■ サウサンプトンに決定!!!ロンドン五輪にオーバーエイジで参加して、44年ぶりのベスト4入りに貢献した日本代表のDF吉田がプレミアリーグのサウサンプトンに移籍することになった。3年契約で、移籍金は200万ポンド(約2億5000万円)と報道されており、高い評価を受けていることが分かる。
DF吉田は、2007年に名古屋U-18からトップチームに昇格して、1年目から19試合に出場するなど、守備的なポジションの選手としては、異例とも言えるほど、順調に試合経験を積んできた。2年目の2008年に完全にレギュラーに定着してチームの3位躍進とACL権獲得に貢献し、2009年のオフにVVVに移籍したが、ザッケローニ監督になってからは日本代表にも定着して、不動のレギュラーとなっている。
ユースの頃は、ボランチでプレーしていたので、日本人の大型選手としては、過去に例が無いほどのフィード力を備えており、足元の技術にも定評がある。スピードに欠ける点が弱点と言えるが、24歳にしては経験も豊富で、本人にとっては、待望のオファーとなった。
■ 評価される2列目とSBこれまで、海外でプレーする日本人というと、中盤の選手が多かった。先駆けとなったシドニー世代は、特に、その傾向が強くて、MF中田英、MF中村俊、MF小野、MF稲本など、ほとんどが中盤の選手で、移籍先でレギュラーポジションを確保できたのも、中盤の選手ばかりだった。ただ、最近は、サイドバックの選手の海外移籍が目立っており、DF長友、DF内田、DF安田、DF酒井高、DF酒井宏らが、欧州でプレーしている。
今の時点でもっとも多いのは、アタッカーの選手であるが、運動量の多さとアジリティーを武器に戦っている選手がほとんどで、MF香川やMF乾などが、典型例である。華やかなポジションで、注目の集まるポジションであるが、チームの顔となって活躍する選手も増えている。
サイドバックも同様で、運動量の多さとアジリティーが大きな武器となるが、勤勉なところも評価されており、DF長友は、インテルでもレギュラーを確保した。FWハーフナー・マイク、FW李忠成など、フォワードの選手もいるが、ほとんどが中盤とサイドバックの選手で、海外のスカウトに評価されている選手も、このポジションの選手が多い。
■ 大型CBが生まれにくいJリーグその一方で、センターバックになると、海外クラブでレギュラーを獲得した選手は、スイスのバーゼルでプレーしたDF中田浩くらいで、チャレンジした選手の数自体も少なくて、成功例となると、ほとんど無いのが実情である。したがって、DF吉田には、開拓者としての期待もかかる。
言うまでもないが、海外移籍については、タイミングが重要である。「海外移籍は早ければ早いほどいい。」という考えの人もいるが、そう単純なものではない。10代で海外移籍を果たしたとしても、ほとんど試合に出られなかったり、レンタルで出されてしまったりして、落ち着いてプレーできる環境が得られなかったら、早くに海外に挑戦する意味がなくなる。
確かに、欧州の中堅以上のクラブになると施設も充実していて、充実した環境でプレーできるというメリットもあるが、育成に関しては、欧州の方が日本よりも確実に優れているかと言ったら、そういうわけではない。FWメッシであったり、MFクリスティアーノ・ロナウドであったり、大成功した例だけをピックアップすると、欧州の育成環境が優れているように感じるが、実際には、期待されながらも、伸び悩んだ例は多い。
したがって、焦って海外に進出する必要はないと思うが、CBのポジションだけは、事情が異なる。例えば、浦和レッズのDF槙野は182センチの身長で、攻撃力のあるディフェンダーであるが、ケルンではほとんど活躍できなかった。ブンデスリーガのFWやCBは、190センチを超える選手が多いので、182センチの身長では、対応するのは難しくて、信頼を得ることはできなかった。
そのため、今シーズンからJリーグに復帰して、3位と躍進する浦和レッズを支えているが、CBとしてのDF槙野の能力が、ブンデスリーガに所属するCBの中で、最低レベルかと言ったら、そういうわけでもない。向き・不向きがあるので、ブンデスリーガでレギュラーで活躍しているCBをJリーグに連れてきたとしても、Jリーグのスピードに対応できず、活躍できないケースが、容易に想像できる
MF香川を例に出すと、MF香川のスピードに対応できないCBがブンデスリーガには多かったが、Jリーグには、MF香川のような小柄なアタッカーはたくさんいるので、スピード勝負になっても、簡単に振り切られないことがJリーグのCBに求められる重要な要素となるので、MF香川といえども、そう簡単にチャンスは作れないだろうし、明らかに、DF槙野のような動けるタイプのCBの方が、Jリーグでは必要とされる。
■ 開拓者としての期待したがって、Jリーグでは、190センチを超えるような大型CBが出場のチャンスを得るのは、相当に難しい話で、よほどの選手でない限り、18歳や19歳や20歳でレギュラーを獲得するのは難しい。むしろ、こういうタイプの選手は、欧州の方がチャンスを掴みやすいといえるだろう。
DF吉田に関しては、高さに加えて、フィード力と若さに似合わない冷静さを兼ね備えていたので、名古屋という強豪クラブでポジションを確保できたが、かなり稀な例で、この点が、CBのポジションに限っては、早い時期に海外移籍した方がいいのではないか?と考える理由である。
そして、そのためには、誰かが、欧州の地で日本人CBの評価を高める必要があるが、現時点で可能性を持っているのは、DF吉田くらいである。成功例がほとんどないので、何とも難しい話であるが、DF吉田が道を切り開くことができれば、後に続く選手も出てきて、大型CBが早い時期に欧州のクラブに移籍して、その中から、国際レベルのCBが生まれてくるのではないかと想像する。
したがって、責任は重大で、難しいチャレンジになると思うが、ようやく、ここまでたどり着いたので、精一杯アピールして、ポジションを確保してほしいと思う。他のポジションと違って、日本代表においても、DF吉田の代わりの選手は、すぐに見つからないので、仮に、サウサンプトンで出番が得られないとなると、日本代表にとっては、厳しい事態になるが、健闘を祈りたいところである。
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