新彊のためのワシントンの本格的な行動
2019年8月4日
ジーン・ペリエ
New Eastern Outlook
アメリカと中国間の言論戦と制裁が激化する中、ワシントンは中華人民共和国の新彊ウイグル自治地域で、分離主義感情を益々かき立てる決意を強くしている。新彊を独立地域に変えるか、混乱に陥れるかすることで、地政学上の主要な競合相手に実際の損害を与える能力が、ウイグル分離主義問題を、グレート・ゲーム現代版の北京に対する闘いの上で、ワシントンお気に入りの武器に転換した。
中国内の分離主義運動の問題が持ち出される時は常に、チベットと新彊について考えさせられる。後者は、現地の分離主義者にも、彼らの欧米スポンサーにも、東トルキスタンと呼ばれることが多いが、彼らのいずれも、この地域に10.3兆立方メートルの天然ガスと推定210億トンの石油埋蔵がある事実には言及さえせずにいる。更に新彊の石炭埋蔵は中国の合計のほぼ40%を占め、またレアアース金属とウラン鉱床は、中国の鉱物埋蔵量の4分の3以上を構成している。アメリカの権益集団が、この富に足を踏み入れたがっているのは言うまでもない。
だが、新彊は単なる天然資源だけでなく、人口も2300万人より遥かに多く、省レベルでて中国最大の地域でもある。この地域が合計8つの省と国と境界を接している事実から、新彊は中国の世界インフラ構想、一帯一路で枢要な役割を果たす主要輸送ハブになっている。上海からフランクフルトまでのユーラシア横断光ファイバー線が、新彊ウイグル自治地域を通っていることも注目に値する。カスピ海地域からアジア太平洋まで邪魔されない炭化水素の流れを保証する主要な石油と天然ガス輸送ハブも、ここに設置される計画になっている。
今やウイグル分離主義は、多面的な現象になっている。最前線にはミュンヘンに本拠を置く世界ウイグル会議がある。この組織は、彼の支持を得るため、2007年にホワイトハウスで伜ジョージ・ブッシュと会ったラビア・カーディルに率いられている。同年アメリカ議会は、ウイグル分離主義者は、新彊で自己決定を追求することを許されるべきで、北京はこの立場を示すべく、国内政策を変えるべきだという法案を採択した。アメリカ国務省が毎年この組織の活動に、約21万5000ドルを割り当てているのは驚くべきことではない。
2008年のチベット反乱、2009年のイランの環境保護運動や、多くの「カラー革命」を支援した全米民主主義基金が、世界ウイグル議会も支援していることはさほど驚くべきことではない。さらに、この組織は、ラビア・カーディルに率いられるアメリカ・ウイグル人協会を通し義援金を受けている。全部で、この組織が受け取る資金は、本の出版、世界のあらゆる場所から何百という参加者を惹きつける会議開催、イギリス、トルコ、オーストラリア、スウェーデンとカナダで多くの事務所を維持・管理するのを可能にしている。
それらの活動は、サウジアラビアやトルコの機関と協力して働く欧米諜報機関のために「ウイグルの大義を推進する」完ぺきな煙幕となっている。トルコの情報局員は、新彊で活動する分離主義者と連絡を持続する仕事を与えられ、偽造パスポートを与え、機関が維持している活動家のための安全な経路の手がかりを与えている。サウジアラビア情報局員は、ずっと昔に慣れた新彊での様々な活動に従事している。布教活動やモスク支援を装った潜入工作や、未来の過激派戦士を訓練するため、宗教教育を促進するという口実の下で渡される補助金だ。
だから、 The New Great Game: Blood and Oil in Central Asia(新しいグレート・ゲーム:中央アジアの血と石油)という題の新彊での大失敗に関する本を書いたドイツ人従軍特派員ルッツ・クレヴマンによれば、外交交渉という欺瞞的装いの背後に隠した人の目を欺く仕掛け戦術で、その狙いを達成することができると確信しているので、アメリカは中国の本当の封じ込め戦略には、さほど興味を持っていない。
新彊での人権侵害とされていることに対し、メディアで反中国ヒステリーを強化しようとして、ワシントンは、興味深い非政府組織Chinese Human Rights Defendersが作成した報告書を衆目を引くため、国連人種差別撤廃委員会のゲイ・マクドゥガルを使った。この最初の狙いが達成された途端、ガーディアンを含めた欧米メディアが、報告書で提示されている主張は事実だと言い始めた。だが、多数の憤激した個人が、シリアから帰国した元ISIS戦士を社会生活に再度順応させる教育キャンプを閉鎖するよう中華人民共和国に要求することで状態で終わり、この報告を巡って、いかなる国際的当事者にも公的に中国を非難するよう強いるのに十分な勢いをアメリカは得損ねた。
2月中旬、トルコ外務省は「100万人以上のウイグル族テュルク人が恣意的に逮捕され、捕虜収容所と刑務所で拷問と政治的洗脳を受けさせられた」という主張を含むハミ・アクソイ報道官による声明を発表した。更に、ハミ・アクソイ報道官は著名な民族詩人、アブドゥレヒム・ヘイットを、とんでもない状態において、早過ぎる死を招いたと言って北京を非難し始めた。二日後、反撃として、中国はステージで演じている当の詩人のビデオを公開して、この最近の中傷の企みにとどめをさした。
一カ月前、イェニシャファク紙の政府寄りジャーナリスト、イブラヒム・ カラギュルがツイッターで、新彊を巡る中国に対する広告キャンペーンが、CIA作戦以外の何ものでもなかったことを明らかにしたのは興味深いが、このツイートが削除されるまでに長くはかからなかった。だが彼の新たな暴露は「CIAは中国に圧力をかけるためトルコを使っている」という題の記事を書いた著名なフランス人評論家ティエリー・メイサンも支持している。
反中国連合を作ろうとして、ワシントンは世界各国の宗教的自由の状態を論じるための外務大臣と市民運動の著名代表者による年次会議を設立しようとしている。今年、会議は7月中旬に行われたが、アメリカは最終的に報道価値のある材料を得損ねた。新彊を巡って、イスラムの反中国連合を集めることの失敗は、デイリー・シグナルのインタビューで、国際的な宗教的な自由のためのアメリカ特使が認めた。それ自身がしている主張に対する信頼を自身がほとんど持っていないため、国際監視団がこの中国の自治区を訪問するのをワシントンが阻止しようとしているのも興味深い。
テロリストや過激組織が論争を起こすという手強い課題に直面して、北京がこの状況に対処するため多くの処置をとるのは当然のことで、その一つは、新彊住民への教育を促進して、より良い就職の機会を提供する試みだ。三年以上、大規模テロ攻撃や大規模市民暴動事件がなかったことで、この戦術が機能しているように思われる。中華人民共和国は、ウイグルの社会情勢も改善しようとしている。中国は、欧米が繰り広げる挑発と、その後に続く主張の両方に対する完ぺきな答えを見いだしたように思われる。
ジーン・ペリエは、独立研究者、評論家、近東・中東の著名専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2019/08/04/washingtons-major-push-for-xinjiang/
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新彊を巡る中国に対する広告キャンペーンが、CIA作戦以外の何ものでもなかったことを明らかにしたのは興味深い
というので、それにつながる記事。
日刊IWJガイド・日曜版「声を発する草の根運動 憲法改正への危機感と地域で繋がるIWJ」2019.8.11日号~No.2523号~(2019.8.11 8時00分)
題名にはないが、記事を読むとある。ごく一部だけ引用させていただこう。
はじめに~CIAの別組織とも言われるCSISと関係の深い小泉進次郎衆院議員、総理官邸・婚約会見の裏で「有志連合」への自衛隊参加要請に暗躍する米国高官の姿が!?
詳しくはガイドをお読みいただきたい。ただ、下記の部分には驚いた。国会討論、自民党、公明党、維新のものは全くみないので、知らなかった。選挙応援人集め要員だけのはずはないだろうが。
政治家・小泉進次郎氏の成果に焦点を絞ってみると、国会議員の重要な仕事に挙げられる本会議や各委員会での質問、議員立法、質問趣意書の3点について、2009年の初当選以来通算4期に渡る衆議院議員でありながら前国会ではただの一度も行ったことがない「実績ゼロ」の議員であることがわかります。
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