石油をめぐるサウジとロシアの動きで途方もなく高くついたバイデンの無謀外交
マーティン・ジェイ
2022年10月13日
Strategic Culture Foundation
サウジアラビアをのけもの国家にするというバイデン発言は実に愚かで見当違いだったとマーティン・ジェイは言う。
サウジアラビア皇太子に会って、アメリカ中間選挙に向けの、うまい石油取り引きをして帰るつもりだったバイデンの最近のサウジアラビア訪問は色々言われている。出会い時のグータックの写真は今ソーシャル メディアで広まっているが、この訪問の勝者と敗者は誰かという憶測も同様だ。
バイデンにとって、それは今後の大統領たちが注意すべき教訓だった。彼は任期初めにサウジに対し猛烈な批判を始め、特にMbSを標的にジャマル・カショギ殺害に焦点を当て人権を擁護する必要があると誓約した。彼は一芝居打ってサウジアラビアを地域の他の国々にとってアメリカ覇権に平伏する見本にするつもりだった。
バイデンは何を考えていたのだろう? ほとんどのアメリカ大統領と同様に未来でなく過去に目を向けていたのだ。GCC諸国とワシントンの関係は常に安全保障とエネルギーという二つの主要接着剤に基づいていた。ところが大統領執務室に入ったバイデンが最初にしたことの一つはサウジアラビアにF-35戦闘機を供給する総額230億ドルに上るアメリカの巨大武器取り引きを阻止することだった。実際2021年4月後半、彼は取り引き続行を許可したが既に損害は生じていた。MbSがカショギ殺人者だと非難するのはそれなり当然だが、この国を「のけもの」にするというバイデン発言は単に愚かで見当違いだった。
そのような誤った道徳的指導をすることで、アメリカが道徳的に優位な立場を失ったのは別として、バイデンが大統領に就任した際、サウジアラビアに対する姿勢は熟考されていなかった。バイデンは月単位で考えていた。サウジは年単位で考えていた。彼らはアメリカがひざまずいて石油や武器の巨大取り引きを懇願するのは時間の問題だとを知っていた。
彼らは長く待つ必要はなかった。
今夏、サウジ王家を訪問しなければならなかったのはバイデンで、王家は最初から、アメリカ国民がそのために大きな代償を払わなければならない地政学の重要な教訓を彼が学ぶことになるのを示した。大統領機エアフォースワンが港湾都市ジェッダに着陸した時、サウジアラビアのサルマン国王も皇太子も、キング・アブドゥルアズィーズ国際空港でバイデンを出迎えようとしなかった。
だがバイデンが苦い薬を飲まねばならない事態は、ずっと後に起きる。
中間選挙が時間の問題となり、アメリカのガソリン価格高騰が、二つの権力の殿堂、下院、上院で誰が勝利するか難航させるものとして機能する可能性が高い。下院、上院両方で与党である民主党は両方失う可能性があり、バイデン任期後半は非常に形式的なものとなり、両院で彼の考えを押し進める本当の力はなくなる。
最近ロシアと会って石油生産レベルについて話し合ったサウジアラビアは、石油を1バレル100米ドル以上に維持することを目指して実際に生産削減するのに主にサウジアラビアから同意した。しかし生産削減がサウジとロシア双方の利益になる第二の理由があった。中間選挙で、有権者がガソリン価格の高さを非難してバイデンを激しく攻撃するためだ。専門家たちは、サウジと実際にUAE(世界舞台では多くの点で兄貴分) とロシア間の関係がどのように改善しているかについて叫び声を上げ、減産決定でのプーチンの功績を認めている。サウジアラビアとアラブ首長国連邦の焦点は、自国経済を好調に保ち、ホワイトハウスからバイデンを追放し、トランプを復活させるためできる限りのことすることなので実際はこれは誇張だ。リヤドとアブダビにとって、ワシントンとの困難な時期にプーチンとの関係を維持すれば、バイデンをいらだたせ、彼の愚かな振る舞いに対する梃子として使えるのを知っているのでお互いに利益がある。サウジアラビアでの彼の策略には代償があった。そして彼は今それを支払っている。ウクライナ戦争は世界市場でエネルギーの不安定性をもたらした。アメリカが様々な要素を結びつければ、対ロシア欧米制裁はプーチン大統領を助けただけでなく、さらにエネルギー生産者、数週間に後忘れたころの復讐を楽しむはずのサウジアラビアのような「のけ者」にさえ更に力を与えたと理解するかもしれない。バイデン在任期間は、西側諸国全般に指標になるだろう。アメリカ大統領が世界中で権力を振るい非難合戦にふける前に、誰かがその含意を研究する必要があるというのが教訓だ。バイデンは、彼の好戦的大失敗が反動を伴うことを証明した。そしてサウジは歓喜の瞬間を十分長く待ったのだ。
マーティン・ジェイは、イギリスのデイリー・メイル記者として、モロッコ本拠とする受賞したイギリス人ジャーナリストで、CNNやユーロニュースのため、アラブの春について報じた。2012年から2019年まで、彼はベイルートを本拠として、BBC、アルジャジーラ、RT、DWなど多くの国際メディアや、イギリス・デイリー・メイル、サンデー・タイムズやTRT Worldでフリーランス・ベースで働いた。彼は、多数の主要メディアのために、アフリカや中東やヨーロッパのほぼ50カ国で働いた。彼はモロッコ、ベルギー、ケニアとレバノンに暮らし、働いた。
個々の寄稿者の意見は必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。
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寺島メソッド翻訳NEWS
耕助のブログ Jacob G Hornberger記事翻訳
またしても窓際大臣迷答弁。
植草一秀の『知られざる真実』
デモクラシータイムス
「岸田総理、解散命令請求を視野に、統一教会へ報告聴取・質問権行使を明言。請求事由は『刑事事件の確定判決』と表明 抜け穴を確保か!?」
はじめに~岸田総理、統一教会問題について予算委で「関係を持たない私が問題を解決する」と、宗教法人法の解散命令請求を視野に報告聴取・質問権行使を明言!『やや日刊カルト新聞』主筆、『自民党の統一教会汚染-追跡3000日』著者の鈴木エイト氏は、「政府としても2歩3歩先に進めたといえます」と好評価のコメント! ところが18日の予算委では、解散命令請求の事由は「刑事事件の確定判決」と表明! 統一教会本体に刑事での確定判決はなし!! 岸田総理、統一教会解散に抜け道を確保か!?
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