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2022年10月 9日 (日)

ヨーロッパはどこに工業生産を移転しなければならないのだろう?

2022年10月4日
ウラジーミル・オディンツォフ
New Eastern Outlook

 外国から化石燃料を輸入する世界の、特にヨーロッパの脆弱性は既に1970年代の石油危機で明らかだった。ヨーロッパは10年後、ようやく漸次それに対処し始めた。ある意味で、当時、決め手は自身ハイテク・エネルギーを作り出すため積極的に原子力発電所の建設だった。

 エネルギー輸入に依存するヨーロッパ経済に対する1970年代エネルギー危機の悲惨な影響から見て、対外政策で、アメリカがまさに経済的ライバルであるヨーロッパを分裂させる方向を選択したのは驚くべきではない。そして、これと現在のヨーロッパの猛烈な経済危機の人為的本質は誰も疑っていない、特にヨーロッパでは誰も。結果として、アメリカと緊密に同盟しワシントンに命令されるEU官僚によるモスクワに対する狂信的聖戦はヨーロッパ全体の貧困や経済自殺や退廃をもたらしている。

 しかし、ワシントンが引き起こしたエネルギー挑発とヨーロッパ市場へのロシア・エネルギー供給に対する制限の結果、アメリカも自身のガス問題に直面しかねないと米ウォールストリート・ジャーナルが報じている。備蓄レベルは今通常以上に少なく、冬には物価の急上昇を見られよう。その結果、アメリカが精力的に主張しているヨーロッパとの友情は冬の寒さを生き残れまい。

 ヨーロッパでの現在の不幸を表現して、ベルギーのEU議員トム・ヴァンデンドリスヘはフラマン人家庭の平均年間電気代は今9,000ユーロだと指摘しており、記録的インフレが貯金と人々の購買力を破壊している。欧州労連の報告によると、平均の年間暖房と電気料金請求書は大半のEU加盟国における低賃金労働者の月給を超える。だがエネルギー危機の結果は遙かに厳しいので、これは氷山の一角に過ぎない。至る所で生産が停止し、失業率が上昇し、産業はヨーロッパを去りつつあり、おそらく決して戻るまい。

 ほとんどの商品工業生産の主柱であるヨーロッパ鉄鋼業はエネルギー危機に脅かされている。高いエネルギー価格が、この産業を特に高価にして競争力を失わせ、工場は完全、あるいは部分的操業停止を発表している。エネルギー価格の激しい変動とサプライチェーンの根強い問題がヨーロッパ産業空洞化時代の到来をつげるおそれがある。法外な天然ガス価格に直面して、主な経済活動役を果たしているヨーロッパの他のエネルギー依存産業、化学や自動車、セメントや他の多くが同様な問題に直面している。この非常に困難で、極めて絶望的な状況で、ヨーロッパの実業家たちは積極的に他の場所に製造移転する選択を模索している。この点に関し、彼らはエネルギー輸入に依存しない、より安定したエネルギー価格と強力な国庫補助がある国に引き付けられている。

 ヨーロッパ産業を誘惑し、それにより更に欧州連合を弱体化させるため(それがヨーロッパでエネルギー危機を始めたワシントンの狙いだった)、アメリカは最近益々国内にヨーロッパ産業を誘い込むのに積極的になっている。結局、これは単に問題に悩まされ、数十億ドルの赤字を作り出しているアメリカ予算制度で税収を増やすことが約束されるだけでなく、アメリカで何千もの新しい雇用を作り国内の社会的緊張も解決するのだ。

 ウォールストリート・ジャーナルによれば、既に9月にアムステルダムに本拠がある化学企業OCINV最高経営責任者Ahmed El-Hoshyはテキサスでアンモニア生産のため「プラント拡大」を発表した。デンマークの宝石会社パンドラとドイツの自動車メーカー、フォルクスワーゲンもアメリカでの「拡大」を発表した、他方テスラはドイツのバッテリー生産を拡大する計画を中断し、8月にバイデン大統領によって法律にすべく署名されたインフレ削減法を使ってアメリカで生産している。様々なEU加盟諸国の多くのヨーロッパ実業家が同様な意図を持っている。

 ヨーロッパは先進的生産技術を歓迎する仲間のままであり、熟練労働力を誇りにできるとアナリストと投資家は主張する。そのため自国へのヨーロッパ生産移転に興味を持っているのはアメリカだけではない。特に、既にエネルギーが豊富な中東諸国や、依然安い労働力があるアジア、アフリカや中南米も関心を持っている。

 南部のCIS諸国、特に南コーカサスと中央アジアの国々も、ここ数週間、ヨーロッパ制裁を避けるためにロシアから「離れ」、EU生産の外部世界への経済「再分配」により魅力的になろうとしてを当てにして、その願望を表し始めている。

 アメリカ自身がシェールオイル生産業者が今後数年はヨーロッパを救うことはできず、アメリカもヨーロッパと同じエネルギーの悪夢に直面するだろうと認める状態で、ブルームバーグ推測によれば、EUの経済、エネルギー破たんは明らかに長引き、ヨーロッパ産業空洞化の問題は一層顕著になる。

 欧州連合を崩壊させる秘密のアメリカ計画を前もって知っていたイギリスは既にEUを去っている。ヨーロッパの権益を無視し、私利私欲とアメリカ覇権のことしか気にかけないウルスラフォン・デア・ライエンやジョセップ・ボレル、シャルル・ミシェルのような明らかに親米ヨーロッパ当局者の命令から自身を安全に保つため、イギリスに続くことをヨーロッパの多くの国々が考えている。同時に、ヨーロッパの差し迫った産業空洞化とEUからの多くの産業移転で、明らかに多くのヨーロッパ当局者や現在のヨーロッパ政治エリート集団は、エリートととしての自身の立場を維持する方法を模索している。彼らのあからさまな反ヨーロッパ活動に対して、増大する大衆の憤慨による不可避な報復は、結果として減少する可能性がある。特に、ヨーロッパの工業生産能力「移転」後、現在の反政府勢力が他国へ強制大移動するおかげで。それ故、ヨーロッパ自身の状況を悪化させるだけのこれら親米ヨーロッパ当局者による対ロシア制裁政策は継続し、それ以上にエスカレートする。多数の評論家や専門家や欧州議会議員によれば、ワシントンの挑発的、破壊的計画に従うよりも、ロシアとの協力強化で、今ヨーロッパは、それを飲み込んでいる経済・エネルギー危機を切り抜ける可能性が極めて高いという事実にもかかわらず。

 ウラジーミル・オディンツォフは政治評論家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2022/10/04/where-will-europe-have-to-move-its-industrial-production/

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