■ J1の第5節J1の第5節。1勝2敗1分けで勝ち点「4」の清水エスパルス(10位)と、2勝1敗1分けで勝ち点「7」のガンバ大阪(5位)がIAIスタジアム日本平で対戦した。清水はJ1のリーグ戦では10位とまずまずの位置にいるが、ナビスコカップは3連敗スタート。リーグ戦も2連敗中なので、公式戦は5連敗と結果が出てない。一方のG大阪はミッドウイークはタイに遠征してブリーラム・ユナイテッドと対戦したが2対1で勝利している。
ホームの清水は「4-2-3-1」。GK櫛引。DF犬飼、三浦弦、平岡、福村。MF本田拓、六平、村田和、大前、白崎。FW長沢駿。4節の仙台戦(A)で退場処分を受けたDFヤコヴィッチとMF河井は出場停止で、CBには今シーズンは右SBで先発することが多かった20歳のDF三浦弦が入った。左SBは開幕後にJ2の京都から加入したDF福村で、FWピーター・ウタカとMFミッチェル・デュークはベンチスタートとなった。
対するアウェイのG大阪は「4-2-2-2」。GK東口。DF米倉、丹羽大、岩下、藤春。MF遠藤、今野、阿部浩、倉田。FWパトリック、宇佐美。ハリルジャパンに召集されて3月31日(火)のウズベキスタン戦で代表初ゴールを決めた日本代表のFW宇佐美はここまで4試合で4ゴールと結果を出している。シーズン序盤は怪我でプレーすることが出来なかったMF今野はリーグ戦は2試合連続スタメンとなった。
■ 3対2でアウェイのG大阪が競り勝つ。試合は前半15分あたりで清水の右SBのDF犬飼が怪我をしてプレー続行が不可能となるアクシデントが発生。代わってDF枝村が右SBで投入されるが、先制したのはアウェイのG大阪で、前半29分に左サイドでボールを持ったMF阿部浩がゴール前にミドルパスを送ると、難易度の高いボールをうまくコントロールしてシュートチャンスを作ったFW宇佐美が決めてG大阪が先制する。
さらに後半5分には右SBのDF米倉のクロスをFWパトリックが合わせて2点目を挙げる。FWパトリックは今シーズン2ゴール目となった。劣勢の清水はFWピーター・ウタカを投入。すると、ここまではほとんどチャンスを作れていなかったが清水に流れが移っていく。投入された直後の後半11分に右SBのDF枝村のクロスからFWピーター・ウタカが決めて1点差に迫る。FWピーター・ウタカはJリーグ初ゴールとなった。
さらに後半19分にはキーパーのGK東口の軽率なプレーから気配を消した状態でボールを奪ったFW大前が無人のゴールに流し込んで清水が2対2の同点に追いつく。MF大前は今シーズン3ゴール目となった。嫌な形で追いつかれたG大阪だったが、後半35分に中央のエリアで途中出場のMF二川のパスを受けたFW宇佐美が個人技で1人をかわしてから右足で強烈なシュートを決めて3対2とG大阪が勝ち越しに成功する。
結局、名古屋戦(H)に続く2試合連続2ゴールのFW宇佐美の活躍でG大阪が3対2で勝利した。G大阪はこれでリーグ戦は3連勝となった。FW宇佐美はこれで5試合で6ゴールとなった。一方の清水はリーグ戦は3連敗。ナビスコカップも含めると公式戦は6連敗となった。開幕戦で鹿島に3対1で勝利するなどなかなかいいスタートを切った清水だったが、就任2年目となる大榎監督のクビが危うくなってきた。
■ 公式戦6連敗と苦しむエスパルスナビスコカップに対する考え方というのは各チームによって様々である。本気でタイトルを狙ってベストに近いメンバーを送り出すチームもあるが、若手中心のメンバー構成にしてくるチームもたくさんある。「J1残留」が大きな目標となるチームはナビスコカップに力を注ぐのは難しい状況で、ナビスコカップの結果はあまり参考にならないところもあるが、清水は公式戦は6連敗と苦しんでいる。
清水もナビスコカップはある程度はメンバーを落として戦っている。ナビスコカップの勝敗は気にしなくてもいいのかもしれないが、6連敗というのは何とも苦しい。Jリーグ初年度の1993年からずっと1部で戦ってきた名門クラブである。「No more 2014」という横断幕も出ていたが、これ以上、負けが込むようだとフロントも何かしらの対処をせざる得ない状況になってくる。早く連敗を止めないと大変なことになる。
ホームのIAIスタジアム日本平での試合とは言っても、王者のG大阪の状態が明らかに上がってきているので、試合前の段階から劣勢になることが予想されたが、その通りの試合展開になった。警戒していたはずのFW宇佐美とFWパトリックにゴールを決められて0対2となった。ほぼ一方的な展開だったので、ここから清水が盛り返すことは考えにくい情勢だったが、FWピーター・ウタカを投入すると流れが一変した。
この日は1トップに位置で起用された長身のFW長沢駿はほとんど何も仕事ができなかった。後半9分という早い段階でFWピーター・ウタカが投入されたが、フィジカルが強くて、キープ力があるFWピーター・ウタカが入ってからは前線でタメが出来るようになったので、厚みのある攻撃が可能になった。ナイジェリア代表でプレーした経験のあるFWピーター・ウタカの活躍は清水にとって数少ない収穫と言える。
気になるのは右サイドハーフのMF村田和が全く攻撃に絡めなかったっ点である。4節を終えた段階で0ゴール3アシストと彼のところからチャンスを作る場面が多くて清水の最大の武器と言えるが、大阪体育大学の同級生となるDF藤春との勝負は完敗だった。持ち味であるサイドからの突破はほとんど見られず。サイドでの引っ張り合いに負けていて、味方選手がボールを奪った瞬間のポジションが低かった。
理由はいくつか考えられる。G大阪の選手がMF村田和の突破を要警戒していたという側面もあるが、MF村田和は出来るだけ高い位置を取らないと清水の攻撃に迫力が出てこない。右サイドハーフというポジションが基本となるが、「4-2-1-3」となってMF村田和が右ウイングのようなポジションでプレーしているように見えるときは清水は強い。チーム全体で最大の武器を生かそうとする工夫は見られなかった。
■ 手が付けられない状態の宇佐美貴史一方のG大阪は2対0とリードしながら、GK東口の軽率なミスもあって2対2の同点に追いつかれた。後半9分にFWピーター・ウタカが登場するまではG大阪にとっては非常に楽な展開になっていたので、同点に追いつかれて選手たちは焦ったと思う。普段は温厚なMF今野が判定に対してエキサイトするなど平常心を失っている選手も何人かいたが、最後はエースのFW宇佐美の個人技に助けられた。
FW宇佐美は前節の名古屋戦(H)でも2ゴールを記録しているので、これでJ1のリーグ戦では2試合連続2ゴール。5試合で6ゴールとなったが、浮き球の難しいパスをマークに来たDF平岡の頭上を通してコントロールしてシュートチャンスを作った1点目のゴールも、中央でボールを受けて味方の動きを利用しつつ、個人技でDF福村をかわしてから豪快に決めた2点目のゴールもともにスーパーゴールだった。
先日のチュニジア戦で代表デビューを飾って、代表2試合目となるウズベキスタン戦で初ゴールを記録したが、Jリーグでも結果を出し続けている。勝負どころでゴールを決めることが多くて、かつ、ゴールシーンも鮮やかである。手の付けられない状態で、「1試合で1点を決めるのは当たり前」と言えるほどのペースでゴールを決め続けている。「モードに入っている」と言っても言い過ぎではない状態である。
Jリーグで活躍して日本代表入りが期待されながらもなかなか代表に召集されない状態が続いたことで、「待望論」がマックス付近まで高まっていた状態でハリルジャパンに呼ばれたが、期待どおりに代表でも好プレーを見せた。代表では2試合連続で後半の終盤にピッチに送り出されたが、FW宇佐美が活躍しやすい(と思われる)環境を作るなど、最大限のお膳立てをしたハリルホジッチ監督は巧みだったと思う。
■ 知られるようになったのはおよそ10年前FW宇佐美の名前が多くのサッカーファンに知られるようになったのは中学2年生のときだった。今からちょうど10年前になるので、大騒ぎされるようになってから日本代表で初ゴールを決めるまで10年かかった。個人的には『天才児にしては時間がかかった。』と思うが、間違いなく、今、日本人のサッカー選手の中でもっとも輝いている選手であり、一瞬たりとも目を離してはいけない選手になっている。
「天才児にありがち」と言えるが、メンタル的にはそこまで強くない。それほど多くの挫折を経験してこなかった選手なので、どちらかというとメンタル的には弱いタイプだと思う。ドイツ時代など試合に出場できないときはメンタル的に落ち込んで回復させるのが難しくなった。「打たれ弱いタイプ」と言えるが、その一方で、試合に出場してゴールを決めて周囲から称賛されると必要以上に乗ってくるタイプである。
ということで、「扱いが難しい選手だ。」とも言えるが、「扱うは簡単な選手だ。」とも言える。どちらとも言えると思うが、「(いい意味で)調子に乗りやすい。」というのはFW宇佐美のいいところであり、全てのことがうまく回っているように見える今は「本当にいい状態だ。」と言える。『これを決められたら守備側の選手はお手上げ。』というゴールが多くなっており、アンストッパブルな状態と言える。
「超・有望株をどのように育てていくのか?」というのは難しいテーマである。宇佐美クラスは、それこそ、10年に1人くらいの頻度でしか登場しないので、なかなかサンプル数が増えない。試練を与え続けて天狗にならないように周囲が配慮し続けることも大事なのかもしれないが、一方で、煽てて気持ち良くプレーできる環境を作ってあげることも大事なことで、どういう方法が正解なのか?を判断するのは難しい。
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