石油支配を巡るイエメン人大虐殺
2018年11月20日
F・ウィリアム・イングドール
2015年に始まったイエメン共和国で継続中の戦争、事実上の大虐殺の最も激しい段階は、ごく最近まで欧米主流のメディアに、ほとんど無視されてきた。スンニ派のワッハーブ主義サウジアラビアにより、表向き、シーア派信徒フーシ派に対する、アメリカに後援されたサウジアラビアの戦争の基本的な戦争原因も同様に無視されてきた。一世紀以上前に、ペルシャ湾でイギリスが最初に豊富な石油発見して以来、ほとんどあらゆる戦争と不安定化と同様、イエメン戦争は、まさに石油、実にたくさんの石油の支配が狙いだ。
イエメンは、スエズ運河とインド洋を経由し、地中海につながる紅海のきわめて重要な連結点で、戦略上重要な地政学地域だ。そこにあるアフリカの角のジブチから、わずか29キロの距離にある世界で最も戦略的な石油輸送難所の一つ、バブ・エル・マンデブ海峡という狭い航路が、アメリカ・エネルギー省の石油輸送難所の一つになっている。アメリカ・エネルギー省によれば、中国向け石油を含め、両方向に毎日推計470万バレルの石油が、バブ・エル・マンデブ海峡を通過している。
2015年3月、一般的にフセイン・バドルッディーン・フーシにちなむ名で知られているイスラム教ザイード派集団フーシ派との間で、新しい内戦がイエメンで始まった。ザイード派は、サウジアラビアのワッハーブ主義にとって受け入れがたい、女性の平等を好む伝統的に穏健なグループだ。ザイード派は1962年まで、1,000年以上イエメンを支配していた。
フーシ派運動は、2011年末、大いに腐敗したアリ・アブドラ・サレハ・イエメン大統領追放を強いた。サレハの副大統領アブド・ラッボ・マンスール・ハーディーが彼の後任となった。当時サレハ、ハーディ両人ともサウジアラビアの影響力を受けた代理大統領だった。
彼の代表権限権の期限が切れた後、ハーディーが退任を拒否して、事態は変わり始めた。燃料価格への助成金を削減するという彼の決定と、合意した改革の拒否で、2015年早くにフーシ派の動きにより、彼は逮捕されるに至った。2015年3月25日、彼はサウジアラビアへの亡命に成功し、同日、ムハンマド・ビン・サルマーン防衛大臣がイエメンとフーシ派に対して現在も継続中の爆撃戦争の開始を命令した。
2015年の終わりまでに、ビン・サルマン王子と、彼の連合は、奇妙な名前の決定的な嵐作戦(デザート・ストームを思い出す)で、イエメン一般市民に残虐行為を与えていた。サウジアラビアが率いる6カ月の容赦ない爆撃で、国連はイエメンを最もレベルが高い「レベル3」の緊急事態だと宣言した。爆撃が重要な民生インフラを破壊し、医療施設とサウジアラビアは国際法に違反し、推定2000万人のイエメン人が緊急に必要とした食物や水や医療の支援物資を封鎖した。約2,500,000人のイエメン人が家を追われた。飢饉とコレラは蔓延している。 要するに、大量虐殺だ。
チェイニーの石油戦争
サウジアラビア率いる湾岸諸国連合により進行中のイエメン戦争の根源は、2001年9月11日の余波とブッシュ-チェイニー政権の、いわゆる対テロ戦争公表でまでさかのぼる。
2003年のイラク侵略は石油が狙いだった。ポール・ウォルフォウィッツを含め、当時数人のアメリカ当局者がこう認めていた。1998年「石油があるところに行かねばならない。私はあまりそれ[政治的不安定さ]については考えない」とチェイニーは、まだ世界最大の石油サービス企業ハリバートンCEOだった頃、テキサス石油関係業者の会合で述べた。良く知られているようにウェスリー・クラーク大将が数年後にそれを報告した通り、「5年で7つの国を破壊する」ドナルド・ラムズフェルド国防長官のアメリカ軍事行動を、ブッシュ・ジュニアの副大統領として、チェイニーが設計したあらゆる形跡がある。それらの7カ国全てが、中国、EU、そして世界経済にとって、中東石油の巨大な流れの支配に戦略的なものだ。
2004年、チェイニー-ブッシュが当時のサレハ大統領を支援するためイエメンにまで「対テロ戦争」を広げた当時、サウジアラビアによるイエメン支配は疑う余地がなかった。サレハが、ザイド派宗教指導者フセイン・バドルッディーン・フーシを逮捕しようとした後に始まったフーシ派少数派による蜂起に反対して、アメリカとイギリスの軍隊はサレハを支持した。
2015年までに、アメリカ代理戦争は変化し、国防総省とオバマ政権はイエメンに対するサウジアラビアの全面的な壊滅的軍事攻撃を密かに支持した。
イエメンに対するアメリカあるいはサウジアラビアの興味は何だろう? 石油支配は短期的な答えだが、多分いつもの意味でではあるまい。
2005年11月、イエメン共和国はアメリカのハント石油会社とエクソンモービルから、その石油堆積盆地マリブ-ジャウフ・ブロックを没収した。それは決定的大変革をもたらすものではなく、いらだちの種だった。戦争が新しい形態をとったのは、2014年、サウジアラビアに支援されるハーディ大統領に反対するフーシ派反乱が勝利した時だ。2015年3月までに、サヌアとイエメン政府を占領し、アデンへ進軍した際、フーシ派に率いられた最高革命委員会は、ハディを打ち倒すための総動員を宣言した。
未発見資源の可能性
イエメン、特に特に、今フーシ派の支配下にある地域を、誰が掌握しているかについて、二つの戦略上の側面がある。一つは、上述のアフリカの角、バブ・エル・マンデブ海峡を通過する石油の流れの地政学的支配だ。もう一つは、イエメン自身の主に未開発石油資源の支配だ。
2002年、米国地質調査局(USGS)による公開報告が「周知の埋蔵量に、未発見の可能性を加えると、マドビ・アムラン / キシン広域石油システム全体の石油埋蔵量は、石油資源の可能性として、イエメンは、アメリカを除くと51番目となる9.8(10億バーレル原油換算BBOEに増える」と結論した。
100億バレルの原油は、2660億バレルの石油埋蔵量があるサウジアラビアと比較して莫大には思われないかもしれない。だがここで、1988年CIA報告が興味深い。大幅に編集されて、機密指定から外された報告書「南イエメンの石油資源:富のキメラ」には、イエメンとサウジアラビア間の帰属問題で係争中の広い境界における石油埋蔵の可能性について、謎のようなメモがある。冷戦時代、CIAは北イエメンと南イエメンとの間で帰属問題で係争中の境界中立地帯だったところに沿った石油とガス埋蔵を指摘している。
テキサスのハント石油会社は1982年からアリフ油田におり、1984年そこで石油を発見した。アリフ油田はサウジアラビアとイエメンの間の不確定境界近く、フーシ派により管轄されるイエメン北部にある。ほぼ20年前、筆者はピーク・オイルと石油地政学の考えについて話し合うため、アメリカ政府と関係する人物とインタビューする機会があった。当時、話し合っていた人物は、サウジアラビアとイエメンの間の不確定な不毛の地には、公開されないアメリカ空撮影像と地球物理調査によれば、サウジアラビアを超える石油埋蔵の可能性があること自発的に語ってくれた。
その陳述が正確だったかどうか独自に確認するのは不可能だ。明確なのは、イエメンとソマリアを含め、ペルシャ湾と紅海に囲まれた地域が、我々の惑星で、炭化水素発見の必要条件である、最も構造学的に活動的な地域の一つであることだ。イエメンにおける莫大な石油とガス埋蔵の存在は、フーシ派からイエメン支配を奪還するサウジアラビアの残忍な取り組みを国防総省がなぜ積極的に支持したかについて多くを説明するだろう。
それは、いかなる、ワッハーブ主義スンニ派とシーア派信徒の対立にも、ほとんど関係がない。むしろ、それは世界エネルギーの戦略的支配に関係があるのだ。サレハかハーディかにかかわらず、サナアがサウジアラビアの代理人に支配されている限り、それはワシントンにとって、第二の優先事項だった。たとえイエメン政府がアメリカ会社石油不動産を没収していたとしても、石油は「安全だった」。 決然と独立したフーシ派ザイド派勢力が、イエメン、あるいは主要部分を支配した途端、熱心なサウジアラビアの新皇太子ムハンマド・ビン・サルマン防衛大臣に戦争を開始する正式許可を与えるのに十分なほど脅迫が重大になった。フーシ派が支配するイエメンが、ロシアあるいは中国石油会社の子分になり、本格的な潜在埋蔵探査が始まる可能性があったのだ。これにフーシ派がイランとも友好関係にあるという事実と相まって、オバマ政権内で赤信号が点灯したのは明らかだ。
サウジアラビア率いる「自由を愛する」スンニ派軍隊に対するイラン率いる「帝国主義者」の戦争だとサルマンが主張したのは驚くべきことではない。今、中国がイエメン真向かいのジブチで、アフリカ最大のアメリカ恒久軍事基地ルモニエの隣に最初の海外軍事基地を保有している。前の植民地宗主国フランスも同様にそこにいる。イエメンには、我々が聞かされているより遥かに多くの問題があるのだ。
F. William Engdahlは戦略リスク・コンサルタント、講師で、プリンストン大学の学位を持っており、石油と地政学に関するベストセラー本の著書。オンライン誌“New Eastern Outlook”への独占寄稿。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2018/11/20/yemen-genocide-about-oil-control/
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黒海で、ロシアが、ウクライナ艦船をだ捕。昨日、領海侵犯というRT記事を読んだところだった。
今日の日刊IWJガイドに、「ツイッター社により凍結されていたアカウント「IWJスタッフ」凍結が解除されました。」とある。いくつか、巨大ハイテク企業による事実上の検閲の話題記事を翻訳しているが、これは、彼らによる日本での検閲の一例。この深刻な不当検閲に触れず、翻訳記事部分だけをコピーするのは、そうした不当検閲行為に加担するのも同然としか思えない。「インターネット検閲は未曾有の飛躍をしたばかりだが、ほとんど誰も気づいていない」で、ケイトリン・ジョンストンさんも、バーバラ・ストライサンドを引合に出して、言っておられる。検閲行為は不当だと強く主張することが大切だと。この不当な検閲行為、アサンジ問題同様、大本営広報部ではみかけた記憶がほとんどない。気のせいだろうか?大本営広報部の仕事が、支配権力の侍女であり、彼らから見れば、IWJは目の上のたんこぶのはずであることを考えれば、驚くべきことではない。大本営広報部が「報じる話題」の方が、「報じない話題」より、庶民にとって重要だという自明の事実などあるはずがない。以下、冒頭を引用させていただく。
■はじめに~ツイッター社により凍結されていたアカウント「IWJスタッフ」の凍結が解除されました。
おはようございます。IWJ編集部です。11月9日以降ツイッター社により次々に凍結されていた、IWJの6つのツイッターアカウントのうち、IWJの配信などのお知らせを行っていた「IWJスタッフ」@iwakami_staff のみ、11月21日に凍結が解除されました。
11月9日、札幌で元朝日新聞記者植村隆氏(現「週刊金曜日」発行人)がジャーナリスト櫻井よしこ氏と出版社3社を名誉毀損で訴えていた裁判の判決後の報告集会を実況ツイートしていたIWJのツイッターアカウント「IWJ速報」が、ツイッター社により突然凍結されました。これを手始めにその後、「IWJ_ch1」、「IWJ_ch8」、「IWJ_ch9」、「IWJスタッフ」、「IWJ沖縄1」と、6つのアカウントが次々に凍結されました。
IWJはツイッター社に異議申し立てを行ったところ、「繰り返しのルール違反のため凍結した」との回答がありました。
さらに2度目の異議申し立てを行ったところ、「IWJスタッフ」のみ、解除の通知がありました。その際にツイッター社が指摘してきた「ルール違反」とは、以下の4点でした。
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1,連続して、または複数のアカウントを使って特定の行為を繰り返すこと
2,別のアカウントを作成または使用して永久凍結を逃れる行為
3,同じツイートやリンクを複数のアカウントにまたがって投稿する操作
4,過剰なフォロー(特にフォローの自動化によるもの)
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しかし、これだけでは具体的にどの行為がツイッター社の言う「ルール違反」に該当するのかわかりません。確かにIWJは複数のアカウントを使っていますし、すべてのツイートに@iwakamiyasumi
をつけ、岩上さんの個人アカウントに届くようにしていますが、岩上さんに対するスパムメールや迷惑行為を意図したものではありません。そもそもIWJはツイッターを10年近く同じように使い続けてきましたが、このような指摘をされたこと自体が初めてですし、凍結されたことにより別のアカウントで代用して同じツイートをしていますが、そちらは凍結されていません。いずれにしてもIWJは、これをツイッター社による言論の自由を脅かす不当な凍結措置であると考えます。今回解除された「IWJスタッフ」以外の5つのアカウントに対しては、現在もまだ凍結されたままであり、IWJでは引き続き異議申し立てを続けてまいります。
アカウントの再開にともない、この間「IWJ特報」@IWJ_tokuhou アカウントでツイートしていた配信などのお知らせは、「IWJスタッフ」でツイートいたします。「IWJ特報」は、従来「IWJ速報」で行っていた新記事アップのお知らせや速報ニュースなどを引き続きツイートしています。また、岩上さんのインタビューや再配信の実況ツイートを行っていた「IWJ_ch1」のかわりには「IWJ_AreaCh2」@IWJ_AreaCh2で実況ツイートを行っています。ぜひ、あわせてフォローをお願いいたします。今後の経過につきましても、進展があり次第お伝えいたします。
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