23人の選手がエントリーされている。DF植田は鹿島、MF松本は大分への入団が内定している。
■ 1対0で勝利試合は日本がボールを支配して、クウェートがカウンターを仕掛ける展開となる。日本はダブルボランチの一角のMF松本が高いポジションを取って、「4-1-4-1」のような布陣で、攻撃的な姿勢を見せる。初戦はショートパスのミスが多かったが、この日は、DF岩波のところからロングフィードを出すシーンも多くて、イラン戦よりはバリエーションのある攻撃を見せる。
相手のクウェートは2人か3人を前線に残して、それ以外の選手は引いて守るという典型的なカウンターサッカーだったが、日本は、前半に2度、ビッグチャンスを作られる。しかし、DF遠藤のシュートブロックとGK櫛引のビッグセーブが飛び出して何とかピンチを脱出して、0対0のままで試合が進んでいくと、前半ロスタイムに待望の先制ゴールが生まれる。
日本が左サイドでFKを得ると、MF松本が右足で蹴ったボールをDF岩波が左足のアウトサイドで合わせる芸術的なシュートを見せて先制に成功。1対0とリードしてハーフタイムに突入する。日本は、MF松本が1度、FW矢島が2度、決定機を迎えたが、いずれも決めることが出来ず、嫌な流れのままで前半を終えようとしていたので、価値の高い先制ゴールだったと言える。
後半になると、1点リードの日本のリズムが良くなって、パスが回るようになる。FC東京のMF橋本を投入して、MF橋本のワンボランチ気味の布陣にした後は、さらに良くなって、いくつかチャンスを作るが、追加点は奪えず。一方のクウェートは、終盤になるとラフプレーが多くなって、日本の選手が倒されるシーンが目立ってくる。そのまま、試合が終わろうとしていたが、終了間際にCBの間を突かれてクウェートに決定機を作られるが、シュートミスに救われて同点ゴールとはならず。
最後の方は、途中出場のMF榊が粘り強いキープと献身的な守備を見せて、1対0のままで、時計を進めることに成功。1対0で日本が勝利して、今大会初勝利を挙げた。これで、日本は1勝1敗で勝ち点「3」、クウェートは0勝1敗1分けで勝ち点「1」となった。次は、7日(水)にGL突破をかけて地元のUAEと対戦する予定になっている。
■ 初スタメンの4人が持ち味を発揮負けるとGL敗退が決まる吉田ジャパンだったが、前半ロスタイムにセットプレーからDF岩波が挙げたゴールを守りきって、1対0で勝利し、GLの最終戦に望みをつないだ。次は地元のUAEが相手となるので、難しい試合になることが予想されるが、何とか踏みとどまったといえる。
日本は初戦からメンバーを4人も入れ替えてきたが、4人とも、まずまずの働きを見せた。浦和のFW矢島はゴールこそ生まれなかったが、ゴール前のいいところに顔を出しており、3度ほど、決定的なシュートを放った。それ以外のプレーはあまり目立たなかったが、ゴール前の危険なところに顔を出せている点は評価できる。
横浜FCのMF小野瀬は積極性が目立った。初戦はサイドから突破するようなシーンはほとんどなかったが、この日は、右サイドに入ったMF小野瀬と左SBのDF山中が果敢に仕掛けて突破口となった。イラン戦はキレイに崩そうとする意識が高すぎて、効果的な攻撃が出来なかったが、MF小野瀬が入ったことで、攻撃にバリエーションが生まれた。
■ DF岩波が決勝弾!!!新潟ユースのDF川口もまずまずだったが、何と言っても、神戸ユースのDF岩波の活躍が目立った。ゴールシーンはテクニカルなシュートであり、大きなゴールだったが、それ以外でも、精度の高いフィードと空中戦の強さでチームに貢献した。
初戦は、同じテンポで攻撃を仕掛けてしまって、イランの守備を崩せなかったが、この日は、立ち上がりからDF岩波がロングフィードで両サイドにボールを振っていて、ロングボールを効果的に使うことができた。186センチと高さも魅力であるが、DF岩波の場合、フィード力が大きな武器であり、これだけロングボールを正確に蹴ることができるCBというのは、これまでの日本にはいなかった。
その一方で、心配なのは、湘南のDF遠藤である。前回の2010年のU-19アジア選手権も経験しており、湘南でもレギュラーとして活躍しているので、経験値はこの世代では群を抜いているが、前半と後半に一度ずつ、ポジショニングのミスがあって、GKと1対1となるシーンを作られた。
この世代はCBは豊富で、今回は、DF遠藤、DF奈良、DF岩波、DF植田の4人が選ばれており、今のところ、DF遠藤が軸になっているが、4バックを用いるのであれば、必ずしも、DF遠藤にこだわる必要はないと思う。経験値を含めた総合力では、DF遠藤がナンバー1だと思うが、アジアの予選で必要とされるのは、高さであったり、強さであったり、速さになるので、この点では、不安がある。
■ FW久保は復調気配攻撃陣では、エースとして期待されるFW久保は、コンディションが上がってきたようで、ドリブルで突破するシーンが目立った。イラン戦では、ほとんど見せ場は無かったが、この日は、クウェートの選手を簡単にドリブルで抜いてゴールに迫るシーンが何度もあった。ゴールを奪えなかったので高く評価することはできないが、可能性と格の違いを感じさせるプレーを見せたので、次に期待したいところである。
対照的に、川崎FのMF大島はいいところがなかった。イラン戦でも全く存在感がなかったが、この日も、ほとんど攻撃に絡めなかった。背番号「10」を与えられており、このチームの攻撃の中心として期待されているが、ここまでは、物足りない。たくさんボールに触ってリズムを作るタイプであるが、MF大島のところにボールが集まってこないので、それならば、別の選手を起用した方が効果的に思える。
その他の選手では、先のとおり、高目のポジションでプレーしたMF松本が目立った。MF熊谷アンドリューのワンボランチのような感じになって、MF松本はトップ下に近いポジションでプレーしたが、ボールに関与するシーンが多くて、運動量の多さが光った。ボランチの選手であるが、MF松本はペナルティエリア付近でプレーしたときの方が、良さが出てくる。
勝たなければならない試合だったので、MF松本のポジションを高めにしたことは、成功だったと言えるが、MF熊谷アンドリューがクウェートのカウンターのとき、対応を誤るシーンがあったので、その点は不安である。力強い選手で、球際に強い選手なので、日本には珍しいタイプのボランチであるが、「相手の攻撃を遅らせるだけでOK」というところで、無理にボールを取りに行って、かわされてピンチを招くシーンが何度かある。
ショートパスの精度も、ミドルパスの精度も高くて、スケールの大きな選手なので、今後に期待できるタレントであるが、経験が不足しているのか、判断のミスがある。両サイドバックも高いポジションを取るので、2バックのような状態になっていることも多いので、MF熊谷アンドリューのところを破られると、大ピンチになるので、重要なポジションであり、キーマンと言えるだろう。
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