アメリカ合州国とイラン、次は何?
2020年1月25日
ヴィクトル・ミーヒン
イランにまつわる、かなり危険な状況は、しばらく、一見変化しないままだ。双方が、敵が次の動きをするのを待っているが、どちらも、まだ、いかなる決定的行動もしていない。彼らは、現在、彼らは立場を平等化して、プラスとマイナスを評価している。その間、国際社会メンバー間で、ウクライナ旅客機のイランによる奇妙な撃墜に関し益々多くの疑問が生じている。
究極的には、大変な頻度で問われている一つの疑問は「これで利益を得るのは一体誰か、特にテヘラン国際空港の近くで、ウクライナ旅客機がなぜ、この瞬間に撃墜されたのか」だ? 事件のわずか数日後、二機のミサイルが発射され、旅客機を破壊するのを示す極めて明瞭な映像がCBSイブニング・ニュースにより全国的に放送された。映像は、スマートフォンで撮影されたものではなく、ハリウッドで制作された映画のあらゆる特徴があることは言及する価値がある。最初のミサイル発射と、その弾道(視聴者が分かりやすいよう、ミサイルの周囲には輪が描かれている)と、それが航空機に命中し、最初の爆発を見ることができる。そこで、二発目のミサイルが発射され、我々は更に同じことを見る。二発のロケットが標的に命中した後、飛行機は地面に墜落し、地上で燃える残骸が見える。あたかも前もって考えられた計画によるかのように、イラン政府は、ビデオを撮影した人物の時宜を得た逮捕を国民に発表した。奇妙なのは、何年もの間、イラン当局は現政権に対する多くの反対派を見つけたり、逮捕したりできていなかったのだ。だが今回の場合は、即刻逮捕された。もし必要であれば、旅客機が撃墜される前でさえ、映像のカメラマンは逮捕できたのではないかという印象を持ってしまう。一方「それらのミサイルが、ウクライナ旅客機を標的に、イランで発射されたと一体誰が言ったのか?」というもう一つの疑問も生ずる。結局我々は映像を見ただけで、場所のどんな座標も知らないのだ。実際最近欧米で作られるコンピューター・ゲームの画像は現実と区別するのは困難だ。
次に生ずる多くの人が問うている二番目の質問は「なぜ証拠を待たずに、テヘランは「責任」を認めたのか?」だ。おそらく、この悲劇には責任がある別の犯人連中がいるのだ。それ故、非常に知的で思慮があるイランのモハンマド・ジャヴァード・ザリーフ外務大臣は、犠牲者の家族に公式謝罪をし、明らかに悲劇が「人的ミス」によって起きたが、アメリカの「冒険主義」こそ主に責められるべきだと述べたのだ。実際この問題に対するイランの立場を、これ以上明確に表現するのは困難なはずだ。
通常、航空機を撃墜したと非難された側は、その行動の責任を認めないか、悲劇を不幸な状況のせいにする。それでも、それは国際スキャンダルに燃えあがるのを防ぐため、それらの損失に対し、被害者に補償をする。例えば、1988年7月3日、完全な好天の夏の日に、「勇敢な」アメリカ水兵が、66人の子供を含め乗客290人のイラン・エアバスをイラン領海上で撃墜した。当時のロナルド・レーガン大統領は、ジェット機撃墜は「適切な防衛措置」であるとし、被害者家族への補償を拒否した。1996年の国際司法裁判所による裁定だけが、悲劇から8年後、被害者親族に、取るに足りない補償を支払うようアメリカ合州国に強いた。おまけに(航空機を撃墜した)米海軍ミサイル巡洋艦ヴィンセンス号艦長は、国民的英雄として国内で慶賀され、後に勲功賞を与えられた。
衝撃的なのは、飛行機撃墜事件に対する、アメリカ政権の冷静というか、静かな(そしてある程度の理解)さえある態度だ。それほど重大ではない違反に対して、「神々の怒り」でイランを脅していたマイク・ポンペオ国務長官が、今回、すっかり意気消沈しているように見える。あるいは、アメリカ・レーダー偵察機が、事件の時点に、テヘランから遠からぬイラン領空で発見されていたので、おそらく彼の反応は十分考え抜かれたものだったのだ。このような偵察機に搭乗する専門家連中は、イランの対空システムに干渉し、対空システム操縦者に有翼ミサイルに標的を定めていると思い込ませ、通信を妨害できる連中だったと考える軍人もいる。結果的に、対空システム操縦者は、司令部と連絡できず独力で決断したのだ。加えて(アメリカ軍要員が自慢しているように)イランのあらゆる対空システムを停止させる能力がある真新しい電波探知局が百以上ある。電波探知局は、イラク、クウェート、サウジアラビア、UAE、オマーンとバーレーンに配備されている。おそらく、イラン最高指導者が、それを理解させられたことが、アメリカ合州国とイランの冷静な反応の説明になるだろう。
予定外のカタール首長タミーム・ビン・ハマド・アール=サーニーのテヘラン訪問は、前述の仮説の更なる裏付けになっている。カタール首長は、早速「ラフバル」最高指導者アリー・ハーメネイに歓迎されたが、それ自体まれなことで、訪問の重要性を示唆している。大いに情報に通じたイスラエル新聞が、アメリカ合州国とイラン間関係を安定させ、地域の緊張を緩和するための次の措置に関するワシントンの意見を述べたドナルド・トランプ政権の「手紙」を手渡すため彼が訪問したと即座に報じた。カタール首長に届けられた重要なメッセージは、おそらく次のようなものだ。「あなたは、アメリカに何ができるかを見た。もしあなたが頑固なままでいれば、イランは消滅する。」これが、悲劇的事件に対して、アメリカ合州国とイラン双方がとった、攻撃的からほど遠い冷静な姿勢の説明になるだろう。状況を安定させるためのアメリカ・イラン間の舞台裏交渉が、確実にワシントンの条件で、間もなく、オマーンかカタールのどこかで行われるのは、まず確実だ。加えて、カタール首長はイランのために、惨事の犠牲者に30億ドルを支払うと決めた。加えて、カタール首長は、イランのため、惨事の被害者に30億ドルを支払うと決めた。もちろんカタールは世界中で最も豊かな国だが、彼らが言う通り、金は役に立つだろう。非常に強い「要求」が首長に出されたように思われる。
前述の結果は、アメリカ合州国、イランや地域の他のアラブ諸国を満足させるだろう。いつもの通り、犠牲者の親族だけが死者を本当に深く追悼し、一部の政治家が意見を表明し、惨事に責任がある人々を非難するだろう。カナダのジャスティン・トルドー首相は、ドナルド・トランプが命令したガーセム・ソレイマーニー大将の暗殺後、もし地域で緊張の突然の高まりがなければ、(57人のカナダ人を含め)176人がミサイルで撃墜された飛行機に搭乗して亡くなることはなかっただろうと述べた。ジャスティン・トルドー首相は、アメリカ大統領が、乗客の死(結局、アメリカ合州国は実に強力な同盟国なのだ)に対して直接責任があるとは言わないよう配慮したが、彼の声明は、遥か遠くのペルシャ湾岸地域における最近の全ての進展に対して責任がある犯人を明らかに指さしていた。
アメリカ合州国に対し、モスクワが厳しい言葉を述べた。ロシア連邦ロシア下院のヴャチエスラフ・ヴォロジン議長は、中東で緊張を高めて、後にウクライナ国際航空が運用する航空機をテヘラン付近で撃墜したミサイル発射をもたらしたとしてワシントンを非難した。「このようなミサイル発射を含め、緊張のエスカレーションは多くの危険に満ちている。我が国は繰り返し述べているが、国際規定と原則に従うことが不可欠だ」とヴャチエスラフ・ヴォロージンは述べ、このような問題は国連で議論されるべきだと付け加えた。
真珠湾攻撃から始まり、大韓航空ボーイング機撃墜事件、ツインタワーの悲劇やウクライナでのボーイング機撃墜などの、アメリカ合州国に責任がある、あらゆるぺテンと裏切りの連鎖を理解するのに、透視能力者である必要はない。全てがCIAの「署名的」行動を示している。大惨事を起こしておいて、直ぐさま責任をとる「必要がある」関係者を非難するのだ。ウクライナ航空機がテヘランを離陸した際、すぐ近くでアメリカ無人機MQ-9リーパーが発見されていた。それはイラン領空を侵犯しており、イラン・ミサイルを旅客機に向けさせることができたのは確実だ。一方国防総省は、ロシア連邦が製造したイラン・ミサイルを示す「必要な」映像を偵察衛星から即座に入手した。このような作戦で利益を得る唯一の当事者はアメリカ合州国で、自身や他の犯罪行動から注目を逸らす必要があるのを理解することは重要だ。航空機に対する攻撃の責任をイランが進んで認めたのは、ワシントンとテヘランの何らかの合意に由来するかもしれない。
いずれにせよ、我々が得ている全ての事実が、アメリカ合州国がよく実行している軍事的手段による他の人々や国全体の運命の決定は、混乱や戦争や悲劇に導くだけであることを示している。現アメリカ政権は、なぜ特定の人々がニュルンベルクで裁かれたのかを肝に銘じるべきだ。
ヴィビクトル・ミーヒンはロシア科学アカデミー客員。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2020/01/25/united-states-and-iran-so-what-s-next/
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WHO、ようやく、新型コロナウィルス緊急事態宣言。、武漢からの帰国者への日本政府の対応、実に不思議。他国の対応とかなり違う。病気蔓延を期待しているかのよう。サクラを見る会問題隠蔽に絶妙な時期。「世耕氏、蓮舫氏を批判ツイート」という話を聞けば、そう思いたくなる。オリンピックまでに終息するのだろうか。
お仲間との八百長問答は円滑だが、野党質問になるとボロボロのサクラ氏。
ところで、オリバー・ストーン監督、RTインタビューで、ハリウッドでは、政府の戦争政策に批判的な映画は作れないと言っている。映画だけではない。新聞も、テレビも。
別のインタビュー続編。
日刊IWJガイド「本日午後5時半より、岩上安身による『人間使い捨て国家』著者・明石順平弁護士インタビュー(続編)を生配信します!」2020.1.31日号~No.2696号
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