イランの長いゲーム:アメリカとの対立が迫る中、ロシアと中国への依存を避ける
アメリカを寄せつけないため4つの措置を勧めるアヤトラ・ハメネイ
Elijah J. Magnier
2019年6月14日
Russian Insider
イラン指導部秘密会議で、セイイェド・アリ・ハメネイ革命代表が、アメリカ制裁とアメリカの恫喝に対抗する4段階計画を勧めた。
セイイェド・アリ・ハメネイが示唆した最初の措置は、イランが資源を開発し、今後数年間で、輸入品を最低水準に減らすことだ。イラン輸入は年に400億から650億ドルまで変動する(2010年は516億ドルだったが、2017年、イラン輸入は654億ドルに達した)。これらの輸入は、主に機械、コンピュータや電話装置、薬や医療機器、電気機械、麦、穀物やトウモロコシ、米と大豆、輸送車両、鉄や圧延平鋼や有機化学薬品だ。アラブ首長国連邦と中国は、韓国、トルコとドイツとともに、イランの主な輸入パートナーだ。イランへのEU輸出は、年間約100億ドルだ。
2018年4月テヘランでのイラン・イスラム共和国軍創設記念日に出席したロウハニ大統領
2つ目の勧告は、忠実な確固とした友人はいないという前提で、イランが振る舞うことだ。革命指導者は、国々との関係は、戦略というより、むしろ相互利益に基づくべきであることを示した。イランは孤立することなく、その存在と連続性を守る能力を当てにすべきだ。国々は共通の恩恵や権益のため、イランを支持するかもしれないが、このような同盟は当然のものと考えるより、状況や機会に結びついていると考えるべきなのだ。
3つ目の勧告は、改革派(メフディー・キャッルービー、ミール・ホセイン・ムーサビー、ザフラー・ラフサンジャーニ)を含め全ての政党に対する国内圧力を和らげることだ。イラン指導部は、ドナルド・トランプが再選された場合、更に5年続くかもしれない重要な時期に、国の結束が最重要だと考えている。更に、イランはアメリカ制裁に対して統一見解をとっている。ハッサン・ロウハニ大統領やジャヴァード・ザリーフ外務大臣のような穏健主義者がイラン革命防衛隊のものに類似した強硬姿勢をとっている。
最高指導者、大アーヤトッラー、アリ・ハメネイの4番目の勧告は、イランが将来、石油輸出収入への依存を大幅に減らすことだ。イランの年間原油輸出は、世界市場占有率の4.3%に相当し、210億ドルから270億ドルだ。イラン指導者は、イランが、主に、とはいえ周辺諸国だけに限らず、輸出できる他の国産品を増やし、多様化するよう提案した。この措置は、トランプ政権下のみならず、以前のアメリカ各政権下で「イスラム革命」(1979)以来、終始実施されてきたイラン・エネルギー輸出に対するアメリカ制裁の効果を緩和することを意図している。
アメリカは、本気でイランを酷く弱めるのを狙ってはおらず、むしろ、イランを敵と見なしている中東のアメリカ同盟諸国への兵器売り上げを増やすため、テヘランの増大する軍事力を、売り込み文句として利用しているとイラン指導部は考えている。
二つの主要な戦略的通商、軍事パートナーとして、中国とロシアと、イランが完全に同盟するのをアメリカは嬉しく思わないうれだろうとも考えられている。アメリカは、それより、市場と外交関係で、シェアを得るため、イランとの包括的合意を求めるだろう。
テヘランが交渉テーブルについて、シリアでのイランのプレゼンスや、他の中東の国々(すなわち、アフガニスタン、イラク、レバノンとイエメン)への影響力の問題に取り組む、というアメリカの要請受け入れに、イラン指導部が最終的に同意するのは疑いがない。だがトランプが制裁を解除し、核合意を認めるまでは何も起き得ない。
だが、イランは、選挙が理由で、トランプが決定から引き下がれないのを知っている。アメリカ大統領は木に登ったものの降りる方法がわからないのだ。イランが現在3000万立方フィート以上のガスをイラクに売っていることに対してしているのと同じように、もしイランが毎日200万バレルの石油を売るのを、彼が見てみないふりをすれば、イランはトランプに手を貸すことができる。イランのリーダーは鄧小平の格言に従っている。「白い猫でも黒い猫でもねずみを取る猫がいい猫だ」。もしトランプがそれも認めないなら、イランはトランプが2020年に二期目を勝ち取るのを支援せず、代わりに彼の落選に貢献するだろう。
現在のレベルの緊張を交渉して、緩和するというイランの意志にもかかわらず、それには譲れない一線があるように思われる。ミサイル能力を発展させ続ける能力と、レバノン、シリア、イラク、イエメンとアフガニスタンでパートナーを支援する義務だ。
二隻のタンカーが6月13日、オマーン湾で被弾した。予想通りアメリカはイランを非難している。
7月7日で、60日間の警告期間は終わり、イランは既に次第に核合意から次第に離脱する準備をしている。これまでのところ、ヨーロッパは介入して、アメリカ覇権と制裁に立ち向かう用意はないように思われる。旧大陸の指導者たちが、イランとの100億ドルに相当する商取引と引き換えに、アメリカの反感を買う決断をするのはありそうにない。だが問題には金融より多くのものが絡んでいる。アメリカと異なり、法律規範や司法の遵守を明言している欧州諸国が自身が作り出し、彼らの指導者が署名した国際協定を侮辱し、無効にするのは前例がない。さらに、アメリカ制裁に直面して、ヨーロッパ・イラン間貿易を容易にするためのヨーロッパの貿易取引支援機関(INSTEX)は実施されていない。ヨーロッパの責任の欠如にイランは不満を表明した。
天野之弥国際原子力機関 ( IAEA) 事務局長は、イランが濃縮ウランの生産量を増やしていると発表し、イランは同意した。アメリカ制裁が、イランに遠心分離機(輸出権が欠如しているため)を蓄積するように仕向けている。イランは、それをIR1からIR6にアップグレードしており、「IR8カスケード」にすると脅している。アメリカは核合意に無関心だと主張し、他の署名国を不快にさせながら一方的に離脱し、中東に軍事的緊張を引き起こしたにもかかわらず、駐ウィーン・アメリカ大使ジャッキー・ウォルコットは「合意に違反し、我々全てに大きな懸念をもたらした」とイランをあつかましく非難した。
戦争はありそうもないように思えるが、全てが中東の夏が暑いだろうことを示している。高いままでいるために期待される、どちら側も、身を引いて、緊張を緩和しようとしないので、アメリカとイランの間のアームレスリングは大きな課題であり続ける可能性が高い。7月7日はそう遠くはなく、更に驚くようなことが起きるのは確実だ。イランが主導権を持っており、トランプとネオコン連中は次のステップを待つことができるだけだ。
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書店で本をみるたびに誰が買うのかと不思議に思う有名人がいる。一方まともな方々は次々大本営広報部から消える。
昨日のインタビュー、超長時間。お説の通りと思うのだが、そういう言説が大本営広報部では決して聞けない不思議。
<昨日の岩上安身によるインタビュー>米国の対中国・イラン強硬姿勢に追従したら日本の外交と経済は崩壊!? 米国は開戦の口実に嘘の発表ばかりしてきた!? 岩上安身による軍事ジャーナリスト・田岡俊次氏インタビュー
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