アメリカのロシア・ウラン依存と制裁政策
2022年9月4日
ウラジーミル・ダニーロフ
New Eastern Outlook
エネルギー危機は、ワシントンの対ロシア制裁政策により、ここ数ヶ月で悪化しているが、おそらく、第四次中東戦争で欧米がイスラエルを支持したことに抗議して、アラブ諸国が原油禁輸を課した1973年以来最も深刻な危機だ。それは今までに全ての欧米諸国に影響を与えている。新たなエネルギー源の模索や、既存の比較的環境上好ましい方法で産業規模での発電方法改良が続く中、原子力発電所は世界の主導大国の多くにとって一種の命綱だ。こうしたこと全てが、エネルギー危機と戦うため原子力使う可能性を再考し、この分野の核燃料市場の状態と自身の能力を分析するよう各国を促している。
この点、アメリカも例外ではない。既設の原子力発電能力で、アメリカは世界一であり、この問題には当然大いに注意が向けられた。2021年11月時点で、アメリカには(50州中)28の州に設置された56の原子力発電所には、93基の原子炉があり、合計容量95.5GWで、アメリカの電力の19.7%を発電している。
周知の通り、ウランが原発原子炉用燃料だ。ところが、ロシアと異なり、アメリカはウランを製造したり、加工したりしておらず、ウラン備蓄もなく、アメリカは作ることは考えたが、決して実行していない。1980年の最高潮時でさえ、アメリカは原子力産業に必要な核燃料棒の40%しか生産できなかった。その結果、ロシアやカザフスタンやウズベキスタンが、アメリカの原発産業に、ウランの約50%を供給しており、ロシアはアメリカ・ウラン需要の約20%を占めている。2021年、アメリカはロシアから6億7000万ドルに相当する濃縮ウランと放射性同位元素を輸入した。
主にソ連の遠心分離機の濃縮技術が、アメリカで開発されたものよりも、エネルギー効率が、ほぼ10倍良かったため、核燃料棒価格も、より安価で、アメリカのロシア・ウランに依存は増大した。
1993年に、ロシアとアメリカは、20年間の高濃縮ウラン購入協定、別名、メガトン・メガワット・プログラムとしても知られる(署名者の名にちなんで、ゴア-チェルノムイルジン協定とも呼ばれる)を締結したが、これはロシア原子力産業企業が、アメリカ原子力発電所用に燃料を作る目的で、高濃縮ウランを低濃縮ウランへの商用転換を規定していた。この協定は、両国が発表した核軍縮の一部として、500トンの元兵器級ウラニウム(つまり、元20,000発のロシア核弾頭)が核燃料棒に使われることを規定していた。アメリカは同量を増やしたいと望んだ。実際、アメリカは、ロシアを自身で武装解除させ、大いに儲けさせ、ほとんどただのような核燃料を得たいと望んでいたのだ。だがその結果、アメリカ自身の濃縮技術は1990年代初期レベルのものに留まり、しかも、以前の能力は、ほとんど残されなかった。
セルゲイ・キリエンコは、ロスアトム社長だった頃、アメリカ電球10個のうち、1つはロシア・ウランから生じるエネルギーで点灯していると言った。メガトン・メガワットプログラムの10年間に、500トンの前核弾頭材料から再処理された14,440,000トンのウランをロシアはアメリカに送った。それはアメリカ原子力発電所が7兆キロワット時以上の発電をするために使われ、それは、ちなみに、ロシアの全年間出力の、ほぼ7倍だ(例えば、2021年、ロシアは1.13兆キロワット時の発電をしていた)。メガトン・メガワット計画は2013年に期限が切れたが、それにもかかわらず、以来、旧弾頭を原材料には使用しなかったが、ロシアはアメリカに核燃料棒を輸出し続けた。
アメリカにおける現在の重大な局面が、アメリカ原発用の燃料供給に関し、特にワシントンに、自国でのウラン濃縮の可能性を促進するよう強いている。他のいかなる国も、ロシアからの資源供給を置き換えるのは不可能だろうと言うエネルギー省次官キャサリン・ホフを引用してワシントン・エグザミナーが報じた。この目的で、6月、アメリカ共和党下院議員のダン・ニューハウスとオーガスト・フルーガーが、ウランを戦略的原材料として認めるよう提案した。説明資料で、下院議員は、現在エネルギーや医療を含め、アメリカ経済の多くの部門にとって、重要な原材料であるウラン供給で、アメリカは、ロシアと、その同盟諸国に依存していると指摘した。一方、ベネズエラや中国やイランのような外国の戦略的競合諸国が、エネルギー産業を支配するのを許し、国内生産ではなく、高価な輸入に人々が頼るよう強いて、現在のエネルギー事情を悪化させたのはバイデン政権の無分別な政策だと議員は指摘している。
以前、The Hillはロシア濃縮ウラン供給が中断されかねない懸念を表明していた。この出版物によれば、このような動きは大半のアメリカ原発閉鎖を招き、アメリカの全エネルギー体制を崩壊させかねない。一方、アメリカ・メディアは、ロシア嫌悪狂乱の中、ロシアが核燃料供給を半分に削減して、アメリカに大損害を与えられるというニュースで視聴者を怯えさせている。これは更に、アメリカ電気料金の即座の急激な上昇を引き起こしかねず、ワシントンの制裁方針のおかげで上昇する石油とガス価格を背景に、アメリカ人とアメリカ経済への非常に重大な打撃になりかねない。
このロシアのお化けによるこの脅迫は、3月8日にロシアからのエネルギー輸入、石油と石油製品、LNGと石炭に禁止令を課したアメリカ自身の行動を考慮すると非常に注目に値する。明らかに、アメリカのエネルギー安全保障が直接ロシア・ウランに依存しているというホワイトハウスの懸念から、ロシア・ウランは制裁されなかった。
ちなみに、ワシントンが違法な対ロシア制裁ヒステリーを強める中、3月21日、ロシアのアレクサンドル・ノヴァク副首相は、ワシントンのロシア嫌悪政策とロシア・エネルギー源に対する通商停止に応えて、ロシア政府はアメリカへのウラン供給禁止を考慮していると述べた。
ウラジーミル・ダニーロフは政治評論家、オンライン誌「New Eastern Outlook」独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2022/09/04/us-dependence-on-russian-uranium-and-sanctions-policy/
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売国奴の国葬という、とんでもないことを強行する主役の一人、故人の盟友統一協会党幹部三世議員を見ると思い出す文章がある。
貴方は豪勢な殿様というところから、御自分では偉い人間だと思っていらっしゃる!貴族、財産、勲章、位階、それやこれで鼻高々と!だが、それほどの宝を獲られるにつけて、貴方はそもそも何をなされた?生まれるだけの手間をかけた、ただそれだけじゃありませんか。
ボオマルシェ著・辰野隆訳『フィガロの結婚』(岩波文庫)193ページ。
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