アメリカと中国との緊張が高まるにつれ砲弾の餌食化の危険を恐れる台湾
Finian Cunningham
2020年10月22日
Strategic Culture Foundation
40年間のアメリカとの協力における「戦略的曖昧さ」の後、中国との武力衝突の場合、守られるかどうか「明快に」するため、台湾はワシントンに電話する前例のない動きをした。
ワシントン・ポストは、先週台湾の駐米上級代表が「我々はある程度の透明度が必要」と言ったと報じている。ポストは疑問を見出しにした。「アメリカは台湾を中国から守るだろうか?」
ワシントンと北京間の緊張が高まる最中、中国南部沖の島嶼を巡って極度の緊張が増大している。こうした緊張は、トランプ政権が、かつてのワシントンによる一つの中国政策尊重からの大幅な逸脱によって拍車をかけられている。
ワシントンは、中国の台湾に対する領土主権の主張を尊重し、1979年に台湾との公式関係を切断した。その動きはソ連との同盟から中国をうまく離反させるためのワシントンによるご都合主義の譲歩だった。台湾は、1949年、内戦での毛沢東率いる中国共産党の勝利後、国民党軍のとりでになった。
過去40年間、アメリカは台北の分離主義政府との友好関係を維持している。過去のアメリカ政権は武器を台湾に売ってきた。北京は必要とあらば軍事力行使で、台湾を支配する権利を保留しているが、ワシントンは台湾との軍の防衛協定を宣言するのを常に思いとどまってきた。
トランプ下で、この関係は大変動に入った。過去四年間、ワシントンは台湾と、未曾有の量の攻撃的武器取り引きを承諾してきた。先週トランプ政権は、ロケットやミサイル発射装置を含め、三つの別個の先進的武器パッケージを進めると述べた。台湾への兵器輸出は、アメリカのこの動きを、この地域を「ヤマアラシ」に変えて、分離主義者の強硬姿勢をつけあがらせていると見る北京の怒りを引き起こした。
台湾海峡へのアメリカ派兵にも大きな変化があった。先週国防総省が公海での「航行の自由」演習と呼ぶ誘導ミサイル駆逐艦の今年10回目の海峡通過があった。
中国は南部地域での軍事的存在を強化した。今月早々、北京は台湾侵略をシミュレーションする作戦行動をした。人民解放軍の軍用機も、台湾付近での飛行を増大させた。北京の見地からは、台湾の領土権主張を持っているので、これらの演習は合法的だ。
トランプ政権は、貿易と地政学の目的で、中国との、より広範な対決で、台湾を利用しているように思われる。台湾に対する支持を強化し、中国不安定化を狙うジャブにする計算だ。
この夏、アメリカは、1979年以来これまでで最高位の当局者を台湾訪問させた。中国と台湾の関係で、一つの中国を公然と無視したので、アレックス・アザー保健福祉長官の訪問は北京を激怒させた。それは北京当局に対する挑発的態度と見なされたのだ。
外交関係を復活させようというワシントンの動きと見なされるものによって、台湾の蔡英文大統領は活気づいている。トランプ政権は、国際連合で台湾が全面的な代表権を与えられるよう要請したが、これも北京の主権に対する大胆な侮辱だ。
11月3日に、民主党大統領候補ジョー・バイデンが大統領に当選した場合、どんな政策を採用するかは明確ではない。バイデンの国防長官になるため競技に加わっていると推測されるミシェル・フルールノアが一つのヒントだ。今年6月、フルールノアは、台湾が「中国を阻止する」ため、より強固なアメリカ軍支援を促す長たらしい論文をForeign Affairsに書いた。
10月10日、台湾大統領の蔡英文は、台湾が「同等として」北京と話し合うという耳障りな分離主義演説を行った。対話の提言は歓迎すべきものに聞こえるかもしれないが、「同等」という前提を、北京は厚かましいと考えるだろう。
台湾を巡る危険な緊張は、中国の反感を買うアメリカ政策の直接の現れだ。台湾は、アメリカにとって世界的なライバルとして見なす中国の勃興を封じ込めるためにワシントンが推進している、より大きなゲームの典型的な将棋の駒なのだ。
トランプ政権の台湾に対する無謀な兵器輸出は、この独立領土の「防衛」には、ほとんど無関係だ。遥かに巨大な軍事大国中国は、台湾に積み上がるアメリカ兵器では、到底歯が立たない。アメリカ軍産複合体は売上高と利益の急上昇を享受しているが、防衛協定をする方向へ進むことに、ワシントンに強い信念があるようには思えない。
虫のいいあいまいさは台湾に当惑する苦境をもたらしている。台湾はアメリカと中国間の地政学的十字砲火に巻き込まれている。北京との対立で、ワシントンは計算違いや欲求不満から、北京との武力対決をひき起こしかねない分離主義の緊張に拍車をかけている。
緊張が沸点に達するにつれ、遅ればせながら、台湾がワシントンに「明快さ」を求めているのは少しも不思議ではない。台湾がアメリカの砲弾の餌食役を割り当てられているように思われるので、神経がすり減っているのだ。ワシントンは、台湾を中国に対する道具として利用しているだけなので、台湾が求めている透明さは、ワシントンから与えられる可能性はありそうにない。
Finian Cunningham
主要なニュース報道機関のための前の編集者と著者。 彼は、論文がいくつかの言語で発表されるという状態で、広範囲に国際問題について書いた
個々の寄稿者の意見は必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。
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アメリカと中国との緊張が高まるにつれ、イージスアショアやら、ミサイル配備やら、益々砲弾の餌食化に身を乗り出す日本。よくも見事に洗脳されたもの。
下記、日刊ゲンダイDIGITAL 会員限定記事だが、会員登録すると無料で月に5記事無料。洗脳の手口が読める。 総攻撃の狙いは「戦争ができる国」再び
今日の東京新聞朝刊読者投稿欄「発言」に、二つ、学術会議破壊について書いた記事がある。一つは、有名なマルティン・ニーメラーの言葉から、今の日本を考えるもの。「もはや手遅れのところまで来ているのではないかとさえ思える」もう一つは説教強盗という言葉を思い出したというもの。強盗に入っておいて、被害者に「ここが不用心だ」「あそこの戸締りがダメだ」などと防犯の心得を説く強盗のことだ。つまり、官邸、政府は「説教強盗」のようなものだと。この言葉、子どもの頃、親から聞いたことがある。政府にも、自民党にも、公明党にも、異神にも、ぴったり。
LITERAに、大阪市廃止投票発想元祖の記事。スリカエ攻撃では日本一?
10/27追記: デモクラシータイムスの田岡氏解説動画、この記事と直結する話題。
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