習・バイデン・サミットは、アメリカ-中国の緊張を緩和しない派手なPR活動
Finian Cunningham
2021年11月24日
Strategic Culture Foundation
両指導者は友好的に見えたが、中国の反感を買う基本的姿勢をワシントンが変えた兆しはほとんどなかった。
アメリカのジョー・バイデン大統領は世界二つの最大経済間で連鎖的に変動する緊張の中、中国の習近平主席と最初の直接対話をした。フランシス・ボイル教授は下の短いインタビューで、この「ビッグイベント」に対すに見解を述べている。
だがまず最初に若干背景を。緊張した関係の緊急な文脈という条件のもとで、この指導者たちが最終的に実質的協議に参加する時間を見つけるのに、バイデンがホワイトハウス入りして以来ほぼ10カ月も要したのは奇妙なほど無頓着に思われる。
一部の観察者が、11月15日にオンラインで開催された会談を、軍事対決に向かいかねない危険な衝動に対してブレーキをかける歓迎すべき動きと見ている。だがボイルによれば、会談の更に綿密な観察で、緊張の基本的原因であるアメリカ覇権の野心は撤回されなかったことを明らかにしている。
オンライン・サミットはバイデンによって始められて、3時間以上続いた。アメリカ側は、このイベントに注目を集めるTV報道をさせた。関係改善の岐路となり得るとして、中国メディアにはサミットを歓迎する傾向があった。だが、両リーダーは友好的に思われたが、ワシントンが、中国の反感を買う基本的姿勢、特に台湾での武力衝突へと向かっている政策を変えた兆しはほとんどなかった。
下記インタビューで、フランシス・A・ボイル教授は、双方が対立する立場を堅持したままだとコメントしている。中国は、台湾独立を奨励するどんな干渉も大目に見ないと習主席がアメリカに警告したと彼は指摘している。バイデンは、アメリカは台湾に対する北京の主権を認識する、いわゆる一つの中国政策を維持していると言った。だが同時に、ワシントンは、台湾に兵器を供給する認可を与える自身の「戦略上のあいまい性」を維持しており、この政策が、大陸からの独立を宣言する台湾を大胆にさせている。
バイデンのコメントに対するホワイトハウス公式声明で、アメリカ側は人権侵害とされていることに関し、中国に説教する推定に基づく権利を不当に主張している。客観的に言って、このアメリカの見解は、ボイルが数十年にわたり、広範囲に学術的、法律上の仕事で文書化した通り、過去と現在の自身による露骨な人権侵害の実績からして、身勝手で、挑発的だ。バイデンが前政権と同様、この横柄な行動を続けているのは、ワシントンは、習が要求した、相互尊重に基づく関係ができないという証明だ。
失敗したアフガニスタン戦争からの悲惨な撤退は、主に中国の勃興と、出現しつつある多極世界から生じるグローバル大国への主要な挑戦と見なすものに直面したワシントン地政学の必要性が動機だったとボイルは指摘している。バイデンが主張した通り、アフガニスタンは「アメリカの戦争の終わり」を意味しない。むしろ帝国権力の保存と方向変換だ。その点、バイデンが始めた習とのオンライン・サミットは、危険な緊張をほとんど和らげようとしないアメリカによる、一層多くのぺてんと二心に過ぎない。
フランシス・アンソニー・ボイルはイリノイ州立大学国際法教授。彼はハーバード法学大学院首席卒業生。ボイルはボスニア・ヘルツェゴビナの弁護士と、パレスチナ自治政府の顧問を勤めた。彼は大量虐殺だと非難して、イスラエルによるパレスチナ領域占領を支援するアメリカ政策を長年批判し続けている。ボイルは、組織的に戦争を促進する外交政策と、先住民を圧迫するアメリカ政府を非難している。彼はThe Criminality of Nuclear Deterrence(核抑止力の犯罪)、The Three-Decade US Campaign to Terminate the Qaddafi Revolution(カダフィ革命を終了させる30年のアメリカキャンペーン):World Politics and International Law(世界政治と国際法);Destroying World Order(世界秩序の破壊壊):US Imperialism in the Middle East Before and After September 11(9月11日の前と後の中東のアメリカ帝国主義);Foundations of World Order(世界秩序の基礎):The Legalist Approach to International Relations(国際関係への法律尊重主義アプローチ)を含め多数の本の著者
インタビュー
質問:今週のアメリカのジョー・バイデン大統領と中国の習近平主席のオンライン・サミット後、バイデン大統領が言ったように、アメリカ-中国関係に対する楽天主義の根拠が良くなり、「対立から方向をそらせた」と思われますか?
フランシス・ボイル:いいえ。習主席は台湾に関しバイデンに警告しました。これまでのところバイデンが台湾独立運動に対する支持を撤回している証拠を私は見ていません。
質問:そもそもサミットをバイデンが要求したのは重要でしょうか?
フランシス・ボイル:はい。これは基本的に、実際、台湾や台湾海峡の海や南シナ海の現場で、まさに正反対のことをしながら、状況を落ち着かせるためのことをしていると、アメリカ人と世界を説得するためのバイデン広報活動でした。習主席は、バイデンが宣伝目的でメディアで放送したバーチャル・サミットで話していることではなく、バイデンがしていることに注意を払っていると私は確信しています。マキアベリが君主論で言った通り君主は素晴らしいウソつきで、偽善者となるよう学ばねばなりません。それがジョー・バイデンです!
質問:習に、バイデンは、アメリカは依然一つの中国政策を支持していると言いました。あなたはこの声明が台湾の緊張を緩和すると思われますか?
フランシス・ボイル:もちろん、そんなことはありません。実際、会談直後、バイデン政権は、アメリカ国防専門家と台湾国防専門家の高官レベル会談をすると発表しました。基本的に、バイデンは「サミット」直後に習を侮辱したのです。
質問:バイデンは中国における様々な人権侵害の懸念に言及しました。習はアメリカの人権侵害の懸念に言及しませんでした。これは、アメリカ政策が、依然傲慢さと優位の思いこみで妨げられていることを示しているのでしょうか?
フランシス・ボイル:もちろん。ジミー・カーター以来全てのアメリカ政権は、敵と指定する国に対し「人権」をプロパガンダ兵器として利用しています。最近の一連のアメリカ政権が、パレスチナ、リビア、イラク、シリア、ソマリ、イエメン、アフガニスタンなどでしたことを見て下さい。中東と中央アジア至る所での大規模な死と破壊です。
質問:例えば習主席は、中国は、19世紀のアヘン戦争時代、アメリカやヨーロッパの帝国主義勢力が支配した昔の弱い巨人ではないとしばしば語っています。多極世界でアメリカ帝国が凋落し、中国が関係を決定する新しい歴史的現実があることに同意されますか?
フランシス・ボイル:はい。アフガニスタンでアメリカ政府はベトナム以来最大の悲惨な敗北を経験しました。彼らはそれから何も学びませんでした。実際バイデンは中国とよりうまく対決するためアフガニスタンから撤退すると言いました。以上証明終わりです。
Finian Cunninghamは主要報道機関の元編集者・記者。国際問題について多く書いており、記事は複数言語で刊行されている。
個々の寄稿者の意見は必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。
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先日TBSのアフガニスタンからの生配信を見た。洗脳専門の昼のゴミ番組と大違い。こういう番組も可能なのだ。
哲学入門チャンネルで関良基教授の(ご専門ではない)渋沢栄一らを巡る江戸哲学の話が聞ける。一時間36分。余り真面目な読者ではなく、拝読したのは下記三冊のみ。他の著書も拝読予定。圧巻というか驚嘆したのは『赤松小三郎ともう一つの明治維新 テロに葬られた立憲主義の夢』。
- 『自由貿易神話解体新書 「関税」こそが雇用と食と環境を守る』
- 『赤松小三郎ともう一つの明治維新 テロに葬られた立憲主義の夢』
- 『不平等ではなかった幕末の安政条約 関税障壁20%を認めたアメリカ・ハリスの善意』
愚劣な厚生破壊官僚と政治家に苦しめ続けられる庶民。いや○民?技官の両耳の間に脳味噌あるのだろうか?それを報じない腐敗したマスコミの医療担当者も?
「成田でオミクロン株感染者を初確認! 空港検疫は抗原検査ではなく100%PCR検査にすべき!!」2021.12.1号~No.3366号
オミクロン株はPCR検査で検出できるとのことですので、政府は水際対策の徹底をいうのであれば、空港検疫を抗原検査ではなく、100%PCR検査にすべきです。後段で触れますが、IWJ記者の「どの程度PCR検査を拡充していくのか」という質問に対し、後藤厚労大臣は具体的な対策を示しませんでした。
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バイデンの後ろで糸を引くブリンケン
久しぶりに『世界12』を拝読しました。そこで目にしたのがサイト「デモクラシ-タイムス」にしばしば登場される半田滋氏と伊高浩昭氏のお名前とご論考(暴走する安全保障政策 2013年12月号 岩波書店)。また本田善彦氏の「保釣運動は民間による初の自発的な愛国運動だ」も今日の台湾地区情勢を理解する上で大変参考になりました。
ところで米露(ウクライナ),米中日台の関係が今にも戦争状態になるようなことを示唆する記事をよく見かけますが,全く触れられていないのが国務省勤務のブリンケン氏。現在は国務長官ですが,オバマ,トランプやバイデン大統領を背後から糸で操っていたのはアンソニー・ブリンケン氏でした。ウクライナに関与したネオコンのヌーランド女史,リビア攻撃のクリントン女史,武漢・コロナのトランプ大統領の,後ろにいた・いるのはブリンケン氏であったように思われます。そして認知症を患っていると言われているバイデン大統領の背後にいるのがまさにブリンケン国務長官その人。彼こそが台湾地区有事を企む張本人だと推測されます。国務長官の動向に注目したいと思います。
投稿: 箒川 兵庫助 | 2021年12月 2日 (木) 00時55分