ネオコンは、シリアで大規模戦争をたくらんでいるのだろうか
Paul Craig Roberts
2016年2月14日
皆様が日曜日を楽しんでおられる間も、欧米の外交政策を支配している常軌を逸したネオコンと、トルコとサウジアラビアという連中の傀儡が、世界の終わりを準備している可能性がある。
欧米マスコミに頼っている人は、シリアで一体何が起きているのかについて正確な知識がない。
まず概要をご説明した上で、二つのより詳細な説明をご紹介しよう。
ネオコン・オバマ政権は、アサドが率いるシリア政権の打倒を計画した。ワシントンのために、欧米マスコミが民主的に選ばれたアサドを“自国民に化学兵器を使用した残虐な独裁者”として描き出して、長大な宣伝攻勢が行われた。ワシントンは民主的なふりをする偽装集団を組織し、支援して、連中をシリア軍との紛争に参加させた。
紛争が続く中、“自国民に対して化学兵器”を使用する前に、アサドを打倒するために何かをしなければならないと、ワシントンが予言し始めた。オバマは、こうした予言を、“越えてはならない一線”に変えてしまった。アサドが、ワシントンの傀儡に対して、化学兵器を使用すれば、アメリカはシリアを侵略するというのだ。
“越えてはならない一線”を引いてから、偽旗化学兵器攻撃が画策されたか、事故が起きて、そこでワシントンは、アサドが、アメリカの警告にもかかわらず、“越えてはならない一線”を超えたと言うのに利用した。
ワシントンは侵略準備を始めたが、二つの障害にぶつかった。ワシントン傀儡のイギリス首相デービッド・キャメロンは、議会が投票で否決したために、イギリスは侵略を支援できなくなった。これでワシントンは援護なしとなり、むき出しの侵略、戦争犯罪のかどで非難されかねないことになった。
ロシア外交が、全化学兵器をシリアから無くすことを保障して、別の障害物を設置した。
連中の侵略計画が阻止されたので、ネオコンはリビアでカダフィを打倒するために利用した聖戦士を、アサド打倒のために送り込んだ。最初はISISとして知られ、次はISIL、次が「イスラム国」、そして現在はダーイシュだが、これは侮辱ともとれる名称だ。おそらく名称変更の狙いは、欧米の国民に、一体誰が誰で、何が何だか全くわからなくしておくためだ。
ワシントンは現在「イスラム国」と戦っているふりをしているが、ワシントンは「イスラム国」を打ち負かしつつあるロシア/シリア同盟の成功を妨げるべく最善を尽くしている。
ワシントンによる「イスラム国」支援がシリア戦争の原因だ。最近退任した元アメリカ国防情報局(DIA)局長マイケル・フリン中将が、ISISを支持するというのはオバマ政権の“意図的な決断”だったと公的に述べている。
http://www.realclearpolitics.com/video/2015/08/10/former_dia_chief_michael_flynn_says_rise_of_isis_was_willful_decision_of_us_government.html
これも参照。http://www.huffingtonpost.com/entry/iraq-war-isis-michael-flynn_us_565c83a9e4b079b2818af89c
“アサドは退陣すべきだ”というネオコンの要求は、ロシア、イランとレバノンのヒズボラの安全保障に対する脅威だ。ヒズボラは、南レバノンを水資源のために併合しようというイスラエルの企みを二度も打ち破ったレバノン軍だ。ヒズボラは兵器と資金調達の上でシリアとイランの支援に依存している。イスラエルは、ヒズボラを追い出したがっている。
ワシントンがシリア国内に作り出そうとしている「イスラム国」は、ワシントンにとって、イランとロシアに聖戦主義を輸出し、両国を不安定化する手段になる。旧ソ連に現在ロシアと協力している州があったのと同様に、ロシア連邦にはイスラム教徒の国民がいる。ロシアを内部紛争に陥らせることができれば、ワシントンの覇権行使を邪魔しないよう、ワシントンはロシアを排除できる。同様に、イラン国内の非ペルシャ系住民は、聖戦主義によって、過激化させることが可能で、イランを不安定化するのに利用できる。
自分自身を守るため、ロシア、イランとヒズボラは、シリア支援にやってきている。ロシアはシリア政府の招請でシリアに合法的に駐留している。アメリカは違法駐留している。
シリア軍を支援するロシアの空軍力が、戦局を「イスラム国」不利へと変えた。侵略者は追い出されつつある。ネオコンは、この敗北を受け入れるわけには行かない。
ワシントンは、トルコとサウジアラビアによるシリア侵略を準備中だが、その狙いは、ワシントンが油田のある東部を支配し、シリアを二分することだ。
これは、ロシア、イランと、シリアにとって余り有利でないシリア和解案をロシア飲ませるためのハッタリという可能性がある。ところが、ロシア政府としては、それがただのハッタリだとばかり言ってはいられない。もしアメリカ/トルコ/サウジアラビア軍が、ラッカとデリゾールに一番乗りするようなことになれば、シリアは分断されよう。
ロシアは、パラシュート部隊を降下させることで、一番乗りができる。言い換えれば、常軌を逸したネオコンがしているのは、ロシア地上軍を紛争に投入する大きな誘因をロシア政府に与えることだ。こうした軍隊が現地に入ってしまえば、常軌を逸したネオコンが、ロシア軍と、アメリカ/トルコ軍の間で紛争を引き起こすであろうことは確実だ。より大規模な戦争が始まり、どちらの側も後に引けなくなる。
ラッカを目指す競争についての説明はここにある。http://www.moonofalabama.org/2016/02/the-race-to-raqqa-is-on-to-keep-its-unity-syria-must-win-.html
状況の深刻さに対するThe Sakerの見解はここにある。http://thesaker.is/week-eighteen-of-the-russian-intervention-in-syria-a-dramatic-escalation-appears-imminent/
Paul Craig Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
ご寄付はここで。https://www.paulcraigroberts.org/pages/donate/
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歩数計によると、19000歩。
大本営広報部紙媒体も、電気洗脳箱も全くみる時間がない、素晴らしい一日だった。
右膝が痛みだすという初めての経験。
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コメント
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忘れてはいませんか-中国の存在
中国もまたテロ行為で苦しんでいる。チベット問題は別の機会に譲るとしても,中国もテロ対策の一環として東の香港,西のウイグルを抱えている。シリアやイラクはもちろん,パキスタンやアフガニスタンに逃げ込んだとされるISISが中国の西部,ウイグル地区でテロ活動をおこすかもしれない。
他方,南シナ海の南沙諸島に中国海軍は今,釘付けされている。したがって西のシリアに地上軍や空軍を出動させる余裕はないかもしれない。しかしロシアと中国とには善隣友好協定があり,ロシアが(例えばネオコンやNATOと)ことを構えた場合,ロシアを応援することになっている。つまり,トルコのエルドガン皇帝は中国の存在をどう考えているのか。おそらく忘れているのではないだろうか。
エルドガン皇帝は,ISISと取引している証拠が出てくれば,辞任するといったが,2%の物価目標を達成できなかった日銀副総裁岩田氏と同じく,辞任する気配はない。さらにイラクやシリアに皇帝軍を出してロシアを挑発している。しかし挑発する前に,「辞任」というやることがあるのではないだろうか。エルドガン帝国駐日大使に尋ねてみたいものである。
ところで,国連の安全保障理事会で,米仏英はシリア侵攻阻止に関するロシアの決議に拒否権を発動したという(『スプトニク』,2月20日)。一応,ロシアは国連に挨拶したので,拒否権を発動されようと,シリア政府が容認すれば,地上軍を派遣することができるようになった。そこでシリア政府が,中国に対しても地上軍派遣の要請を行った場合,トルコ-サウジアラビア-ネオコン・NATOに勝ち目はあるのであろうか。
CIAに買収されたオ-ランドはトルコ-シリア国境に飛行禁止空域を設けたいといい,CIA職員の一人メルケルはアレッポ住民が逃げられるように国境付近の空爆停止を訴えている。もちろん現在,ロシアは両首脳を無視して航空宇宙軍が空爆を加えている。しかしWW3には到らないだろうが,むしろアンカラが空爆を受ける可能性が高まったように思えてならない。先日のアンカラにおける爆弾事件は偽旗作戦の一つだという説がある。賛成である。ロシアは偽旗であることを百も承知であろう。
ブラック企業を退職したことを知らせていなかったせいか,去年,展覧会に出展せよという催促状が届いた。そこで3月末に予定を立てていたのだが,残念ながら,トルコ旅行を断念せざるを得ない。シリアに一刻も早く停戦が実現し,トルコには平和を愛する新政権が誕生することを期待したい。
追記: WW3に到らない保証はない。小生も確信はない。しかしケリ-長官が好戦派のネオコンにロシア(及び中国)と事を構える気かと一喝した以上,NATOの出る幕はなくなったと考える。しかも,アンカラがCy-24撃墜の報復に攻撃されたとしても,NATOは動かないのではないかと,理由なく空想している。
追記2: 海辺の町アンタルヤのホテルはガラ空きと聞いている。つまり,格安で泊まることができるだろうと期待していたのだが,叶わぬ夢となった。
投稿: 箒川 兵庫助(1-て) | 2016年2月22日 (月) 02時17分