三度目の正直 - スンナ派反政府勢力部を望むネオコン
2017年3月15日
Moon Of Alabama
アメリカが、イラクで反政府勢力と対決した際、アメリカは自分の振る舞いが悪いのだとは考えず、シリアとイランを犯人だと特定した。アメリカは両国を攻撃することに決めた。シーモア・ハーシュは、2007年に、こう報道している。
大部分がシーア派のイランを弱体化させるため、ブッシュ政権は、事実上、中東における優先順序を組み換えることを決めた。レバノンでは、ブッシュ政権は、スンナ派のサウジアラビア政府と、イランに支援されているシーア派組織ヒズボラの弱体化を狙う秘密作戦で協力した。アメリカは、イランとその同盟国シリアを狙った秘密作戦にも参加した。これら活動の副産物は、イスラムの戦闘的構想を信奉し、アメリカに敵対的で、アルカイダに共感的なスンナ派過激派集団の強化だった。
四年後、アメリカは自ら作り出したスンナ派戦士を、最初にリビアを、次にシリアを攻撃するのに利用した。アメリカの支援を得て、戦士はカダフィ支配下の独立したリビア国家を破壊した。リビアは今や全くの混乱状態だ。アメリカと同盟諸国により、秘密に支援されたシリアの戦士は、政府を打倒するため、六年間も戦争を仕掛けている。彼らの多くが「イスラム国」とアルカイダに参加し、アメリカの計画と、サウジアラビアの資金によって派生したタクフィール主義者は(いささか)ならず者化した。これらの集団は、アメリカが望んだ通りに、攻撃をアメリカの敵だけに限定することはせず、アメリカ同盟国に対しても、いくつか大規模攻撃を行った。現在、これらの集団そのものが、お互いに敵だ。
シリアを破壊するための、支配可能な "スンナ派アラブ勢力"を作り出す計画は失敗した。ペンタゴンは、シリア政府とタクフィール主義者を攻撃するため、再度、何千万ドルも費やし、シリア国内で、新たなスンナ派アラブ勢力を訓練しようと試みた。こうした新たな集団は、シリアに入国するやいなや、タクフィール主義者に加わり、アメリカ軍が配給した武器を引き渡した。
現在、シリアで現地のタクフィール主義者集団を撃ち破るため、アメリカは、ロシアと現地クルド部隊と組んでいる。クルド人は様々な宗教宗派で、大半が世俗的な格好をしている。現在の「イスラム国」の中心であるラッカを、実際に攻撃するは、まだ何週間も先のこととは言え、この計画はそれなり進展している。シリア西部での戦闘では、シリア政府が勝利しつつある。
だが、アメリカ・ネオコンには、それだけでは十分ではない。連中の課題は、中東において更なる混乱を産み出し、シオニスト計画を更に推進することだ。連中のパートナー、資金源は、スンナ派-ワッハーブ派のサウジアラビアだ。イラク破壊にまんまと成功し、様々な"増派" やシリア攻撃で失敗した後、シリア政府が戦争から生き残ることを連中は容赦できないのだ。
そこで、連中の元々の戦争計画が定めていたことを継続するため、連中は、新たな(これで三度目) スンナ派アラブ勢力を作り出すことに取りかかった。
ネオコン一家の有名人、フレデリック・ケーガンと、キンバリー・ケーガンが、ウオール・ストリート・ジャーナルのネオコン論説ページで、連中の新キャンペーンを開始した。対ISIS・アルカイダ新戦略 - アメリカは、シーア派とクルド人に依存しすぎている。アメリカは、スンナ派アラブ人パートナーを養成する必要がある。
ケーガン家の他の有名メンバー、ロバート・ケーガンとビクトリア・ヌーランドも、対イラク戦争の主要煽動者だ。2008年に(厳重な警備の中)占領したイラクのバスラをぶらついて、自分たちが作り出した破壊を連中が楽しむ様子がこれだ。
論説記事は、ケーガン家が金儲けのために運営している"シンクタンク"が書いた"研究"の簡約版だ。
要するに記事にはこうある。アメリカは、クルド人を遠ざけ、ロシアやシリアやイラン軍と協力すべきではない。ISISや、アルカイダや、シリア政府とも戦う別のスンナ派アラブ人代理反政府勢力を、アメリカは、シリア国内に作り出すべきだ。それに向けた第一歩が、そもそも虚構だ。
アメリカと、アメリカが許容するパートナーが、アブ・カマル等の南東シリアに基地を確保し、事実上の安全地帯を作り出す。彼らは、それから、現地のスンナ派アラブ反ISIS勢力を徴募し、訓練し、装備を与え、対ISIS攻勢を実施すべく提携する。この自立したスンナ派アラブ勢力が、長年イラクとシリア国内のISISとアルカイダを打倒する運動の基盤となる。スンナ派アラブ人の反ISISパートナー構築は、ユーフラテス川渓谷(ERV)沿いの進撃における、決定的段階だ。アメリカと、スンナ派同盟者となる可能性がある人々との間の信頼感の不足を軽減すべく、アメリカ軍はパートナーと共に戦わなければならない。パートナーとなる勢力は、サラフィー主義聖戦士や、イランの代理勢力や、クルド人分離主義者の支持者であってはならない。
既にアメリカは、これを、2006年以来、秘密の方法で試みてきた。そうした勢力は、アルカイダ/ISISに変身した。次に、ペンタゴンは、軍事的手段で、同じ考え方を試みた。そうした代理部隊は、あっと言う間に敵に寝返った。三度目の試みをするべきだろうか?
作り話の計画は、こう続いている。
次の段階
- アメリカは、アブ・カマルとイラクのアンバル州で、アメリカ軍と新たなスンナ派アラブのパートナーを用いて、ラッカに向け、ユーフラテス川渓谷沿いに掃討作戦を開始する。
- アレッポ県の接触線に焦点を当てて、アメリカはトルコとシリア-クルド“人民防衛隊”(YPG)との間の和平協定を仲介する。
- アメリカが、ダルアー県に、飛行禁止空域を導入して、聖戦主義者の支配下にある住民の不満に対処するアメリカの本気の姿勢を見せつけ、現地で、ロシアと親アサド勢力と、アメリカが支援する反アサド勢力間の敵意が止まるよう促進する。シリア戦争の交渉による解決促進を支援することになる、ダルアー県で、ISISとアルカイダを打ち破るパートナー部隊も、アメリカは支援しなければならない。アメリカは、第一段階の後、このステップを実施し、南東シリアでの掃討作戦と同期させるべきだ。
- 聖戦士から領土を確保し、親アサド派攻撃に対し防衛し、アサド政権に反対する入植地を維持するよう、アメリカは、単一のパートナーを作り出すため、新たな部隊を、アメリカが支援する既存の戦士と合体するよう試みるべきだ。
これらの続く作戦が、シリアにおける、より広範なアメリカ権益にとって有利な条件を産み出すが、こうした権益を実現するわけではない。次の段階が必要となり、イラクとシリアにおける、かなりの対イラン部隊が必要となろう。
一体どれだけクールエイドを飲めば、これほどのたわごとを思いつけるのか私には想像不可能だ。
南東シリアのこの想像上の部族から始めよう。シリア南東の砂漠は、(若干の石油以外は)ほとんど資源がなく 住民も僅かで、空っぽだ。こうした人々は、部族指導者たちが、もはやほとんど発言権もないむしろ小さな集団だ。部族メンバーは大半が都市で暮らしている。彼等は、シリア軍兵士か、あるいは敵だ。部族メンバーの一部はISISに加わり、他の連中は、ISISと戦い、何百人もの死傷者を出して、酷く傷ついた。これら部族の大半は、シリア政府と非常にうまくやっており、彼らの地域に戻り、支配できれば満足なのだ。彼らの大半は、ダマスカスに宗派的不満を抱いてはいない。彼等には、シリア国家と戦う動機も、願望もないのだ。
現在、トルコのエルドアン大統領は、シリア・クルド人と戦うのに、全く同じ部族を雇おうとしている。彼も、これに失敗するだろう。
ケーガンは、連中の新地上軍にアルカイダとも戦わせたいと考えている。しかしアルカイダは北西シリアにいる(そして今もトルコに支援されている)。ケーガンは地元勢力の活用を強調している。イドリブの人々にとって、どうして南東砂漠の部族が"地元"だろう?
ケーガンの真の狙いは、もちろん、私が強調した彼らの計画の最後部分だ。彼らは、シリア国家を、更には、レバノンのヒズボラを、イラン攻撃のための"橋"として破壊する、次の企みを実施すべく、これら"スンナ派アラブ部族"を利用したいのだ。
幸いなことに、ケーガン家は、シリア現地の実情から、少なくとも六カ月遅れている。ペンタゴンは、"スンナ派アラブ部族" などという発想を笑い飛ばすはずだ。アメリカ軍は、クルド人の助力と、シリア政府軍との連携で、ISISからラッカを奪還しようとするだろう。シリア政府軍はイドリブで、アルカイダを壊滅するだろう。
トランプが、これらのネオコン計画を採用する可能性は、事実上ゼロだ。だが何とも言えない。ケーガン家に金を払っている人々は、ワシントンの支配層への"ロビー" (つまり買収)にも膨大な金を使っている。ネオコン連中の考えを、ホワイト・ハウスの頭の中に押し込む機会があると、連中が期待しているのは確かだ。
記事原文のurl:http://www.moonofalabama.org/2017/03/third-times-the-charm-the-neocons-want-another-sunni-insurgency.html
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昨日、翻訳掲載した、ハーバード大学の禁書リストには、このMoon of Alabamaも、そしてPaul Craig Roberts氏のサイトも、しっかり載っている。
Paul Craig Roberts氏の2016年6月の記事「支援者の方々へのご報告: イギリス人は目覚めた -アメリカ人は目覚められるだろうか?」に興味深いマーガレット・ミードの言葉がある。
もし誰も真実を知らなかったり尊重しなかったりすれば、世界は失われてしまう。だが世界を変えるには、少数の人さえいれば良い。文化人類学者マーガレット・ミードは言った。“世界を変えようと決意を固め、 思慮ぶかい市民たちからなる小さなグループの力を、決して否定してはいけません。実際、その力だけがこれまで世界を変えてきたのです。”
イギリス人は目覚めた -日本人は目覚められるだろうか?
「世界を変えようと決意を固め、 思慮ぶかい市民たちからなる小さなグループ」というのは、IWJのことだろうか?昨日籠池邸を訪問した野党も、それに近いのだろうか?籠池、菅野コンビも?
日刊IWJガイド「『森友学園』が急展開!籠池泰典理事長が『安倍総理から寄付をもらった』と発言!籠池氏の国会証人喚問は23日に決定!/36億円がタダ同然・第2の森友『加計学園』をめぐり『アベ友』人脈が続々/一昨日より岩上安身が取材のため大阪入り・本日は、水道民営化で私たちの『いのち』や『生活』は破壊される!?超危険法案を見据え、立命館大学政策科学部特別任用教授の仲上健一氏にインタビュー!」2017.3.17日号~No.1645号~
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