なぜ「欧米民主主義」価値観がモンゴルの親ロシア感情に取って代わらないのか?
2022年12月20日
ボリス・クシホフ
New Eastern Outlook
ほとんどの欧米諸国はモンゴルを自由民主主義という政治的、イデオロギー的価値を共有する国家と見なしている。モンゴルは世界中の政治体制の「民主主義」や「自由」を評価する様々な指標やランキングで毎年非常に上位にランクされている。たとえば国際的なフリーダムハウスの評価はモンゴルを「自由な国」と見なし、世界210カ国中57位にランク付けしている。モンゴルの民主主義の強化と発展は多くの欧米パートナーに積極的に支援されている。特に選挙プロセスの監視(たとえば2013年以降のOSCE欧州安全保障協力機構監視ミッションやEU事務所)や政策提言策定(2021年以来の年次EU-モンゴル政策対話およびフリードリヒ・エーベルト財団モンゴリア)の両方に関与する多くの諮問機関や国際機関の事務所の本拠地だ。「民主陣営」諸国はそのような任務の仕事にかなりの物質的資源を割り当てている。
現在の世界政治の動向により、モンゴルにおける「欧米型民主主義」構築はモンゴル自身の国際的アイデンティティの維持と益々結びついている。より具体的にはモンゴルの民主主義への支持と並行して、西側はモンゴルを「ロシアと中国という権威主義的隣国の間の民主主義の島」というイメージを積極的に宣伝している。モンゴルの地域的アイデンティティのそのような位置付けはロシアとロシア文化をモンゴルの政治的アイデンティティに対する「脅威」として「形成」し北の隣国に対する社会不信と軽蔑の種をまくよう設計されているように思われる。
それにもかかわらず西側諸国に対するモンゴルの相当なレベルの信頼はロシアへの信頼低下にはつながらない。たとえば社会調査によると、アメリカとロシア連邦に対して肯定的な態度をとるモンゴル市民の数は、どちらもほぼ同等でかなり多い。たとえば回答者の33%がロシア連邦に対し「非常に肯定的な」態度を示し、29%がアメリカに対して肯定的な態度を持っている。次に52%がロシア連邦に対し「かなり肯定的な」見方をしており、53%がアメリカに対し「かなり肯定的な」見方をしている。
現在、米露対立がエスカレートし、モンゴル社会が西側メディアやNGOの影響を受けているため双方にこれほど多くの支持が共存するのは非常に珍しい。著者の見解では、世論のこの「パラドックス」は、次の独自要因によって説明できる。
国家の利益に奉仕する民主主義
何よりもまずモンゴル民主主義の構想はモンゴル自体の安全保障と発展の概念と密接に関連している。この場合イデオロギーは国とその包括的な幸福に役立ち、その逆ではない。ロシアとの提携がモンゴルの利益になるのであればロシアを「権威主義的」と見なすモンゴル人にさえ支持される。また欧米イデオロギーはモンゴル人の政治的選好に深く浸透していない。彼らはまだ伝統的な文化的、家族的価値観によって特徴付けられている。
国際プロセスに対する現実的認識
モンゴルは国際情勢に対する現実的認識に支配されており、モンゴル人の大多数は依然ロシアを「西側」全体を合わせたより遙かに多くの真の安全保障を提供できる最も近い外交政策同盟国(66%)でモンゴル国家安全保障の主要な外部保証人(46%)の両方と見なしている。いかなる価値判断も超えて、圧倒的多数のモンゴル人により国家安全保障に対する主要な脅威として特定されている中国の経済的、政治的圧力を封じ込められる力としてロシアは認識されているのだ。
歴史の全体論的認識の豊かな伝統
隣国中国と同様、モンゴルは国の歴史の全体的認識を維持しており、ほとんどの国民は、1930年代の政治的弾圧や「チョイバルサン個人崇拝」に対する批判にもかかわらず、モンゴルとソ連の提携の肯定的側面を覚えている。モンゴルの独立と承認のための闘争、人民共和国の社会経済的基盤の構築。モンゴルで記憶に残るのは、革命前のロシア史の人物、特に1921年にモンゴルのかなりの部分を中国軍から解放したウンゲルン男爵(物議を醸す多くの行動にもかかわらず)と、モンゴル、ボグドゲゲン政府の最初の外交政策条約の「建築者」であるイワン・コロストヴェッだ。1912年のロシア帝国との合意。モンゴル国家にとって豊かな良く残された歴史は「国家の誇り」の一部で、その独自性とアイデンティティを維持する手段でもある。
「伝統」と「欧米風」が「ソ連」と共存
一部のソ連後の国々と異なり、モンゴルでは独自の国家イデオロギーを作ったり復活させたりするためロシアとソ連の全てを暴露する必要は皆無だ。モンゴル人には、フンやジンギスカン帝国にまでさかのぼる非常に長く豊かな政治的伝統がある。この国では国の歴史的ルーツに世間の注意を引くため「社会主義時代」を批判的に粉砕する必要はない。この歴史時代は一般の認識の中で正当な位置を占めているのだ。
「中国」に対する「欧米」
また何であれ「欧米」風の強化はロシアの影響力ではなく中国の影響力に対して釣り合いをとるものだ。欧米文化やイデオロギーの強化は主にモンゴルへの中国文化や価値観の拡張の可能性に対抗したり封じ込めたりする手段と認識されている。ロシアは過去三十年間そのようなことをしておらず、モンゴルにおける「欧米」は「ロシア」にではなく「中国」に対するものと見られている。
結論
したがってモンゴルにおける欧米文化や政治的、社会的イデオロギーの推進が一般の人々の心におけるロシア・イメージに与える影響は世界のどの地域より遙かに少ない。モンゴルのように独特な国は「他の国々」全体が同じように対応する可能性がある提案や課題に対し独自の対応をすることが可能なのだ。欧米の価値観や政治的基準とロシアという形の主要な敵の一人に対し前向きな認識を維持するという互換性問題に対しモンゴルは独特な答えをだしている。この点でモンゴルの社会政治モデルは、ほとんどの中央アジア、トランスコーカサス、さらには東ヨーロッパ・モデルより遙かに「包括的」で広範だ。モンゴルで欧米の政治的、イデオロギー的価値を推進してロシアとモンゴル間にくさびを打ち込みたい全ての人々はこの事実をはっきり認識しなければならない。
ボリス・クシホフはロシア科学アカデミー東洋学研究所朝鮮及びモンゴリア部門所属。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
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恥ずかしながら二冊読んだ後で疑問を感じた人物の下記酷評に納得。日本にこういう記事はあるのだろうか?
The Outrageous Statements of Jewish Israeli Homosexual Transhumanist Vegan Yuval Noah Harari
The Chris Hedges Report
Redacted News
The EMPIRE strikes back after The Grayzone exposes their corruption | Redacted Conversation
Redacted News トランスジェンダー女性のスポーツ参加問題
Why is NO ONE stopping this? People are getting seriously hurt in Transgender sports
今朝の孫崎享氏メルマガ題名
街路樹がより多く植えられている地域では住人の死亡率が低くなるというアメリカ農務省山林局の研究結果。街路樹と死亡率の相関関係は、心血管疾患および非偶発的な原因による死亡率において有意であり、特に65歳以上の男性で顕著
「ドイツメディアの分析で、ウクライナ偏向報道が明らかに! 戦争の責任をプーチンに押しつけ、外交的解決策より軍事支援を主張!!」
はじめに~ドイツ主要8メディア4000記事の分析で、ウクライナ偏向大本営報道が明らかに! 戦争終結に軍事支援より外交的解決策を提示したのは『シュピーゲル』だけ!! ほぼすべての記事が、戦争の唯一の責任をロシアまたはプーチンに押しつけ!! 検証のなき日本の主要メディアの報道も同様の偏向報道ではないのか!?
自民党の国場幸之助国防部会長(沖縄1区)が「中国との軍備不均衡こそリスク」と、中国相手に防衛力増強を主張! 軍事費がGDP比1.7%だとしても日本の6倍の国防予算となる中国と「均衡」するためには、日本の防衛関係費はGDP比5%以上必要!! 日中の国力差を理解できない「国防バカ」が国を滅ぼす典型!!
イソップの「おろかなカエル」。牛を見たこどもがとても大きかったというのに合わせ腹を膨らませ破裂する母親そのもの。
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