■ 必要と義務1994年のアメリカワールドカップは、誕生したばかりのプロサッカーリーグを成功させるために、なんとしてでも出場権を獲得する必要があった。1998年のフランスワールドカップは、自国開催を4年後に控えて、なんとしてでも初出場の切符を手にする義務があった。2002年の日韓ワールドカップは、開催国としてのプライドを守るために、なんとしてでもグループリーグを突破する必要があった。そして、2006年はドイツワールドカップは・・・。
遠い先の出来事だと思っていた、ドイツワールドカップが半年後に迫ってきた。本日、ワールドカップのシード国が発表された。そして、グループリーグの組み合わせ抽選会が、9日(土)の早朝5時から行われる。
■ 勝利よりも大事なこと日本人としての当たり前の感情で、日本代表にはワールドカップでいい成績を残してほしい。ただ、個人的な考えを述べるなら、ドイツでは、グループリーグ突破よりずっと大きな課題が与えられていると思う。”日本サッカーを世界にアピールすること”である。
ワールドカップで勝ち進むのは確かに難しい。その国のサッカーにかかわるすべてを集約させた、いわゆる「縮図」といえるのが代表チームである。したがって、その国の”サッカー力”を問われる戦いといっていい。
ただし、そうはいっても、1度や2度であれば、勢いやその他の不可抗力で勝ち進むことは出来る。11年前のブルガリア、7年前のクロアチア、3年前の韓国とトルコがその典型例だ。(躍進したこれらの国がその後、サッカー大国となっているかは疑問。そして、コアなサッカーファンでもない限り、その栄光もすぐに忘れ去られる。)
■ 記憶に残る試合を・・・本大会で勝ち進んだチームと選手以上に、われわれの記憶に残るのは、美しい戦いを見せて、美しく散った敗者達だ。フランス大会では、4位に終わったものの、最も印象に残っているのは、最高の技巧と最高の戦術を駆使して戦いに挑んだベルカンプ率いるオランダ代表だった。そしてアメリカ大会では、カップを手にしたロマーリオ以上に人々の脳裏に焼きついているのは、サッキ監督とチーム戦術も含めて、まわりにあるものすべてが敵という状態でゴールをあげ続けた、ロベルト・バッジオだった。
「勝つためだけなら、ジーコ以上の監督はいるかもしれないが、魅せることにこだわるなら、ジーコ以上の監督はいない。」
■ 美しい試合を・・・思い出されるのは、コンフェデレーションズカップのブラジル戦。真っ向勝負の攻め合いの中で奪った価値あるドローゲーム。前半4分の、中田→中村→中田→小笠原→中村→柳沢→小笠原→加地とすべてダイレクトでつないだ、幻の先制ゴールの美しさ。前半26分、すべての観客の度肝を抜いた、中村俊輔の同点のスーパーミドル。後半43分、ポストをたたいた中村俊輔の左足のフリーキックと、その流れから同点ゴール。そして、ドイツのサッカーファンから起こった、スタジアムをこだまする”ニッポン、ニッポン”の大歓声。ロスタイム、倒れこみながらも懸命にボールキープを試みるロナウジーニョが見せた必死の形相とのコントラストで、日本の戦士たちはひときわ輝いた。
ジーコ率いる日本代表は、世界を虜にできるだけのチームに成長している。勝敗だけがすべてではない。ケルンでの美しい夜をもう一度・・・。
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