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2018年6月29日 (金)

移民: 欧米による戦争と帝国主義的搾取による何百万人もの追い出し

James Petras
2018年6月26日

 “移民”は、ヨーロッパとアメリカを分裂させる主要争点になっているが、何百万人も移民に駆り立てている最も重要なことは見過ごされている。戦争だ。

 本論文では、いくつかの問題、つまり(1)帝国主義戦争(2)多国籍企業の拡大(3)アメリカや西ヨーロッパにおける反戦運動の衰退(4)労働組合と連帯運動の弱さ、に焦点を当て、移民拡大の背景にある原因を検討する。

 まず大量移民をもたらしたアメリカとEUの戦争によって影響を受けた主要な国々を明らかにし、更に、難民に利益の流れに‘従うよう’強いている欧米列強を検討する。

 帝国主義戦争と大量移民

 アフガニスタンとイラクでのアメリカ侵略と戦争が、彼らの命、家族、生活、住宅やコミュニティーを破壊し、安全を損なって、数百万人の人々を追い立てた。

 結果的に、大半の犠牲者は抵抗するか逃れるかの選択に直面した。NATO諸国は、アメリカやヨーロッパの自分たちの住まいを爆撃しようとはしないので、何百万人もの人々が欧米に逃れることを選んだ。

 中東や中南米の近隣諸国に逃れた人々は迫害されるか、貧しすぎて、彼らに雇用や生計をたてる機会を与えることができない国々で暮らしている。

 アフガニスタン人の一部は、パキスタンや中東に逃れたが、これらの地域も、欧米による武力攻撃にさらされることに気がついた。

 欧米による経済制裁や侵略や占領で、荒廃させられたイラク人は、ヨーロッパや、より少数の人々が、アメリカや湾岸諸国やイランに逃れた。

 アメリカ-EU侵略以前のリビアは、市民権と、それなりの暮らしを提供して、何百万人ものアフリカ人を受け入れ、雇用していた‘受け入れ’国だった。アメリカ-EUによる空爆と海上攻撃と、テロリスト暴力団に武器を供与し、資金を提供した後、何十万人ものサハラ以南からの移民は、ヨーロッパに逃れることを強いられた。大半が地中海を渡って、イタリア、スペイン経由で、リビアでの彼らの生活を激しく攻撃した豊かなヨーロッパ諸国へと向かった。

 アメリカ-EUが資金を提供し、武器を与えた傀儡テロリスト軍団が、シリア政府を攻撃し、何百万人ものシリア人に、国境を越え、レバノンやトルコや、更にはヨーロッパへと逃れることを強いて、いわゆる‘移民危機’と右翼反移民政党の勃興を引き起こした。労働者階級部分が、反移民に転じて、既存社会民主党と保守党内部の分裂を引き起こした。

 アメリカが何百万人もの人々を追い出し、EUが欧米の戦争から逃れてくる移民の経費を負担するために何十億ユーロも費やし、ヨーロッパは軍国化したアメリカ帝国主義と同盟した報いをうけている。

 移民に対する大半の生活保護支給は、彼らの母国にもたらした損失より遥かに少ない。EUやアメリカの彼らの雇用や住宅や学校や市民団体は、彼ら本来のコミュニティーにあったものほど役立ったり、寛容だったりしない。

 経済帝国主義と移民: 中南米

 アメリカの戦争や軍事介入や経済的搾取が、何百万人もの中南米人に、アメリカへの移民を強いた。ニカラグアやエルサルバドルやグアテマラやホンジュラスでは、1960年-2000年の時期、社会-経済的公正と政治的民主主義を求める民衆運動があった。土地持ち少数独裁集団に対し今にも勝利しようという所で、多国籍企業とワシントンが何十億ドルも費やし、軍隊や民兵部隊に武器供与し、訓練し、助言し、民衆の武装反抗勢力を阻止した。土地改革は頓挫した。労働組合活動家は亡命を強いられ、何千人もの農民が獰猛なテロ作戦から逃れた。

 アメリカが支援する少数独裁者政権が、住むところを失い、追い立てられ、失業し土地を持たない何百万人もの労働者に、アメリカに逃れることを強いたのだ。

 アメリカが支持したクーデターと独裁者は、ニカラグアで、50,000人、エルサルバドルで、80,000人、グアテマラで、200,000人の犠牲者を出した。オバマ大統領とヒラリー・クリントンは、リベラルなセラヤ大統領を打倒したホンジュラス軍事クーデターを支持したが、それは、何千人もの農民活動家や人権活動家の殺害と負傷と、暗殺部隊の復活をもたらし、アメリカへの新たな移民の波を引き起こした。

 アメリカが推進した自由貿易協定(NAFTA)は、何十万人ものメキシコ農民を破産に追いやり、低賃金マキラドーラ労働者にした。麻薬カルテルにスカウトされた人々もいる。だが、最大の集団はリオ・グランデ川を越えての移民を強いられた。

 クリントン大統領が開始した、アメリカの‘プラン・コロンビア’で、コロンビアに、7つのアメリカ軍事基地を建設し、2001年-2010年の間に軍事援助で10億ドル供与した。プラン・コロンビアで、軍の規模は倍増した。

 アメリカが支援したアルヴァロ・ウリベ大統領は、ウリベが指揮する麻薬-暗殺部隊による、200,000人以上の農民、労働組合活動家や人権活動家の暗殺をもたらした。200万人以上の農民が地方から逃れ、都市や国境外に移民した。

 アメリカ企業は、ほぼ全員が医療保険や福利は無しで、税は払う、何十万人もの中南米の低賃金の農業や工業労働者を確保した。

 移民は利益を倍増させ、団体交渉を弱体化し、アメリカの賃金を押し下げた。あこぎなアメリカ‘起業家連中’が移民を麻薬、売春、兵器取り引きや資金洗浄に引き込んでいる。

政治家は政治的利益のために、移民問題を利用し、労働者階級の生活水準の低下を移民のせいにし本当の根源から注意を逸らしている。戦争、侵略、暗殺部隊や経済的略奪だ。

 結論

 海外の労働者の生活を破壊し、リビア指導者カダフィやホンジュラスのセラヤ大統領のような進歩的指導者を打倒して、何百万人も移民になるよう強いたのだ。

 イラク、アフガニスタン、シリア、コロンビアやメキシコは、何百万人もの移民の避難に見舞われている - 全員がアメリカとEUの戦争犠牲者だ。ワシントンとブリュッセルは、犠牲者たちを非難し、移民を、違法性や犯罪行為で責めている。

 欧米は人類に対する犯罪と国際法違反に対する賠償どころか追放や逮捕や投獄を議論している。

 移民を抑制するための最初の措置は、帝国主義戦争を終わらせ、軍隊を撤退させ、民兵組織や傀儡テロリストへの資金提供を止めることだ。

 次に、欧米は、連中が爆撃した経済や市場やインフラ再建と復旧のため、長期の数十億ドルの基金を設立すべきだ。

 平和運動の崩壊が、アメリカとEUが一連の戦争を開始し、引き延ばすことを可能にし、大量移民 - いわゆる難民危機と、ヨーロッパへの逃避をもたらした。リベラルな社会民主党から戦争政党への転換と、EUへの移民の強制避難との間には直接的なつながりがある。

 労働組合の衰退と、更に悪いのは、組合が戦闘性を失ったことが、帝国主義戦争のさなかで暮らしている人々との団結の喪失を招いた。帝国主義諸国の多くの労働者たちは、その怒りを、戦争を指揮し、移民問題を生み出した帝国主義者に対してでなく、自分達より‘下’の人々、移民に向けた。

 移民や戦争や、平和運動や労働運動や左翼政党の崩壊が、軍国主義者と新自由主義者を勃興させ、彼らが欧米中で権力を握った。ところが彼らの反移民政治は、EUとアメリカ政権内部、企業エリート間と大衆運動の中での新たな矛盾を引き起こしている。エリート支配層と、民衆との闘争は少なくとも二つの方向に向かい得る - ファシズム、あるいは徹底的な社会民主主義だ。

記事原文のurl:https://petras.lahaine.org/immigration-western-wars-and-imperial-exploitation/

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「帝国主義国家が生んだす混沌は大きなブーメランとなりその国家に突き刺さる。その被害者は貧しき人々」

 日常の些細な事に執着しがちな私たちの頭からすっぽりと抜け落ちている、この世界が経験したとんでもない事実を、今も直面しているやるせない現実を、ペトラス教授は論考という適切な形で私たちに伝えてくれます。ありがたいことです。メタボ・カモ様の精力的な翻訳活動にもいつもながら頭が下がります。その本文に追記されるコメントからも常に刺激を受けています。いつもありがとうございます。

 欧米の帝国主義国家らがテロリスト達に潤沢な軍事資金とあからさまな保護を与えて遠い異国に混乱を齎すとき、その混沌に陥った国から逃れようとする難民達の向かう先は、帝国主義国家の支配者層が望んだ道を辿って近隣諸国、対岸の国々へ広がります。混沌を与えた者は平和維持のために彼の地に堂々と軍事介入し、その果てに展開先の豊かな鉱産資源、油田・ガス田を支配下に置き、世界中の食糧・原材料・エネルギー政策をコントロールします。遠く離れた私たちの国もその影響を確実な受けているはずですが、そのことに気づいている人たちは決して多くありません。体感していないから全く異世界の出来事と決めつけているのです。大地は、海は、空は続いているのに、マスメディア支配の果てに敷かれた情報統制のおかげで世界が細切れに砕かれているからこそ、リアルな世界を遠くに感じるのです。かくして先進国に属する人々は自分のことだけしか感じられないのです。世界の本当の姿を知っているのは、間違いなく欧米帝国主義の被害者たちの方でしょう。

 難民化された人々は終わりなき「涙の道」を歩むよう強いられます。彼らは(帝国主義国家が生み出した)残虐なテロリスト達が世界に放つ弾丸でありランチャーミサイルです。祖国を追われた無辜の人々は、彼ら本人達の意思に関係なく近隣諸国、対岸の国々に対する脅威として政治問題化され、パワーゲームの道具とされています。平和で混沌のない欧州・米国などの先進国では、日々の暮らしに窮する貧しき国民の不満と鬱積をぶつける先として難民たちは歓迎されます。失策を重ねている支配者層に国民の不満が向かうのを逸らすのと同時に、強欲な企業たちはその安くて使い捨て可能な労働力を吸い尽くす良い機会とばかりに難民たちを取り組みます。いずれも帝国主義の被害者である貧しき国民と難民は、支配者層の巧妙な罠によって対立させられ消耗しさせられているのです。帝国主義国家の内部では平和運動、人権活動、労働運動が大きなうねりを生み出さないように巧妙に制御され、貧しき人びとはいつまでも「年季奉公人」として負債の返済をし続ける存在に固定化されたままです。

 誰がこのような世界を望んでいるのでしょうか。こんな世界で良いと、このままで良いと誰が思っているのでしょうか。主権を持つ国民が自国の未来を選択する資格を有しているのですから、各国国民一人一人が主体的に考え行動に移していかなければならないと私は思います。少なくとも、自らの人生を謳歌するだけの為に第三国の富を収奪せしめ、その見返りとして残虐な混沌と「涙の道」を彼の地の人々に平然と強要出来るような非人間的な精神を、正常なものとして私は受け入れることができません。

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