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2021年11月15日 (月)

エスカレートし続けるシリア情勢

2021年11月3日
ウラジーミル・ダニーロフ
New Eastern Outlook

 シリア状況は、今後いくつかの要因のため酷く激化しかねない。

 最近シリア北部国境でのトルコによる何百人もの兵士や軍装備品、特に戦車、大砲、複数のロケット発射装置や防空システムの積極的な配置転換が原因だ。この軍事力増強は、アンカラによる2019年冬の平和の泉作戦作戦に似ている。エルドアンによるこの新軍事計画を合法的に支持するため、10月26日トルコ議会は、イラクとシリアで軍を使う認可を、2023年10月まで延長した。10月29日、トルコ砲兵隊は、クルド主導のシリア民主軍(SDF)に支配されている北シリアのアイン・ディグナとバイルニア村を砲撃した。こうした条件下で、シリアでは反トルコ感情が高まり、多くの都市でデモが起きている

 トルコの経済状態は、ユーフラテスの盾作戦や、オリーブの枝作戦や、平和の泉作戦が行われた時期より悪化しており、新軍事侵略の必然的に大きな財政経費に関し、多くの疑問を提起する。現在のAK党(公正発展党)政権は、一方で経済危機、他方で野党支持率の上昇に直面して、解決策を探している。エルドアン政府は、それにもかかわらず、北シリアでの第四次軍事行動を準備している。

 だが、この作戦を実行するためには、トルコは、この空域を利用して、トルコ空軍援護の下で、この地域での地上部隊派兵が可能でなければならない。これまでのところ、ロシアが支配するテル・リファト地域領空へのトルコ航空機によるアクセスを許す兆しはない。さらに、テル・リファト周辺での進展は、この問題を巡って重大な意見の相違があることを示している。

 国境沿いの相当な部分でアンカラが計画している新たな攻撃は、北シリアで暮らしている「クルド人の脅威を無力化したい」トルコの願望で説明できる。2016年-2019年、トルコは現地で、いくつかの地域を占領し、今バンダル・ハーンからラース・アル=アインまで、ジャラーブルスから地中海海岸まで支配している。だが、ジャラーブルス、バンダル・ハーン間の領域の多くは何年もクルド人民防衛隊部隊に占拠されている。

 来るトルコ作戦の主要目的の一つは、2012年以来、最初は(ロシアで禁止されている)ダーイシュに対し、更にはトルコ軍に対し、クルド人が守っているシリアの首都北東415キロにある国境の町コバニ(アイン・アル=アラブ)だ。コバニを獲得した後、トルコは支配下に、二つの地域をまとめ、結果的に北シリアで更に強い足場を得る予定なのだ。トルコが計画する作戦の、もう一つの疑問の余地がない目標は、トルコが支配するトルコ人過激派集団、お互いに戦っている無数のギャングから、イドリブ県を解放しようとしてのシリア・アラブ軍(SAA)の、あり得る攻撃に備えての親トルコ派代理勢力強化だ。

 シリアで新たな武力介入をすることで、「小さな勝利戦争」を代償に、エルドアンはここ数ヶ月下がっている彼の支持率を引き上げたいと期待している。だが、その外にシリアのクルド人に対し、北シリアでの軍事的緊張をトルコが積極的エスカレーションさせているのは、彼がロシアとアメリカから最近絶望的に必要としている政治的特恵を得るためのエルドアン大統領お気に入りの戦術である可能性も排除できない。9月、エルドアンとウラジーミル・プーチン会談の一週間前、トルコがシリア国境に大規模軍隊を配備したことからしても、これはありそうだ。

 アンカラが準備している新軍事介入の活動段階への移行は、ロシア・トルコ間の活発な協議のため抑制されている。エルドアンにとって、アメリカが同盟者と見なすシリア・クルド人に対するワシントンの支援を考えて、2021年のG20ローマ・サミットでのアメリカ大統領と彼の交渉や、グラスゴーでの第26回気候変動枠組条約締約国会議COP26中のアメリカからの明確な譲歩の期待もある。

 特に、10月31日、G20ローマサミットの結果に関する記者会見の際、エルドアン大統領は「シリアで活動しているテロ組織」へのアメリカ支援に対し遺憾の意を表現し、ワシントンのこのような行動は、二国の団結を害するとトルコ大統領は指摘した。隣国のアラブ共和国で活動しているテロリストいうのは、トルコで活動を禁止されているクルディスタン労働者党(PKK)シリア支部とトルコが見なしているクルド人民防衛隊(YPG)を暗示している。「私は将来もうアメリカから、このような支援はないだろうと確信している」とエルドアンは述べた。

 だが、G20ローマ・サミットの際、10月31日に行われた、二人の指導者二度目の会談、エルドアンとジョー・バイデン両大統領間会談は、シリアにおける更なる進展やトルコの動きに大きな明快さはもたらさなかった。トルコ政府の通信社アナドルは、更なる本格的強化と両国関係進展のための共同機構を作るという両者の合意を指摘した。それは古いやりとり形式が破壊され、新しいものを、ほとんどゼロから作らなければならないことを意味する。だから相互に受容できる妥協合意に達しようとするアメリカとトルコの努力が失敗する前兆がローマで演じられたように思える。二国間関係の体系的危機の存在は、地政学的、地理経済学的な問題の深い矛盾によってもたらされている。アメリカはトルコの権益を含む要因をどうすべきか分かっていない。シリアのクルド人はそうした要因の一つになっている。更にトルコは、この地域で、トルコを、より強くし、地域の圧倒的大国にする願望を持たない、そうした国をアメリカが支援しているのを目にしているのだ。

 現状では、トルコは、経済や公的生活上の出来事に関連し、シリアに対する政策の見通しを不確実にする多くの問題に直面すると想定するべきだ。

 「トルコ要因」は別として、アメリカのシリア政策は、シリアの状況に重要な悪影響を与え続けている。とりわけ、これは空爆実行に固執し、シリア人を殺すシリアやイランのインフラに対するイスラエルの攻撃行動に対するワシントンの明白な支持の結果だ。例えば、10月30日、イスラエル空軍のF-16戦術戦闘機4機が、ゴラン高原に近い彼らの領域から離陸した。彼らはシリア領空を避け、ダマスカスから西に20キロと、北西12キロのシリア・アラブ航空方面隊施設を、八発のデリラ巡航ミサイルで攻撃した。当番のシリアのアラブ航空方面隊によるBUK M2E地対空ミサイル・システム配備と、イスラエル・ミサイル2機の破壊にもかかわらず、この攻撃はインフラに軽度の被害をもたらし、2人のシリア兵を負傷させた。

 シリア内の親イラン派民兵への反撃を含め、このようなイスラエルの活動は、アメリカとシリアにおける継続的アメリカ駐留のリスクを増し、益々多くの反対に直面する。2018年9月、ダグ・バンドウは、ナショナル・インタレストの論文で、アメリカ法と国際法両方の下で、ここでのアメリカ作戦が違法であることを強調し、シリアにおけるアメリカ部隊駐留を厳しく非難した。10月19日、再び、ナショナル・インタレストは、アメリカは既にシリアで負けており、そこに残留することで、あえて親密な同盟国の一つ、トルコとの紛争のリスクをもたらしていると示唆した。とりわけ、現在シリアにおけるアメリカ駐留ゆえに起きているトルコとの関係の絶え間ない悪化は、明らかにアメリカにとって良くない。そして、シリアにおけるトルコ軍と親米部隊間の直接戦闘(可能性としては、直接米軍を含めてさえ)この政策の深刻な破綻をもたらしかねない。

 彼らの国からの米軍撤退を要求するシリア人の間で常に増大しつつししる反米感情にも注目すべきだ。これら感情の増大は、通信社Syrian Arab News Agency(SANA)が再度も10月25日に報じたように、アメリカによるシリア石油のイラクへの違法輸出継続だけが理由ではない。シリア民主軍クルド人の見張りの下、石油輸送車を含め33台の車で構成されるアメリカ軍車隊が、違法なアル・ウォリッド国境検問所を通って、アルジャジーラ地域からイラクに向かった。

 仲間がアメリカ軍と彼らのクルド同盟者による、彼らの国の不法占拠に反対する政治的意見と信念のために殺されて、東シリアの多くのアラブ部族や氏族の指導者が、最近反米抗議行動に参加した。先に、クルド治安組織アサイシとアメリカ諜報機関は共同でデリゾール県襲撃を実行した。100人以上の住民とアラブ部族連邦の代表が、バッシャール・アル・アサド政権支持の集会を計画した嫌疑で拘留された。

 上記状況下で、シリアでの平和は益々脆弱で、いつ何時、この国で更にもう一つの武力衝突が発生しかねない。

 ウラジーミル・ダニーロフは政治評論家、オンライン誌「New Eastern Outlook」独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2021/11/03/the-situation-in-syria-continues-to-escalate/

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 東京新聞、昨日の朝刊に 国民の4分の1が決める国 という法政大学名誉教授・前総長 田中優子氏記事があった。

 小学校での英語教育を強行した与党政治家、阿呆か、売国奴か、その両方だと下記番組を拝聴して思う。施光恒教授が、「英語化は愚民化」という素晴らしい本を書いておられるのに。売国奴の耳に念仏。先が思いやられる。英語でも日本語でも複雑なことを考えられない家畜のような連中の群れが出現する。いや、今既にそうなのかも。

9割の国民が知らない「英語化は愚民化」という真実(室伏謙一×施光恒)

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