カタール後、ワシントンは中東を失ったのか?
2017年6月24日
F. William Engdahl
New Eastern Outlook
最近のアメリカ議会の対イラン、そして対ロシア連邦経済制裁と、サウジアラビアと他の湾岸君主諸国によるカタール制裁決議を結ぶ隠れた赤い糸がある。この赤い糸は、テロに対する戦いとは全く無関係で、もっぱら世界最大の天然ガス埋蔵量を誰が支配し、世界ガス市場を誰が支配するかに関係している。
1914年以来、前世紀の大半、世界は、ほぼ連続して石油支配を巡って戦争してきた。それ自体は科学的行動ではなく、政治的行動なのだが、石炭発電を減らし、CO2排出を大幅に削減することに同意して、欧州連合や特に中国が、クリーン・エネルギー政策を採用するに伴い、また天然ガス液化、LNGのような天然ガス輸送技術の進歩もあいまって、天然ガスはとうとう石油同様、世界中で取り引きされる商品となった。この進展に伴い、現代は世界中の主要石油埋蔵を支配のための戦争だけの時代ではなくなっている。今や天然ガス戦争時代の夜明けなのだ。乗客の皆様、シートベルトをお締め下さい。
地政学的関係者という点で、最近の宣戦布告なしのガス戦争を始めた責任が一番重いのは、いわゆる陰の政府権益の為に政策をたてる、腐敗したワシントン徒党という政治権力をおいて他にない。これはオバマ大統領から、きわだって始まり、現在のトランプ-ティラーソンによる、つまらない見せ物のもとで継続している。イランがそうだとワシントンが定義する“テロ”と戦うため、スンナ派アラブ“NATO”という考え方を押し進めるためのドナルド・トランプによる最近のリヤド・テルアビブ歴訪が、始まりつつあるアメリカによる世界ガス戦争の新段階を引き起こしたのだ。
豚を焼くため、家を燃やす
トランプ政権の中東政策、明らかな政策が存在するのだが、豚肉を焼くため、家を燃やした農夫に関する古代中国の寓話になぞらえられる可能性が高いと思われる。“CO2の少ない″天然ガスを巡って出現しつつある世界エネルギー市場を支配するため、ワシントンは世界最大のガス埋蔵量がある国ロシアだけ標的にしているのではない。ワシントンは今やイランとカタールも標的にしているのだ。一体なぜかを詳しく見てみよう。
2009年3月15日、当時のカタール首長ハマド・ビン・ハリーファ・アール=サーニー、当時は、まだ首長にとって信頼できる友人と見なされていたシリアのバッシャール・アル・アサド大統領との悪名高い会談について、以前、私は書いたことがある。ハマド首長が、アサドに、巨大なEUガス市場を狙った、カタールの巨大なペルシャ湾ガス田から、シリアのアレッポ州経由で、トルコへのガス・パイプライン建設を提案すると、ガス問題で、カタールのガスで、ロシア・ガスの対EU輸出を損なうのを望まずに、ロシアとの長年の良い関係を優先させて、アサドは断ったとされている。
カタール側がノース・ドームと呼び、イランが南パースと呼ぶペルシャ湾ガス田は、世界最大の単一ガス田だと推測されている。運命の定めで、ガス田はカタールとイラン間の領海にまたがっている。
2011年7月、モスクワの承認を得て、シリア政府、イラクとイランは、“友好パイプライン”と呼ばれる異なるガス・パイプライン協定を結んだとされている。この協定は膨大な未開発のイラン南パースガスを、イラク、シリア、レバノン経由で、地中海を通し、出現しつつあるEU市場に送る、長さ1,500キロのガス・パイプライン建設を標榜していた。NATOとワッハブ派反動的湾岸諸国が、2011年以降、シリア破壊を選んで以来、このパイプラインは、明らか保留になっている。彼らは、イラクやシリアのアルカイダと名付け、更にはイラクとシリアの「イスラム国」、更には単にIS、あるいはアラビア語で、ダーイシュと様々な名前をつけた様々な偽旗テロ組織を用いて、アサドと統一されたシリア国家を破壊することを選んだのだ。NATOと湾岸諸国にとって、イラン-イラク-シリア・ガス・パイプラインは、ユーラシアのエネルギー地政学地図や、サウジアラビア・ワッハブ派支配に対するイランの政治的影響力を変えてしまうものだった。
2014年、不可解なISISが爆発的な勢いで登場した際に カタールからトルコへのパイプラインが計画されているアレッポ占領に動いたのも驚くべきことではない。偶然の一致だろうか? その可能性は低い。
提案されたカタール-シリア-トルコ-EUパイプライン(青)は、アレッポ県を経由し、代替のイラン-イラク-シリア (赤) ラインは、レバノンを経由して、EUガス市場に至る。
2011年は、カタールが、当時、サウジアラビアや、他のスンナ派湾岸諸国、更に地政学的にヨーロッパとアジアのガス・ハブとなる野望が消えるのを目にしたトルコにも支援された対アサド戦争に、30億ドルもの金を注ぎ込みはじめた時期だ。イラン-シリア“友好パイプライン”協定発表のまさに翌月、2011年8月、国連安全保障理事会で、アメリカがシリアのアサド辞任を要求した。アメリカ特殊部隊とCIAは、アサドを追い出し、ダマスカスに、カタールのガス・パイプラインの野望に好意的なサウジアラビアが支配する傀儡政権ための扉を開くべく、スンナ派ワッハブ派の影響を受けている世界中から徴募された“シリア反政府派”テロリストのトルコとヨルダン内の秘密NATO基地での、秘かな訓練を開始した 。
ワシントンとリヤドの地政学的な愚かさ
現在のトランプと、サウジアラビアのサルマーン皇太子による、イランが“一番のテロ支援国”で、カタールがテロ支援者だという悪者扱いは一体どういうことなのだろう?
前首長ハマドの息子で、現役のカタール首長タミーム・ビン・ハマド・アール=サーニーが大いに実利的で、ロシアがシリア戦争に介入して、アレッポ経由トルコの、EU向けパイプラインというカタールの夢がはかなく消えたことを悟り、静かにテヘランと交渉を始めたことに我々が気づけば、すべてのものごとがつながって見えてくる。
この春、カタールは、両国が共有する南パース-ノース・ドーム・ガス田開発で妥協案を見出すための交渉をテヘランと開始した。カタールは、ガス田開発禁止措置を解除し、共同開発を巡り、イランと協議を行った。カタールとイランは、イランから、地中海、あるいはトルコ向けで、カタール・ガスをヨーロッパにも送れるカタール-イラン・ガス・パイプラインの共同建設合意に至ったと報じられている。引き換えに、ドーハは、シリア国内でのテロ支援を停止することに同意し、破壊されたシリアを小国に分割して、地域のガスの流れを支配するというトランプ-サウジアラビア計画にとって大打撃となった。
ワシントンとリヤドとテルアビブから見てのこの地政学的大惨事を防ぐため、邪悪の三国は、イランと、皮肉にも中東中でペンタゴンの最も重要な基地があるカタールに罪をなすりつけるべく団結した。連中は、カタールは、世界テロの‘命知らずエベル・ナイベル’だと宣言し、アメリカ国防長官“狂犬”マティスが実際、イランは世界“最大のテロ支援国家”だと宣言し、カタールの罪は、ハマース、アルカイダとISISへの主要資金提供者であることだとされている。かつては、そうだったかも知れない。現在、カタールは違う目標を追求している。
カーブルから中国まで、ボスニア-ヘルツェゴヴィナから、コソボやシリアや、更にはイランやロシアに至るまで、狂信的聖戦テロリストのネットワーク構築に近年、1000億ドル以上注ぎ込んだとされるワッハブ派サウジアラビアの役割を、ワシントンはご都合主義で誤魔化している。
失敗する運命
大半の最近のワシントン・ネオコン戦略と同様、カタール-テヘランの悪者扱いと経済制裁は、これを実施している連中に対し逆噴射している。封鎖を破るべく、イランはすぐさま、緊急食料や他の支援を申し出て対応したが、全く違う文脈での1948年-49年のベルリン空輸を思い起こさせる。
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣も、モスクワで、カタール外務大臣と会談し、中国海軍が、ホルムズ海峡という石油の超戦略的要衝でイラン-中国共同海軍演習に参加するため、イランの港に到着した。ペルシャ湾から、オマーン海への開口部のオマーンとイラン間のホルムズ海峡は、中国や他の世界市場に向けて、35%以上の全ての海上石油輸送がここを通る紛れもなく現代世界で最も重要な海上の要衝だ。
イランは、アメリカとEUの経済制裁が半ば解除されたので、上海協力機構の正式加盟国となる候補者で、既に、世界で最も目覚ましいインフラ・プロジェクト中東を含むユーラシア中の国々の経済的なつながりを構築する、これまで“新経済シルク・ロード”として知られていた中国の一帯一路の戦略パートナーに招かれている。
カタールも、中国やロシアにとって、新顔ではない。2015年、カタールは、今やIMFで、SDR主要通貨として認められている、中国通貨元での初めての中東決済センターとして、中国人民銀行によって公式に認められ、人民元の国際的な受け入れを大きく押し上げた。人民元の決済状況で、カタール企業が、中国との貿易、例えば天然ガスを、直接人民元で決済することが可能になる。既にカタールは膨大な量のLNGを中国に輸出している。
アムステルダム発の最近の報道によれば、カタールは既に、米ドルではなく、人民元建てで、中国にガスを輸出している。もしこれが真実であれば、19兆ドル以上の連邦政府赤字や公的債務を背負いながら、至る所で戦争をしかける能力の財政基盤、アメリカ・ドルの威力に対する大規模な構造的転換を意味する。イランは既に石油へのドル支払いを拒否しており、ロシアは、ガスをルーブルや元で中国に輸出している。二国間貿易で、人民元やロシアルーブルや、ドル以外の他の通貨を好む方向に大きく動けば、アメリカ世界超大国にとってのたそがれとなる。消灯、もうたくさんだ!
たとえば、1990年代そうであったのと全く違い、現在、世界唯一の超大国であり続けるのは容易なことではない。狂犬などというあだ名の精神病質の将軍連中ですら、ワシントンが怒鳴って命令した際、他国を脅し、たじろがせ、従わせることができなくなっている。かつて1990年頃まで それは、言わば朝飯前だった。ユーゴスラビアで戦争をし、ソ連を不安定化 アフガニスタンでの長い戦争の後、旧共産主義国経済東ヨーロッパ全てを略奪した。しかもなお悪いことに、世界はもはやワシントンの破壊戦争を評価しているようには見えない。近年ワシントンが諸国のためにした全てのことに対する全くの忘恩だ。
将来の歴史学者から見ると、ディック・チェイニーが、エネルギーの豊富な中東と呼んだ“戦略的な獲物”に対する支配力をワシントンが失った2017年頃、アメリカの世紀の死亡記事が書かれたということになるのだろうか?
F. William Engdahlは戦略リスク・コンサルタント、講師で、プリンストン大学の学位を持っており、石油と地政学に関するベストセラー本の著書で、これはオンライン誌“New Eastern Outlook”独占寄稿。
記事原文のurl:http://journal-neo.org/2017/06/24/has-washington-lost-the-middle-east-after-qatar/
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都民の大多数がB層なのか、ムサシが本当に機能しているのか、いずれにせよ悲惨な結果。国政がこうなれば、憲法も簡単に破壊される。マクロンのフランスそっくり。
総理が都議選の夜、フランス料理店「オテル・ドゥ・ミクニ」で食事というのは、本当に祝賀会だったのだろう。
大本営広報部選挙報道全く見なかった。自民と都民ラストを対比する雰囲気ゆえ。
ムサシの威力がウワサなら、この結果を産んだ最大の功労者は大本営広報部。
昨日だか一昨日だか、アナグマとタヌキが都会の側溝で一緒に暮らしているドキュメンタリーを見た。山里の穴でも一緒に暮らしているらしい。「同じ穴の狢」はそこからでたような話だった。選挙結果予言番組?
将来の歴史学者から見ると、都民が都議会で改憲勢力を圧勝させた2017年頃、 日本の死亡記事が書かれたということになるのだろうか?
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